2022年5月以降の英国・豪州の利上げは?ファンドマネージャーが雇用統計とインフレ見通しを解説

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2022年5月現在、注目された米CPIのイベントを消化し、相場もこれまでの米金利を中心とした世界の金利上昇のトレンドに落ち着きが見えています。むしろ織り込み過ぎた利上げが株を押し下げることでリスクオフの様相となり、為替市場では溜まっていたJPYショートの巻き戻しが発生しています。

米CPIは一応3月でピークを付けたとも見えなくもないものの、判断するにはデータ不足でしょう。6月10日のCPIまで米国の材料はなくなる中、今週は、英国と豪州で金融政策にかかわる重要指標が多数発表となります。

今回は、BOEとRBAの見通しを確認する上で大切な両国の指標について、それぞれ詳しく解説していきます。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 英経済指標
    1-1.5月BOE政策決定会合の内容
    1-2.4月雇用統計
    1-3.4月CPI
    1-4.5月GfK消費者信頼感調査
    1-5.発表後の反応予想
  2. 豪経済指標
    2-1.5月RBA政策決定会合の内容
    2-2.2022年第1Q賃金指数
    2-3.4月雇用統計
    2-4.発表後の反応予想

1.英経済指標

1-1.5月BOE政策決定会合の内容

BOE政策決定会合では、政策金利0.25%引き上げて1.00%とすることを決定しました。メンバー9名中、ハスケル、マン、サンダースの3名が0.5%の利上げを主張し、反対票を投じました。

インフレは、3月時点は今年4月に8%前後としていたものの、今年第4Qに平均10%をやや上回る水準でピークアウトと上方修正した形となりました。多くの委員が今後数カ月である程度の一段の金融政策引き締めが依然適切とみているとのことで、タカ派の側面は打ち出しています。

2023年の成長率予測を▲0.25%と予測するなど、実質所得が低下するなかでの引き締め策という難しい舵取りをしなければなりません。ベイリー総裁も、政策金利をより一層、大幅に引き上げるべきとの意見には同意しないと述べています。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利1%に上げ-10%インフレとマイナス成長予想

1-2.4月雇用統計

3月の雇用統計は失業率はパンデミック前の水準である3.8%まで低下しました。3か月平均の総賃金は前年比+5.4%と加速しました。

求人件数と雇用者数の伸びは鈍化傾向であり、堅調だった労働市場に陰りが見え始めていました。しかし4月の予想も前月と同じ失業率は3.8%、平均賃金も+5.4%と意外と持ちこたえています。

どちらの項目もエコノミストの予想のブレが小さいため、波乱は少ないでしょう。

1-3.4月CPI

3月分のCPIは燃料の高騰により、総合が前年比+7%、コアも前年比+5.7%と予想を大きく上振れました。1992年以来30年ぶりの高水準を記録しました。

4月の数字は増税の影響でエネルギー価格が54%も上昇しており、前年比+9.1%とさらに大幅に上昇する見込みとなっています。第4Qに+10%をやや上回るというのがBOEの物価見通しであり、今回予想を上回るようであれば、BOEの物価見通しに対しても上方修正の思惑が働きそうです。

1-4.5月GfK消費者信頼感調査

4月のGFK消費者信頼感指数は2008年のリーマンショック以来の水準の▲38に低下し、リセッションの可能性を示唆する内容となりました。英国では4月にガス・電力の合計価格の上限が54%引き上げられました。昨年までのようなパンデミックに伴う財政支援策もなくなり、賃金上昇以上の物価高に見舞われ、生活危機が懸念されています。

3月小売りが2カ月連続で下振れし前月比▲1.4%、2月分も下方修正されました。英国産業連盟(CBI)の4月の小売販売の景況感指数も、3月の+9から▲35に急速に低下しました。

家計の実質所得に対する圧力の高まりが、家計支出にますます重くのしかかっており、BOEの懸念する消費者活動の停滞の兆候が表れています。5月の予想も前月とほぼ同水準の▲39に低迷しています。

1-5.発表後の反応予想

BOEは政策金利を順調に引き上げているものの、他国と比較して自国経済見通しに悲観的ということから、GBPは既に売られてきています。今回の一連の経済指標も基本的には賃金上昇以上の物価上昇により、個人の購買意欲が急速に減退しているというBOEの見方に沿ったものが出るはずだと市場は予想しています。

2022年5月は、北アイルランド議会選でアイルランドとの統一を掲げるシン・フェイン党が第1党となったことや、EUと北アイルランド議定書で揉めたことによる政治的な不安が加わりました。

GBPは実効レートでみた場合でも大きく売られています。下値は限定的であるものの、今週の材料が全てGBPにとってネガティブ方向の結果となった場合は、GBP/USDで1.2000割れを試す展開を予想します。

一方でCPIに落ち着きが見えた場合や、消費者信頼感が予想を上回った場合は反発する可能性があります。GBPショートポジションの解消の材料に使われ瞬間的に1.2500超えが見られる可能性があります。

2.豪経済指標

2-1.5月RBA政策決定会合の内容

RBA政策決定会合では、0.35%へと予想を上回る0.25%幅の利上げが決定されました。RBAが今後の利上げ方針についても言及したことで、豪州3年債利回りが2014年以来となる3%に上昇しました。

ロウ総裁は、引き続き豪州のインフレ見通しは他の国ほど深刻ではないとしながらも、インフレ心理が大きく動かないよう先手を打って利上げすると説明しています。

参考:ブルームバーグ「豪中銀が予想上回る利上げ、政策金利0.35%-追加の引き締め示唆

2-2.第1Q賃金指数

2021年第4Qの賃金指数は前年比+2.3%でした。傾向としては上昇基調が続いているものの、RBAが利上げに向けての目標とする3-4%には到達できていません。

RBAは、かねてよりインフレ率と賃金上昇率を利上げの条件として挙げており、5月の会合時には賃金上昇の進展に注目しているということを公表しています。インフレ率は4/27の第1QのCPIでRBAの目標レンジ(2~3%)を上抜けたことが確認でき、5月の0.25%の利上げに繋げました。

今回の賃金上昇率は市場では前年比+2.5%とRBAの目標としている3%に達していません。ただし、前回(同+2.3%)よりも上昇することが予想されています。可能性は低いものの、もし3%を超える結果となれば、次回RBA政策決定会合にて0.5%幅の利上げ期待が高まるでしょう。

2-3.4月雇用統計

3月雇用統計は+1.79万人と予想の+3万人から若干下回りました。失業率は4.0%、労働参加率も66.4%といずれも前月より若干悪化しました。

これは予想が高過ぎただけで、失業率は過去最低水準、労働参加率も過去最高水準を維持しています。今回は雇用者数変化が+3万人、失業率は3.9%へ改善、労働参加率は66.4%で横ばい予想となっています。

2-4.発表後の反応予想

AUD/USDは、4月初旬から下がり続けています。当初FRBの早期利上げ観測によるUSD買いから下落を開始、その後RBAも利上げを実施しました。

しかし中国がロックダウンなどによる行動規制を強め、景気減速が明らかとなったことから、中国と関連があるAUDが売られ、更にリスクオフの展開となる中USDも買われていきました。

2022年5月日21に控える豪総選挙にて与党の惨敗が予想されていることから政治不安も重なりました。コロナ後から世界中の緩和策と資源高に支えられて上昇してきた分をほぼ全て吐き出す形となっています。

5月16日からの週では、特に賃金指数がRBAの目標を越えていたら、0.7100超えまでAUD/USDは買われると予想します。しかし、エコノミストの予想があまりブレていないことから可能性は低いでしょう。

むしろ5月21日の総選挙において、野党は与党がインフレを放置したと批判して支持を集めていることから、事前予想通り野党が勝利するのであればインフレ対策を早急に発表してくる可能性が高いでしょう。

RBAは独立性を保ってはいるとはいえ、国の方針としてインフレ対応優先ということになれば、FRBのように短期間で一気に政策金利を引き上げてインフレを抑制する方針に転換することも考えられます。その場合、AUD/USDが大きく買い戻される可能性があるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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