2022年7月現在、BOJが緩和を維持したものの、円売りは続きませんでした。
参考:ブルームバーグ「日銀が現行緩和維持、円安でも独自路線-22年度物価見通し2%超」
ECBはサプライズの0.5%利上げを実施し、分断化防止策を決定しました。一方で分断化防止策についてはその発動条件が厳しすぎるため、実際に対応できるのか疑義があります。
イタリアのドラギ首相が辞任や、ロシアからのガス供給も削減などEURにとってネガティブな材料が多く出たものの、ユーロ売りにはなりませんでした。
参考:ブルームバーグ「ECBが0.5ポイント利上げ、引き締め急ぐ-分断化阻止ツール発表」
マーケットでは、米国がFRBの利上げに耐えられるのかが最大の焦点となっています。
今回は、FOMCと、次回RBAをにらんで重要となる豪CPIについて詳しく解説していきます。
※本記事は7月25日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- FOMC
1-1.前回6月のFOMC
1-2.直近の経済状況
1-3.今回7月のFOMC予想
1-4.発表後の反応予想 - オーストラリアCPI
2-1.前回第1QのCPI
2-2.6月CPIの予想
2-3.今回第2QのCPIの予想
2-4.発表後の反応予想
1.FOMC
1-1.前回6月のFOMC
6月のFOMCは10対1で0.75%の利上げを決定しました。意外にもタカ派と見られていたカンザスシティー連銀のジョージ総裁が0.5%利上げを主張しました。
注目されたDOTSは2022年末の中央値が3.375%、2023年末が3.75%と大幅に引き上げられました。その後2024年からは徐々に利下げモードに入るという見通しです。
参考:ブルームバーグ「FOMC議事要旨、「より抑制的」金利あり得る-インフレ継続なら」
パウエル議長は会見で、0.75%の利上げは異例の対応と牽制しながら、7月も0.5%か0.75%の可能性に言及しました。
データ次第という姿勢を強調したことで、市場の過熱した利上げ織り込みが若干剥落しました。今回の0.75%の利上げについては5月のCPIとミシガン大消費者信頼感指数(速報)の期待インフレが想定よりも上振れたためだとしているため、今後の経済指標次第では再び0.75%の利上げの可能性は残した状態です。
参考:ブルームバーグ「FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長」
また、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁は0.75%利上げに反対した理由について、9月からのバランスシート縮小(QT)幅の拡大による不透明感を挙げています。
参考:ロイター「米75bp利上げ、不確実性増大懸念し反対=カンザスシティー連銀総裁」
1-2.直近の経済指標
パウエル議長の議会証言では、今後の積極的な引き締め姿勢を強調する一方、今後のリセッションについて目指しているわけではないが可能性はあると表現しました。ソフトランディングを目標としているが非常に困難であることを認め、景気後退の可能性を事実上認めています。
参考:ブルームバーグ「FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある」
コンファレンスボード6月消費者信頼感指数が98.7と予想の100を下回り、今後6カ月の見通しを示す期待指数も2013年以来の66.4と前回の73.7から大きく低下しました。一方で、12カ月先のインフレ見通しが5月の+7.5%から8.0%に上昇しており、近い将来の消費に対する不確実性が高まっています。
6月のISM製造業景気指数が発表され、2年ぶりの低水準となる53.0と前回56.1から低下しました。内訳は、雇用が判断基準の50を引き続き下回っているほか、今回は新規受注も50を下回り、仕入価格も大きく低下するなど、市場は景気後退への懸念を強めています。
ISM非製造業は前月からは低下したものの予想を上回る55.3となりました。製造業と同様、支払価格は低下し、新規受注と雇用も悪化しました。
5月の雇用動態調査(JOLTS)は求人件数が1130万件と4月からは減少したものの、高水準を維持しました。
6月のCPIは前月比+1.3%と衰える兆しを見せず、前年比は+9.1%と過去最高を更新しました。落ち着くと思われていたコアCPIは前月の+6.0%から+5.9%に低下したものの、引き続き高水準を維持しています。
内訳を確認すると、相変わらずエネルギーと食品の上昇が続いているものの、中古車価格など幅広い項目でプラスとなっています。ウェイトの高い住宅費が上がっていることから、6月中旬から下がり出したエネルギー価格の影響が来月の数字に反映されたとしても、なかなか物価が落ち着く気配はありません。
ウォラーFRB理事やタカ派の急先鋒となっているブラード・セントルイス連銀総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁が0.75%利上げの支持を表明したことで、7月FOMCでの1%利上げ織り込みが、一気に剥落し0.75%利上げ織り込みに戻りました。
参考:ブルームバーグ「ウォラー理事は75bp支持、積極行動も示唆-トレーダーに迷い」
参考:ロイター「米セントルイス連銀総裁、7月75bp利上げ支持 100bp否定=日経」
参考:ロイター「FRBの7月75bp利上げを「完全に」支持=アトランタ連銀総裁」
6月小売売上高は予想を上回る前月比+1.0%となりました。家具や無店舗小売り、スポーツ用品店などで増加したものの、消費者がガソリン代を多く支払ったにもかかわらず、様々な商品を購入していたことが明らかとなりました。
7月ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は、51.1と予想の49.9や前月の50.0を上回りました。ガソリン価格の下落と堅調な労働市場を背景に現況指数も57.1に上昇しました。
1年先の期待インフレは5.2%と前月の5.3%と大きな変化はありませんでした。5-10年先のインフレ期待値が2.8%と、前月の3.1%から2021年7月以来の水準に低下しました。
7月の総合PMIは前月から4.8ポイント低下し47.5と好不況の分かれ目となる50を下回りました。高インフレ継続とそれに伴うFRBの引き締めを受けた消費意欲の減退が反映した形となっています。製造業は失速気味、回復路線だったサービス業も過去最悪の数値まで落ち込みました。
1-3.今回7月FOMCの予想
今回はタカ派メンバーも1%利上げには否定的です。今回は事前の織り込み通り0.75%で落ち着くでしょう。
この先の利上げペースと政策金利の最終到達点がポイントになるでしょう。景況感系の経済指標は悪化してきており、期待インフレも落ち着いてきています。
しかし、雇用は堅調でインフレ鈍化継続の確実な証拠が出てきていません。基本的には異例の0.75%の利上げを9月も実施するというタカ派な意志を示すと予想します。
1-4.発表後の反応予想
1%の利上げもまだ20%程度織り込まれているため、0.75%の利上げだと若干USD売りとなる可能性があります。あまり利上げ織り込みが剥落すると、利上げした時のショックが大きくなるため、利上げ期待を落とさない様に将来の利上げスタンスを示して、USD買いに戻ると予想します。
ただ、ガソリン価格は6月中旬から下落傾向ですし、ウクライナの穀物輸出が再開した場合、食料品価格も低下するかもしれません。またFOMC翌日には第2QGDPが発表されます。
もしマイナスになるようであれば、米経済が利上げに耐えきれずに既にリセッション入りしている懸念が高まります。どちらかというと、翌日のGDPがマイナスになった時のUSD売りのインパクトの方が大きく可能性があるでしょう。
2.オーストラリアCPI
2-1.前回第1QのCPI
RBAが注目しているトリム平均CPIは前期比+1.4%とRBAインフレターゲット開始以来最大の伸び率を記録しました。前年比でも2009年以来の+3.4%とRBAのターゲット上限の3%をしっかり超えてきました。
2-2.直近の経済状況
ロウRBA総裁は、今年後半にインフレ率は高い水準に上昇する可能性があるため、物価を中銀目標水準にまで抑えるべくさらなる措置を講じると述べました。
参考:ブルームバーグ「豪中銀総裁、来月会合で25bpか50bpの利上げを議論すると示唆」
インフレは年末までに7%に達し、低下するのは2023年第1Qと予想しています。同時に、豪新政権は豪厚生労働委員会に最低賃金の引き上げを申請していたものの、5.2%に引き上げることが決定されました。
RBA7月の政策決定会合が行われ、2回連続で0.5%の利上げを行い、政策金利は1.35%になりました。声明文も6月と全く一緒で、今後インフレが目標水準に戻るために更なる対応を取ると約束しました。インフレついては、年内にピークに達し、2023年中にRBAの目標である2-3%内に回帰するという見通しを示しました。
参考:ブルームバーグ「豪中銀、1.35%に金利引き上げ-初の2会合連続0.5ポイント利上げ」
6月の雇用統計は+8.84万人と予想を大幅に上回りました。正規雇用、非正規雇用がともに伸びたほか、労働参加率が66.7%から66.8%に上昇する中で失業率が3.8%から3.5%に低下するなど強い数字がでました。
豪経済は利上げに耐えられるとの思惑から8月のRBA理事会では0.75%利上げの可能性を市場も徐々に織り込み始めました。
2-3.今回第2QCPIの予想
市場予想は前年比+4.5%と、第1Qの+3.4%から1%近く上昇することになっています。同じく四半期ごとに発表されるNZの第2QのCPIは前年比+7.3%と32年ぶりの高水準となっています。
6月の米国、英国、カナダなどの主要国でもインフレがピークアウトした兆しは今のところ確認できていません。そのため、豪州でもインフレが加速していることが予想されます。
2-4.発表後の反応予想
予想は若干低めであり、上回る可能性の方が高く、CPIが高ければRBAが利上げ幅を拡大するとの憶測が広がり、溜まっているAUDショートの巻き戻しが発生し0.7000を超えてくると予想します。
直近の豪経済指標を見ると、景況感などのソフトデータは悪化しているものの、ハードデータは力強い結果となっています。労働市場は力強い伸びを見せており、最低賃金が+5.2%引き上げられるため、基本的にはインフレは5%程度加速することが想定されます。
RBAが大幅利上げを実施したとしても、経済は耐えられるとの思惑からAUDは買われやすい通貨とみなされるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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