米中貿易摩擦、逆イールド・・・プロのトレーダーが教える8月のビットコイン相場の振り返りと今後の動き

本記事では現在仮想通貨取引所でトレーダーを行う筆者が、日々ビットコインを含めて仮想通貨の市況をチェックする中で得た情報や今後の動きについて、シナリオ含めて解説していきたいと思います。

筆者は前職で3メガ系証券会社の外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行なっており、世界経済の分析をしながら日々マーケットと対峙していました。そのためFXの見方の色が出ることもありますが、仮想通貨特有の特徴も含めて分析していきたいと思います。

※本記事の内容は8月28日執筆時点の情報となります。

目次

  1. 8月のビットコイン相場の振り返り
  2. 9月の相場と今後考えるべきトピック
    2-1.ビットコイン相場上昇材料
    2-2.ビットコイン相場の下落材料
  3. ビットコインのチャート分析
    3-1.移動平均線
    3-2.一目均衡表
    3-3.未決済建玉(Open Interest)
    3-3.オシレーター
  4. ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を併せた予想

8月のビットコイン相場の振り返り

8月のビットコイン相場は7月中頃からの下落相場が1,000,000円という大台を目安に落ち着き反発を見せるも、1,300,000円付近までの反発に留まり、7月高値を伺う様子もなくレンジ相場となりました。

トピックとしては、

  • 米国が中国に対して10%の追加関税を示唆(マーケットはリスクオフムードに)
  • 米中貿易摩擦の再燃から元安方向へ推移。対ドルで7元を突破。(元売りビットコイン買いに傾く)
  • アルゼンチンペソの暴落(アルゼンチン国家破綻懸念)
  • 米国債金利2年-10年が逆イールドに
  • テザー社が中国オフショア人民元ペッグのCNHTを発行予定
  • bakktの先物市場が9月にもローンチ

このようなニュースが8月の間に出てきています。特に相場のポイントとなったのは「米国の対中貿易関税10%を示唆したこと」です。現在完全に相関関係があるとも言い難いですが、リスクオフ時にはビットコインの価格が上がりやすいという傾向がみられ始めています。このロジックは、ファンドのように様々な商品で運用している場合、そのそれぞれの商品の保有比率を変更させることで、全体のリターンを向上させつつ、リスクの取り方を調整します。

上記のように米中貿易摩擦から、株が下落すると、株を売った資金が他の商品に向かうという動きになります。債券が買われ、金利が低下、そして金価格が上昇し、日本円が買われ円高方向で推移するというのはマーケットで認識されている動きになります。そしてビットコインは最大発行量2,100万ビットコインと決まっていることから、金と同様にリスク回避時に資金が流れ込みやすいものでは無いかと考える投資家が増えてきました。

下記は5月辺りからのビットコイン価格と金価格の推移になります。(青:ビットコイン 水色:金価格)

ご覧頂くとわかる通り、連動しているとも捉えることが出来る動き方をしています。そのため、8月は1,000,000円という節目によって下支えされたビットコインは、米中貿易摩擦によって世界的な株の下落からリスクオフムードとなり、買われるフローが出ていたものの、ボラティリティの低下から上値追いのムードも限定的となり上下ともに動きにくい展開となりました。

9月の相場と今後考えるべきトピック

次に今後を占う上で大事なポイントを整理しましょう。ここではビットコイン相場に影響を与えそうなイベントや経済動向についてまとめていきます。

ビットコイン相場上昇材料

最初にビットコイン相場の上昇材料となりそうなものを考えていきます。イベントは下記の通りです。

1.世界経済後退懸念からリスクオフムードが継続

この場合は上記で説明した通り、金が買われ、日本円がリスク回避資産として上昇し、ビットコインもその一部の資金が流入する可能性があります。またリーマンショックから11年が経過しようとしており、景気のサイクルが10年スパンで入れ替わりやすいことを考えると、景気サイクルから考えて景気後退が訪れることに違和感ないでしょう。

2.ETF承認の可能性

ETFが承認となった場合に上昇する理由は、ビットコインのリスクを取っても投資をしたい機関投資家がいることがあります。しかし、機関投資家は現物資産を保有することによるハッキングリスクを考える必要性に迫られます。また、そのリスクをリスク管理の観点で数値化する必要性も出てきます。そのため、現在はまだビットコインを購入していない機関投資家が、ETF承認によって現物を保有せずにビットコインの経済的価値の動きの部分だけにリスクを取ることが可能になるのです。これにより、現在よりも多額の資金がETFに流入することになります。こうして考えると、ETFの承認ということになればビットコインの価格は上昇しやすくなると言えるでしょう。

3.仮想通貨市場に参入する機関投資家が継続して増加中

2019年は、個人投資家というよりも機関投資家のフローが相場を作っている環境となっています。この背景には、2017年あたりのバブルを見た世界が2018年に仮想通貨投資を検討し始め、仮想通貨に投資する専門部署やデスクを立ち上げていたことがあります。

また、ビットコインの一強状態も機関投資家が参入していることが理由として挙げられます。機関投資家は一回に売買する取引量が大きいことが特徴です。そのため、時価総額の大きい仮想通貨ではない場合、流動性の低さから悪化したプライスで売る必要に迫られたり、売ることもできない状況に陥る可能性があります。こうした理由こそ、機関投資家が流動性の一番大きいビットコインに資金を集める理由です。

これらが、2019年ビットコインのドミナンス(※1:仮想通貨市場全体におけるその通貨が占めている割合、下記チャート参照)が大きく上昇させ、ビットコインの価格を上昇させた理由として挙げられます。この動きが継続する限り、ビットコインの上昇圧力が継続しやすいと言えるでしょう。

青色の丸印の部分がビットコインの価格の上昇とともに市場占有率が伸びてきた部分になります。

ビットコインの上昇について、細かな材料を考えるとまだまだ材料がありますが、ここでは大きく3点ほど挙げてみました。

ビットコイン相場の下落材料

次にビットコイン相場の下落材料となりそうなものを見ていきましょう。

1.景気刺激策で景気後退を緩和

これは上昇材料の1つ目にある景気後退が訪れた場合における各国中央銀行の景気刺激策を指しています。景気後退によって株や高金利通貨を売却したお金の一部が仮想通貨市場に流入するのはないかと言われていますが、一方で中央銀行は景気の悪化に関して指をくわえて見ているわけではありません。日本ではETFの購入によって日経平均株価指数を下支えしたり、アメリカでは量的金融緩和を行なって市場にお金の流動性を供給したりと様々な政策で景気浮揚を促そうとします。

そのため、このようなタイミングで仮想通貨を売却し、再度短期的な投資家は再度株や高金利通貨等リスクアセットに資金フローを変化させることはあり得るでしょう。

2.アルトコインの普及or流行

次に考えられるビットコイン相場のマイナス材料はアルトコインやリブラ等企業の自社トークンの普及でしょう。

リブラは世界の中央銀行が現在の中央集権的な管理体制に大きな影響を与えると思い、中止にさせている経緯があります。現在ではリブラのプロジェクトは一旦中止となっており、参加しようとしたスポンサーの何社も一旦プロジェクトから外れようとしています。しかし、このように経済に多大なインパクトを与えるトークンが出てくることができると、ビットコインを売って一旦このリブラのようなトークンにお金が集まりやすい場面もあるでしょう。

2019年はビットコイン一強状態が継続していますが、市場は「飽きっぽい生き物」です。そのため、アルトコインの普及や上昇しそうなきっかけが出てき始めると、ビットコイン売り、アルトコイン買いの動きが出始めます。そうすると、ビットコインのドミナンスが低下しながらアルトコインのドミナンスが上昇し、全体の市場のパイに変化はないものの、アルトコインが相対的に強含む地合いが来る可能性もあります。

機関投資家が入ってきている以上、ビットコインも2017年のように右肩上がりで上昇する地合いというのは可能性として低いと考えられますが、緩やかに売り買いが交錯しながらゆっくりと価格が上昇するということはあり得ると想定しています。

3.FATFや各国政府の規制強化

現在世界の仮想通貨規制のフレームワークを作成しようとしているFATF(金融活動作業部会)は、10月28日から日本にも訪日して仮想通貨取引所を検査する予定となっています。仮想通貨は匿名性が高いことで知られていますが、こうした特徴は中央集権的に通貨を管理している現行の仕組みからすると、到底許容できるものでもなく、資金の動きについてトレースできる仕組みをブロックチェーンで確立しようとしています。

規制は必要ものではありますが、規制は強めすぎると新たな技術の発展を潰しかねないものとなってしまいます。規制の動きによってはビットコインを含めて仮想通貨全体にネガティブなインパクトを与えかねないでしょう。そのため、仮想通貨に対してFATFや各国政府がどのような規制を策定していくかというのは把握しておくべきでしょう。この動き方次第では大きく価格が下落することも想定されます。ファンダメンタルズがあまりない仮想通貨のマーケットですが、規制だけは注視するべきと考えておきましょう。

ビットコインのチャート分析

上昇材料や下落材料について色々見てきましたが、さらにチャートからどのように動く可能性があるのか考えていきましょう。

移動平均線

まず基本的なチャートの見方から方向性を判断したいと思います。

チャートはビットコイン円の日足チャートです。利用している移動平均線は50日移動平均線(オレンジ)と200日移動平均線(水色)を表示させています。

今年の4月から大きくビットコインが上昇し始め、オレンジの丸印で50日移動平均線が200日移動平均線を上回る状態(ゴールデンクロス)となり、中期的に方向性は上昇トレンドに転じたと判断します。

オレンジの50日移動平均線が200日移動平均線を下回ると下落トレンドに転じるタイミングとして判断できます。現在は青の○印に位置しており、50日移動平均線よりは下に位置しており、200日移動平均線よりは上に位置しています。よって、移動平均線から見た場合は中期的にはまだ上昇トレンドが継続しているものの、短期的には上昇圧力が弱まっていると言えるでしょう。

一目均衡表

次に一目均衡表で需給バランスを考えて見ていきます。

4月からの上昇トレンドで雲の上に位置しながら推移をしていましたが、足元のレンジ相場から上昇圧力が後退し、雲の下限を下回る結果となってきています。そのため、足元は下落圧力が強い印象になりつつあると言えるでしょう。

未決済建玉(Open Interest)

次に需給バランスの肝とも言える未決済建玉と先物ポジションついてチェックします。ここでは「L/Sチェッカー」というサイトで確認できるBITMEXやBITFINEX、CMEやCBOEの先物ポジションをチェックしていきましょう。


【参照URL】L/Sチェッカー

CMEの先物ポジションはショートが54.6%とバランスはショートに傾いており、移動平均線や一目均衡表で見た方向性と合致していると言えるでしょう。これは、全体的に足元下落方向で見ている投資家が多いということです。

しかし需給バランスをチェックする上で重要なことがあります。それは、先物ポジションはどこかでポジションを解消することで利益確定や損切りをすることになるということです。つまりこのロング・ショートのバランスが傾けば傾くほど、反対方向に推移した場合におけるポジション解消の圧力が強いということになり、一気に相場が動くパワーにもなるということです。そのためここで重要なのは下記の2点となります。

  • ショートが多いため投資家は下落方向で目線が向いている
  • 急に上昇した場合、ショートでポジションを取っている投資家は損切りの買い戻しを行うため上昇圧力に変わる可能性がある

オシレーター

最後に足元の位置が過熱気味な位置なのか、売られ過ぎな位置なのかを示すオシレーターを確認しましょう。下記はストキャスティクスRSI、RSI、そしてコモディティチャネルインデックスと呼ばれるテクニカル指標を利用しています。

この3つを見ると理解できるように、売られすぎの位置でもなく、また買われすぎの位置でもない中間に位置しているのが視覚的に判断できます。

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を併せた予想

ではこれらの材料からどのような目線で投資家はいるべきなのかをまとめます。

テクニカル分析から見ると、足元下落圧力が強いことから、ある程度の下落の可能性は考えておくべきです。しかしチャートからわかる通り、1,000,000円という大台の節目が死守されていることからここを大きく割り込んで来ない限り大きな下落圧力は考えづらいと判断できます。また、ファンダメンタルズから見ても機関投資家の仮想通貨市場の参入は大きな買い圧力となります。そのため、ローソク足がオレンジの50日移動平均線を超えてくる場合や、先物ポジションのショートカバーからの買い圧力が顕在化する中で、今後上方向を攻める可能性というのは中期的な視点でいくと可能性が高いのではないかと考えています。

唯一の懸念材料は「規制の強化によるネガティブインパクト」です。この規制が強力なものとなり、ビットコインを利用すること自体を弱めるような規制となると、一旦手仕舞いを行いポジションは持たないことをお勧めします。テクニカル分析でも上昇トレンドと判断できるような材料が重なってくるとファンダメンタルズ分析の結果と合致するため、強気で上方向にポジションを取りやすくなるでしょう。

9月はまず1,000,000円という節目を割れるかどうかが大きなポイントであり、ここを割れない場合は上方向でバイアスがかかりやすいと判断できるのではないかと思います。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行に入行し、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 【保有資格】証券アナリスト