2021年5月3日~9日の為替動向、中旬に向けての見通しは?ファンドマネージャーが解説

2021年5月に入り、市場の想定以上に米雇用統計の数値が下回っていたことが大きなサプライズとなりました。各国中銀は政策金利を据え置いている状況です。また日経平均株価は2か月半ぶりの下げ幅を付けるなど、大きな動きが見られています。

この記事では、GW期間中の振り返り、また5月中旬に向けてどのように見通しについて、ファンドマネージャーが解説します。

目次

  1. 2021年5月3日~5月9日の振り返り
    1-1.米雇用統計
  2. 各国の動向は?
  3. 5月中旬にかけての注目材料は?2つ解説
    3-1.米経済指標(CPI、小売り)
    3-2.米金利

1.2021年5月3日~5月9日の振り返り

5/3からの1週間はドル売りが優勢でした。5/6までの株価は、米国関連の指標が予想を下回っても反応が薄く、加えてG7で中国を非難しても動きませんでした。5/6に各国の中銀政策決定会合がありましたが、翌日5/7の米雇用統計に関心が高まっていました。そして、米雇用統計は予想を大幅に下回り、溜まっていたエネルギーが一気に放出されるように、USD売りが加速しました。

USDJPYは、108円台でもみ合いとなりましたが、EURUSDは1.21台後半、GBPUSDは1.40台、AUDUSDは0.78台半ば、USDCADは1.21台半ばと、USD売りが進行し、結果としてクロス円が上昇しました。ただ、対新興国通貨ではUSD売りは進んでおらず、株の上昇はあるもののリスクオンの雰囲気ではありません。

1-1.米雇用統計

米雇用統計は予想を大幅に下回りました。発表直後、株と金利は下落していました。しかしその後、バイデン大統領が追加緩和の必要性を説いたことから、株と金利が一気に反転上昇しました。結果として、通常のリスクオン展開によるUSD売りが加速しました。今回の米雇用統計は、FOMCの見立てが合っているという認識に繋がり、織り込み過ぎていた緩和解除期待の剥落から、米金利は上がりにくくなったと考えられます。

ただ、ショッキングな米雇用統計にも関わらず、反対にインフレ期待は高まっています。米インフレ期待を示している、米10年債のブレークイーブン・レートは一時2.5%まで上昇し、2013年以来の高水準となっています。バイデン大統領によるインフラ投資策への期待感から、インフレを上昇させる環境が長引くという見方があります。金利は最終的に米雇用統計前よりも高くなっており、もしこの金利の動きが正しいのであれば、USD売りが継続していることに違和感があります。

単月の結果だけでは判断しかねますが、手厚い経済対策によって職はあるものの探していないという状況の場合、失業手当の割り増し支給が終了する9月以降に雇用環境が改善していく可能性があります。しかし、コロナ禍で企業サイドが業務を効率化させた結果、職がなくなっている場合、若干根が深い問題になります。

アメリカは各国と比較してコロナワクチンが普及しています。しかし、雇用の回復が遅れている状況を見ていると、既に出口方向に舵を切りつつあるノルウェー・カナダ・イギリスが、この調子で中銀の予想通りに回復していくのか、疑問が出てきます。ノルウェー・カナダは、資源価格の上昇の恩恵が影響していると考えられます。

米イエレン財務長官の発言

その他、アメリカのイエレン財務長官から「景気の過熱を抑えるために、金利は上昇せざるを得ない」というニュアンスの発言がありました。発言直後、金利は急騰しましたが、その後すぐに「利上げを予想したものではない」「インフレが高まると予想していない」と市場を鎮静する発言があり、金利は落ち着きを取り戻しました。真意は読むことができませんが、長官が景気に対して楽観的に見ていると考えられます。

各国の動向は?

カナダ

カナダは、5/7の雇用統計がネットでマイナスとなっています。一方的に進行しているCAD高に対して、、中銀が牽制を掛けてくることも考慮しておきましょう。

EU

EU諸国と個別の貿易問題については話がまとまっておらず、ジャージー島を巡ってフランスと揉めていることや、漁業権を巡ってノルウェーと揉めていること、スコットランド独立懸念が浮上したGBPの上昇も、若干行き過ぎだと思われます。

オーストラリア

5/4のRBA(オーストラリア中銀)会合は、政策金利は0.1%で据え置き、3年利回り目標も0.1%で据え置き、2024年まで利上げの環境が整うとは予想せずという報告であり、前回と同じ内容でした。先週のCPI(消費者物価指数)を見ている限り、インフレが上がってくるのはもう少し時間がかかりそうであり、中銀のスタンスに違和感はありません。

イギリス

5/6のBOE(イギリス中銀)会合は、政策金利は0.1%で据え置き(9-0で決定)、債券購入目標額は社債含めて8,950億ポンドを維持(8-1で決定、1名は減額を主張)、債券購入ペースを週44億ポンドから34億ポンドへ減額を決定しました。この減額は、既存の購入ペースでは年末まで持たないことから購入額を減額するというテクニカル的な要素が強いため、テーパリングとは言えません。ただ、経済物価見通しを上方修正し、ホールデン委員が購入総額の減額を主張したことから、少なくとも次の一手は追加緩和ではなく緩和解除の方向であることが確認できましたので、今後の中銀メンバーの発言には注意が必要ですが、既にある程度織り込まれている部分もあり、現時点で大きくGBP高になることはないでしょう。スコットランドや北アイルランドの政治的イベントが片付き、6/21のロックダウン完全解除後の経済指標が確認できる夏以降から、再びBOEの動向に注目が集まると予想します。

ノルウェー

NOK(ノルウェー中銀)は、政策金利を0%に据え置き、声明文では2021年後半の利上げの可能性が最も高いと3月の声明文を維持しました。インフレは依然として目標を上回っているが、通貨高により今後緩やかになると予想していることから、適度な通貨高であれば、現時点のインフレを相殺する方向に働いてくれるため、容認姿勢を示しているとも捉えられ、NOK(ノルウェー中銀)にとってはサポート材料になりそうです。

トルコ

トルコ中銀は、政策金利を19%で据え置き、声明文は4月と同様インフレが大幅に低下しない限りは金利を維持するとしました。5/3に発表されたCPI(消費者物価指数)は前年比で17.1%と上昇基調であり、インフレ見通しを上方修正していることから、当面据え置きの可能性が高いと考えられます。

3.5月中旬にかけての注目材料は?

3-1.米経済指標(CPI、小売り)

CPI(消費者物価指数)について、今回の予想は前月比+0.2%、前年比+3.6%、食品とエネルギーを除いたコアは前月比が3月分と同水準に+0.3%、前年比が+2.3%の予想となっています。先週、多くのFOMCメンバーから発言がありましたが、インフレは一時的という認識を繰り返しており、多少強くても反応は乏しいと考えられます。むしろ、衝撃的な雇用統計の結果があるため、予想を下回っている方が反応しやすくなります。

また、小売りは4月に前月比9.8%上昇と強い姿勢が見られたため、1%程度の予想となっていますが、経済制限が徐々に解除されているなかで個人消費がどの程度戻っているのか確認をし、今後の雇用の強弱にもつながる可能性がありますので、見ておく必要があります。

3-2.米金利

現在市場が予想しているスケジュールは、2022年からテーパリング開始、2023年から利上げとなっています。実現されるためには、2021年8月のジャクソンホール近辺で、テーパリング開始をアナウンスするというものです。実際に出ている直近のCPIは、ベース効果もありかなり予想よりも高くなっています。しかし、FOMCとしてはインフレは一時的と評価しており、本格的なインフレの為には、前提として雇用の回復がないとたどり着けないという考え方です。

しかし、コロナ前の水準と比較して800万人雇用が失われた現状から回復するには、今後も毎月100万人以上の増加ペースでないと、現在織り込まれているマーケットの緩和解除時期には追い付けません。そして、既に株式市場は、FRBの緩和解除はまだ先ということを織り込んで底堅く推移しており、為替市場はリスクオンのUSD売りとなっています。

一方、債券市場では期待インフレが2.5%を超えてしまうなど、直近出てきているCPI(消費者物価指数)の数字に沿った動きとなっています。しかし、名目金利は頭打ちとなっており、本来バイデン大統領による追加財政出動による需給の悪化も加味したプライシングであれば金利上昇があってもおかしくありませんが、現状では相場観に迷いが見られます。ただ、名目金利から期待インフレを引いた実質金利は低下が続いている状態であり、結果としてUSD売りに繋がっています。

このように、各プロダクツ同士の相関や利上げ織り込みがバラバラの状態であることから、結果としてUSD売りトレンドが出ていたとしても、続いていくことが難しい相場となっています。ロックダウンが解除された後、ベース効果が剥落した経済データが揃う夏頃まで、本格的かつ継続的なトレンド相場の到来まで、もう少し時間がかかりそうです。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」