2022年7月現在、市場の想定よりもFRBの積極利上げが長期化しないとの見方から、株高・ドル売りの動きが見られていました。一方で、FOMCメンバーからは変わらずタカ派姿勢を強調する発言が出ています。パウエルFRB議長も、景気よりもインフレ抑制が最優先事項との認識を強調していました。
参考:ブルームバーグ「パウエルFRB議長、物価抑制への「無条件」コミットメント強調」
市場は既に減速傾向が見られる景況感系の経済指標を受け、過剰に織り込んだ利上げ見通しを落とす動きになるなど、注目材料が金利から景況感へ移っています。
今後は、高インフレが鎮静化の兆候を見せ始め、ピークアウト接近の雰囲気が市場に広がることによるFRBが最も望むソフトランディングシナリオになるのか、予想される景気後退が、FRBが積極利上げを躊躇するほど深刻になるというハードランディングシナリオかを経済指標を見ながら確認していく展開になるでしょう。
今回は、景況感を確認するうえで基礎となる米雇用統計と、RBAの金融政策決定会合について、詳しく解説していきます。
※本記事は7月4日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBA政策決定会合
1-1.前回6月のRBA政策決定会合
1-2.直近の経済状況
1-3.今回7月のRBA政策決定会合の予想
1-4.発表後の反応予想 - 米6月雇用統計
2-1.前回5月の米雇用統計
2-2.直近の経済状況
2-3.今回7月米雇用統計の予想
2-4.発表後の反応予想
1.RBA政策決定会合
1-1.前回6月のRBA政策決定会合
急伸するインフレと豪1-3月期GDPの力強い内容がサポート材料となり、市場予想を上回る0.50%幅の利上げを実施し政策金利を0.85%に引き上げました。市場は0.25%の利上げと、通常の0.25%刻みに戻すために0.40%の利上げを実施するという予想が半々でした。0.50%はタカ派サプライズとなりました。
6月会合の声明文では、インフレがターゲットに戻るまで必要な措置をとり、今後数か月に金融環境の一段の正常化に向けたステップを踏んでいくと明言しました。以前の雇用からインフレ抑制に比重を移した形となっています。
参考:ブルームバーグ「豪中銀、インフレ抑制で予想外の大幅利上げ-政策金利0.85%に」
1-2.直近の経済状況
第1QのCPIは前年比+5.1%と急上昇していました。海外のインフレ率を見ると、第2QのCPIも上昇することが予想できます。
豪新政権は豪厚生労働委員会に最低賃金の引き上げを申請しており、7月から最低賃金は5.2%引き上がっています。CPI上昇率が+5.1%を若干上回る水準です。
5月雇用統計で、雇用者数増減は市場予想を大幅に上回る好結果となりました。労働参加率は史上最高値を更新して、豪労働市場の力強さを示す内容となりました。雇用の内容も5月に続いて正規雇用者数が大幅増加するなど、堅調な雇用環境が維持されていることが示されました。
ロウRBA総裁が、市場が7月会合で0.75%の利上げを織り込みにいくなかで、市場が示しているような利上げの軌道になる可能性はあまり高くないと牽制しました。更に7月会合の利上げ幅については0.25%か0.5%の利上げ幅を選択肢として議論すると述べています。
今年後半にインフレ率は非常に高い水準に上昇する可能性があるため、物価をRBAの目標水準の2-3%に抑えるべくさらなる措置を講じると述べました。インフレは年末までに7%に達し、低下するのは2023年第1Qと予想しています。
参考:ブルームバーグ「豪中銀総裁、来月会合で25bpか50bpの利上げを議論すると示唆」
ウエストパック消費者信頼感指数は昨年後半から毎月低下しており、コロナ前の水準を明確に下回ってきました。徐々に個人消費が減速しています。
1-3.今回7月のRBA政策決定会合の予想
ロウ総裁の発言通り、市場の予想は0.25%と0.50%どちらの利上げ幅になるかで割れているものの、0.50%が約8割と優勢です。今回0.5%の利上げを実施してもまだ歴史的には低水準です。
年末までに物価が7%に到達すると考えているということは、RBAが推計する中立金利の2.5%まで早く引き上げたいという意向を予想できます。
市場は年末までに3.35%まで金利が引き上げられることを70%程度織り込んでいます。一方で住宅市場は減速傾向であり、ウエストパック消費者信頼感指数は下落しています。利上げの継続性が不透明でしょう。
1-4.発表後の反応予想
0.5%の利上げが決定されたとしても相場の反応は限定的となるでしょう。声明文での物価見通しと、利上げを継続するのかに注目してください。
市場は、今年の会合は7月含めて残り6回中、0.25%の利上げを最低9回は織り込んだ状態で、7月・8月・9月と連続で0.5%の利上げを見ています。
今回、0.25%の利上げにとどまる場合や、直近の景況感の悪化や住宅市場の減速を見て、市場予想ほどの利上げが実施されないという思惑が強まる場合は、AUD/USDは一気に直近安値を下抜ける可能性があります。
2.米6月雇用統計
2-1.前回5月の米6月雇用統計
非農業部門の就業者数は市場予想を上回る前月比+39万人、失業率は3.6%となりました。いずれもコロナショック前の水準に戻りました。
労働力人口が33万人増加し、労働参加率は62.3%に上昇しました。
非労働力人口は前月比▲21.1万人となりました。移民の減少やコロナ禍で退職した人たちがそのまま労働市場から離脱してしまった可能性があります。労働者減少による潜在成長率の低下が懸念されます。
平均時給は前月比+0.3%、前年比+5.2%となり、4月の+5.5%からペースが落ち着きました。レジャー・ホスピタリティーが上昇しています。コロナ禍で最も雇用が失われた部門であり、需要さえ戻れば、大幅な雇用増となる余地が残っている分野です。
2-2.最近の経済状態
4月までのJOLT求人件数は未だ過去最高レベルを維持しているものの、新規失業保険申請件数は3月末に底を打ってから増加に転じています。また、カンファレンスボードが発表している信頼感指数の中の一つ、CEO消費者信頼感指数を見ても、3月辺りから急落しており、求人は減っていく可能性が高いです。
実際ここ数週間、企業は何万人もの人員削減や採用凍結計画を発表しています。その中心はテクノロジーや暗号資産(仮想通貨)、不動産会社であり、JOLTS求人件数に影響る可能性があります。
前月に物価上昇による収益鈍化を見越して雇用が減少した小売部門に続いて、他のサービス産業も採用抑制に動く場合は、低い数字が出る可能性があります。
2-3.今回6月米雇用統計の予想
非農業部門の就業者数は+27万人、失業率は3.6%の予想となっています。予想レンジは18万人から40万人と狭いレンジとなっているものの、最大の予想でも前月の数字止まりと、若干雇用増加ペースは減速するという予想です。
米国の夏休みに向けて強い需要が復活しているのであれば、レジャー・ホスピタリティー部門が回復し、予想を上回る可能性があります。ただ、全体としては最近の新規失業保険申請件数が上がっていることを勘案しているでしょう。
また、平均時給は前月比が前回と同じ+0.3%、前年比が+5.0%となっています。前年比は3月分の+5.6%がピークとなり、伸びが鈍化してきています。
2-4.発表後の反応予想
市場の雰囲気として特に欧米は利上げを無理に行うことによる景気減速を織り込んでいます。従って予想を下回るのであれば、リスクオフに勢いが付きUSD買いが強まると予想します。
もし非農業部門雇用者数が前月比マイナスに転落したりするネガティブサプライズがあった場合、FRBの利上げが出来なくなることを織り込み、米金利低下に伴いUSD売りになると予想します。
一方で、予想を上回った方がサプライズであるものの、FRBの利上げが加速する口実を与えるだけということになります。短期的にリスクオンになったとしても、リスクオフを見越したUSDロングを仕込むチャンスになるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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