FOMCで米ドルはどうなる?FXで利益を出すための注目ポイントを解説

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2022年9月現在、多くの中銀がフォワードガイダンスを諦めています。経済指標を確認しながら後追いで金融政策を決定してきています。市場はある程度先取りして利上げの最終到達点を織り込みながら、金融政策決定会合で答え合わせをするという展開が続いています。

今回は、3か月に一度のメンバーの金利予測が発表されるFOMCと、1週間発表が延期されたBOE会合について詳しく解説していきます。

※本記事は9月20日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. FOMC
    1-1.前回7月のFOMC
    1-2.直近の経済状況
    1-3.今回9月のFOMC予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. BOE政策決定会合
    2-1.前回8月のBOE政策決定会合
    2-2.直近の経済状況
    2-3.今回9月のBOE政策決定会合予想
    2-4.発表後の反応予想

1.FOMC

1-1.前回7月のFOMC

7月FOMCは、全会一致で0.75%の利上げが決定されました。市場の予想通りの結果です。

9月に0.75%利上げの可能性は残しつつも、0.75%利上げは「unusual」であるとしました。データ次第であることを強調し、市場の織り込みも0.5%程度で落ち着いています。

今回の利上げで中立金利の2.5%に到達しました。これからの利上げは、引き締めの段階に移行します。パウエル議長も、引き締めにより需給調整にある程度の進展があったと述べ、成長鈍化の兆候を認識しています。

質疑応答では、堅調な雇用データを勘案すると現在はリセッションではないという認識を示しました。雇用市場が崩れるまで利上げを継続する方針を示したとも考えられます。この時点では、6月FOMCで発表した利上げ予想が現時点でも最良だとしていました。

参考:ブルームバーグ「FOMC、2会合連続の75bp利上げ-パウエル氏は景気後退否定

1-2.直近の経済指標

第2QのGDP速報値は前期比▲0.9%と予想の+0.4%を大幅に下回りました。家計支出の減速に加え、企業の設備投資や政府支出、住宅投資など広範囲に渡り減少しました。これで2期連続となり、数字だけで判断するならテクニカルリセッションとみなされます。

7月のPCEデフレータは前年比では+6.3%と前回の+6.8%から大きく伸びが鈍化しました。コア価格指数も前年比+4.6%上昇と、前月の+4.8%から伸びがやや鈍化しました。当局が目標とする+2%にはまだほど遠い状況です。

GDPの7割を占める個人消費が従来の想定よりも不安定な状態で、第3Qをスタートしたことを示唆しています。これまで数カ月にわたって消費を支えてきた堅調な労働市場や、それに伴う持続的な賃金増加による購買意欲が、広範なインフレにより抑えられてきている可能性があります。

8月CPIは前月比+0.1%、前年比+8.3%、コアCPIは前月比+0.6%、前年比+6.3%と総じて事前予想より上振れる結果となりました。ピークアウトしたと期待されていた米CPIがまだ上昇を続けていることが分かりました。米金利は最終到達点が4.25%近辺まで上昇しました。

ガソリン価格は予想通り下落したものの、食料品や住居費など多くの項目で上昇しました。一方PPIについては、エネルギーは低下、食料品は横ばいとなりました。

全体としても住居費以外の項目はピークアウト感が見られます。CPIについてもいずれ住居費が落ち着けば、徐々にピークアウトするでしょう。

9月のミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は59.5に上昇したものの、予想は下回りました。また、1年先のインフレ期待は4.6%に低下、5-10年先のインフレ期待も2.8%に低下しました。これを受けて市場の10年期待インフレも2.37%に低下しました。

物価の高さが生活水準を損ねているとの回答は全体の約42%に及びました。7月につけたピークの49%からは低下しているものの、高水準を維持しています。今後更に、インフレ期待は低下する傾向にありそうです。

FOMCメンバーから、基本的にはインフレの抑制が最優先事項であり、物価に落ち着きが見られるようになるまでは利上げを継続するという主旨の発言が続きました。

参考:ロイター「インフレ抑制が最優先事項=米シカゴ連銀総裁

ジャクソンホール会議ではパウエル議長も、成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレが抑制されるまで当面金融引き締めが必要という見解を示しました。時期尚早な金融緩和を想定していないとも発言しています。利上げにより雇用市場が崩れ、個人の需要が減退や株価下落で資産効果が剥落することが、インフレを抑える鍵になると見ているようです。

参考:ブルームバーグ「ジャクソンホールの米欧中銀当局者、痛み覚悟しつつ利上げ推進で一致

1-3.今回9月のFOMC予想

雇用統計の労働参加率の上昇を受けて賃金上昇が減速に向かうとの見方から0.75%の利上げ確率が低下していました。強いCPIを受けて今度は逆に1%の利上げ予想も一部で浮上している状況です。

しかし、市場予想はブラックアウト期間前のウォールストリートジャーナル(WSJ)の記事及びFOMCメンバーの発言を重視し0.75%利上げに落ち着いています。ブラックアウト期間中に発表された強いCPIを受けても、WSJは記事を出しませんでした。

利上げ幅以外では、FRBメンバーによる金利予想(DOTS)で最終到達金利がどの程度になるかに注目が集まっています。市場は6月時点の3.75%から4.25%~4.50%の間の水準まで引き上げられるという見方が優勢です。

FRBはフォワードガイダンスを諦め、データ次第として事実上経済指標を後追いしている状態です。今後の指標次第でしょう。8月のCPIが強かったという材料だけで、過剰に市場に利上げを織り込ませる必要もないかもしれません。

1-4.発表後の反応予想

利上げ幅が1%であれば、USD買いが一段と進行するでしょう。ただ、確率は低いと思われます。

より注目なのはDOTSの金利の最終到達点です。4.25-4.50%の予想を上回るのであれば金利上昇に加え、株の下落によるリスクオフのUSD買いが加わりるため、USD買いが強まるでしょう。

逆に予想通りであれば、ある程度織り込まれているため、若干USDロングの調整が入る可能性があります。

2.BOE政策決定会合

2-1.前回8月のBOE政策決定会合

8月BOE金融政策会合は、8対1の賛成多数で政策金利を0.5%引き上げ1.75%にすることを決定しました。テンレイロ理事は0.25%の利上げを主張したものの、将来的に必要とあれば0.5%という見方です。方向性は同じと考えてよいでしょう。

エネルギー価格上昇による物価高騰が、個人消費を抑制し、GDP成長率は、2022年第4Qから2023年第4Qまで5四半期連続で前期比マイナス成長が継続するという予想です。将来の景気後退を予測しているにもかかわらず、0.5%の利上げを実施するということは、上げられるうちに上げて将来利下げの余地を作りたいのでしょう。従って、CPIが高止まりしているうちは、当面0.5%程度の利上げが継続すると予想します。

2-2.直近の経済状況

7月月次GDPは前月比+0.2%と予想を下回りました。6月が▲0.6%だったものの、反動も出ませんでした。

8月のCPIは前年比+9.9%に上昇しました。ガソリンが値下がりしたため、伸び率は若干低下しました。ただ、食料品含めその他の項目は全般的に上昇しています。

8月の小売りも前月比▲1.6%、前年比▲5.4%と予想比・前回比から共に大きく下振れしました。ほぼ全ての主要セクターで下落が見られました。

リズ・トラス新首相が誕生しました。財務相にはクワーテング前民間企業・エネルギー・産業戦略相が指名されました。近々の課題である光熱費高騰に対応するための財政政策を提出し、その後徐々にこれまで主張してきた減税の方針に基づく緊急補正予算が提出されると思われます。

具体的に出てきたエネルギー支援パッケージは、今後2年間家庭向けエネルギー価格の上限を年間3,600ポンドから2,500ポンドへ引き下げるというものです。企業も同等の支援を受けられ、英政府はCPIが5%低下すると予想しています。

参考:NNA「【英国】英、光熱費上限を凍結へ インフレ対策=政府借入が増大も

BOEが8/5から8日間に渡り実施したインフレ期待調査が発表されました。これはトラス首相がエネルギー支援策を打ち出す前の調査です。純粋なBOEの引き締め効果を図るには適しているサンプルになります。

ある程度引き締め効果が出てきていることが証明された結果となりました。今後1年間のインフレ予想は4.9%と過去最高を記録したものの、中期(5年)は5月時点の3.5%から3.1%に低下、1年先の1年期待インフレも3.4%から3.2%に低下しています。

2-3.今回9月のBOE政策決定会合予想

0.5%が予想の中心値ですが、BOEメンバーの投票は0.25%、0.50%、0.75%に投票は分かれる可能性があります。

トラス首相の政策でエネルギー価格が抑制されるのであれば、物価は落ち着きます。利上げを急ぐ必要はなくなります。政府の財政支出に伴う国債発行により債券市場の需給環境が悪化することをサポートするために、中銀の引き締め姿勢は抑えた方が良いという判断はありえます。

逆に、エネルギー価格抑制により個人購買力が上昇し、インフレを助長させると予想するなら、引き締めを更に急がなければなりません。この辺りの判断が分かれそうです。

2-4.発表後の反応予想

前日にFOMCが終了するため、前日からの流れと同じ方向の結果となった時に最も大きく動くと予想します。これまでのGBP/USDの下落を見ていると、FOMCの最終到達金利が4.25%程度に収まっています。BOEがタカ派的な利上げを実施した時が、反応は最も大きくなりそうです。

特に英国の場合、トラス政権の減税が今後出てきます。BOEの評価にも注目です。経済に対して好影響を与えるために、更に利上げを加速する必要があるといったトーンのタカ派利上げが出た時は、1.1500を超えてくると予想します。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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