2022年5月中旬は、これまでの世界の金利上昇のトレンドに落ち着きが見えてきました。米CPI以降、織り込み過ぎた利上げが株を押し下げることで米金利上昇によるUSD買いから、リスクオフのUSD買いへと、材料が変わりながらもUSD買い相場が継続しました。
しかしここ数日は、これまで反応しなかった米国の細かい指標や、米国以外の材料にも反応するようになりました。全体としては行き過ぎたUSDロングの調整が入るなど、揉み合いの展開となっています。
今回は、RBNZ政策決定会合と5月FOMC議事録について、それぞれ詳しく解説していきます。
※本記事は5月23日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBNZ政策決定会合
1-1.前回4月会合の結果
1-2.その後の経済状況
1-3.今回5月会合の予想
1-4.発表後の反応予想 - FOMC5月議事録
2-1.5月FOMCの結果
2-2.その後の経済状況
2-3.議事録の注目点
2-4.発表後の反応予想
1.RBNZ政策決定会合
1-1.前回4月会合の結果
0.5%の利上げを実施し、1.5%としました。1度に0.5%の利上げは22年ぶりです。5割強が0.25%の利上げ予想だったため発表直後はNZDは買われたものの、その後売り返されました。
ニュージーランドでは、経済活動と住宅市場が大幅に減速しているにもかかわらず、インフレはまだピークに達していません。
RBNZは今回の決定に際し、物価の安定と持続可能な最大限の雇用を支援するため、引き続き金融政策を引き締めることが適切だと判断したとしています。一方で引き締めの前倒しであり、先手を打ったアプローチと表現しています。
確かに不確実性の高い国際情勢を考えると政策の柔軟性が大切としており、2月の金融政策報告で示した、2022年末が2.2%、2024年9月に3.4%の政策金利の見通しに満足していると政策金利の見通しを据え置きました。これによりBOEと同様ハト的な利上げと捉えられ、利上げしたものの通貨は売られています。
参考:ブルームバーグ「NZ中銀22年ぶり大幅利上げ、0.5ポイント上げ政策金利1.5%」
1-2.その後の経済状況
4月の会合時のRBNZでは、オミクロン型変異株の感染拡大によって経済的混乱が生じているものの、家計や企業のバランスシートの強さや、政府の財政支援、好調な輸出に支えられて、ニュージーランド経済は底堅さを維持していると今後の経済見通しを強調しました。
ただし労働力不足は深刻化しており、生活費の上昇は家計支出に圧力をかけているとして、CPIは2022年上半期に7%に達するとの見通しを示しています。
労働市場が堅調で賃金上昇圧力が強まっており、第1Qの労働コスト指数は前年比+3.1%と前回から更に加速しています。そして、第1QのCPIは+6.9%と1990年以降で最高の伸び率を記録し、前回(+5.9%)からインフレは大幅に高進しています。
労働市場も堅調に伸びているものの、それ以上にインフレの伸びが大きい状況です。通貨NZDが売られていることもインフレ圧力となっています。
RBNZの見通しでは今後数回の連続利上げにより、経済成長の鈍化と共にインフレも落ち着いてくると見込んでいます。財務省も2022-2023年度政府予算にて的を絞った財政サポートの大枠を示したものの、成長見通しは下方修正しています。
参考:ブルームバーグ「NZ中銀22年ぶり大幅利上げ、0.5ポイント上げ政策金利1.5%」
1-3.今回5月会合の予想
RBNZはインフレが中期的に目標圏内で推移すること、および雇用の最大化の実現を目標に金融政策を調整しています。現在はインフレーション数値目標を1-3%に抑えることを目的としており、大幅に超えた+6.9%となっています。
今回予想は0.5%引き上げられて2.00%となり、その先2022年末まで4会合残っています。5回利上げを実施し、3.25%に到達すると織り込まれています。更にその先2023年末では3.8%が織り込まれています。今回更新されるRBNZの金融政策報告の中で、利上げの最終着地点がどの程度市場予想に近づくのか注目されています。
1-4.発表後の反応予想
市場の織り込みより大幅に低いRBNZの政策金利見通しが、どこまで上方修正されるかに注目です。RBNZとしてはある程度CPI上昇率は思惑通りに進行しているため、利上げによる経済のダメージをどの程度勘案するかによって最終到達点が変わってきます。
これまでハト的利上げということでかなりNZDは売られてきました。上方修正の可能性は高いものの、市場織り込みと同程度までRBNZの見通しが上方修正されるのであれば、既に同じくハト的利上げにより売られたGBPにショートカバーが入ったように、大きくNZDが買い戻される展開を予想します。
2.FOMC5月議事録
2-1.5月FOMCの結果
事前予想通りとなる、22年ぶりの0.5%幅での利上げと、6月から月間最大950億ドルでの量的引き締め(QT)の開始を決定しました。
0.75%の利上げを主張するかと思われていたブラード氏も反対しませんでした。しかし、パウエル議長は、利上げについては今後数回の会合(特に6月と7月)で0.5%利上げが議論されるべきとの考えが広く共有されており、0.75%の利上げについては積極的でないとしました。期待されていたほどのタカ派のトーンではありませんでした。
米金利は低下・株が上昇・リスクオンのUSD売りとなりました。また、中立金利についても2~3%を想定ということで、3月FOMCで発表された2.375%から引き上げられたということでもなく、今後の指標次第という姿勢を維持しました。
参考:ブルームバーグ「FOMC、0.5ポイント利上げ-FRB議長は同幅利上げ継続を示唆」
2-2.その後の経済状況
4月雇用統計は、雇用者数は予想を上回る+42.8万人、失業率は前月と変わらず3.6%、平均時給は前年比+5.5%と堅調な数字となりました。労働参加率は62.2%と3カ月ぶりの低水準に低下しているため、雇用主は雇用確保のためには賃上げを迫られる形となり、FRBの積極利上げ姿勢を正当化する内容となっています。
4月CPIは予想の前年比+8.1%を上回る+8.3%となりました。前月比でも+0.3%と引き続き力強い伸びを見せています。中身を見ても、航空運賃を筆頭に、食料品・サービス・家賃・新車価格など幅広い分野でインフレが落ち着いていないことが示されました。
今後、中国のロックダウンによる供給制約の影響が更に出てくることを勘案すると、物価が落ち着くのはもう少し先とも考えられます。一方でベース効果の影響もあり、3月の前年比+8.5%という数字は越えられなかったことから、ピークを付けたという見方もできます。次回6/10発表のデータを見るまでは判断しにくいでしょう。
パウエル議長は明確にインフレが後退していることが分かるまで利上げを継続すると改めて表明しました。現在は6月と7月に0.5%ずつ利上げをすることがほぼ織り込まれているものの、その後も状況次第では0.5%幅での利上げの可能性に言及した形です。また多少の痛みも伴うことも認めながらも現在であれば、その痛みに耐えられる良好な環境にあるという認識を示しました。
参考:ブルームバーグ「パウエル議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで利上げ継続」
2-3.議事録の注目点
現時点では6月と7月にそれぞれ0.5%の利上げ及び、6月からバランスシート圧縮(QT)のスタートが市場で織り込まれています。
今後は、6/10のCPIで3月のCPIがピークだったのか、またピークだったと仮定して物価がどのくらいのペースで落ち着いていくのかを確認し、その結果を持って6/14・15のFOMCで発表されるDOTSチャートに繋がっていくというスケジュールとなっています。DOTSチャートでは金利の最終到達点に注目です。
しかし6/10のCPI発表の際は、6月FOMC前のブラックアウト期間中で要人発言は出てきません。どの程度の金利の終着点をFOMCの総意として見ているのかを見極めるための高官発言が、少なくとも6/10のCPIまでのトレンドを作る材料になるでしょう。
2-4.発表後の反応予想
パウエルFRB議長は1回0.75%ポイントの利上げに対しては否定的でした。一方で、議長以外のメンバーが0.75%ポイントの利上げにどこまで言及していたのかなどを確認し、最終到達点が現在の市場織り込みの3.25%水準を上回る可能性があるのかどうかが予想のポイントです。
パウエル議長も0.75%利上げには反対と言いつつ、引き上げられる経済状態の内に出来るだけ上げるという方向性は同じであると発言しています。2022年5月現在、9月は0.25%利上げと0.5%利上げで見通しが拮抗しています。6月発表されたCPIが高水準であっただけに、議事録で0.5%見通しが強まればドル買いに繋がる可能性があります。
ただ、FOMCメンバーは4月CPI以降はベース効果の影響剥落することは分かっているため、6月のDOTS見通しに向けて基本的にはデータを見てからを考えていくはずです。そこまで急激なタカ派見通しを示す必要は5月のFOMC時点ではなかったため、タカ派サプライズの可能性は低いと予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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