ドル円は130円台に突入、今後のポイントは?プロトレーダーが解説【2022年11月】

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2022年11月現在、FX市場では大きく変化が起き始めています。アメリカのCPIを受けて、ドル円は急落する動きとなりました。

値幅は6円以上です。日本政府が行なった為替介入と同等の値幅が発生しました。

そこで今回は、ドル円の現在の背景と将来の展望や見るべきポイントを解説します。

※本記事は11月14日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ドル円相場のポイントは季節とポジションの傾き
  2. 今後はインフレ動向と維持する金利水準に注目
  3. まとめ

1.ドル円相場のポイントは季節とポジションの傾き

まず、ドル円が大きく変動している背景として、アメリカの利上げスタンスの変化と、予想外に低下したCPIの結果を受けての米ドルの下落が挙げられます。

11月のFOMCでは、インフレとの徹底抗戦のスタンスに変化が見られました。市場ではFOMC声明を短期的にはハト派姿勢と受け止めました。一方でパウエル議長は、利上げ停止は時期尚早と発言しました。若干のタカ派姿勢を織り混ぜながらの結果となりました。

参考:ブルームバーグ「パウエル議長、ピーク金利は従来想定から上昇-利上げペース鈍化も

米CPIの発表を受け、ハト派姿勢がより後退しました。米ドルは更に下落しました。

更に激しい値動きとなった背景として、積み上がったドルロングポジション調整のフローと、季節性が関係しています。

2022年のドル円相場は過去の値動きと比較して、異常と言える程の円安方向で推移しています。日本とアメリカの金融政策が大幅に乖離したことから、投資家は安心して日本円を売って米ドルを買っていました。つまり、ドル円のロングポジションが積み上がっていたのです。

1年スパンで見ると、夏場に一度、円高に振れた局面では日本円の円売りが減少しました。しかし再度夏場から秋口にかけて円売りを仕掛けていることが、下記のグラフから分かります。

ドル円ポジション
出典:外為どっとコム「IMMポジション

上記はIMMの通貨先物ポジションです。短期勢のフローがわかると言われています。

短期勢とは、1年スパンくらいでトレードを行う投資家を意味しています。個人投資家にとっての短期とは異なり、毎週大きくポジションが変化するものではありません。

トレンドの把握や、機関投資家が今後ポジションを決済した場合に出る値幅の予想に利用できます。

グラフの青色で示した部分が、日本円のポジションです。ポジションの低下は、日本円のショートが積み上がっていることを示しています。

ポイントは、一度円ショートを解消した投資家が、再度135円でドル円を買ってきている点です。つまり損益分岐点は年初と比較すると高い位置にあり、ドル円が下落するとロングポジションを解消する位置も高くなっているのです。

仮に日本円のショートが年初から継続して大きく売られ続けていれば、全体のポジションの損益分岐点は120円台だった可能性はあります。実際には、損益分岐点は高くなっています。今回の大幅下落の一因でしょう。

またもう一つの材料は、季節です。機関投資家は通常、感謝祭と呼ばれる11月24日以降から徐々に長期休暇に入ります。11月あたりまでは流動性が高いものの、12月にかけて一気に流動性が低下します。

機関投資家は、12月休暇に入ると流動性が低下すると分かっているので、リスク管理ができない新しい新規のポジションを作りません。

多くの投資家は、利益確定のポジション調整や、現物ポジションのヘッジのフロー(先物等)を入れることを検討します。どちらにしても年内に続いていたトレンドとは、逆方向のポジションになります。

2.今後はインフレ動向と維持する金利水準に注目

今後のドル円の方向性は、引き続きアメリカの金融政策の動向がポイントとなりそうです。

筆者の見解としては、ドル円は緩やかに下落トレンドになると考えます。138円台~139円台のまま、更に急落するのではなく、アメリカと日本の金利差を考えると、再度140~145円あたりまでの上昇が発生しながら、緩やかに下落する展開となるでしょう。

これまではFRBのタカ派スタンスと、急ピッチな利上げの持続性がポイントでした。しかし11月のFOMCとCPI、FRB高官による利上げペースの見直しの議論の提言等もあり、一旦緩和されてきています。

次の市場の注目ポイントは、高インフレが継続期間と、インフレ対策のために維持する金利水準でしょう。

2022年11月現在、ドル円はタカ派スタンスの見直しと、ポジション調整が重なって変動しています。ドル円をショートで攻める動きは、まだ発生していません。時期尚早と言えるでしょう。

日米の金利差は開いたままです。インフレ率は低下しているものの、過去と比べると高い水準にあります。インフレが毎月低下するのかも大事なポイントです。

筆者の見解としては、ドル円がすぐに120円台あたりまで下落するとは予想していません。一旦調整が終わったら、130円台半ばあたりで推移するだろうと考えています。

ドル円は、1年分のロングポジションが積み上がっています。11月は調整期間になるでしょう。ただし、来年にかけて数ヶ月売られ続けるということはないでしょう。

ポイントは、マーケットの焦点が変化していることです。大勢の投資家が「ドル円は買いたい」という視点から、「どこかでドル円を売りたい」という心理に変化しています。

3.まとめ

今回はドル円の変動要因と今後考えるべきポイントについて解説しました。

2022年は、ドル円は上昇基調で継続しています。上昇トレンドが長く続けば続くほどポジションが傾いていることから、反動も大きくなります。

投資初心者の方は、相場が反対方向に動くとトレンドが転換したと判断して、勢いでポジションを取ってしまいがちです。しかし、相場が落ち着いてから、ゆっくりとトレンドに乗っていくスタンスで構えるようにしましょう。

心理的な負担や焦りはトレードで負ける典型的なパターンです。焦らず、状況を見ながらトレードするようにしましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12