米CPIの注目ポイントは?2022年1月下旬から2月上旬の相場振り返りと合わせてファンドマネージャーが解説

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米CPI公表が控えており、様子見をしている投資家が多くいます。また、1月下旬以降は各国中銀の動きが多く見られました。この記事では、2022年1月下旬から2月上旬の相場振り返りと、注目材料の解説をします。

目次

  1. 2022年1月下旬から2月上旬の相場振り返り
  2. 各国の動向は?
    2-1.米国
    2-2.中国
    2-3.欧州
    2-4.英国
    2-5.オーストラリア
    2-6.カナダ
  3. 注目が集まる米CPI

1.2022年1月下旬から2月上旬の相場振り返り

1/24からの相場は、米ドルが激しく振幅しました。米FOMCでのタカ派姿勢が警戒され、世界的に株式市場が不安定に推移したことで、まずはドル買いが先行しました。その後FOMC後のパウエル議長会見で、全会合での利上げの可能性を排除しないといった主旨の発言があると、予想以上の強いタカ派姿勢と捉えられ、短期金融市場では年内5回の利上げを織り込む動きとなりました。

【参照記事】ブルームバーグ「パウエル議長、急ペースの利上げの可能性に扉開く-インフレ抑制で

米債利回りの上昇と共に、株も一段安となり為替市場ではドル買いの動きが加速しました。その後、株の自律反発により若干ドルが売り返されていたところで、今度は英欧金融政策の予想以上のタカ派姿勢が確認されると、一気にドル売りが進行する展開となりました。しかし、米雇用統計が予想外に強い結果となり前回分も大幅上方修正されたことから、次回3月の利上げ幅が0.5%になるのではないかという思惑が強まり、米債利回り急上昇とともに再びドルが買われました。

ドル円は基本的には米金利上昇に引っ張られて113円台から115円台へ上昇、ユーロドルは当初米金利上昇につられて1.11台まで下落しましたが、その後タカ派転したECBを受けて1.14台後半まで反発、ポンドドルは米金利上昇とリスクオフの地合いのなか1.33台へ下落したのち、タカ派のBOEを受けて1.3600近辺へ上昇し、1.3500近辺でクローズとなりました。

各国の動向は?

2-1.米国

毎回ミシガン大消費者信頼感と対照的な結果となるコンファレンスボード消費者信頼感指数は、4カ月ぶりに低下しましたが、市場予想は上回っています。また、今後6カ月以内に住宅や車や家電製品の購入計画があるという回答が数カ月ぶりの高水準となっており、物価が上昇している中でも旺盛な購買意欲が示されました。

注目されたFOMCですが、声明文はほぼサプライズなく、テーパリングは3月に完了し、金利の引き上げは間もなく適切になると示されましたが、パウエル議長の記者会見ではタカ派となりました。利上げの頻度として毎会合になる可能性、バランスシート縮小の開始時期が最速で6月になる可能性が意識されました。また、株の下落については多くの情報の一つでしかないといった発言もあったことから、株が下落したから金融引き締めスタンスを後退させる可能性は低いと判断され、米金利が上昇しUSD買いとなりました。

12月のJOLTS求人数は予想を大幅に上回り引き続き高水準で推移しています。しかしADP雇用統計はオミクロン株が猛威を振るった1月の数字ということもあり、前月比で▲30.1万人に転落しています。要因の殆どがサービス産業なので、一時的という見方が強いです。

ADD雇用統計で雇用者数が予想外の大幅減少だったことから、米雇用統計も弱い内容が警戒されていましたが、結果は、幅広い業種で雇用の伸びが見られ、非農業部門雇用者数(NFP)が+46.7万人と予想(+12.5万人)を大きく上回りました。失業率は4%に上昇しましたが、労働参加率も62.2%に上昇しているように、ほぼ完全雇用に近い水準にあります。平均時給も前年比では+5.7%と予想を上回る伸びでインフレ懸念を正当化する内容となっており、早期利上げ期待から米国債利回りの上昇と共に、USDの買い戻しが強まりました。

2-2.中国

国家統計局と財新製造業PMIは共に低下、非製造業PMIも若干軟化しました。コロナ感染拡大とゼロコロナ政策による経済活動の停滞が特に中小企業に対し表れている様子です。

2-3.欧州

レーン理事のインタビューが行われました。賃金上昇は見られず、2022年中の利上げの可能性は相応に低いとの見方を維持しました。また、引き締めの順番もネット買入終了後利上げということが再確認されました。普通に考えれば2022年度中の利上げの可能性は低いということになりますが、もしデータが過度なインフレを示すなら対応するという発言が出てきており、従来よりも僅かにタカ派にシフトしたように感じられます。

【参照記事】ロイター「アングル:ECB理事会、市場が注視する5論点 インフレ圧力が主要議題に

ドイツEU基準CPIが再び大幅に予想(前年比:+4.3%)を上回る前年比+5.1%という結果になりました。本来、昨年度付加価値税(VAT)が引き上げられたことによる下向きのベース効果があるはずですが、エネルギーコストが前例のない上昇をしたため、ほぼ相殺されてしまいました。物価高騰の主因はエネルギーですが、原材料不足による供給制約も根強く残っています。更に、ユーロ圏の1月インフレ率も予想外に前月から加速し、過去最高を更新し、前年比+5.1%となりました。

これらの物価指標を受けて、スタンスがタカ派転するかもしれないと注目されたECB会合ですが、声明文は、物価上昇がいずれ緩和するという従来の見通しを踏襲するものでした。政策スタンスについて結論を急ぐことはないと強調するなど従来通りのハト派スタンスとなりました。

しかし、ラガルド総裁の記者会見では、インフレリスクは上方に偏っていると言及しました。インフレ長期化によるリスクの高まりにも言及し、条件が満たされればECBは行動に移すと繰り返すなど、タカ派スタンスへ転換した様に見えます。

【参照記事】ロイター「ECB現状維持、年内利上げ排除せず インフレリスク増大認める

2022年の利上げの可能性は低いという従来のコメントは使われず、経済を含む情勢は大きく変わったという認識を示しました。今後の理事会における金融政策の再調整の必要性などについて示していたことから、3月会合で政策の見直しをする可能性が高まり、EURは大きく買われました。

2-4.英国

0.25%の利上げが予想されていたBOE会合ですが、利上げ幅は予想通り0.25%だったもののメンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張したということで、タカ派サプライズとなりました。更に、市場の期待を超える7%を超えると見込むインフレ率を視野に、過去10年の量的緩和(QE)の下で積み上げた8950億ポンド(約140兆円)の保有資産について縮小を開始、保有国債の満期償還金の再投資を直ちに停止することを決定しました。

【参照記事】ブルームバーグ「英中銀が25bp利上げ、委員4人は50bp主張-QE巻き戻し開始

ただ、インフレ予測については、4月に7.25%でピークをつけたあとは徐々に低下すると予想し、2022年末こそCPI予想を+5.21%に引き上げた(11月時点:+3.40%)ものの、2023年末は+2.15%(11月:2.23%)に、2024年末は1.60%(11月:1.95%)にそれぞれ引き下げています。ベイリー総裁が、金利が長期的に上がり続けると考えることは間違いと言っているように、引き締めをより早く行うことでインフレを今年後半から抑え込むことに成功するのであれば、金利の正常化を長期間継続する必要がなくなるということであり、長期均衡金利はそこまで高くならないと思われます。また、インフレ高止まりが経済に及ぼすリスクに言及したように、ポジティブな利上げではなくGBP買いには繋がらないと予想します。

2-5.オーストラリア

2021年第4QのCPIが発表されましたが、RBAが注目しているトリム平均値が予想を大きく上回る前年比+2.6%となりました。RBAのターゲットは2~3%となっていますので、先日の良好な雇用統計と合わせてRBAのタカ派転換が期待されました。

そして、注目されたRBAですが、事前予想通り金利は0.1%で据え置き、今月で量的緩和(QE)の終了が決定されました。しかし、これは近い将来の利上げの可能性を示唆するものではないと牽制し、今年中の利上げに関する明確な示唆はなく、今後もインフレを見ながら忍耐強く臨むという、ハト的な内容となりました。インフレ見通しはこの先数四半期でRBAのターゲット上限の3%を超えて3.25%まで上昇したのち来年は2.75%に下落するということになっています。

翌日行われたロウ総裁の会見でも基本的にはハト的な発言に終始していましたが、利上げの開始時期についてはこれまでの2024年よりかは前倒しされるような発言が見られ、市場は、若干後退したとはいえまだ今年中の利上げ織り込みが残ったままとなっています。

2-6.カナダ

BOC政策決定会合は70%程度利上げが織り込まれていましたが、据え置きとなりました。しかし、金利の引き上げは行わないという文言を声明文から削除したり、今後の引き締めの可能性は示唆されました。恐らく次回3月の会合から、FRBと同じようなペースで金利を引き上げていくことになりそうです。

しかし、1月カナダ雇用統計は、雇用者数が▲20.01万人と事前予想11万人減を上回る落ち込みを示しました。正規雇用、パートタイム雇用いずれも減少し、失業率は6.5%に上昇、労働参加率は65.0%と前回の65.4%から低下するなど、ほぼ項目が悪化しています。ただ、これもオミクロン株蔓延による一時的な要因とも考えられますので、単月の結果だけでBOCのスタンスが変わるとは思えません。

3.注目が集まる米CPI

前回12月分の消費者物価指数は39年半ぶりの高水準となる前年比+7%となりました。上昇の主因となったのが、エネルギー価格と中古車を中心とした自動車価格の上昇で、これらだけで3%以上分の引き上げ要因となっています。ただ、その他項目を見ても、CPIの約1/3を占める重要項目である住居関連費や衣料費など全般に強めの数字となっています。

1月の消費者物価指数は、エネルギー価格の上昇や供給制約の解消が遅れていることから、前年比+7.3%、コア前年比+5.9%ともう一段の伸びが見込まれています。先月初めぐらいまで年内3回という見通しが主流であった米国の利上げ織り込みですが、タカ派のFOMC後から年内4回以上という見通しが強まり、先週の強い雇用統計を受けて5回以上の利上げを見込む動きが中心シナリオとなっています。これでCPIが予想を上回ると、3月の利上げ幅が0.5%になるなどもう一段米金利の上昇に繋がるかもしれません。

今年は、米国は11月に中間選挙を控えており、支持率回復を目指すバイデン大統領としては何としてもインフレを抑制してもらわなければならず、FOMCとしても恐らく雇用が堅調な内に年前半に急いで利上げを実施してくるのではないかと予想しています。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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