2022年5月11日に発表された米4月CPIは高水準を維持したものの、3月から若干伸び率が低下し、3月にピークをつけていたとも考えられる状況となりました。以降、これまでの米金利上昇とUSD買いのトレンドが変化しました。
今回は利上げが織り込まれているBOC政策決定会合と、FRBの利上げ見通しを確認する上で大切な米雇用統計について、詳しく解説していきます。
※本記事は5月30日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- BOC6月政策決定会合
1-1.前回4月会合の内容
1-2.最近の経済状態
1-3.今回6月会合の予想
1-4.発表後の反応予想 - 米5月雇用統計
2-1.前回4月雇用統計の結果
2-2.その後の経済状況
2-3.今回6月の雇用統計予想
2-4.発表後の反応予想
1.BOC6月政策決定会合
1-1.前回4月会合の内容
20年ぶりとなる、1度に0.5%の利上げを実施し1%としました。同時に、バランスシート圧縮に向けて国債の買い入れを停止し、償還後の再投資も4/25に停止するとして量的引き締め(QT)の開始を決定しました。
今年のインフレ見通しを+4.2%から+5.3%に引き上げ、第2Qの経済成長率は+6%と第1Qから大幅に加速するとの見方を示しました。
マックレム総裁は、世界経済には多くの不確実性があるものの、スタグフレーションの再発は回避できると確信しており、政策金利についても2~3%に設定されている中立レンジを一定期間に渡りやや上回る水準に引き上げる必要もあると述べました。CADは大きく買われました。
参考:ブルームバーグ「カナダ中銀、約20年ぶりの大幅利上げ-月内に量的引き締めも開始」
1-2.最近の経済状態
4月のCPIは前年比+6.8%と1991年の統計開始以降最高水準を更新し、3月の+6.7%から更に加速しました。BOCがコアインフレ指標として重要視しているCPIトリム値は前年比+5.1%、CPI中央値は+4.4%、CPI総合は+3.2%といずれもBOCのターゲットである1~3%のレンジを上回った状態となっています。
BOCは4月の会合時、インフレ見通しを上半期は6%をやや下回る水準とし、1月時点の5%から引き上げ、通年でも4.2%から5.3%に上方修正しています。インフレ率が目標を大幅に上回る状況の元、内需と伸びが抑制されている供給の間のバランスを取るために、引き続き利上げ方針は継続されると思われます。
参考:ジェトロ「カナダ中銀、政策金利を0.5ポイント引き上げ1.0%へ」
1-3.今回6月会合の予想
BOCは中立金利を2~3%と設定しており、今後も利上げが見込まれています。6月と7月に0.5%ずつ、残りの9月・10月で0.25%ずつ引き上げて2.5%に到達し、12月は様子見というプランを予想します。
参考:ジェトロ「カナダ中銀、政策金利を0.5ポイント引き上げ1.0%へ」
市場では2022年末時点で2.75%に到達すると織り込まれています。また、一部では今回0.75%の利上げの可能性もあるとしています。しかしFOMCでも0.75%利上げは否定されていたため、BOCが今回0.5%の利上げとなったとしても、失望とはならないでしょう。
注目ポイントとしては高騰する住宅価格とインフレ期待を睨みながら、年内に中立金利上限の3%以上に政策金利を引き上げる必要があるとBOCが判断するかどうかです。
1-4.発表後の反応予想
今回の利上げ幅が0.5%でも0.75%でもあまり大きな影響はないと思います。ただ、0.25%となった場合は、ネガティブサプライズなので、CADは大きく売られる可能性があるものの、低いでしょう。
市場が注目しているポイントは、年内にどこまでの利上げをBOCが想定しているかです。楽観的な景況感の見通しを示し、中立金利の上限の3%を越えるような利上げパスを想定している様であれば、CADは買われ、USD/CADなら1.25台へ下落することもあると予想します。
2.米5月雇用統計
また、CPIがピークを付けたかもしれないという思惑と同時に、これまで堅調さを維持してきた米指標にも陰りが見えはじめました。特に住宅需要の減退及び、景況感の悪化が顕著に見られるようになりました。
先々の米利上げ織り込みが個人の消費傾向に影響を及ぼしてきた可能性が出てきたため、米金利は特に長期金利が低下し、株が下がるため、これまでと違う理由でUSD買いが進行しました。
そして2022年5月30日現在、FRBの行き過ぎた利上げ織り込みが剥落し、先々の利上げ中止まで織り込まれ始めました。今度は一転して米株が反発、そして米国以外の国が利上げを加速していることもあり、米国以外の通貨が買われUSD売りの地合いに転換しました。
2-1.前回4月雇用統計の内容
雇用者数は予想を上回る+42.8万人、失業率は前月と変わらず3.6%、平均時給は前年比+5.5%と堅調な数字となりました。労働参加率は62.2%と3カ月ぶりの低水準に低下しているため、雇用主は雇用確保のためには賃上げを迫られる形となり、FRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっています。
非農業部門雇用者数の内訳を見ると、コロナショックで大きく落ち込んだ後、回復途中にあることが分かります。
最近の雇用増を支えてきたレジャー&ホスピタリティ部門(劇場・カジノなどのアミューズメント部門、ホテルなどのアコモデーション部門、レストラン・バーなどの飲食部からなる部門)が+7.8万人と好調さを維持しました。ヘルスケア&ソーシャルアシスタンス部門も+4.09万人としっかりとしたプラス圏を維持。3月分まででパンデミック前の水準に到達した小売業も+2.92万人と伸びており、全体を支えています。
サプライチェーン問題がらみだと自動車及び同部品部門が挙げられます。2か月連続でのプラス圏も小幅な増加にとどまっています。自動車生産の遅れが中古車への需要につながり、物価高の大きな要因の一つとなっている中古車価格の上昇につながっているだけに、供給問題の解消により物価が落ち着くのはもう暫く先になりそうです。
2-2.最近の経済状態
この一年大幅昇給で企業は気前が良かったものの、そろそろこれ以上の昇給は経営を圧迫すると考える企業が増えてきているようです。まだ現時点では雇用主は、労働コストの上昇分を価格に転嫁できているものの、購買力が弱まってくると、そうもいかなくなってきます。
FRBがインフレ目標の基準値としているPCEデフレータ(個人消費支出)は前年比+6.3%、PCEコアデフレーターは+4.9%と給料の上昇分は食品やエネルギーの上昇に消えてしまっている状況です。
FOMC5月議事録によれば、米国経済は強く、労働市場は極めてタイトでインフレ率は高いと認識しています。実際、3月JOLTS求人は11,549千人と過去最高を記録し、自発的離職者も過去最高を更新しました。若干古いデータであり、労働市場が一段と引き締まっているため、賃金の上昇に繋がりそうなデータとなってるものの、直近の雇用統計の平均時給がどうなっているのかに注目が集まります。
参考:ブルームバーグ「FOMC、積極的利上げ実施すれば年内の政策に柔軟性-議事要旨」
2-3.今回5月雇用統計の予想
予想は前回より若干少ない+31万人となっています。平均時給も+5.2%と前月の+5.5%から若干減速する予想となっています。失業率はほぼ完全雇用といってもよい水準3.5%が見込まれています。
雇用者数は、予想の範囲が25万~45万と狭く、恐らくそこまでブレないと予想されるため、注目度は低いでしょう。注目は、前回から伸びは鈍化するものの、水準的にはかなりの高水準の平均時給です。
しかし、4月の米消費者物価指数が前年比8.3%となる中で、給与の伸びが物価高にまるで届いていない状況がより鮮明となりますと、4月の消費者物価指数は家庭用食品など家計に直結する部門で高い伸びとなっていただけに、今後の個人消費への影響が懸念されます。
2-4.発表後の反応予想
FRBの今後の引き締め方針は、6月・7月と連続で0.5%の利上げを実施した後の9月のFOMCに注目が集まっている状況です。鍵となるのが利上げに耐えられる経済状態かどうかということであり、材料の一つとしては雇用統計での雇用環境が重要になってきます。
今回は恐らく雇用環境は堅調であることが予想されるため、平均時給の推移が注目です。もし、前月以上の伸びを示すのであれば、直近剥落していた利上げ織り込みが復活すると共に、USD買いが再開するでしょう。一方、予想を下回った場合ですが、こちらについては、最近織り込まれつつある為、反応は限定的になると予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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