ECBの利上げによりユーロドルは反発 FXで儲けるための注目ポイントを解説

2022年7月11日からの相場は、米CPIが前年比+9.1%と予想以上の加速を示したことから、7月FOMCで1.0%の大幅利上げを織り込む動きがみられドル買いが進行しました。

しかし、米金融当局のタカ派メンバーから0.75%利上げを支持する声が上がり、景況感系の経済指標が悪化したため、市場の大幅利上げの織り込みが巻き戻る中で一転してドル売りとなりました。ドル円は139円台と24年ぶりの高値水準へ上昇後、135円台へ下落しました。

参考:ブルームバーグ「ウォラー理事は75bp支持、積極行動も示唆-トレーダーに迷い

この記事では、2022年7月下旬の振り返りと、8月に向けての動向を解説します。

※本記事は7月25日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年7月下旬のマーケット振り返り
    1-1.日本
    1-2.米国
    1-3.中国
    1-4.欧州
    1-5.英国
    1-6.オーストラリア
    1-7.ニュージーランド
    1-8.カナダ
  2. 注目材料
    2-1.7月FOMC

1.2022年7月下旬のマーケット振り返り

ユーロドルは、エネルギー問題とイタリアの政局不安が持ち上がり一時パリティ(等価)を下回って1ユーロ=0.99ドル台へと下落したものの、ECBが0.5%の利上げを実施したことで1.02台へ反発しました。

参考:ブルームバーグ「ECBが0.5ポイント利上げ、引き締め急ぐ-分断化阻止ツール発表

1-1.日本

BOJ政策決定会合では予想通り政策を据え置きました。

参考:ブルームバーグ「日銀が現行緩和維持、円安でも独自路線-22年度物価見通し2%超

黒田総裁が記者会見で、最近の円安の原因はドルの独歩高であるという認識を示しました。既に利上げを実施している国の通貨も対ドルでは売られており、仮にBOJが多少利上げをしたところで円安傾向は変わらないと、BOJの緩和政策が円安を引き起こしているといった論調に不快感を示す発言をしました。

また物価上昇が一時的であるという見方は維持しました。

参考:ブルームバーグ「黒田日銀総裁が利上げを強く否定、「少しでは円安止まらず」

1-2.米国

6月のCPIは前月比+1.3%と衰える兆しを見せず、前年比は+9.1%と過去最高を更新しました。落ち着くと思われていたコアCPIは前月の+6.0%から+5.9%に低下したものの、引き続き高水準を維持しています。

内訳を確認すると、相変わらずエネルギーと食品の上昇が続いています。中古車価格など幅広い項目でプラスとなっています。ウェイトの高い住宅費が上がっていることから、6月中旬から下がり出したエネルギー価格の影響が来月の数字に反映されたとしても、なかなか落ち着きそうにありません。

ウォラーFRB理事やタカ派の急先鋒となっているブラード・セントルイス連銀総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁が0.75%利上げの支持を表明しました。7月FOMCでの1%利上げ織り込みが、一気に剥落し0.75%利上げ織り込みに戻りました。

参考:ブルームバーグ「ウォラー理事は75bp支持、積極行動も示唆-トレーダーに迷い

参考:ブルームバーグ「米セントルイス連銀総裁、7月75bp利上げ支持 100bp否定=日経

参考:ブルームバーグ「FRBの7月75bp利上げを「完全に」支持=アトランタ連銀総裁

6月小売売上高は予想を上回る前月比+1.0%となりました。家具や無店舗小売り、スポーツ用品店などで増加しました。消費者がガソリン代を多く支払ったにもかかわらず、様々な商品を購入していたことが明らかとなりました。

7月ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は、51.1と予想の49.9や前月の50.0を上回りました。ガソリン価格の下落と堅調な労働市場を背景に現況指数も57.1に上昇しました。1年先の期待インフレは5.2%と前月の5.3%と余り変わらなかったものの、5-10年先のインフレ期待値が2.8%と、前月の3.1%から2021年7月以来の水準に低下しました。

7月の総合PMIは前月から4.8ポイント低下し47.5と好不況の分かれ目となる50を下回りました。高インフレ継続とそれに伴うFRBの引き締めを受けた消費意欲の減退が反映された形となっています。製造業は失速気味、回復路線だったサービス業も過去最悪の数値まで落ち込んでしまいました。

1-3.中国

上海でコロナオミクロン株の変異種が確認され、大規模検査を実施するという発表がありました。市場は、再ロックダウンを懸念してリスクオフで反応しています。

参考:ブルームバーグ「上海で初の「BA.5」感染、市当局は「非常に高い」リスク警告

6月の貿易収支は979.4億ドル(約13.5兆円)と過去最大規模の黒字となりました。上海市のロックダウン解除で生産が再開され、輸出が大幅に伸びたことが要因です。

一方で第2QのGDPは前年比+0.4%に留まりました。ロックダウンの影響で第1Qの+4.8%から大きく減速しました。

住宅購入者らが住宅ローンの支払いを拒否している事例が増加しているというニュースが出てきました。住宅ローンを組んだものの、建物が出来上がらないため支払いだけが発生している状況に抗議しているということです。

本来担保として差し押さえるべき物件がないため、銀行もローン遅延に対して対応策がありません。当局は騒動が広がる前に不動産購入者を対象に、ペナルティーを科さずに一時的にローン支払いの猶予を認める可能性があるとのことです。

参考:ブルームバーグ「中国住宅ローン返済拒否拡大-集団で解決迫る購入者、党大会前に難題

住宅購入への意欲が減退していることが予想される中、PBOCは1Yローンプライムレートを3.7%に、5Yレートも4.45%に据え置きました。金利を引き下げたところで効果は限定的と判断したようです。

1-4.欧州

6月半ば以来ロシアガスプロム社は技術的な理由から天然ガス供給を6割削減しており、2022年7月11日から7月21日まで定期点検の為、ノルドストリーム1経由でのロシアから欧州への天然ガス供給が完全に停止しました。7月21日に無事点検が終了しガスの供給が再開されたものの、点検前から更に10%カットされ、通常の3割程度の供給量となっています。このままでは、冬に向けて在庫を積み上げることが出来ず、EU圏の生産活動の縮小が迫られそうです。

ドイツの7月ZEW期待指数は、▲53.8と大幅に悪化し、2011年のギリシャショック以来の低さとなりました。原因としてはエネルギー供給、ECBの利上げ方針、中国のコロナ対策規制などが挙げられています。

7月のユーロ圏PMIは49.4と前月から2.6ポイント低下しました。資源価格の高騰など急激なインフレが重荷となっています。

イタリア5つ星運動の分裂問題によりドラギ首相が辞任したことで、マッタレラ大統領は議会の解散を発表しました。一部報道では9/25に総選挙を実施する方向とのことです。

注目されたECB7月理事会はリーク通り主要政策金利を0%から0.5%に、預金金利も▲0.5%から0%に引き上げることを決定し、マイナス金利からの脱却となりました。利上げは11年ぶりとなり、0.5%幅の利上げとなると22年ぶりとなります。

また、併せて欧州の分断化対策としてTPI(Transmission Protection Instrument)を発表しました。TPIはドイツとその他周辺国の金利差が拡大し過ぎないように導入されたツールで、対象は全てのユーロ圏の残存期間1年から10年の公的債及び社債も購入対象で買入額は無制限となっています。

しかし買い入れ対象となる国は、EUの財政フレームワークの順守や健全なマクロ政策などの条件がつけられました。これらの条件を満たせる国はそもそも、債券の売りの対象にならないのではということもあり、このスキームの発動が本当になされるのか疑問があります。

参考:ブルームバーグ「ECBが0.5ポイント利上げ、引き締め急ぐ-分断化阻止ツール発表

フォワードガイダンスでは、前回6月理事会では9月はインフレ見通しが改善しない場合はより大きな利上げが適切と暗に0.5%利上げを示唆していました。

参考:ブルームバーグ「ECB、漸進主義は遅いペースや小幅ステップを意味せず-議事要旨

今回は、次回以降はデータ次第で決定と米国同様後追いであることを認め指標次第では0.25%の利上げの可能性もできるように自由度を高めた形となっています。ただ、ラガルド総裁は、金利の最終到達点は変わっていないという認識を示したことから、仮にCPIが強くて利上げを加速させても、FRBとの絶対的な金利差は埋まらないことになります。

1-5.英国

5月の月次GDPが前月比+0.5%と予想を大幅に上回りました。雇用関連指標は全般的に良好な結果でした。

5月の雇用者数は+29.6万人と市場予想を上回り、失業率は前月と同じ3.8%に留まりました。週平均賃金は+6.2%と市場予想を下回ったものの、賞与を除くコア指数では市場予想を上回る+4.3%と加速しました。

6月CPIは前年比+9.4%と前回の+9.1%から一段と伸びが加速しました。エネルギー・食料品が引き続き牽引しています。

ベイリー総裁から8月のBOE会合にて0.5%の利上げを検討中という発言がありました。また同時にバランスシート圧縮の詳細を発表し9月から開始の可能性が高いことも示唆しました。

参考:ブルームバーグ「英中銀総裁、8月の大幅利上げ可能性示唆-「25bp以外にも選択肢」

1-6.オーストラリア

6月の雇用統計は+8.84万人と予想を大幅に上回りました。正規雇用、非正規雇用がともに伸びたほか、労働参加率が66.7%から66.8%に上昇する中で失業率が3.8%から3.5%に低下するなど好結果になりました。豪経済は利上げに耐えられるとの思惑から8月RBA理事会では0.75%利上げの可能性を市場も徐々に織り込み始めました。

7月のRBA会合の議事録が発表されました、足元の金利水準は中立金利からは下回っており、インフレ抑制のためには更なる利上げが必要だというタカ派的な見方を示唆しました。

参考:ブルームバーグ「豪中銀「数カ月でさらなる対応必要」と認識、金融正常化で-議事要旨

1-7.ニュージーランド

RBNZ7月金融政策決定会合では、政策金利を予想通り0.5%引き上げ2.5%にしました。2.5%はRBNZが予想する中立金利の水準です。声明文では、5月に示したように2022年末が3.4%、2023年第2Qまでに最終到達点が3.9%、2024年後半から利下げという、利上げパスに違和感はないとしました。

参考:ブルームバーグ「NZ中銀、3会合連続の0.5ポイント利上げ-引き締め継続を示唆

第2QのCPIが発表され、前年比+7.3%と32年ぶりの高水準となりました。住宅関連コストの上昇が要因ですが、徐々に落ち着きつつあります。

1-8.カナダ

BOCは0.75%の利上げ予想に対してサプライズとなる1.0%の利上げを実施し、政策金利を2.5%に引き上げました。カナダの場合は供給障害というよりは、過剰需要による国内価格圧力が顕著になっており、BOCは引き締めを急いだと思われます。

労働市場は労働力不足による賃金上昇圧力により消費が堅調で、2022年のインフレは8%近辺で推移するため追加利上げが必要としています。マクレムBOC総裁も、内需がインフレのメインドライバーになっているという認識を示し、政策金利を早期に上限まで引き上げる方針を表明しました。BOCは成長見通しを2022年:3.5%、2023年:1.4%、2024年:2.5%と予想しています。

参考:ブルームバーグ「カナダ中銀、24年ぶり1ポイント利上げ-引き締め局面でG7初

6月CPIは、前年比+8.1%と予想を若干下回ったものの、引き続き高水準を維持しています。

2.今後の注目材料

2-1.米7月FOMC

今回はタカ派メンバーも1%利上げには否定的です。今回は事前の織り込み通り0.75%で落ち着くと考えられます。

問題はこの先の利上げペースと政策金利の最終到達点です。景況感系の経済指標は悪化してきており、期待インフレも落ち着いてきています。しかし、雇用は堅調でインフレ鈍化継続の確実な証拠が出ておらず、基本的には異例の0.75%の利上げを9月も実施するというタカ派な意志を示すと予想します。

1%の利上げもまだ20%程度織り込まれているため、0.75%の利上げだと若干USD売りとなるのかもしれません。利上げ織り込みが剥落すると、利上げした時のショックが大きくなるため、利上げ期待を落とさない様に将来の利上げスタンスを示して、USD買いに戻ると予想します。

ただガソリン価格は6月中旬から下落傾向であり、ウクライナの穀物輸出が再開した場合、食料品価格も低下するかもしれません。またFOMC翌日には第2QGDPが発表されます。

マイナスになるようであれば、米経済が利上げに耐えきれずに既にリセッション入りしている懸念が高まります。どちらかというと、翌日のGDPがマイナスになった時のUSD売りのインパクトの方が大きい可能性があります。

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