デジタルユーロ協会と提携した米リップル社のねらいについて解説【中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究とは?】

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今回は、デジタルユーロ協会とリップル社の提携について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. デジタルユーロ協会とは?
    1-1.デジタルユーロ協会の概要
  2. リップル社とは?
    2-1.リップル社の沿革
    2-2.価値のインターネット
    2-3.リップル社と仮想通貨XRPに関係するプロジェクト
  3. デジタルユーロ協会とリップル社の提携
    3-1.提携の目的
    3-2.CBDCの開発
    3-3.CBDCのメリット
  4. まとめ

デジタル通貨に特化したシンクタンクである「デジタルユーロ協会(DEA)」が2022年2月11日に米リップル社との提携を発表しました。リップル社はデジタルユーロ協会と共同でCBDC(中央銀行デジタル通貨)の研究開発に取り組むとしており、注目を集めています。そこで今回はデジタルユーロ協会とリップル社の概要と、提携の目的について解説します。

①デジタルユーロ協会とは?

まずは、デジタルユーロ協会について簡単に説明します。

1-1. デジタルユーロ協会の概要

デジタルユーロ協会(DEA)とは、ドイツに拠点を置くデジタル通貨に特化したシンクタンクです。デジタルユーロ協会は欧州およびグローバル市場において、CBDC(中央銀行デジタル通貨)をはじめ、ステーブルコインや仮想通貨関連の研究、教育、政策立案の支援活動を行なっており、中でもデジタル・ユーロに重点的に取り組んでいます。

​​デジタルユーロ協会の使命は、研究や教育を通じて政策立案者、技術者、経済学者がデジタル通貨関連のトピックについて議論するためのプラットフォームとコミュニティを提供することにより、公的および政治的言説に貢献することです。

②リップル社とは?

次に、デジタルユーロ協会と提携したリップル社について基本事項を解説します。

2-1. リップル社の概要と沿革

Ripple
リップル社(Ripple Labs Inc.)は、クロスボーダー決済・送金ネットワークプロトコルを開発するアメリカのフィンテック企業です。金融機関を対象とする決済に特化しており、「リップル・トランザクション・プロトコル(RTXP)」と呼ばれるインターネット・プロトコルの開発で知られています。

リップルの技術的な起点は、カナダのソフトウェア技術者であるライアン・フッガー氏が2004年に考案した「RipplePay」です。RipplePayは2005年に稼働を開始し、グローバルネットワーク内で安全なペイメントソリューションを提供することを目的としていました。

2012年にフッガーはプロジェクトをJed McCalebとChris Larsenに引き渡し、米国のテクノロジー企業OpenCoinが設立されました。2013年OpenCoin社はRipple Labsにリブランドされ、2015年にはRipple社へリブランドされました。現在の主力事業である国際送金ソリューションの開発にシフトしていきました。

2-2. 価値のインターネット

リップル社では、インターネットを通じて情報やデータが場所や時間を問わず瞬時に伝達・交換できるのと同様に、金融資産をはじめとするあらゆる「価値」資産の交換が瞬時に実行できる世界「価値のインターネット(Internet of Value)」の実現を目指しています。

この実現に向け、リップル社では世界中の異なる台帳やネットワークにおける決済を標準化するための規格「ILP:インターレジャープロトコル)」づくりを提唱しており、現在では「W3C(World Wide Web Consortium)」というウェブの標準化を進める非営利団体によって標準化が進められています。

「情報のインターネット」の世界でHTTPが国際標準規格となったように、リップル社はILPが「価値のインターネット」の世界において国際標準規格となることを目指しています。

2-3. リップル社と仮想通貨XRPに関係するプロジェクト

次に、リップル社と仮想通貨XRPに関係する2つの主要プロジェクトについて紹介します。

①RippleNet(リップルネット)

RippleNet(リップルネット)とは、リップル社が提供する国際送金ネットワークです。世界中の300以上の銀行、送金業者、仮想通貨取引所や事業会社を「RippleNet」経由で接続することで、スピーディで低コストな国際送金を可能にします。RippleNetに参加している代表的な銀行は、「バンク・オブ・アメリカ」やスペインの「サンタンデール」などの海外銀行、そして「三菱UFJ銀行」や「りそな銀行」などの国内銀行があります。

②The Flare Network(フレアネットワーク)

The Flare Network(フレアネットワーク)とは、リップル社の投資部門、RippleXが出資しているプロジェクトです。リップル社によって開発された分散型台帳「XRP Ledger」に、スマートコントラクトの実装を目指しています。

スマートコントラクトとはブロックチェーン上で任意のプログラムを実行する仕組みであり、DeFiを中心に様々な分野で応用されています。フレアネットワークはイーサリアムのブロックチェーンと互換性があるため、イーサリアム上のアプリケーションをフレアネットワーク上で使用することが可能です。

2022年2月時点にフレアネットワークはまだローンチされていませんが、ローンチ後には仮想通貨XRPのユースケースの幅が広がると考えられます。

③デジタルユーロ協会とリップル社の提携

次に、デジタルユーロ協会とリップル社の提携について解説します。

3-1. 提携の目的

ドイツのデジタルユーロ協会は2022年2月11日、エンタープライズブロックチェーンでクロスボーダー決済のリップル社との提携を発表しました。両社のパートナーシップには、欧州中央銀行のCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)作成に向けた開発と研究を加速化させる目的があります。

CBDCとは、「Central Bank Digital Currency」の略で、各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨を指します。デジタルユーロ協会の会長であるジョナス・グロス(Jonas Gross)会長は、リップル社とのパートナーシップにより、デジタルユーロ協会のコミュニティの技術的専門知識を拡張できるとしています。

3-2. CBDCの開発

前述の通り、CBDCとは中央銀行が発行するデジタル通貨のことで、現在注目を集めています。

リップル社はCBDCに多大な努力を注いでおり、世界各国で40人規模のメンバーがCBDCに取り組んでいるとしています。また、同社は2021年9月にもブータンの中央銀行と共同でCBDCの試験導入を発表しているほか、同年11月にはパラオ共和国と提携し、独自デジタル通貨の開発・戦略策定を行なっていくことを発表しています。

リップル社によると、世界の8割以上もの中央銀行がCBDCの導入を模索している最中です。そのような状況で、リップル社が持つソリューションが多くの課題を克服すると言います。

3-3. CBDCのメリット

CBDCのメリットとして、下記6つが挙げられます。

  • 現金の輸送・保管コストの低減
  • ATMの維持・設置費用の低減
  • 銀行口座を持たない人への決済サービスの提供
  • 脱税やマネーロンダリングなどの捕捉・防止
  • 民間決済業者の寡占化防止
  • キャッシュレス決済における相互運用性の確保

CBDCは国が行う施策のため、開発が進めば全ての店舗で電子決済が可能となることが予想されるほか、「国」は民間の銀行と比べて破綻しにくく、振込手続きも短時間かつ手数料無料で行うことが可能となるでしょう。

④まとめ

CBDCは世界中の中央銀行が研究を進める重要なテーマとなっており、デジタルユーロ協会とリップル社の提携によってその開発がさらに加速化することが期待されています。その基盤としてリップル社の技術が採用されることは大きな意味を持ちます。リップル社の技術の普及に期待する方は、この機会に研究してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12