米国インフレ見通しが8.0%に上昇。景気後退の不安が広がる中、FXで重要なポイントを解説

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2022年6月27日からの相場は、当初円安の動きが先行しました。徐々に株安とともに米金利が低下するなかで、為替市場ではリスク警戒のドル高圧力が広がりました。

市場では次のテーマとして、中央銀行の積極引き締めに伴うリセッション(景気後退)に本格的に移行している様子が伺えます。

この記事では、2022年7月上旬の振り返りと、7月下旬に向けての動向を解説します。

※本記事は7月11日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年6月上旬のマーケット振り返り
    1-1.日本
    1-2.米国
    1-3.中国
    1-4.欧州
    1-5.英国
    1-6.オーストラリア
    1-7.カナダ
    1-8.その他
  2. 注目材料
    2-1.米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数
    2-2.発表後の反応予想

1.直近の振り返り

リセッションの程度について、欧州・英国よりは米国の方が浅い後退に留まるというのが市場のメインシナリオです。現段階では欧州経済の方がエネルギー価格高騰の影響が大きくより深刻だからです。

EUR/USDとGBP/USDの下落が目立ち、EUR/USDは一時1.00台後半まで、GBP/USDは1.18台まで下落しました。債券市場の分断化対策について独連銀が注文をつけており、ECB内で政策方針の合意形成に苦労している様子が伺えたこともEURの上値が重い要因です。

USD/JPYは、安倍元首相の銃撃事件に関する報道があったものの、市場には大きな混乱はなく135円を中心に揉み合いとなりました。

1-1.日本

BOJが発表した6月の日銀短観で、企業物価の見通しは伸び率を加速させました。

同様に物価全般の見通しも引き上げました。値上げをした企業の割合から値下げをした企業の割合を引いた指数が、大企業で42年ぶりの高水準となりました。

1-2.米国

コンファレンスボード6月消費者信頼感指数が98.7と予想の100を下回り、今後6カ月の見通しを示す期待指数も2013年以来の66.4と前回の73.7から大きく低下しました。

一方で、12カ月先のインフレ見通しが5月の+7.5%から8.0%に上昇しており、先行きの消費に対する不確実性が高まっています。

6月のISM製造業総合景況指数が発表され、2年ぶりの低水準となる53.0と前回56.1から低下しました。内訳は、雇用が判断基準の50を引き続き下回っているほか、今回は新規受注も50を下回り、仕入価格も大きく低下しました。市場のリセッション(景気後退)への懸念を正当化する内容です。

ISM非製造業は前月からは低下したものの予想を上回る55.3となりました。製造業と同様、支払価格は80.1と低下し、新規受注と雇用も悪化しました。

5月の雇用動態調査(JOLTS)は求人件数が1130万件と4月からは減少したものの、高水準を維持しました。

1-3.中国

習近平主席が改めて5.5%の成長目標の堅持を表明しました。

参考:ブルームバーグ「中国の習主席、今年の成長率目標堅持-コロナで達成危ぶまれる中でも

入国者の隔離期間を3週間から10日間に短縮するなどゼロコロナ政策の規制が緩和されました。

更に中国財政省は地方政府に対して7-12月期に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債の発行を許可することを検討しているといったニュースが出てきました。特別債とは、今年度の予算枠は既に決まってしまっているため、来年度の枠の中から前倒しで財政出動をするということです。

参考:ブルームバーグ「中国、30兆円規模の景気対策検討-地方政府の特別債発行を前倒し

1-4.欧州

ドイツのノルトライン・ウェストファーレン地域の6月CPIが、予想外にマイナスとなったことでEURが急落しました。原因はドイツ鉄道が1か月9EURで公共交通機関が乗り放題になるというチケットの販売を開始したためで、6・7・8月の限定であることと、ドイツだけであるため、EU全体への影響は軽微なものに留まるでしょう。

6月のユーロ圏CPIは前年比+8.6%と5月の+8.1%から更に加速し、過去最高を更新しました。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安からエネルギーや食品など幅広い品目の価格高騰が止まりません。

ECBには大幅利上げを求める声も強まっています。ECB議事録では0.25%以上の利上げの可能性について言及がありながらも、7月の会合については大半のメンバーが0.25%の利上げを支持していることが明らかになりました。

参考:ブルームバーグ「ECB、漸進主義は遅いペースや小幅ステップを意味せず-議事要旨

利上げを急ぐ一方でECBは、南欧の国債金利急騰に対応するため、断片化対策としてECB償還債投資の柔軟化案が出されています。一方でドイツの憲法裁判所がドイツ国債の償還金を財政的に弱い国の国債買い入れに充当することについて違憲判断を下す可能性が報じられました。7月会合までに分断化阻止ツールの準備が整わない可能性が報じられています。

ドイツが単月で貿易赤字に転落しました。輸出が振るわないだけでなくエネルギーの輸入が大幅に増加したことが要因です。これを受けてEURは一段と売られました。

1-5.英国

BOEはハト的な利上げを繰り返していいます。ベイリー総裁はECB主催の公開討論会で物価上昇が持続的となる兆候が見られるようであれば更に踏み込む必要があると、0.5%の利上げの可能性を匂わせました。

参考:ブルームバーグ「英中銀総裁、50bp利上げ排除せず-景気減速兆候で選択肢一つでない

スナク財務相とジャビド保健相など、閣僚が大量に辞任し追い詰められたジョンソン首相が辞任を表明しました。市場は、これまでの緊縮財政から拡張財政に変更するという期待感からGBPは買われました。

1-6.オーストラリア

RBA7月の政策決定会合が行われ、2回連続で0.5%の利上げを行い、政策金利は1.35%になりました。声明文も、6月と同様、今後インフレが目標水準に戻るために更なる対応を取ると約束しました。

インフレついては、年内にピークに達し、2023年中にRBAの目標である2-3%内に回帰するという見通しを示しました。

参考:ブルームバーグ「豪中銀、1.35%に金利引き上げ-初の2会合連続0.5ポイント利上げ

ただ、今回の判断は4月に発表された第1QのCPIを前提としており、次回8月会合時には第2QのCPIが発表されているため、変更される可能性があります。

1-7.カナダ

6月の雇用統計で、平均時給は前年比+5.2%に加速し、失業率は4.9%と4カ月連続で過去最低を更新しました。

BOCは、政策が経済活動を刺激も抑制もしない中立金利を2%から3%の間と判断しています。カナダの直近のインフレ率は7.7%と8%を超えそうな勢いで、カナダ中銀の予測も大きく上回っています。

1-8.その他

トルコの銀行規制当局がリラ(TRY)建て商業貸し出しに関する新規制を導入しました。外貨キャッシュが1500万TRYを超える企業は、外貨資産が総資産または年間売上高の10%を超える場合にTRY建て新規貸し出しを受けられなくなるというものです。

つまり、融資を受けたかったら外貨キャッシュを売ってTRYキャッシュに変えなければならないということで、TRYに買いが入りました。

2.今後の注目材料

2-1.米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数

CPIは前年比+8.8%と前回の+8.6%を上回る見込みです。原油価格上昇を受けて、ガソリン価格の上昇が止まらず、全体を押し上げると見られます。

ミシガン大消費者信頼感指数過去最低を記録した6月の50.2から更に悪化し49.0の予想となっています。

2-2.発表後の反応予想

6月はFOMCの前のブラックアウト期間中にCPIとミシガンの強い数字が発表され、市場は0.75%の利上げを織り込みました。今回は7/16からブラックアウト期間に突入するため、CPIから数日、ミシガン発表後も少し時間があります。

パウエル議長が可能性として否定しなかった1%の利上げを行う意思がある場合は、事前にマーケットに織り込ませるためのコミュニケーションをとる可能性があります。

CPIが強かった場合は、まずは0.75%の利上げまでは即座に織り込みUSD買いとなり、その後はFOMCメンバーからの発言を待つ形になると予想します。

更に金曜日に発表されるミシガンの数字が崩れ、同時に発表される1年先の期待インフレが5.4%から下がっていた場合、利上げ期待によるUSD買いではなく、景気後退懸念から来るUSD買いになりそうです。

ただ、6月以降欧州のガス価格を除いてエネルギーや食料品価格の下落傾向が顕著に見られます。足元の賃金上昇も若干落ち着き始めています。

この状況が継続するのであれば、効果が数字に表れそうな秋から年末にかけてインフレがピークを打ち、来年以降は緩やかな上昇に戻るというFRBの望む展開となる可能性もあるため、物価関連指標には注意が必要です。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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