利上げ見通しをFXに活用するには?FRBの利上げ見通しの見方も解説

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2022年5月現在、世界的な物価上昇から、マーケットは中央銀行の金融政策の変化に注目しています。政策金利が変更されると、その国の通貨の強弱に影響します。

今回は、FRBの利上げ見通しをFXに役立たせる方法と、個人投資家でも無料で使える、FRBの利上げ織り込みを確認できるツールの使い方を解説します。金利と為替は密接に関係するため、使えるようになると便利でしょう。

※本記事は5月23日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 政策金利と為替
    1-1.政策金利の概要
    1-2.政策金利は為替と密接な関係がある
  2. 政策金利の織り込み度合いを確認する方法
    2-1.政策金利の織り込み度合いを確認できるツールを紹介
    2-2.Fed Watch toolから計算する方法
  3. FRBの利上げ見通しをFXに活用するには?具体的な方法を紹介
  4. まとめ

1.政策金利と為替

まず政策金利と為替の関連性について説明します。

1-1.政策金利の概要

政策金利は、その国の金融市場や景気、物価の安定性を図るために用いる金利を意味しています。銀行が融資を行う場合の基準となる金利でもあり、また預金金利等でも利用されます。その国の何かしらの金利を計算するベースとなる金利と考えておくといいでしょう。

そのため政策金利が引き上げられれば全ての金利が上昇し、引き下げられれば全ての金利が低下する方向で動きます。景気が悪い時に景気刺激策の一環として政策金利を引き下げ、反対に景気が良好な時に景気を抑制するため政策金利を引き上げます。

1-2.政策金利は為替と密接な関係がある

FXでは、各国の政策金利の動きが参考になります。政策金利は通貨金利となるため、金利が高い国の通貨を保有することで金利を得ることができるためです。

金利差に注目したトレード手法は、広くプロ投資家に使われています。金利の低い通貨を借り、金利の高い通貨を購入し保有することで、2国間の通貨金利の差を享受する方法で、キャリートレードと呼ばれています。スワップポイント狙いの長期運用と似た手法です。

金利が高い国の通貨には資金が流入しやすいため、通貨が下落しにくいという特性があります。長期的にトレードでは、高金利通貨に着目してみましょう。

2.政策金利の織り込み度合いを確認する方法

2-1.政策金利の織り込み度合いを確認できるツールを紹介

FRBの利上げ織り込みを確認するには、CME(シカゴマーカンタイル取引所グループ)を使用します。

このツールは金利の先物市場の価格から、どのくらいマーケットはFRBの政策金利の先行きを予測しているか示しています。時期を選択すると、利上げ回数を確認できます。

2-2.Fed Watch toolから計算する方法

次にFed Watch toolからどのように利上げ確率を計算するのかを解説します。下記は6月に予想されている利上げ確率を示しています。

Fed Watch tool
※図はFed Watch toolより筆者作成

現在のFRBの政策金利は0.75~1.00%を誘導目標として定めています。(2022年5月現在)

6月に織り込まれている政策金利は、93%の確率で1.25%〜1.50%に引き上げられると予想されています。予想1.25%-現在0.75%=0.50%の利上げが予想されているということです。

アメリカは1回の利上げは0.25%というのが、通常マーケットでは一般的な認識です。0.50%一気に引き上げるということは珍しいと言えます。現在のインフレの進行スピードが速く、それだけFRBが急いで対応するだろうとマーケットが予想していると分かります。

では今年の年末をチェックしてみましょう。
Fed Watch tool
※図はFed Watch toolより筆者作成

上記は2022年12月14日のFOMCでの利上げ織り込みを示しています。2.75%まで利上げが行われると予想が51.2%と多いため、ここが中央値として認識されているということが把握できます。

現在は0.75%のため、2.00%が今後年末までに引き上げられることが予想されているということです。そして1.75%の利上げで留まるという可能性が33.3%あると予想されているため、この割合がどのように変化するかも今後米ドルの動きに影響するでしょう。

最後にマーケットが予想している利上げ確率がどのように変化してきているのかヒストリカルのチャートで確認することも可能です。
Fed Watch tool
※図はFed Watch toolより筆者作成

上記は「historical」で利上げ確率を表しているものです。

上記は過去2022年6月15日のFOMCでどのくらい利上げが織り込まれていったのか、織り込み度合い別に分けて過去の動きが示されています。この動き方とドル円の動き方を照らし合わせてみると、3月以降にドル円が急騰したタイミングで、利上げ確率も一気に上昇したことがわかるでしょう。

金利と為替は密接に関連しているのです。

3.FRBの利上げ見通しをFXに活用するには?具体的な方法を紹介

次に上記のFed Watch toolで分かる利上げ予想を、FXのトレードに活用する方法を解説します。例として現在のドル円の相場から考えてみましょう。

ドル円相場
※図はTradingViewより筆者作成

2022年5月現在、ロシアがウクライナに侵攻した後物価も上昇し始め、アメリカは利上げペースを早める動きとなっていました。その間に米ドルが上昇し続け、ドル円でみると130円を一時突破する動きとなっています。

ただし、将来FRBが利上げを行うであろうと予想されている利上げ幅を、米ドルはすでに織り込んでいるということを理解しておきましょう。

FX初心者は「年末まで利上げを行うことが織り込まれているから、今のドル円の位置は低い(金利がまだ上がるから米ドルは上昇すると考える)」と考えてしまいがちです。しかし現在のドル円相場には、すでに将来の利上げが織り込まれています。

相場というものは常に先の予想が反映されています。米ドルがここから更に上昇するためには、FRBの利上げスピードが更に早くなるなど、現在織り込まれている以上の材料が必要になります。

マーケットの予想がすでに相場の価格に影響していることを、「織り込み済み」表現します。すでにどの程度織り込まれているかは、常に意識しておきましょう。

4.まとめ

ここではFed Watch toolをFX取引に活かす方法を解説しました。長期的にFXを資産運用で行う場合には、金利動向をチェックしましょう。利上げ確率が変化が、ドル円に及ぼす影響を考えてみるとトレードに役立ちます。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12