2022年2月中旬までの各国中銀の動きは?ファンドマネージャーが解説

※ このページには広告・PRが含まれています

2022年2月第2週からの相場は、1月米CPIが前年比+7.5%と約40年ぶりの高水準となり、利上げ観測が一段と高まりました。米10年債利回りは2%超へと上昇し、ドル買いの反応がみられました。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻の懸念が強まったことから、リスク回避の展開となりました。安全資産である米債が買われ金利は低下しました。為替市場ではリスクオフによるドル買いと米金利低下によるドル売りがミックスされ方向感なく推移しました。

ドル円は一時116円台前半まで上昇したものの、概ね115円台で揉み合いました。ユーロドルは、2月のタカ派に転じたECB会合後に溜まったEURロングが解消される形で、上値重く1.14半ばから1.13台前半まで下落しました。

この記事では、2022年2月中旬までの相場振り返りと、各国の中央銀行の動向を注目材料として分析します。

目次

  1. 2022年2月上旬の振り返り
    1-1.日本
    1-2.米国
    1-3.中国
    1-4.欧州
    1-5.英国
    1-6.オーストラリア
    1-7.カナダ
    1-8.メキシコ
  2. 今後の注目材料
    2-1.豪賃金指数
    2-2.ニュージーランド中銀(RBNZ)政策決定会合

1.2022年2月中旬までの振り返り

1-1.日本

ECBのタカ派転で、日本はハト派を維持する数少ない国になりつつあります。一方で、日本国債金利は外国金利上昇につられ、10年イールドカーブコントロール(YCC)上限の0.25%に近づいてきました。

ETFの買い入れを止めてYCCをどうするのか、市場関係者の中でも特に外国人は日銀のタカ派転換を期待していたものの、日銀は0.25%での無制限債券購入を宣言しました。この日銀の強い緩和への決意を確認して、円が売られました。その後黒田総裁からも徹底してハト的な発言が続いています。

参照:NHKニュース「日銀 指定利回りで国債を無制限買い入れ措置 約3年7か月ぶり

1-2.米国

CPIは予想を上回る前年比7.5%、コアでも+6.0%と前月から上昇率が加速しました。エネルギーや食品価格の上昇だけでなく、比較的持続性の高い住宅費や医療サービスの上昇も見られました。インフレ基調になっています。

インフレ懸念が強まったため、ミシガン大学消費者信頼感指数は、約10年ぶりの低水準の61.7となりました。1年先のインフレ期待が5%と前月の4.9%から更に上昇し、5-10年先のインフレ期待は3.1%と前月から変わりませんでした。家計状況の悪化を見込む比率は高まっています。

PPIも前年比+9.7%となり予想を上回りました。インフレが幅広いカテゴリーに広がっていることが確認でき、物価上昇圧力が長期化する恐れがあります。

小売売上高は10か月ぶりの大幅増加となりました。無店舗小売りが急増した他、家具などの伸びも目立ち、力強い需要が確認できました。

1月FOMCの議事要旨は、期待された政策金利とバランスシートの縮小について、それぞれ具体的なペースについての言及はなく、株にとってはサポート材料になりました。利上げペースについては、3月に0.5%上げるような切迫感はありませんでした。毎会合で協議すると言及しており、マクロ環境次第としています。

1月FOMCの後に、強い雇用統計とCPIと小売りと続いており、3月0.5%の可能性は引き続き残されているでしょう。

参照:ロイター「金融引き締めの時期到来、ペース固執せず=米FOMC議事要旨

1-3.中国

中国では、複数の地方政府が住宅ローン向けの頭金比率を引き下げ、住宅需要を呼び起こそうとしています。更に、中国の不良債権処理大手が、資金難の不動産開発企業の支援を決めるなど、本格的に住宅市場を支えようとする姿勢が見えます。

PBOCは先月0.1%引き下げた中期貸出制度金利(MLF金利)を2.85%のまま据え置きました。

1月のPPIは前年比+9.1%となり、前月比‐0.2%に低下しました。CPIは前年比+0.9%となり、前月比‐0.3%小幅低下しました。今後追加の金融緩和の余地は十分に残されていると言えます。

また、中国当局は、ファイザー製の新型コロナ感染症経口薬を緊急承認しました。中国が外国製の治療薬を承認するのは初であり、今後の経済活動の回復とゼロコロナ政策が転換されるのかどうかに注目が集まります。

1-4.欧州

ラガルド総裁は純資産購入が終了する前の利上げについては何度も否定しています。従って、3月のPEPP終了後、増額予定となっていたAPPの方向性により利上げのタイミングの思惑が強まる可能性があります。第3QでのAPP終了アナウンスが3月のECBで行われるのかどうかに注目です。

参照:ブルームバーグ「ECB総裁、純資産購入終了前の利上げ否定-いかなる調整も漸進的に

レーンECBチーフエコノミストからも、短期的な高インフレが過剰な金融引き締めを誘発して景気にダメージを与えることに警戒をするような発言が目立っています。

参照:ブルームバーグ「ECBのレーン氏、短期的な高インフレに過剰反応しないよう注意必要

1-5.英国

12月の雇用者数は予想を下回る▲3.8万人となりました。失業率は市場予想通りの4.1%にとどまりました。

サプライズとなったのは週平均賃金で、前年比+4.3%と予想を大幅に上回りました。失業保険申請件数は前月からマイナスとなるなど、雇用市場の改善が続いています。

CPIは前年比+5.5%と予想を上回り30年ぶりの高水準となりました。しかし、市場では利上げ織り込みが後退しています。4月からの増税を考えると、インフレのピークはもう少し先になり、徐々にインフレによる景気へのダメージが意識され始めている可能性があります。

1-6.オーストラリア

モリソン首相が2/21からワクチン接種完了を条件に海外からの観光客の受け入れを再開すると発表しました。未だ感染者数は多数いる状況ですが、WITHコロナ政策を推進するようです。

参照:NHKニュース「オーストラリア ワクチン接種条件に外国人受け入れ再開へ

RBAロウ総裁が下院で議会証言は、ハト的な発言に終始しました。インフレの上昇は認めながらも、他国対比では小さいという認識を示しました。

金融政策については待つことのリスクを認識しているものの、過度に早く動くことのリスクを警戒しているとのことでした。物価指標が中銀のターゲットレンジの上限3%を超えてこないと動きそうもありません。RBAが注目していると公言している賃金指数の動向次第で、市場の利上げ織り込み度合いが変化しそうです。

参照:ロイター「豪中銀利上げ8月以降か、ロウ総裁「CPI統計2回見たい」

1-7.カナダ

カナダで国境を越えて移動するトラック運転手達のワクチン接種の義務化に抗議するデモが拡大しています。交通の要所となっている米国との国境の橋が一部閉鎖の状態となりました。ナダ最大の州であるオンタリオ州のフォード首相は、非常事態を宣言しました。

参照:ロイター「カナダ・オンタリオ州が非常事態宣言、トラック運転手デモ受け

少なくとも6か所の自動車工場が一時的に操業を停止しました。第1四半期のカナダ経済はマイナス成長に見舞われる危険性があるだけではありません。サプライチェーンの混乱が長引けば、10年来の高水準に達しているインフレをさらに押し上げる懸念があります。

CPIが予想を大きく上回り前年比+5.1%となりました。カナダ中銀は利上げを見送ったものの、市場は3月の利上げ可能性を完全に織り込んでいます。

参照:ブルームバーグ「カナダ中銀総裁、利上げの道筋は設備投資次第-生産性向上が重要

1-8.メキシコ

メキシコ中銀会合にて、2会合連続で0.5%の利上げが決定されました。GDPは2期連続マイナスとリセッションに陥っているものの、20年ぶり高水準にあるインフレへの対応を重視した形となっています。

2.今後の注目材料

2-1.豪賃金指数

賃金指数はRBAの引き締めの時期を予想する上で重要な指標です。ロウRBA総裁から、健全な賃金インフレが発生すれば利上げを検討するという主旨の発言がありました。

前回の第3Qは前年比+2.2%と高い伸びとなっていました。今回3%近い伸びが示されると、次回4月に発表されるCPIがRBAのターゲット上限である3%を超えてくるという連想に繋がるため、AUDは買われる可能性があります。

これまで他国と比較して相対的にハト的であるRBAを受けたAUDショートが溜まっているだけに、ポジティブサプライズのインパクトの方が強くなる可能性があります。

2-2.ニュージーランド中銀(RBNZ)政策決定会合

0.25%の引き上げが予想されています。ただ、直近のインフレ率を見て0.5%引き上げ予想も一部ではあり、実際に利上げが行われたとしても、NZDが買われるのは一時的でしょう。

今回は3か月に一度の金融政策報告も発表され、恐らく利上げ見通しも上方修正される見込みです。市場の織り込みとの乖離の方が中期的には重要です。

現在市場が織り込んでいる2.5%を超えてくるのか、また最終到達点が前回の2.6%から上方修正されるのかがポイントです。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」