2022年5月上旬の利上げ動向は?リスクオフの兆しが見えるなか、雇用統計やインフレについても解説

2022年5月2日からの相場は、FOMCをまたいでドルが振幅しました。パウエル議長会見で一部市場で観測された0.75%幅の大幅利上げについては否定的な見方が示されたことでドル売りの反応が広がりました。

しかしFRBのインフレ対応姿勢は強く、中国の財新PMIが予想を大幅に下回ったことから、リスクオフの動きとなり、ドル買いに回帰しました。更に米CPIが堅調な数字になるとリスクオフの動きが強まり、ドル円は127円台、ユーロドルは1.03台半ばを付けました。

その後材料出し尽くしから株が自律反転し、ドル円は129円台、ユーロドルは1.04台まで戻りました。

この記事では、2022年5月上旬の振り返りと、5月下旬に向けての動向を解説します。

※本記事は5月16日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年5月上旬のマーケット振り返り
    1-1.米国
    1-2.中国
    1-3.欧州
    1-4.英国
    1-5.オーストラリア
    1-6.その他
  2. 注目材料
    2-1.豪2022年第1Q賃金指数
    2-2.英4月CPI、5月GfK消費者信頼感調査

1.2022年5月上旬のマーケット振り返り

GBP/USDは、BOEが政策金利を0.25%引き上げて1.00%としたものの、2023年のマイナス成長を予測するなど利上げ路線が景気の減速に繋がることが嫌気されました。

更に北アイルランド議定書をめぐるEUとの軋轢が再燃したことで上値が重く、一時1.21台半ばまで下落し1.22台でクローズしました。

1-1.米国

バイデン政権は物価高騰対策の一つとして対中関税の見直しを検討しています。しかし、米通商代表部(USTR)は、継続の可否を判断するために利害関係者の意見を求めると発表しました。

参考:ブルームバーグ「バイデン大統領、輸入関税率引き下げを検討中-高インフレ抑制に向け

3月JOLTS求人は11,549千人と過去最高を記録し、自発的離職者も過去最高を更新しました。労働市場が一段と引き締まっているため、賃金の上昇に繋がりそうです。

FOMCでは事前予想通りとなる、22年ぶりの0.5%幅での利上げと、6月から月間最大950億ドルでの量的引き締め(QT)の開始を決定しました。0.75%の利上げを主張するかと思われていたブラード氏も反対しませんでした。

しかし、パウエル議長からは、利上げについては今後数回の会合(特に6月と7月)で0.5%利上げが議論されるべきとの考えが広く共有されており、0.75%の利上げについては積極的でないとしたことから、期待されていたほどのタカ派のトーンではありませんでした。米金利は低下・株が上昇・リスクオンのUSD売りとなりました。

参考:ブルームバーグ「FOMC、0.5ポイント利上げ-FRB議長は同幅利上げ継続を示唆

また、中立金利についても2~3%が想定であり、3月FOMCで発表された2.375%から引き上げられず、今後の指標次第という姿勢を維持しました。

雇用統計については、雇用者数は予想を上回る+42.8万人、失業率は前月と変わらず3.6%、平均時給は前年比+5.5%と堅調な数字となりました。労働参加率は62.2%と3カ月ぶりの低水準に低下しているため、雇用主は雇用確保のためには賃上げを迫られる形となり、FRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっています。

注目された4月CPIは予想前年比+8.1%を上回る+8.3%となりました。前月比でも+0.3%と引き続き力強い伸びを見せています。

中身を見ても、航空運賃を筆頭に、食料品・サービス・家賃・新車価格など幅広い分野でインフレが落ち着いていないことが示されました。今後、中国のロックダウンによる供給制約の影響が更に出てくることを勘案すると、物価が落ち着くのはもう少し先とも考えられます。

一方で、ベース効果の影響もあり、3月の前年比+8.5%は越えられず、ピークを付けたという見方もできます。次回6/10発表のデータを見るまでは判断しにくいでしょう。

1-2.中国

4月財新サービス業PMIが36.2、コンポジットが37.2と大幅に減速しました。サービス業に関してはヘッドライン指数と新規受注指数が共に、調査開始の2005年以来2番目に低い水準まで低下しており、ゼロコロナ政策の影響が着実に数字に反映し始めています。

大企業中心の国家統計局のPMIと比較して財新のPMIの方が悪いということは、中小企業がより深刻なダメージを受けていることを示唆している可能性があります。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は中国のゼロコロナ政策は持続不可能だという見解を示し、再考を促しました。

参考:ブルームバーグ「「ゼロコロナ」政策転換を、WHOトップ異例の提言-中国は反論

李克強首相は、雇用と経済安定化の為、財政・金融政策を活用するように求めました。市場は第2QにPBOCが預金準備率と政策金利を引き下げることが予想されているものの、当局はどちらかというと貸付制度や預金金利改革に注力して経済支援を行う方を強調しているため、政策金利引き下げの可能性は低いでしょう。

参考:ブルームバーグ「中国の李克強首相、雇用・経済安定化で財政・金融政策の活用求める

1-3.欧州

ラガルド総裁も年内利上げについては明確に示唆し、債券購入プログラム(APP)終了後、数週間内の7月の利上げの可能性まで示唆するようになりました。ただ、市場は7月利上げについてはほぼ織り込み済みです。

参考:ブルームバーグ「ラガルド総裁も7月利上げ示唆、債券購入終了後「数週間」あり得る

1-4.英国

BOE政策決定会合では、政策金利0.25%引き上げて1.00%とすることを決定しました。ハスケル、マン、サンダースの3名が0.5%の利上げを主張し、反対票を投じました。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利1%に上げ-10%インフレとマイナス成長予想

インフレは、3月時点は今年4月に8%前後だったものの、今年第4Qに平均10%をやや上回る水準でピークアウトと若干上方修正した形となりました。多くの委員が今後数カ月である程度の一段の金融政策引き締めが依然適切とみており、タカ派の側面を打ち出しています。

2023年の成長率予測を▲0.25%と予測するなど、実質所得が低下するなかでの引き締め策という難しい舵取りが必要となりそうです。ベイリー総裁も、政策金利をより一層、大幅に引き上げるべきとの意見には同意しないと述べ、全体としてはハト的な利上げということになり、GBPは売られました。

英国領北アイルランドで行われた議会選挙で、隣国アイルランドとの統一を掲げるシン・フェイン党が、アイルランド統一を争点とせず、経済問題に力点を置いて支持を集め、初の第1党となりました。同党の前身はテロ活動を繰り返した政治組織となっており、ジョンソン首相にとっては痛手となり、政治不安が浮上してきました。

第1QのGDP速報値は前期比+0.8%と予想の+1%を若干下回りました。2月にコロナによる行動制限が解除されGDP全体の6割を占める個人消費が伸びたことから、3月以降の物価高によるマイナスを何とか打ち消すことが出来た形です。

BOEは5月の会合で、第2QのGDPは前期比横ばいになるとの見通しを示しています。しかし、3月の月次GDPは▲0.1%と既にマイナス転しており、消費者信頼感指数も悪化していることから、見通し通り達成できるかはかなり怪しくなってきました。

1-5.オーストラリア

RBA政策決定会合では、0.35%へと予想を上回る0.25%幅の利上げが決定されました。RBAは今後の利上げについても言及したことで、豪州3年債利回りが2014年以来となる3%に上昇しました。

ロウ総裁は、引き続き豪州のインフレ見通しは他の国ほど深刻ではないとしながらも、インフレ心理が大きく動かないよう、先手を打って利上げすると、説明しています。

参考:ブルームバーグ「豪中銀が予想上回る利上げ、政策金利0.35%-追加の引き締め示唆

1-6.その他

トルコの4月CPIは前年比+70%と前月の+61.1%から加速しました。エネルギー価格が前年比118.2%、食料品も前年比+89%と、インフレを引き上げています。

メキシコ中銀は予想通り0.5%政策金利を引き上げて7.0%としました。5名のメンバーの内1人は0.75%の利上げを支持していました。引き続き物価が収斂するまで利上げを継続するというタカ派スタンスを維持し、収斂する時期についても2024年第1Qを維持しました。

参考:ロイター「メキシコ中銀が50bp利上げ、物価圧力抑制に「一段の措置」

2.今後の注目材料

2-1.豪2022年第1Q賃金指数

RBAは、かねてよりインフレ率と賃金上昇率を利上げの条件として挙げており、5月の会合時には賃金上昇の進展に注目しているということを公表しています。インフレ率は4月27日の第1QCPIでRBAの目標レンジ(2~3%)を上抜けたことが確認できて、5月の0.25%の利上げに繋げました。

今回の賃金上昇率は市場では前年比+2.5%とRBAの目標としている3%に達しておらず、前回(同+2.3%)よりも上昇することが予想されています。可能性は非常に低いものの、もし3%を超える結果となれば、次回RBA政策決定会合にて0.5%幅の利上げ期待が高まるでしょう。

2-2.英4月CPI、5月GfK消費者信頼感調査

4月の数字は増税の影響でエネルギー価格が54%も上昇しており、前年比+9.1%と3月の+7.1%よりもさらに大幅に上昇する見込みとなっています。BOEの物価見通しは第4Qに+10%をやや上回るというものであり、今回予想を上回るようであれば、BOEの物価見通しに対しても上方修正の思惑が働きそうです。

ただ、物価は高くて当たり前の状態なので、予想を下回った方が市場は反応するでしょう。その場合、5月GfK消費者信頼感調査が重要になってきます。

4月のGFK消費者信頼感指数は2008年のリーマンショック以来の水準の▲38に低下し、リセッションの可能性を示唆する内容となりました。英国では4月にガス・電力の合計価格の上限が54%引き上げられたものの、昨年までのようなパンデミックに伴う財政支援策もなくなり、賃金上昇以上の物価高に見舞われ、生活危機が叫ばれています。

実際、3月小売りが2カ月連続で下振れし前月比▲1.4%、2月分も下方修正されました。英国産業連盟(CBI)の4月の小売販売の景況感指数も、3月の+9から▲35に急速に低下しました。

家計の実質所得に対する圧力の高まりが家計支出にますます重くのしかかって来ており、BOEの懸念する消費者活動の停滞の兆候が表れています。

5月の予想も前月とほぼ同水準の▲39に低迷しています。景況感を見ながらBOEが利上げを続けられるのかどうかの判断に繋がってくるため、注目されています。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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