ECBは0.75%の利上げの可能性も?FXで利益を出すための注目ポイントを解説

※ このページには広告・PRが含まれています

2022年8月22日からの相場は、ジャクソンホール会議で、パウエル議長が景気後退となってもインフレが抑制されるまで利上げを継続するとの強い姿勢を示しました。米雇用統計でも労働参加率が大きく上昇し、9月のFOMCでの0.75%利上げ期待が強まり、ドル高になりました。

ジャクソンホール会議で黒田総裁は、緩和継続以外の選択肢はないと発言しました。日米の金融スタンスの差が一段と拡大したためドル円は高値を更新しました。140円台の後半まで上昇しました。

参考:ブルームバーグ「パウエルFRB議長のタカ派姿勢、政府・日銀に再び円安警戒迫る

欧州では欧州天然ガス先物が急上昇したことを受けて景気後退懸念が強まり、0.99台を中心に上値重く推移しています。

この記事では、2022年8月下旬の振り返りと、9月上旬に向けての動向を解説します。

※本記事は9月6日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年8月下旬のマーケット振り返り
    1-1.米国
    1-2.中国
    1-3.欧州
    1-4.ニュージーランド
    1-5.カナダ
  2. 注目材料
    2-1.中銀政策決定会合

1.直近の振り返り

1-1.米国

7月のPCEデフレータは前年比では+6.3%と前回の+6.8%から伸びが大きく鈍化しました。コア価格指数も前月比+0.3%前年比+4.9%上昇となりました。

当局が目標とする+2%には遠い状況であるものの、経済の屋台骨である個人消費が従来の想定よりも不安定な状態で第3Qをスタートしたことを示唆しています。過去数カ月にわたって消費を支えてきた堅調な労働市場や大幅かつ持続的な賃金増加が、広範なインフレにより抑えられてきている可能性があります。

多くのFRB当局者から基本的にはインフレの制御が最優先事項であり、それまでは利上げを継続するという主旨の発言が目立ちました。

ジャクソンホール会議ではパウエル議長も、成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレが抑制されるまで当面金融引き締めが必要という見解を示しました。市場が期待していた米経済は強いというような発言はなく、リセッションについての言及もなく、雇用市場の需給バランスが崩れ始めたという認識を示しました。利上げにより雇用市場が崩れていくことが、インフレを抑える鍵になると見ているようです。

参考:ブルームバーグ「パウエルFRB議長のタカ派姿勢、政府・日銀に再び円安警戒迫る

しかし、経済指標は力強い米雇用市場を表しています。7月JOLTS求人は11,239千人と前月から増加しました。7月の失業者数が5,670千人であることから求人倍率は約2倍となっており、雇用市場が堅調であることが示されました。

8月カンファレンスボード消費者信頼感指数も103.2と予想の98に対して大きく上振れました。仕事が豊富にあるとの回答比率は若干低下しています。一方で、6カ月先の事業環境の改善を見込むとの回答は上昇しています。

8月ADP雇用報告では前月比+13.2万人と予想の+30万人を下回りました。今回発表分からスタンフォード大学と共同でデータを集計し、統計算出方法を変更したため、相場の反応はありませんでした。

8月ISM製造業景気指数は52.8と7月から横ばいとなり市場予想の51.9を上回りました。先行指標となる新規受注指数は51.3と7月の48.0から改善しました。雇用指数も54.2と49.9から大幅に改善しました。

8月雇用統計は+31.5万人増と予想を若干上回った一方、失業率は3.7%に悪化しました。しかしその原因は、前回の62.1%から62.4%に大きく改善した労働参加率で、特に女性が参加率を押し上げたようです。パンデミックで労働市場から一時離れていた人々が戻りつつあるのでしょう。

最初は職探しから始めるので、失業者にカウントされ、失業率は上昇します。実際の総雇用者数はさほど落ち込まず、労働人口が増加するにつれ賃金の伸びは鈍化し、いずれインフレの落ち着きに貢献する可能性があります。まさに、FRBが望んでいる、深刻な景気後退を招くことがないソフトランディングシナリオが実現するかもしれません。

1-2.中国

PBOCは予想外にMLF(1年物中期貸出制度)政策金利を0.1%引き下げて2.75%としました。ローンプライムレート(LPR)も1年物・5年物もそれぞれ0.1%ずつ引き下げる予想となっていたものの、1年物は0.05%、5年物は0.15%引き下げました。

低迷する不動産市場を支援するため住宅ローン参照金利の5年物LPRをより大きく引き下げました。更に、物件を買い手に確実に引き渡すための特別融資を2000億元(約4兆円)提供すると発表しました。

中国南部の四川省や重慶市は、熱波に襲われています。60年に1度とも言われる熱波の影響で、河川が干上がり、電力不足に陥っています。計画停電が実施され、工場の操業に遅れが生じるなどの影響が出ています。

共産党大会が10/16に開幕することが決定されました。習近平主席は3期目を目指しています。ゼロコロナ政策がどうなるのか。共同富裕のスローガンがどうなるのか。テクノロジーや不動産セクターをどう改革するのかがポイントとなりそうです。

1-3.欧州

ロシアが点検のために、再びパイプラインの稼働の停止を発表すると、天然ガス価格が過去最高値を更新しました。欧州の基準電力価格が、10年平均価格の10倍まで上昇しました。緊急介入も視野に電力市場の構造改革に取り組んでいるようです。

ECB7月理事会の議事録では、リセッションリスクが高まったもののインフレ定着に対する懸念を強めたことが示唆されました。一部のメンバーは0.25%の利上げを支持しました。多くのメンバーが高騰する物価への対応を重視し0.5%の利上げが適切だとの見方を示しました。

ECBメンバーの、クノット・オランダ中銀総裁など一部のメンバーから、9月の次回の政策委員会で最大0.75%の利上げ決定を支持するような発言がありました。

参考:ブルームバーグ「ECB9月政策委、最大75bpの利上げ決定を支持-オランダ中銀総裁

またジャクソンホール会議ではラガルド総裁の代役で講演したシュナーベル専務理事が、成長率の低下や失業率の上昇のリスクを伴ってでもインフレに対しては力強く対応すると述べました。

参考:ロイター「世界の中銀は景気後退恐れず強力なインフレ対応を=ECB専務理事

しかし、レーンチーフエコノミストは通常より大きな利上げを行うことには慎重姿勢を示しています。

参考:ブルームバーグ「ECBレーン理事、大幅利上げの議論けん制-タカ派の主張押し戻す

欧州圏8月のPMIは更に不況領域に入り込み総合指数は49.9から49.2に低下しました。生活費増加の懸念に伴いサービス業の活動が停滞している模様です。

8月のユーロ圏HCPIは前年比+9.1%と予想の9.0%を上回り、過去最高水準を更新しました。エネルギー価格上昇はやや一服したものの、食料品価格の高騰が全体を引き上げました。公共交通機関の格安料金など政府の支援策が押し下げている状況ですが、電力市場への介入などを含め、政府支援策に注目です。

1-4.ニュージーランド

第2Qの小売売上高が前期比▲2.3%と予想外に急激に減少しました。コロナ規制が緩和されたにもかかわらず、インフレの高騰や金利の上昇が予想以上に家計支出を圧迫した可能性があります。

1-5.カナダ

第2QのGDPは前期比+3.3%と堅調でしたが、予想の+4.4%からは大幅に下回りました。成長はほぼ期序盤の加速を反映したもので、急速に減速する住宅市場により、6月月次GDPは僅か+0.1%増となっています。このペースでは、第3Qの成長率はBOCの見通しの+2%に到達する可能性は低いと思われます。

米国がマイナス成長であることを勘案すると比較的堅調だとの見方もできます。金利を大幅に引き上げる必要性は徐々に薄らいでいます。

2.今後の注目材料

2-1.中銀政策決定会合

今週は、RBA・BOC・ECBの会合があります。RBAとBOCはサプライズが出てくる可能性が低く、最も注目を集めるのはECBでしょう。

ECBの使命が物価の抑制だけであることから、直近高騰するCPIの数字からすると、恐らく0.75%幅の利上げが決定されます。ただ、全会一致で決まる可能性は低く、市場予想も0.5%との間で割れています。どちらかというと0.75%利上げが優勢の為、0.5%の利上げに留まった場合の反応の方が大きいでしょう。

また0.75%の利上げとなった場合は、中期インフレのスタッフ予想がどの程度変化しているかに注目です。仮にGDP見通しがプラスを維持しつつ、2024年のインフレが+2.1%から上方修正されれば、ECBの更なる利上げ幅を残すメッセージとも捉えられます。EURの買いが強まりそうです。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」