2022年6月英CPI・独GFK消費者信頼感調査とカナダCPIは?利上げとインフレ見通しを解説

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2022年6月現在、主要中銀の政策決定会合が続き、BOJ以外の全ての中銀がインフレ見通しと共に政策金利を引き上げました。同時に、将来の成長見通しは引き下げ、数年後からの利下げを予想している中銀が増えてきました。

市場は中銀の利上げパスをしっかり織り込んで、短期金利は上昇している一方で、長期金利は株の低下も織り込まれつつあり、上値が重くなってきています。今後は各国ともどこまで利上げに耐えられるのかを、経済指標や高官発言を確認していく段階です。

今回は、英CPI・英GFK消費者信頼感調査とカナダCPIについて、それぞれ解説していきます。

※本記事は6月20日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 英経済指標
    1-1.6月BOE政策決定会合の内容
    1-2.5月CPIの予想
    1-3.独、6月GFK消費者信頼感調査の予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. カナダCPI
    2-1.6月BOC政策決定会合の内容
    2-2.前回4月CPIの内容
    2-3.今回5月CPIの予想
    2-4.発表後の反応予想

1.英経済指標

1-1.6月BOE政策決定会合の内容

6月BOE会合は政策金利を0.25%引き上げて1.25%としました。引き上げ幅についてかなり幅広く事前予想が分かれていたものの、6人が0.25%、3人が0.5%を主張するという結果となりました。

声明文では、インフレについて、10月の電気・ガスの再値上げを見越して10月に11%をやや上回ると予想しました。5月時点では第4Qに10%をやや上回るとしていたため、物価の想定を更に引き上げた形です。

しかし、今後の政策方針については必要なら強力な対応を取ると大幅利上げに含みを持たせつつも、「政策は経済見通しや物価についての評価次第」と、前回の「引き締めが適当」という表現からより柔軟に対応する構えを見せています。インフレによる個人消費減速懸念への対応も準備している様子です。

GDP見通しについては、第2Qには早くも▲0.3%のマイナス成長を予想しています。ベイリー総裁が、景気を過剰に冷やさずにインフレを抑制するには「narrow path」と表現しているように、金融政策運営はかなり厳しいものになっていきそうです。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利を1.25%に引き上げ-必要ならより大きな動きも

1-2.5月CPIの予想

雇用統計が発表となり、第1Qの失業率が3.7%と48年ぶりの低水準を記録しました。この期間の失業者数が約126万人でした。

同期間の3か月間の求人者数は128.8万人と求人数が失業者数を上回っています。これは、統計開始以来初のことです。異例の人手不足状態であり、5月週平均賃金も前年比+7.0%と前回の+5.6%から大幅に上昇しました。

4月CPIは賃金以上の伸びを見せており、前年比+9.0%と40年ぶりの水準を記録しました。予想通り電気・ガス料金の引き上げが大きく影響した他、モノやサービスの幅広い項目で物価上昇が進行しています。

労働需給の引き締まりも勘案すると、余程個人消費が落ち込まない限りは、高水準を維持しそうです。

5月CPIの予想は4月を若干上回る前年比+9.1%となっています。

1-3.独、6月GFK消費者信頼感調査

5月のGFK消費者信頼感指数は4月の2008年のリーマンショック以来の水準の▲38を更に下回り▲40になりました。昨年8月から景況感は悪化しているものの、4月にガス・電力の合計価格の上限が約50%引き上げられたことから、更に悪化しています。

昨年までのようなパンデミックに伴う財政支援策もなく、賃金上昇以上の物価高に見舞われ、生活が危惧されています。

4月小売は前月比+1.4%と予想の▲0.3%に対してポジティブサプライズとなりました。主に生活必需品の食料品と衣類が牽引しているため、個人の購買意欲が強いとの判断はできません。

5月サービス業PMIは58.9から51.8に低下しました。やはり景況感はあまり良くないでしょう。

6月のGFK消費者信頼感指数は、5月と同じ▲40が予想されています。

1-4.発表後の反応予想

BOEの今後の方針はデータ次第となっており、方針を占う重要な経済指標が出てきます。まず2022年6月22日水曜日にCPI、そして24日金曜日にGFK消費者景況感指数が発表されます。

BOEとしては確かに物価を抑制しなければなりません。一方で金融政策の効果が出やすいのは需要の抑制です。

仮に景況感が既に相当悪化しているのであれば、BOEによる利上げはむしろ逆効果となってしまいます。本来個人の需要を支えるのは財政の役割で、実際に10月から150億GBPの家計支援策を発表しています。しかし、同じく10月からは約40%のエネルギー価格引き上げが控えており、相殺されてポジティブとはならないでしょう。

しかも先日のBOE会合では10月辺りまでインフレは上昇を続けるという見通しです。

従って、CPIは強くて当たり前、GFKは弱くて当たり前といった織り込みの中、その逆の数字が出るようなら、相場は一時的に素直に動くでしょう。

特に市場のGBPショートはかなり溜まっていると思われるため、GFKが強かった時のポジティブサプライズの反応が大きくなる可能性があります。1.2500を超えるレベルまでのショートカバーの可能性もあるでしょう。

ただし、来週は米国にも材料があることに注意しましょう。22日に上院銀行委員会、23日に下院金融サービス委員会において、パウエル議長による半期議会証言が行われます。

議長が議会証言という公式の場で今後の金融引き締め姿勢を強調するようだと、米長期金利の上昇、米株の下落の傾向がさらに強まる可能性があります。世界中の中銀が引き締めを継続する中ではどうしても株の上値は重く、リスクオフの地合いが強まりやすくなります。

また、英政府はEUと合意した離脱議定書の大部分について一方的に英国が書き換えられることを可能とする法案を議会に提出しています。これに対してEUは対抗処置を取ると警告しています。

EUとの対立によって北アイルランドは不安定な立場になっています。先日の選挙でアイルランドとの統一を掲げるシン・フェイン党が第1党となりました。

更に、スコットランド自治政府のスタージョン首相は独立の是非を問う住民投票の再実施に向けた計画を明らかにするなど、英国を取り巻く政治問題が表面化する恐れがあります。

参考:ロイター「スコットランド首相、独立巡る住民投票計画を近く発表

従って、もし1.2500を超えるような局面があるなら、そこで長期ポジションとしてショートエントリーするという戦略もあるでしょう。

2.カナダCPI

2-1.6月BOC政策決定会合の内容

政策金利を1.0%から1.5%に0.5%引き上げました。0.5%利上げは2回連続で予想通りでした。

声明文にmore forcefullyという文言が追加され2%のインフレ目標達成のためにより強力に行動する決意を表明しました。インフレの定着についての表現が「BOCの見通しを遥かに上回っており短期的には一段と上昇する可能性がある」と強化されたこと、経済が需要過多の状態にあることを明言したことが市場ではタカ派と捉えられました。

参考:ブルームバーグ「カナダ中銀、2会合連続で0.5ポイント利上げ-さらなる行動を警告

2-2.前回4月CPIの内容

4月CPIは前年比+6.8%と前月の+6.7%から一段と加速しました。4月のCPIの伸びは正規労働者の賃金上昇率である+3.4%の2倍となりました。

高インフレは実質所得の伸びも圧迫しているものの、BOCは当面インフレ抑制を重視して利上げを実施するとしています。

2-3.今回5月CPIの予想

前月同様、前年比+6.8%予想と40年ぶりの7%超えが迫ってきています。BOCのインフレ目標は2%を中心に上下1%としているものの、BOCがコアインフレ指標として注目しているCPIトリム値・CPI中央値・CPI共通値のいずれも上限の3%を超えています。

2-4.発表後の反応予想

6月の米CPIがピークを更新したことを受けて、FRBは0.5%の利上げ予定から0.75%の利上げへと引き締めを加速させました。

参考:ブルームバーグ「FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長

今回のCPIが強ければ次回2022年7月13日に行われるBOC会合で0.75%の利上げを織り込みに行く展開になりそうです。現在のBOCの政策金利は年末までに3.75%まで引き上げられることが織り込まれているものの、先日のFOMCのDOTSによればFRBは年末で3.375%に到達する予想です。

つまり、米国よりもカナダの方が金利の先高観があるということであり、金利の先高観拡大するならCADにとってサポート材料となるでしょう。

一方で、世界中の中銀が引き締めを行えば、株が耐えきれずに下落しています。供給の問題から高水準を維持してきていた原油価格も、株の下落につられて、需要減を見越して下落するようになってきています。

カナダ金利の先高観があっても、リスクオフによるCAD売りの圧力の方が強く、CPIが強くて一時的に買われたとしても、反応は限定的となるでしょう。

一方で、カナダは先進国の中でも良好なファンダメンタルズを持ち、金利も高いため、対USD以外の通貨に対しては、強含むことが考えられます。USD/CADは1.2600-1.3200レンジでの推移になると予想します。

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