米雇用統計が弱ければドル円は再び130円へ?FXで儲けるための注目ポイントを解説

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米国を中心に高インフレとそれにともなう急激な金融引き締めが景気後退に繋がる不安が高まっています。急速に引き締めを実施してきた米国は、既に2期連続GDPが前期比マイナスとなるテクニカルリセッション入りしてしまい、その他の国々も今後米国と同じ道を辿る可能性があります。

今回はRBAとBOEの金融政策決定会合及び、イエレン長官やパウエル議長がリセッションを否定する際の拠り所となっている米雇用統計について解説していきます。

※本記事は8月1日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. RBA政策決定会合
    1-1.前回7月のRBA
    1-2.直近の経済状況
    1-3.今回8月のRBA予想
    1-4.発表後の反応予想
  2. BOE政策決定会合
    2-1.前回6月のBOE
    2-2.直近の経済状況
    2-3.今回8月のRBA予想
    2-4.発表後の反応予想
  3. 米7月雇用統計

1.RBA政策決定会合

1-1.前回7月のRBA

2回連続で0.5%の利上げを行い、政策金利は1.35%になりました。声明文も6月と全く一緒で、今後インフレが目標水準に戻るために更なる対応を取ると約束しました。インフレについては、年内にピークに達し、2023年中にRBAの目標である2-3%内に回帰するという見通しを示しました。

ただ、7月の判断は4月に発表された第1QのCPIを前提としています。RBAの目標を引き続き上回った第2QのCPIが発表されているなかでは、変更される可能性があります。

7月の議事録では、足元の金利水準は中立金利からはかなり下回っており、インフレ抑制のためには更なる利上げが必要だというタカ派的な見方を示唆しました。

参考:ブルームバーグ「豪中銀、1.35%に金利引き上げ-初の2会合連続0.5ポイント利上げ

2.直近の経済状況

6月の雇用統計は+8.84万人と予想を大幅に上回りました。正規雇用、非正規雇用がともに伸びたほか、労働参加率が66.7%から66.8%に上昇する中で失業率が3.8%から3.5%に低下するなどかなりの好結果になりました。

豪経済は利上げに耐えられるとの思惑から8月RBA理事会では0.75%利上げの可能性を市場も徐々に織り込み始めました。

第2QのCPIが発表され、前年比+6.1%、RBAが注目しているトリム平均値は前年比+4.9%に上昇しました。牽引したのはエネルギーと食料品で、相対的には穏やかな上昇にとどまっています。

1-3.今回7月のRBA予想

第2QのCPIがRBAのターゲットを大きく上回った状態であることから、0.5%の利上げが優勢です。雇用が強く利上げに耐えられそうなことから、0.75%の利上げも一部で予想されています。

RBAは利上げを急いでいる感じもないため、0.5%の利上げで落ち着くのではないかと予想します。

1-4.発表後の反応予想

0.25%の利上げとなる可能性は低いため、0.25%の利上げに留まった場合は、AUD/USDは0.6900割れまで売られるでしょう。ただ、利上げの終着点が変わらないのであれば、最近のUSD買いの巻き戻し傾向からすると下値は限定的となる可能性があります。

また、他国と比較して物価上昇が落ち着いておりRBAもそこまで利上げを急いでいる雰囲気が出ていません。0.75%の利上げとなっても、0.7100を超えてくる展開は十分に考えられます。

2.BOE政策決定会合

2-1.前回6月のBOE

政策金利を0.25%引き上げて1.25%としました。6月会合は、引き上げ幅についてかなり幅広く予想が分かれていたものの、6人が0.25%、3人が0.5%を主張しました。

声明文では、インフレ見通しについて、10月の電気・ガスの再値上げを見越して10月に11%をやや上回るとしました。5月時点では第4Qに10%をやや上回るとしており、物価の想定を更に引き上げた形です。

しかし今後の政策方針については必要なら強力な対応を取ると大幅利上げに含みを持たせつつも、政策は「経済見通しや物価についての評価次第」と、前回の「引き締めが適当」という表現からより柔軟に対応する構えを見せています。インフレによる個人消費減速懸念も滲ませています。

実際GDP見通しについては、第2Qには早くも▲0.3%のマイナス成長を予想しています。ベイリー総裁が、景気を過剰に冷やさずにインフレを抑制するには「narrow path」と表現しているように、金融政策運営はかなり厳しいものになっていきそうです。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利を1.25%に引き上げ-必要ならより大きな動きも

2-2.直近の経済状況

BOEチーフエコノミストのピル氏はインフレ抑制の為には成長を犠牲にする用意があると、先日のFRBパウエル議長と同じような主旨の発言をしました。

参考:ブルームバーグ「英中銀ピル氏、賃金に高インフレ定着なら大幅利上げの根拠に

ハト的な利上げを繰り返している一方で、ベイリー総裁はECB主催の公開討論会で物価上昇が持続的となる兆候が見られるようであれば更に踏み込む必要があると、0.5%の利上げの可能性を匂わせました。

参考:ブルームバーグ「英中銀総裁、50bp利上げ排除せず-景気減速兆候で選択肢一つでない

5月の月次GDPが前月比+0.5%と予想を大幅に上回りました。

雇用関連指標は全般的に良好な結果でした。5月の雇用者数は+29.6万人と市場予想を上回り、失業率は前月と同じ3.8%に留まりました。週平均賃金は+6.2%と市場予想を下回ったものの、賞与を除くコア指数では市場予想を上回る+4.3%と加速しました。

英求人雇用連盟の調査によると、第2Qの英企業の雇用・投資決定に対する信頼感指数は▲13とかなり低下しています。インフレ加速と労働者不足の影響が示されています。

6月CPIは前年比+9.4%と前回の+9.1%から一段と伸びが加速しました。エネルギー・食料品が引き続き牽引しています。

ベイリー総裁から8月のBOE会合にて0.5%の利上げを検討中という発言がありました。また同時にバランスシート圧縮の詳細を発表し9月から開始の可能性が高いことも示唆しました。

参考:ブルームバーグ「英中銀総裁、8月の大幅利上げ可能性示唆-「25bp以外にも選択肢」

2-3.今回8月のBOE予想

ベイリー総裁の0.5%利上げを検討中との発言から0.5%の利上げが織り込まれています。

参考:ブルームバーグ「英中銀総裁、8月の大幅利上げ可能性示唆-「25bp以外にも選択肢」

6月のCPIが+9.4%と主要先進国の中では最高となったことを考えると、他の中銀が0.75%の利上げを実施している中では0.5%の利上げはサプライズではありません。

2-4.発表後の反応予想

BOEは将来の景気後退をいち早く予想していたものの、堅調な雇用市場が維持される中インフレが止まらないため、米国同様早期利上げ方針に転換しています。既に織り込まれておりサプライズではありません。

市場の注目は次期首相がトラス氏かスナク氏のどちらになるのかということです。元々トラス氏が減税を主張し、スナク氏が緊縮財政派だったものの、最近スナク氏も減税を主張し始めていることから、どちらが首相になっても個人消費をサポートする材料が出てきそうです。

従って、インフレが収まらなければ、BOEとしてはあまり景気への配慮をせずに利上げを継続できる状況であり、余程BOEの見通しがハトにならない限りは、GBPは買われるのではないかと予想します。

3.米雇用統計

前回から若干伸びが減速して20万人台の予想となっています。今回は通常の雇用統計よりも注目度が上がっている要因は、イエレン長官とパウエル議長の最近のリセッション認定に関する発言からです。二人とも、GDPが2期連続で前期比マイナスでも、堅調な雇用市場がある限り、リセッション認定はしないと述べています。

参考:ブルームバーグ「イエレン財務長官、現在の米経済はリセッションの条件満たしていない

参考:ブルームバーグ「FOMC、2会合連続の75bp利上げ-パウエル氏は景気後退否定

最近では景況感系の指標が崩れ、引き締めによるリセッションがニュースになることが増えています。豊富な求人により過去一年平均して毎月42万人の雇用が創出されている状態は確かにリセッションとは言えないでしょう。

しかし、新規失業保険申請件数は毎週増加傾向となっています。JOLTSの求人件数は高水準ながら減少に転じています。更にカンファレンズボード消費者信頼感指数の中での調査では雇用が十分との回答は50.1%と過去一年で最低となり、徐々にインフレと引き締めのダメージが雇用にも波及してきています。

今回の数字が大幅に崩れた場合は、イエレン長官・パウエル議長の拠り所がなくなってしまいます。本格的なリセッション相場となり、USD/JPYは130円近辺に再び可能性があります。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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