2022年3月のFOMC会合とBOE政策決定会合は?ファンドマネージャーが解説

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ロシアのウクライナ侵攻が激化し、首都キーウに迫ってきています。ゼレンスキー大統領は戦う姿勢を崩していません。両国とも停戦に向けた協議は継続しているものの、折り合う様子は見られません。

相場は徐々にウクライナ関連のヘッドラインに対する反応は鈍くなってきています。基本的には戦地に近い欧州通貨が売られて戦地から遠い資源国通貨が買われる展開が続いています。

今後は戦争の長期化を前提として、エネルギー価格の上昇がインフレにどの程度影響あるのか、そして人々の生活にどのような影響があるのかを見極める必要があります。その上で、中銀の金融政策が目先のインフレと、先々のインフレによる景況感の悪化のどちらに比重を置いてくるのかを予想しなければならないでしょう。

今回は、米FRBと英BOEの政策決定会合について詳しく解説していきます。

目次

  1. 前回(2022年1月)FOMC会合の内容
  2. その後の経済状態
    2-1.米国2月雇用統計
    2-2.米国2月物価
  3. 今回(2022年3月)の予想
  4. 指標後の反応予想
  5. 前回(2022年2月)BOE政策決定会合の内容
  6. その後の経済状態
    6-1.英国1月雇用
    6-2.英国1月物価
  7. 今回(2022年3月)会合の予想
  8. 指標後の反応予想

1.前回(2022年1月)FOMC会合の内容

声明文はほぼサプライズなく、テーパリングは3月に完了し、金利の引き上げは間もなく適切になると示されました。

参照:ブルームバーグ「FOMC、近く利上げ開始し必要なら引き締め加速も-議事要旨

パウエル議長の記者会見はタカ派となりました。

参照:ブルームバーグ「パウエル議長、急ペースの利上げの可能性に扉開く-インフレ抑制で

利上げの頻度として毎会合になる可能性、バランスシート縮小の開始時期が最速で6月になる可能性が意識されました。株価が大幅に下落しない限りは金融引き締めスタンスを後退させる可能性は低いでしょう。

参照:ブルームバーグ「パウエル議長、3月利上げ支持を示唆-毎会合での利上げ排除せず

2.その後の経済状況

2-1.米国2月雇用統計

2月の雇用統計は前月と同様強い結果となりました。非農業者部門雇用者数は予想を大きく上回る+67.8万人となりました。

業種別内訳でも、広範な業種で改善が見られています。労働参加率は62.3%と前月から上昇し、失業率は4.0%から3.8%に低下しています。オミクロン株の影響で無給休暇に追いやられていた労働者が復職した可能性が考えられます。

平均時給は前月から横ばいだったものの、これは低賃金業種の雇用増加が中・高賃金業種の雇用増加幅を上回っているためです。オミクロン感染からの回復という意味ではしっかりしているといえます。更に労働時間が34.7時間に増えていることを勘案すると、全体的な所得は増加している可能性が高いと言えます。

2-2.米国2月物価

CPIは予想通り前年比+7.9%と約40年ぶりの伸び率を記録しました。従来通り中古車とエネルギーと食品が押し上げただけでなく、住宅費も堅調な伸びを示しています。

今回の数字はウクライナ侵攻後のエネルギーや食料品価格急騰前のものであり、来月は更に上昇する可能性があります。

3.今回(2022年3月)の予想

債券市場は、0.25%の利上げを90%程度織り込んだ状態です。更にその先1年で1.25%の利上げ(5回、2022年合計で6回)と予想されています。市場のエコノミストも年5回程度の利上げを見込んでいるものの、FOMCの金利予想分布図(DOTS)は年4回になるとの予想が大半です。

雇用の状態は良好であるため、引き続きインフレが最大の懸念事項になりそうです。現時点では、賃金上昇率と比較して物価上昇率が高過ぎます。

特に金融政策の効果が出やすい住宅費の抑制をターゲットに、ある程度コア物価指数を抑えておかないと、エネルギー価格が高止まりした場合に景気が大きく減速してしまう恐れがあります。2022年中の利上げの回数については、債券市場の織り込みの方向になるでしょう。

また、Longer Run金利(長期均衡金利)の2.5%に到達するまでにどういったパスを予想しているのかを確認したいです。地政学リスクによって経済見通しが変更されることで金融政策に影響が出てくる可能性について言及があるでしょう。一方でLonger Run金利は2.5%で据え置きとなり、達成時期はこれまでの2024年以降から2023年に大幅に前倒しとなる可能性があります。

4.指標後の反応予想

ロシアがウクライナに侵攻した直後に長期金利は1.7%割れまで低下しました。現在は2%近辺まで戻っています。

ただ、ウクライナ問題により資源価格の高止まりが予想され、景気減速を懸念する参加者が増えてきています。債券市場ではある程度警戒感があるものの、為替市場では金利とは関係なくリスクオフによりUSDロングが積み上がっています。

ECBがタカ派を維持したため、ある程度FRBのタカ派の結果は織り込み済みでしょう。可能性は低いものの、予想外にウクライナ問題に警戒して、長期均衡金利が下がる方向の発言がパウエル議長から出ることによるUSD売りの展開の方が値幅が出るでしょう。

5.前回(2022年2月)BOE政策決定会合の内容

0.25%の利上げが予想されていたものの、利上げ幅は予想通り0.25%でした。メンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張し、タカ派サプライズとなりました。

更に、市場の期待を超える7%を超えると見込むインフレ率を視野に、過去10年の量的緩和(QE)の下で積み上げた8950億ポンド(約140兆円)の保有資産について縮小を開始、保有国債の満期償還金の再投資を直ちに停止することを決定しました。インフレ予測については、4月に7.25%と予想しました。これまでは6%前後をピークとしていました。

参照:ブルームバーグ「英中銀が25bp利上げ、委員4人は50bp主張-QE巻き戻し開始

ベイリー総裁は、金利を緩やかに動かすことが望ましいと発言しました。

参照:ブルームバーグ「ベイリー英中銀総裁、金利の緩やかな動き支持-衝撃は望まず

引き締めをより早く行うことでインフレを今年後半から抑え込むことに成功するのであれば、金利の正常化を長期間継続する必要がなくなるということです。長期均衡金利の上昇は限定的でしょう。インフレ高止まりが経済に及ぼすリスクに言及したように、ポジティブな利上げではない印象となりました。

6.その後の経済状態

6-1.英国1月雇用

1月の雇用者数は予想よりも少ない▲3.8万人となりました。一方、失業率は市場予想通りの4.1%にとどまり、求人数は過去最高を記録しました。

週平均賃金については、前年比+4.3%と予想を大幅に上回りました。失業保険申請件数は前月からマイナスとなるなど、雇用市場の改善が続いています。

6-2.英国1月物価

1月のCPIは前年比+5.5%と予想を上回り30年ぶりの高水準となりました。ウクライナ問題が勃発し、物価高騰が長期化する可能性が高まってきているため、先々の景気については不透明感が高まっています。

特に4月からエネルギー関連の増税が開始されるため、仮に現状レベルの天然ガス価格が継続するのであれば、光熱費は増加することになります。家計を圧迫することは明らかです。

将来を見越して既に消費者信頼感は低下傾向になっています。現時点では利上げが必要であることは間違いないものの、このままの状態が続くのであれば、利上げしなくても勝手に需要が減退し、物価が下がる可能性も考えられます。

7.今回(2022年3月)会合の予想

市場は0.25%の利上げにより0.75%となることを100%織り込んだ状態です。0.5%の利上げは2月半ばの80%から15%に落ち込んでいます。今回の利上げサイクルの最終着地は2023年初に2%となっています。

ただ、1月の英月次GDPが発表され、前月比+0.8%と予想以上の回復を示しました。12月はマイナス成長を記録していたものの、急速な回復を示した格好となっています。

市場からは、今回の数字はBOEでの連続利上げを後押しするとの声も出ています。一方で、英経済が直面している短期的なインフレ圧力に加え、今回の予想を上回る月次GDPは、短期的には英中銀が成長よりもインフレ抑制に注力する可能性が高いことを意味しています。メンバーの内何名かは、0.5%の利上げを主張して反対する可能性があります。

前回会合時と比較して、物価は上昇しています。一方で景況感は改善しているため、利上げをしやすい環境でしょう。

ベイリー総裁の発言からは、早期利上げによってインフレを抑制し、景気へのダメージを抑えたいという意向が読み取れます。利上げ出来るうちに上げておこうという思惑が働いても不思議はなく、もしかしたら0.5%の利上げとなるかもしれません。

指標後の市場反応予想

ウクライナ問題のダメージを想定してGBPは既に大きく売られています。仮に0.5%の利上げとなった場合は、短期的にはGBPは買われるでしょう。

3月のECBを見ていると、金融引き締めによって供給サイドへの効果は限定的という認識がありそうです。景気に配慮して引き締めを緩める可能性は低いものの、第3・第4四半期はマイナス成長との見方も出てきています。どの程度成長のダウンサイドリスクを強調してくるかどうかが、今後のGBPのトレンドを決定する材料になるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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