2022年4月のRBNZ・BOC・ECB政策決定会合は?ファンドマネージャーが解説

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2022年4月現在、欧米中心に世界各国の主要中銀がタカ派転換しています。公式見解以上のタカ的な発言をする高官も増えてきています。

会合毎にインフレ見通しを引き上げ、スタンスを引き締め寄りにシフトしていることは、金融政策が後手に回ってしまったということでしょう。中銀は遅れを取り戻すべく一気呵成に引き締めをしそうな雰囲気が強まっています。

今回は、RBNZ・BOC・ECBの金融政策決定会合について解説していきます。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. RBNZ政策決定会合
    1-1.前回(2月)の内容
    1-2.直近の経済状況
    1-3.今回(4月)の予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. BOC政策決定会合
    2-1.前回(3月)の内容
    2-2.直近の経済状況
    2-3.今回(4月)の予想
    2-4.発表後の反応予想
  3. ECB政策決定会合
    3-1.前回(3月)の内容
    3-2.直近の経済状況
    3-3.今回(4月)の予想
    3-4.発表後の反応予想

1.RBNZ政策決定会合

1-1.前回(2月)の内容

事前予想通り政策金利を0.25%引き上げて1%とし、バランスシートの圧縮開始を決定しました。政策金利は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻った形となります。

一部で0.5%の引き上げ予想もあっただけに、通常であれば失望のNZD売りとなる所でした。今回の引き上げ幅は微妙なバランスだったと表現し、家計や企業のバランスシートの強さ、政府の財政支援、好調な輸出に支えられて、ニュージーランド経済は底堅さを維持していると強調しました。将来的には利上げ幅を拡大する準備もしていると示唆したことから、NZDは買われました。

RBNZの金利予想は2024年末が3.4%に前回11月の会合の2.6%から0.8%も引き上げられました。ターミナルレートの事前予想は3.0%前後だったため、市場はタカ派と認識しました。

関連:ブルームバーグ「NZ中銀が3会合連続利上げ、債券保有の段階的縮小開始へ

1-2.直近の経済状況

ウクライナ問題が新たに発生したことから、インフレのピークは後ろ倒しとなりそうです。

一方で、住宅価格はなお持続不可能と考えられる高水準にあります。住宅ローンの固定金利も急上昇しています。家計部門債務が高水準であることから、金融引き締めにはこれまで以上の波及効果があるでしょう。

2-3.今回(4月)の予想

0.25%の利上げが予想されています。長期間で利上げを実施すると住宅市場や家計が冷え込み、景気がハードランディングする恐れもあります。インフレ抑制の為、より早く利上げを実施した上で、景気悪化の際にはすぐに利下げをするというような方法を取る可能性があります。

1-4.発表後の反応予想

FRBに期待されているのと同様、RBNZでも0.5%の引き上げとなったら、NZDは素直に買われるでしょう。特にBOEに似たハト的利上げの雰囲気が強く、RBAのタカ派転からAUD/NZDが一方的に上昇してきています(相対的なNZD売り)。AUD/NZDが下落しやすい可能性があります。

債券市場では年内3%程度までの利上げが織り込まれています。利上げの最終到達点が市場予想以上になると、NZDの買いが強まると考えられるでしょう。

2.BOC政策決定会合

2-1.前回(3月)の内容

一部で0.5%の利上げ予想があったものの、0.25%の利上げとなりました。利上げは18年10月以来となります。

楽観的な経済成長とインフレへの警戒感を強め、将来的な追加利上げを示唆しました。バランスシート縮小も検討しているようなタカ派的な声明文となり、CADは買われました。

関連:ブルームバーグ「カナダ中銀、政策金利を0.5%に引き上げ-追加利上げも示唆

2-2.直近の経済指標

BOCが注目しているコアインフレ指標(CPIコアトリム平均値:+4.3%、CPIコア中央値:+3.5%、CPIコア共通値:+2.6%)の内二つがBOCのターゲットである1~3%を大きく超えた状態となっています。

雇用情勢は改善中で、失業率は5.3%と前回の5.5%から一段と低下しました。一方、雇用者数の増加はパートタイム労働者数が予想外の減少となり7.25万人にとどまりました。しかし前回は+33.66万人ということを考えるとそこまで悪い数字ではありません。平均時給も+3.7%とほぼインフレ上昇と同程度に上昇していることから、健全な経済成長を遂げていると考えられます。

四半期の企業景況感調査が公表されました。企業の4/5が予想外の需要に対応するのは幾分困難と回答するなど、供給制約が引き続き継続していることが示されました。回答者の7割が今後2年間に渡ってCPIが3%を超えると予想しています。

2-3.今回(4月)の予想

0.25%か0.50%か利上げ幅の予想は分かれています。今回は四半期に一度の金融政策報告やマックレム総裁の会見も予定されています。利上げペース、利上げの最終到達点、国債の保有残高を減らす量的引き締め(QT)を決定するのかどうかについても注目が集まります。

直近のFRBの動向から、BOCも0.5%の利上げとQTの開始を決定してくる可能性があります。

2-4.発表後の反応予想

利上げ幅が0.25%にとどまった場合、ネガティブサプライズとして一旦CADは売られる可能性があります。政策金利の最終到達点が引き上げられると全戻しとなる恐れがあるため注意してください。

3.ECB政策決定会合

3-1.前回(3月)の内容

ウクライナ問題を受けて一部では慎重な姿勢を示すとみられていたものの、予想に反してタカ派的な結果となりました。PEPPの購入を3月末で終了させるのは予想通りでした。APPについては、これまでの第2Q:400億EUR・第3Q:300億EUR・第4Q:200億EURから、4月:400億EUR・5月300億EUR・6月200億EUR・第3Q:データ次第、と大幅に前倒しされました。

関連:ロイター「ECB、緩和縮小加速 ウクライナ「重大な転機」と認識

スタッフ予想もインフレについて、2022年は+3.2%から+5.1%に、2023年についても+1.8%から2.1%に上方修正しました。

ただ、ラガルド総裁の記者会見は市場の過熱感を抑えるかのようにハト的でした。

関連:ロイター「ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ECBの基本方針としては、テーパリング終了後に利上げとなっています。利上げのタイミングに自由度を持たすためにはまずはAPPを終わらせる必要があるため、今回の決定となりました。

利上げに関しては、前回のテーパリング終了後「shortly after」という表現から、今回は「some time after」と若干時間の余裕が感じられる表現に変えてきています。第3Qにデータ次第ではQE復活の余地があることも示唆しています。当面はインフレ対応を優先するものの、ウクライナ問題の影響については現時点で予測することは困難なため決定を先送りしたということでしょう。

3-2.直近の経済状況

3月会合以降ECBのメンバー発言はタカ派シフトの傾向がみられます。素早く動き物価上昇率の加速を抑えるのか、成長減退を起こさない様に動きを遅らせるべきかで引き締めのスピードについての意見が分かれているようです。

3月のECB会合の議事録は多くのメンバーが高インフレ持続により即座に正常化を進めるべきと考えていると、タカ派な内容となりました。QE終了後から利上げ開始までのフォワードガイダンスを「shortly before」から「some time after」に変更したことについて、市場では若干時間の余裕を持たせたという見方もあったものの、データ次第ではQE終了後即利上げもありうるとしていました。したがって、第2QにAPPが終了した後、7月利上げの可能性が浮上しました。

3月のユーロ圏CPIが前年比+7.5%と高値更新しました。

ドイツ3月ZEWは期待指数が予想の+5に対して▲39.3とコロナ直後の水準まで大幅に悪化しました。ウクライナの悪影響が色濃く出てしまっています。ZEWの所長も、極端なインフレ高騰により先行き数カ月でスタグフレーションが見込まれていると述べました。

関連:ブルームバーグ「独ZEW期待指数は3月にマイナス圏へ急落、ウクライナでの戦争懸念

3-3.今回(4月)の予想

政策変更の発表はないと予想されるため、ガイダンスに注目です。インフレは引き続き上昇が確認されるでしょう。フォワードガイダンスがどこまで利上げに踏み込んでくるのかに注目です。

現時点では不透明な状況が多いため、年内利上げについてもまずはマイナス金利をゼロに戻す程度のガイダンスに留まりながらも今後の経済状態次第ではもっと早いペースの可能性に言及する可能性があります。

3-4.発表後の反応予想

もしテーパリングのペースを早めたり、年内ゼロ以上までの利上げの可能性を示唆するのであればタカ派サプライズとなります。ただし、対ロ制裁を強化することによる返り血がどの程度なのか予測が立てられない中では、可能性は低いでしょう。

債券市場では年内最大4回までの利上げが既に織り込まれています。為替市場では相対的にウクライナ問題の悪影響が大きいEURはショート目線になっていると思われることから、前回同様EURは大きく買われるでしょう。

仮に予想通り年内ゼロ%近辺のガイダンスにとどまるなら、相対的にハト的に映るため、最近特にタカ派色を鮮明に打ち出した対USDで一段安となる可能性があります。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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