アドバンテストはここ数年で大きく業績を伸ばしている企業です。2022年に入ってからは株価が大きく下落する局面もある一方、ESGやサステナビリティの取り組みについて外部から高い評価を受けている銘柄でもあり、買いのタイミングを検討している方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事ではESG投資の判断基準になるアドバンテストのESG・サステナビリティの取り組み内容について詳しくご紹介します。企業の特徴や株価動向、配当推移などの情報も併せて解説するので、ご参考ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月6日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- アドバンテストの特徴
- アドバンテストのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.ESG推進の基本方針
2-2.環境に配慮した取り組み
2-3.社会的な課題への取り組み
2-4.ガバナンス強化への取り組み
2-5.サステナビリティの取り組みに対する外部評価 - アドバンテストの業績・株価動向
3-1.最近の業績推移
3-2.株価動向 - アドバンテストの配当推移
- まとめ
1 アドバンテストの特徴
株式会社アドバンテスト(6857)は、半導体試験装置の世界的な大手企業です。1954年に創業者の武田郁夫氏が前身となる「タケダ理研工業株式会社」を創業し、1985年に東証一部への指定替えと共に現社名へと変更されました。
アドバンテストは、東証一部への昇格を果たした年に半導体試験装置市場で世界トップシェアを獲得しており、以降は同業者の買収なども経て現在は米国のテラダイン(Teradyne, Inc.)と市場を二分する企業となっています。
半導体試験装置とは、半導体を自動で電気試験して品質や性能、信頼性を評価する装置であり、半導体を製造する最終工程において必須の存在です。
アドバンテストの主力事業は、半導体試験装置の製造販売を行う半導体・部品テストシステム事業部門ですが、他にも、テストシステムと半導体を電気的に接続する試験用の周辺機器、大手半導体メーカーの量産工程などで使用される電子回路を計測する装置なども取り扱っており、これらをメカトロニクス関連事業部門として展開しています。
さらに、サービス他部門としてテストシステムの設置・サポートやシステムレベルをテストする装置なども取り扱っており、半導体試験装置を中心に関連装置の製造・販売やサービスなどを幅広く提供しているのが特徴です。
2 アドバンテストのESG・サステナビリティの取り組み
アドバンテストはESG推進の基本方針を定めて環境・社会・ガバナンスへの取り組みを実践しています。こちらでは、これらの詳細についても確認してみましょう。
2-1 ESG推進の基本方針
アドバンテストでは、社会のサステナビリティ実現のため、「ESG推進によるサステナビリティ」を経営理念の根幹としています。そして、グループ全体でESGを推進するために以下のESG基本方針を定め、具体的な課題解決に向けた取り組みを進めています。
基本方針
- 環境保全および環境負荷の低減に取り組みます。
- 豊かな社会の実現のため、グローバル企業として社会的な責任を果たしていきます。
- 顧客を尊重し、顧客のニーズを満たす高品質の製品・サービスを安定的に提供します。
- 株主・投資家を尊重し、適正な利益還元と情報開示を行います。
- 従業員を尊重し、公正に処遇するとともに、働きやすい職場をつくります。
- 取引先を尊重し、相互の発展に向けて協力関係を築いていきます。
- 公平、効率的、かつ透明性の高いガバナンス体制を構築します。
この基本方針は、ESGへの積極的な取り組みが自社と社会のサステナビリティの両立に不可欠であると認識した上で、ステークホルダーを尊重し、環境や社会に配慮しながら透明性のある意思決定と行動で会社の収益力を強化することが目的です。
具体的には、環境・社会・ガバナンスで27の目標とKPI(重要業績評価指標)を定めて課題解決に向けた取り組みを進めています。
2-2 環境に配慮した取り組み
環境に配慮した取り組みでは、以下5つの重点テーマに対し、9つの目標を掲げて進めています。
重点テーマ | 目標 |
---|---|
気候変動 | 事業活動による温室効果ガス排出量を2030年までに2018年度比で60%削減 |
再生可能エネルギー導入率を2030年までに全社で70%にする | |
生産プロセスの見直しにより生産工期を2020年度比30%削減 | |
バリューチェーン | 部品調達先、生産委託先の再生可能エネルギー利用を推進 |
1テスト当たりのCO2換算排出量を2030年までに50%削減 | |
グリーン製品 | 環境破壊物質を使用しない製品開発を行う |
資源循環 | 3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進によるリサイクル率向上 |
全社の水使用量は2016年度の水準を維持する | |
生物多様性 | 絶滅危惧種の保護や植林など自然保護活動を推進 |
気候変動においては3つのテーマを定めており、温室効果ガス排出量や再生可能エネルギー率などの数値目標をKPIとして定めた上で取り組んでいる点が特徴です。
2-3 社会的な課題への取り組み
社会的な課題への取り組みでは、以下4つの重点テーマに対し、9つの目標を定めて進めています。
重点テーマ | 目標 |
---|---|
サプライチェーンにおけるESG推進と管理 | リスクマネジメントや人権・労働、環境などESG課題の共有と改善 |
ダイバーシティ、人権の保護・尊重 | ジェンダー間の公正な処遇 |
人権方針の浸透・実践 | |
ワークライフ・バランス | |
紛争鉱物の不使用 | |
顧客満足度・従業員エンゲージメント | New Normal対応の充実による顧客満足度の向上 |
魅力ある企業文化の浸透、維持、向上 | |
人財への投資 | 労働安全衛生の維持・向上 |
健康経営推進 | |
従業員の能力開発 |
ダイバーシティ、人権の保護・尊重のテーマでは、女性管理職比率や日本における男性社員の育児休暇取得率などをKPIに定めて具体的な数値目標を掲げて取り組みを進めています。また、人材の投資では労働安全衛生の維持・向上、健康経営の推進に努めるなど従業員に対する課題の解決などを中心に活動を展開しています。
2-4 ガバナンス強化への取り組み
ガバナンス強化の観点からは、以下3つの重点テーマに対し、9つの目標を定めて取り組みを進めています。
重点テーマ | 目標 |
---|---|
取締役会の実効性 | 事業レクチャーなど社外取締役への情報提供強化 |
オフサイト・ミーティングによる議論の活性化 | |
サクセッション・プラン | |
取締役会の多様性 | |
取締役・執行役員報酬へのESG評価導入 | |
企業理念・行動規範 コンプライアンス リスクマネジメント |
経営理念や法令、規制など全従業員への教育研修の実施 |
内部統制の徹底 | |
活動支援・推進 | グループ全体の方針・重点施策策定、活動支援、経営への報告 |
サステナビリティ・データブック等の適時適切な情報開示 |
ガバナンス強化への取り組みでは、取締役会の実効性などコーポレートガバナンスの体制強化に取り組んでおり、コンプライアンスやリスクマネジメント教育、投資家への情報開示など様々な観点から取り組みを進めています。
2-5 サステナビリティの取り組みに対する外部評価
アドバンテストは、電気機器の業種分類で日経平均株価(日経225)に採用されている銘柄です。また、サステナビリティやESGの取り組み内容が評価されており、各指数の構成銘柄にも選定されています。
評価実績 | 内容 |
---|---|
MSCI日本株女性活躍指数(WIN) | 女性の雇用や管理職の割合、ダイバーシティへの取り組みなど、女性の活躍推進に優れた日本企業に選定される。 |
MSCI日本株女性活躍指数(セレクト) | 女性の管理職や役員への登用など、職場において高いレベルで性別多様性を推進する日本企業が対象で、性別多様性スコアに基づき業種内で優れた企業に選定され、ESGレーティングで「A」を獲得する。 |
FTSE4Good Index Series | 世界中の企業の中から環境・社会・ガバナンスに関する様々な評価基準に基づいて優れた対応を行っている企業に選定される。 |
FTSE Blossom Japan Index | 環境・社会・ガバナンスの取り組みにおいて絶対評価が高い日本企業に選定される。 |
健康経営銘柄2022 | 経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄2022」の50社に初めて選定される |
特に、「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」と「FTSE Blossom Japan Index」は、世界最大級の機関投資家として知られる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でも採用されているESG投資の指標として用いられる指数です。
また、アドバンテストは様々な株価指数の算出を行うMSCI社のESGレーティングで「A」評価を獲得しているほか、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に選出されるなど、ESGを中心としたサステナビリティの取り組みで外部から高い評価を受けています。
3 アドバンテストの株価動向
アドバンテストの最近の業績推移や株価動向についても確認してみましょう。
3-1 最近の業績推移
アドバンテストは、過去数年間で業績を拡大しています。以下は過去5期分の売上高や営業利益、当期利益の推移をまとめた表です。
(単位:百万円)
決算期 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 207,223 | 282,456 | 275,894 | 312,789 | 416,901 |
営業利益 | 24,487 | 64,662 | 58,708 | 70,726 | 114,734 |
当期利益 | 18,103 | 56,993 | 53,532 | 69,787 | 87,301 |
新型コロナウィルスによる巣ごもり需要の継続や社会のデジタル化進展により、半導体需要が堅調に推移したことを受け、2022年3月期は売上高4,169億円(前期比33.3%増)、営業利益1,147億円(同62.2%増)、当期利益873億円(25.1%増)といずれも過去最高額を更新しています。
売上高は2018年3月期に比べて2倍超となっており、営業利益や当期利益は同期比で4倍を超える水準です。2023年3月期も順調な業績予測が発表されており、売上高は5,500億円、営業利益は1,700億円、当期利益は1,300億円といずれも過去最高額を見込んでいます。
なお、米国による中国向け輸出規制の強化やインフレ進行、金利上昇による世界経済の下押しリスクの増大などのマイナス要因はあるものの、半導体が扱うデータ処理量・通信量の増加や自動車の電動化などが半導体需要の減少を下支えする予想となっており、良好な見通しです。
3-2 株価動向
最近のアドバンテストの株価は、値動きの大きい展開となっています。以下は、2018年以降の四半期末日時点の終値をまとめた表です。
(単位:円)
項目 | 3月末(期末) | 6月末 | 9月末 | 12月末 |
---|---|---|---|---|
2018年 | 2,229 | 2,308 | 2,393 | 2,244 |
2019年 | 2,573 | 2,965 | 4,775 | 6,160 |
2020年 | 4,340 | 6,120 | 5,090 | 7,730 |
2021年 | 9,680 | 10,010 | 10,030 | 10,900 |
2022年 | 9,670 | 7,260 | 6,700 | - |
2021年12月末までは業績と連動するように株価も大幅な上昇を続けており、2018年3月末に2,229円だった株価は10,900円まで約5倍の上昇となっています。
しかし、2022年に入ると株価は急落しており、2022年9月末の終値は約4割も下落して6,700円となりました。これは今後リセッション入りが想定される中で事業環境の悪化を不安視する見方などもありますが、半導体関連株が大きく値を下げたのも一因です。
米国の主要な半導体関連銘柄で構成されたフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、好景気だと半導体関連銘柄の株価上昇に伴い高くなるのが特徴です。2022年1月頃まで上昇を続けていたフィラデルフィア半導体指数は、米長期金利の上昇や景気後退予測などを背景に2022年10月までに40%を超える大幅な下落となっており、日本の半導体関連銘柄の多くも連れ安となっているのが現状です。
アドバンテストは、2022年7月28日の第1四半期決算発表で通期業績予想の上方修正と増配、自社株買いを発表しましたが、株価の下落傾向に歯止めはかかっておらず、株価の回復には時間を要する見通しとなっています。
4 アドバンテストの配当推移
以下はアドバンテストの過去5期分の配当状況をまとめた表です。最近の好調な業績を反映して配当金も右肩上がりとなっており、2018年3月期に32円だった年間配当額は、直近の2022年3月期には約4倍となる120円まで増えています。
項目 | 年間配当額 | 中間 | 期末 | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 120円 | 50円 | 70円 | 26.7% |
2021年3月期 | 118円 | 38円 | 80円 | 33.3% |
2020年3月期 | 82円 | 41円 | 41円 | 30.4% |
2019年3月期 | 92円 | 50円 | 42円 | 30.4% |
2018年3月期 | 32円 | 9円 | 23円 | 31.4% |
2023年3月期の通期配当予測は、2022年10月27日に発表された「剰余金の配当に関するお知らせ」によると未定となっていますが、中間配当は前期の50円から65円に増配されており、好調な業績を背景とした年間配当の増額も期待できます。
アドバンテストでは、2021年4月から始まる3年間は一株当たり半期50円、通期100円を最低額とする金額基準や、自己株式取得を含めた通期の総還元性向 50%以上を目途とする配当方針を打ち出していることから、今後もここ数年と同じような水準で推移するとの見方が可能です。
まとめ
アドバンテストは、半導体試験装置の製造販売などを行う東証プライム市場に上場している企業です。同社では、ESG基本方針を定めて環境・社会・ガバナンスに対する取り組みを進めており、これらの取り組みは外部からも高い評価を受けています。
一方、2022年に入ってからは半導体関連株の下落などが要因となり株価は大きく値を下げていますが、最近の好調な業績などから割安感もあります。
アドバンテストのESGやサステナビリティに関心のある方は、ご自身でもよくお調べの上、検討を進めてみてください。
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