2022年10月現在、世界中でUSD高・自国通貨安が進行しています。輸入物価の上昇に繋がり、インフレ抑制の大きな課題となっています。
9月は日本と英国が、行き過ぎた自国通貨安を解消しようと、それぞれやり方は違うものの、市場に介入しました。しかし、結局米国の経済指標が堅調でFRBの継続利上げが想定されることからすぐにUSD買いトレンドに戻ってしまいました。
今回は、FRBの今後の運営方針にとって重要な材料となる、米CPIとミシガン大消費者信頼感指数について詳しく解説していきます。また、相場を転換させる材料としては米国以外では最も大きい中国党大会についても解説していきます。
※本記事は10月10日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 米CPI
1-1.前回8月の米CPI
1-2.今回9月の米CPI予想
1-3.発表後の反応予想 - 米ミシガン大消費者信頼感指数
2-1.前回9月の米ミシガン大消費者信頼感指数
2-2.今回10月の米ミシガン大消費者信頼感指数予想
2-3.発表後の反応予想 - 中国共産党大会
1.米CPI
1-1.前回8月の米CPI
8月CPIは前月比+0.1%、前年比+8.3%でした。コアCPIは前月比+0.6%、前年比+6.3%とどちらも事前予想より上振れる結果となりました。
6月に前年比+9.1%を記録したものの、ガソリン価格の低下により、ピークアウトが期待されていました。しかし、徐々に伸びは鈍化しているとはいえ、前月比プラスの領域を維持しています。物価高への警戒感が再燃する形となり米金利は最終到達点が4.25%近辺まで上昇しました。
実際、ガソリン価格は低下したものの、食料品や住居費など生活に関する項目が上昇しました。更に、今年前半に相当上昇してから徐々に落ち着きを見せていた自動車関連指数が、8月は小幅ながら上昇しました。引き続き注視が必要です。
1-2.今回9月の米CPI予想
総合指数は前年比+8.1%と前回の+8.3%から若干鈍化する見込みです。9月分までは引き続きガソリン価格が低下していることから、伸びは鈍化すると思われます。しかし、前月比でプラスであればまだ物価水準は高値圏で維持されそうです。
一方でコアCPIは、なかなか下がりません。前年比+6.5%と8月の+6.3%から更に伸びが加速する予想となっています。食料品があまり鈍化していないことに加え、前月に高かった自動車関連や、最近復活気味のサービス関連指数が牽引しました。
1-3.発表後の反応予想
強い雇用統計が発表されたことから、市場は次回11月のFOMCで0.75%の利上げがほぼ織り込まれた状態です。仮にCPIが強かったとしても、利上げのペースが1.0%にはならないでしょう。USD買いの反応は限定的でしょう。
ただ、コアCPIの中で、特に粘着性が高い住居費が上昇する、個人需要が復活し自動車関連指数が上昇するなど、今後のFRBの利上げの最終到達点が引き上がるような内容となった場合には、もう一段のUSD買いとなることは十分考えられます。
逆に、予想を下回った場合は、予想を小幅に下回る程度であれば、傾向として落ち着いたことが確認できたとしても、FRBの引き締め方針が1回の指標で変わらない可能性があります。USD売りで反応したところは買い場のサインになるでしょう。
しかし、もし最終到達点が引き下がるほどの内容となった場合には、これまでの溜まっていたUSDロングの解消に繋がる可能性があります。大きなインパクトのあるUSD売りの展開になりそうではあるものの、可能性は非常に低いでしょう。
2.米ミシガン大消費者信頼感指数
2-1.前回9月の米ミシガン大消費者信頼感指数
ミシガン大消費者信頼感指数(確報値)は速報値の59.5から58.6に下方修正されました。8月は58.2でした。最悪期からの反発傾向は維持されています。
また、1年先のインフレ期待は速報値の4.6%から4.7%に上方修正されました。5-10年先のインフレ期待は速報の2.8%から2.7%にこちらは下方修正されました。多少インフレ警戒による景況感悪化方向に修正された印象です。
家計見通しへの楽観はさほど高まらなかったことから、引き締めの効果により、徐々に個人需要が落ち着く方向へ推移しています。
2-2.今回10月の米ミシガン大消費者信頼感指数予想
10月の予想中央値は59.0と更に改善する予想となっています。しかし、予想の分布が下方向に偏っているため予想平均値は58.7となっています。
【参照】ロイター「経済指標予測」
2-3.発表後の反応予想
景況感の数字よりは、期待インフレの数字に注目です。FRBとしては、物価指標の数字を見ながら後追いで金融政策の方針を決定している状況です。
しかし常に気にしていることは、恐らく短期の期待インフレが高止まりしながら、長期の期待インフレがしっかりと抑えられているかという点だと思います。短期の数字が下がり過ぎてしまうと、個人の購買意欲の復活と共に再び物価は上昇してしまいますので一番気になるのではないでしょうか。
また、長期が上がり過ぎてしまうということは、将来の緩和を織り込んでいると言えます。将来的に個人消費を押し上げに繋がるため、抑えておきたいでしょう。国民の期待インフレの微妙なバランスを取りながら、非常に狭き道であるインフレの軟着陸を目指していると予想します。
従って、特に短期の期待インフレが下がっていた場合、更に引き締めを加速させる必要が出てくるため、USD買いが強まりそうです。
3.中国共産党大会
10月16日から5年に1度の共産党大会が開かれます。今回の最大の注目点は、人事になります。
習近平国家主席がトップを続投するのか、また最高指導部のメンバーとして7名の政治局常務委員が誰になるのかがポイントです。習主席は現在69歳で68歳以上であれば引退するという従来の慣例を破って3期目に突入すると見られています。
【参照】「中国共産党大会まで1週間 習近平国家主席 異例の3期目入りか」
2022年現在、中国には課題が山積みです。国内では、共同富裕というスローガンを掲げ様々な改革を断行した為、IT産業・不動産・教育産業が打撃を受けています。特に不動産は未だに酷い状況となっています。
国民の住宅ローン支払い拒否など、民意が動きそうな危うさを抱えた問題に発展してしまっています。当局としては、金利を下げる、規制を一部緩めるなどの対応をしています。しかし回復は緩慢です。
また、ゼロコロナ政策を維持するために景気がなかなか回復できないことも習主席の経済運営手腕に疑問符を持たれる原因となっています。厳しい管理により海外だけでなく国内の移動もままならない国民からは不満が高まっています。これらは不安材料となります。
これまでの中国の発展を支えてきた輸出力が、コロナ制約により供給が滞っています。これまで購入していた海外がインフレ対応の為引き締めており、需要も減退しています。中国式の成長モデルが機能しない環境となっています。
加えて、米国を中心とした西側諸国との関係悪化が、貿易収支に重くのしかかっています。
海外に目を向けると、米国との貿易関係の対立だけでなく、ロシアのウクライナ侵攻以来、西側諸国との根本的な思想の違いが明確になり、距離が出てきています。これまで世界が触れなかった問題が明るみに出てしまいました。一つはウイグル問題で、もう一つは台湾との関係です。
為替市場に関係があるとすれば、中国の台湾進攻に日本も巻き込まれる恐れがあるということです。可能性はあるものの、まだ市場を動かすほどの動きがここ数カ月で出てくるとは思えません。
結局、今回最も注目するべきは、新主席と7名の最高幹部の顔ぶれから、どのような経済対策を打ち出してくるかということです。経済対策は既に打っているものの、成長回復の障害となっているのは、ゼロコロナ政策をどうするのかが問題です。
習主席の面子を保つために継続するようなら、景気回復は相当先の話になるでしょう。米国中心とした西側諸国との関係も悪いまま、市場心理は悪化し、これまでのUSD高トレンドが変わらない可能性があります。
一方、例えば嘘でもゼロコロナ政策に効果が出たことを理由に、事実上撤廃に向かう方針に誘導していくようであれば、当局が、政局運営よりも経済運営を重視したということになります。財政出動の効果が高まり、リスクオンのUSD売りの方向にこれまでのUSD買いのトレンドが大きく変わるきっかけとなる可能性があるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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