2021年10月下旬から11月にかけての為替動向と、今後の注目材料は?ファンドマネージャーが解説

10月下旬は、各国中銀の政策や金利についての動きが見られ、投資家心理にも影響を及ぼしました。この記事では、2021年10月下旬から11月にかけての振り返りと、今後の見通しを解説します。

目次

  1. 2021年10月下旬から11月の為替動向の振り返り
  2. 各国の為替の動向は?
    2-1.米国
    2-2.中国
    2-3.欧州
    2-4.イギリス
    2-5.オーストラリア
    2-6.ニュージーランド
    2-7.カナダ
    2-8.その他
  3. 今後に向けての注目材料
    3-1.次期FRB議長
    3-2.米中貿易交渉再開

1.2021年10月下旬から11月の為替動向の振り返り

10/25からの相場は、多くの先進国中銀の政策決定会合で瞬間的に乱高下する局面が目立ちましたが、USD買いが強まりました。全体としては、米金利含めて行き過ぎた利上げ織り込みが剥落するなかで金利が低下すると、株はリスクオンの雰囲気に支えられて連日値を更新しました。

しかし、リスクオンのなかでも為替ではUSD売りとはならず、米国以外の織り込みが進み過ぎていた国の金利が低下したため、相対的にUSDは買われる展開となりました。

USD/JPYは、114円半ばまで上昇しましたが、その後上値が重くなり113円台後半でもみ合いとなっています。その他EURやGBPは、それぞれ中銀が市場の利上げ織り込みを否定したことから、売り圧力が強まりました。AUDやCADなど資源国通貨も、資源価格上昇の勢いが止まったことに伴い上値が重く推移しました。

各国の為替の動向は?

2-1.米国

消費者信頼感指数は市場予想を上回り113.8となり、4カ月ぶりの上昇となりました。現状だけでなく期待指数も改善し、雇用DI(「職が豊富」-「就職が困難」)は45.0と2000年7月以来の高水準となりました。これは、労働市場の人材不足(求人過多)を示唆しており、購買意欲の上昇に繋がっていると予想されます。

ここ数か月悪化傾向のミシガン大学の消費者信頼感と真逆の結果となっており、これらの指標の行方に注目です。

【参照記事】ブルームバーグ「米消費者信頼感指数、10月は予想外の上昇-コロナ懸念が和らぐ」

第3QのGDP速報値は予想を下回りました。サービス消費は堅調でしたが自動車販売が振るわなかったことと、住宅投資が落ち込んだことで、全体として緩やかな上昇にとどまりました。

その後、ADPは回復、ISM非製造業景況指数は66.7と1997年以降の最高値を記録しました。雇用が悪化し、入荷遅延・支払価格・新規受注が上昇するなど、供給障害の悪影響が根強く残っていることがわかります。

【参照記事】ロイター「米ISM非製造業指数、10月は66.7 過去最高」

そして10月米雇用統計は予想以上に強い内容となりました。非農業部門雇用者数の伸びが53.1万人で事前予想45万人を上回り、前月分も19.4万人から31.2万人に上方修正されました。労働参加率が61.6%と前回と同水準となるなか、失業率は4.6%に低下し、平均時給は前年比+4.9%に上昇と、引き続き雇用市場は堅調であることが示されました。

今後、コロナで落ち込んだ労働参加率が回復できるようであれば、FRBが目指す完全雇用達成時期が、来年半ばから前倒しになる可能性が出てきます。
【参照記事】ロイター「米雇用統計、10月53.1万人増 失業率は4.6%に改善」

注目されたFOMCですが、予想通りテーパリングを開始することを発表しました。ペースについては、11月と12月は事前予想通り国債100億ドル/MBS50億ドルとなり、その後については、経済状況に基づいてペースを調整すると言及しています。今回のニュアンスでは、ペースを落とすという感じで使っていますが、今後ペースを早める時にも使えるため注意しなければなりません。
【参照記事】ロイター「米FRB、11月に量的緩和縮小開始:識者はこうみる」

インフレについては、引き続き一過性という認識を示しましたが、想定よりは長く続いていると、以前より若干警戒感を強めています。テーパリングと利上げの判断は違うということを改めて主張し、現在は利上げに適した時期とは考えていないと慎重な姿勢を示したことで、株上昇リスクオンで円売りの展開となりました。

2-2.中国

10月の製造業PMIは49.2と市場予想を下回っただけでなく前月に続いて50を下回りました。非製造業PMIも市場予想を下回るなど、軟調な結果となりました。製造業でも非製造業でも投入価格が急騰し、販売価格の上昇率とのギャップが拡大中です。全体的な需要が低迷する中、企業のコスト負担が増加していますので更なる政策サポートが必要な状況だと言えます。

【参照記事】人民網日本語版「中国、10月のPMIが前月比0.4ポイント低下の49.2%に」

2-3.欧州

ECB理事会では、全ての政策が維持されました。ラガルド総裁は、インフレについては一時的と言いながら予想よりも長期化していることを認めましたが、市場の利上げ織り込みについて先走っているという見方を事実上示した形で、必死にハトを演出しようとしているようでした。

【参照記事】ブルームバーグ「ラガルドECB総裁、インフレ高進は「ほぼ一時的」-景気支援継続」

PEPPについては現時点では3月終了としていますが、次回12月の会合でPEPPの後継の緩和スキームをどうするのかということについて、スタッフ見通しの公表と共に、説明する必要がありますので、超重要会議となってきます。

理事会から数日後、ラガルドECB総裁は、来年に利上げの条件が整う可能性は極めて低いと、市場の利上げ観測を改めて牽制しました。

2-4.イギリス

BOE政策決定会合は、事前に利上げと据え置きの見通し二分されていましたが、今回は政策金利据え置きを7対2で決定、資産購入枠も国債買い入れ枠の据え置きを6対3で決定しました。ベイリー総裁は、市場の利上げ期待の強さに警戒感を表明した一方で、雇用が予想通り進展すれば今後数か月で利上げ必要になるという見方を示したため、利上げ織り込みは根強く残っています。

【参照記事】ロイター「英中銀、インフレリスク高進なら利上げで対応=ベイリー総裁」

インフレ見通しを引き上げ、成長見通しを引き下げていますので、スタグフレーションを警戒していることが伺われ、回避のためには雇用と賃金の上昇が必須となります。

2-5.オーストラリア

第3QのCPIは予想を大きく上回り、RBAが注目しているトリム平均前年比でも+2.1%に上昇し、2015年以降で初めてRBAのターゲットレンジである2-3%の範囲内に入ってきました。10月頭にNZのCPIが予想を大きく上回っていたことから事前に期待感が強く、今回の強いCPIの結果を受けてもAUD買いは限定的となりました。

ただ、賃金上昇率はまだ弱く、前回の政策決定会合の議事録では持続的に2%を上回るまで利上げをしないということでしたので、RBAの利上げが前倒しになる可能性は低いと思われます。

【参照記事】ブルームバーグ「豪州の7-9月コアインフレ率、予想上回る-中銀目標レンジに回帰」

しかし、市場は、RBAの利上げを強く織り込み続け、結果として、豪金利市場は崩壊しました。RBAが採用しているYCCのターゲット年限の金利が目標値を上回ったにも係わらず、RBAが買い取りを実施せず、短期金利が急上昇しました。そのまま翌日になっても買い取りは実施されず、更に今後の買い取り計画の発表も見送りました。これを受けて、長期ゾーンの金利も急騰、債券ロングのストップを誘発しながら、全年限で金利が急上昇しました。RBAが政策の変更を行っていないにもかかわらず、実際その通りの行動を示さなかったという点が問題で、今後RBAが示すフォワードガイダンスへの信認は低下するでしょう。

そして、RBA政策決定会合ですが、YCCの撤廃を決定し、QEについては2022年2月まで40億ドル/週のペースでの買い取り方針を維持しました。インフレが持続的に2-3%で推移するまでは利上げはないというガイダンスは維持し、2023年末の基調インフレ予想は2.5%以下としていることから、現時点では利上げまでは考えていない様子です。

一方で、2023年には利上げが適切となる可能性に言及するなど、極めてデータ次第の中立的なスタンスであることが示されました。

【参照記事】ブルームバーグ「豪中銀がYCC目標を撤廃、利上げには一定の時間-23年に含みも」

2-6.ニュージーランド

第3Qの雇用統計が発表となりましたが、ロックダウンをしていたにもかかわらず堅調な雇用市場が持続していることが示されました。労働参加率が70%を超える高水準にも係わらず失業率が3.4%と最低記録を更新しました。このような雇用市場であれば、次の展開として賃金が上昇するのは明らかであり、RBNZは今後も利上げを継続していくと思われます。

【参照記事】ヤフーファイナンス(時事通信社)「7~9月期のNZ失業率、3.4%に改善=統計局」

2-7.カナダ

BOC政策決定会合ではQEを減額ではなく終了することを決定しました。ほぼ全員が減額を予想していましたのでかなりのサプライズとなり瞬間的にCADは買われました。一応、利上げするまでは償還した債券の再投資は行うという方針ですが、利上げ開始時期を2022年下半期から2022年半ばと前倒しし、インフレ見通しについても上方修正しています。

ただ、GDP見通しについては、2021年・2022年については下方修正をしており、多少物価高による悪影響を織り込ませた形となっています。それでも、高い水準での経済成長が維持され、2023年のGDP見通しは引き上げていますので、将来的に好調な経済見通しを予想していると考えられます。

3.今後に向けての注目材料・見通し

3-1.次期FRB議長

2022年2月のパウエルFRB議長の任期切れが近づく中で、パウエルFRB議長が続投するかどうかが注目です。そのような中でバイデン大統領が11/5にパウエル議長と後任候補に挙げられているブレイナード理事とホワイトハウスで面会したとの報道が伝わりました。大統領はまだ決定は下していないといいますが、ホワイトハウスは近日中に候補者を指名する意向とのことです。
【参照記事】ブルームバーグ「ブレイナード氏、FRB議長職巡り大統領と1時間半面談ー関係者」

ウォーレン議員など民主党の重鎮の一部からは、パウエル議長の続投に反対の声も出ているなか、市場は続投の可能性のほうが高いと見ていましたが、パウエル議長自身が在任中に投資信託を取引していたというニュースが出て以降、続投はかなり際どくなってきています。

3-2.米中貿易交渉再開

米中交渉関連のニュースが度々出ています。米国からすれば、中国政府の民間企業への介入やサポートを止めさせたいという要望があり、中国からすれば内需が落ちているため輸出に頼っている状況の中、関税の撤廃もしくは引き下げを狙っています。

例年であれば10月中旬に発表される米為替報告書がまだ出てこないということを考えると、水面下で中国との交渉が何かしら進んでいる可能性があります。いまが最悪の状態であることから、出てくるのであればポジティブニュースになると思われます。

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