仮想通貨取引所Zaifでは2018年9月、ビットコインとモナコインとビットコインキャッシュの3種類がハッキングによって盗まれました。盗まれた仮想通貨は、ビットコインが約5,966BTC(時価約42億5千万円)、モナコインが約6,236,810MONA(時価約6億7千万円)、ビットコインキャッシュが約42,327BCH(約21億円)で、合計約70億円の被害総額となりました。仮想通貨史上、盗難額の大きいZaifハッキング事件は仮想通貨メディアをはじめとするメディアでも取り上げられたものの、ハッキング手口は記事執筆の10月10日現在で公開されておらず事件の早期解決が望まれています。
従来の金融サービスに慣れ親しんでいる私たちは「仮想通貨取引所に資金を預けておけば安心」と思ってしまうかもしれませんが、仮想通貨取引所はハッキングにあった際に必ずしも資産を全額返還してくれるわけではありません。コインチェック社のハッキング事件も補償はあったものの、国税庁の「日本円の補償は課税対象となる」という発表により、全額補償してくれるから安心というわけにはいかなくなりました。
リターンが大きい一方でリスク・デメリットも大きい仮想通貨投資において、私たちはどのように向き合っていくのが良いのでしょうか?ここでは過去のハッキング事件を振り返り、規制状況の概要について触れながら、仮想通貨投資家が仮想通貨の保管で気をつけるべきポイントについてご紹介していきます。
目次
- 過去に起きた国内仮想通貨取引所のハッキング
- ハッキング事件を受けた金融庁の規制動向
- 規制に動き出した世界の規制当局
- セキュリティ対策を重視して取引所を活用しよう
- 個人でも仮想通貨を管理しよう
- 管理を取引所に任せるか自身で行うかは自由
過去にZaif以外にあった日本の仮想通貨取引所でのハッキング事件
被害額が時価約370億円(約75万BTC)におよんだMt.Gox事件
世界最大の取引量を誇った日本の仮想通貨取引所Mt.Goxでは2014年2月、約75万BTCの盗難にあいました。当時のビットコイン価格は2万円近くで、日本円では約370億円になりました。事件を受け、Mt.Goxは盗難事件後の2月、破産手続きを行いました。破産手続きの過程では債権者のビットコインが返済されるかどうか注目を集めていましたが、2018年に入って一部債権者の申し立てにより民事再生手続開始決定され、現在では破産手続は中止されています。
過去最大の被害額時価約580億円におよぶCoincheck大量NEM流出事件
およそ170万アカウントが存在するとされた国内最大級の仮想通貨取引所Coincheckでは2018年1月、不正アクセスにより5億2630万10ものNEM(XEM)が流出し、被害者は約26万人におよびました。仮想通貨入出金、法定通貨の入出金も停止されたことで、Coincheckにアカウントを保有する全ユーザーにも影響が出たことで当時大きくニュースにも取り上げられることとなりました。最終的に、Coincheckは被害者に対して自己資金から1NEM(XEM)あたり88.549円の補償を実施し、現在はマネックスグループの子会社として営業の再開に向けて動いている状況です。
ハッキング事件を受けた金融庁の規制動向
日本では2017年4月、改正資金決済法が施行され、仮想通貨を資産として認め、仮想通貨を扱う事業者に対しては国の認可を義務付けました。国が主導して仮想通貨に関する法律を定めたのは世界でも日本が初めてで、日本が「仮想通貨大国」と呼ばれる由縁にもなりました。
日本ではCoincheckの大量NEM流出事件を受け、金融庁と金融庁が認可した仮想通貨登録業者16社で構成される日本暗号資産取引業協会(JVCEA)を中心に、仮想通貨市場の健全な発展に向けて定期的に議論を行う会合「仮想通貨交換業等に関する研究会」を開催しました。Zaifのハッキング事件は関係者が仮想通貨市場の発展に向けて取り組む中で起きた事件で、あらためて仮想通貨市場の課題が明らかとなりました。
10月3日に行われた「仮想通貨交換業等に関する研究会」では、メール開封時のマルウェア感染による仮想通貨の流出したCoincheckの事件と同じ手法への防止策と思われるブラウザやメールなどの社内利用を制限し、仮想通貨の管理ネットワークを分離する自主規制案の提案がされています。
規制に動き出した世界の規制当局
国際的な規制の枠組みづくりに動くG20
G20は、主要国首脳会議(G7)に参加する7か国、EU、ロシア、および新興国11か国からなる20か国で構成されるグループのことで、定期的に首脳会合、財務大臣・中央銀行総裁会議、労働雇用大臣会合、外務大臣会合を開催しています。
G20は各国の財務大臣はもちろん、国際通貨基金や世界銀行などの国際機関も参加して世界金融についての議論が行われることから、仮想通貨投資においても注目するべきトピックです。昨今では、G20の会議においても仮想通貨について議論がされる機会も増えてきており、今後国際的な仮想通貨の規制の枠組みを作っていくとしています。
仮想通貨は証券か?世界が注目する証券問題に取り組むSEC
SEC(米国証券取引委員会)は、米国における株式や公社債などの証券取引を監督・監視する連邦政府の機関です。SECでは、仮想通貨が証券であるかどうかの調査を進めており、結果によって仮想通貨が法的に証券として扱われることから世界から注目が集まっています。また、SECはビットコイン普及に必要と言われる金融商品ビットコインETFの取り扱いを審査する期間でもあるため、二重の意味で注目を集めている組織です。
セキュリティ対策を重視して取引所を活用しよう
相次ぐハッキングや規制当局による引き締めは、2017年の仮想通貨市場の熱狂を冷ますには十分でした。今ではセキュリティがしっかりしていない仮想通貨取引所を選ぶべきでないということを、仮想通貨初心者でも知るフェーズに入りつつあります。
世界最大級の仮想通貨取引量を誇る大手の仮想通貨取引所BINANCEの代表もさまざまな事件を受けて「仮想通貨取引所において大切なことはセキュリティ」と公言しており、仮想通貨投資家は仮想通貨取引の前に安全な仮想通貨取引所を自分で調べることが求められています。そこで、以下ではHEDGE GUIDE編集部おすすめのセキュリティが万全な仮想通貨取引所をご紹介していきましょう。
セキュリティ強化を取引所運営の第一方針とする「bitbank」
bitbank(ビットバンク)は、セキュリティ強化を取引所運営の第一とする方針を立てている仮想通貨取引所です。ビットコインセキュリティ専門企業のBitGoと提携し、インターネットに接続されているホットウォレットの安全性を常時確保することによって、世界最高峰のセキュリティを提供しています。bitbankでは、不定期ではあるもの、ユーザーに対してセキュリティ対策の詳細な対応状況を公開しており、自分が保有する仮想通貨のセキュリティ状況を判断して利用が可能であることも特徴です。
金融機関のバックグラウンドをグループ会社にもつ「GMOコイン」
GMOコインは東証プライム上場のGMOインターネットのグループ会社です。GMOコインでは、同じくグループ会社であるGMOクリック証券で培われた金融サービス提供のノウハウや堅牢なセキュリティ、管理体制の下でサービスが提供されていることが特徴です。また、セキュリティ対策においても、インターネットから切り離されたオフライン環境で仮想通貨を管理している他、システムを24時間態勢で監視が実施されています。親会社であるGMOインターネットは11年以上に渡り、インターネットの金融システム構築・運用していることから、安心して利用できるおすすめの仮想通貨取引所です。
独自のウォレットシステムで万全の対策「BITPoint」
BITPointは東証二部上場の株式会社リミックスポイントの完全子会社で、リミックスポイントの金融関連事業で培った金融サービス提供ノウハウを活用したセキュリティ対策を実施する仮想通貨取引所です。BITPointでは独自のウォレットの仕組みである「ウォームウォレット」を構築しており、「安心・安全な仮想通貨取引」をモットーに金融商品取引業者水準のセキュリティ、管理態勢を確保していることが特徴です。BITPointの代表取締役である小田玄紀氏は仮想通貨取引に関する書籍の執筆も手がけており、仮想通貨取引において万全の体制が敷かれているおすすめの仮想通貨取引所です。
個人でも仮想通貨を安全に管理しよう
仮想通貨取引所はユーザーの利便性を確保する目的で、保有資産の一部をインターネットに接続したホットウォレットで管理しているとされています。ホットウォレットは利便性の一方でハッキングリスクが高く、取引所保管よりもさらにハッキングリスクを低めたいという方は自身で仮想通貨を管理する必要があります。そこで、以下では仮想通貨の管理方法としてユーザーが比較的簡単に導入可能な、仮想通貨ウォレットについてご紹介します。
30種類の仮想通貨が保管可能なハードウェアウォレット「Ledger Nano S」
Ledger Nano Sは、フランスのLedger社が提供する仮想通貨のハードウェアウォレットです。ハードウェアウォレットは、端末内で仮想通貨の所有権の証でもある秘密鍵を管理するため、仮想通貨をインターネットから完全に隔離した状態で保管することができます。端末には物理ボタンとスクリーンが搭載されているため操作性が高いだけでなく、ハッキング被害によって端末が外部から遠隔操作されないような仕組みも整えられています。価格は12,490円(2018年10月時点)ですが、シッピングコストがかさむことや日本語サポートに対応していないことを考えると、割高になっても国内の正規代理店での購入がおすすめです。
安全性と透明性の高さが特徴のハードウェアウォレット「Trezor」
Trezorは、TREZOR社が提供する仮想通貨のハードウェアウォレットです。ForbesやCNNなど、大手メディアの掲載実績もあるTrezorは、ソフトウェアがすべてオープンソースとして公開されている透明性の高さと、第三者でもバックドアのない安全性が監査であることが特徴です。TrezorはLedger Nano Sと比較して対応通貨数が多くないものの、NEM(XEM)の保管が可能です。保有する仮想通貨対応のハードウェアウォレットを購入することはもちろんですが、ハードウェアウォレットは紛失リスクや故障リスクもあるため、ビットコインだけを保有している場合でもTrezorとLedger Nano Sの2台を購入するなど、複数台の保有がおすすめです。
初心者でもスマホで仮想通貨を安全に保管できるソフトウェアウォレット「Ginco」
Gincoは、株式会社Gincoが提供する仮想通貨のソフトウェアウォレットです。Gincoはスマートフォンアプリとしてインスールするだけで利用できるウォレットで、日本語で分かりやすいUIが特徴です。従来、仮想通貨のウォレットは技術用語なども多く、日本語に完全に対応しているウォレットもありませんでした。そうした中、Gincoは日本語サポートも行っており、初心者であっても使いやすい利便性の高さとセキュリティのバランスが整ったウォレットとなっています。また、Gincoではインストールをしておくだけでトークンが配布されるAirdropも定期的に実施している他、Gincoに仮想通貨資産を10万円以上保有しているユーザーは高額なAirdropが当選するようにされているなど、仮想通貨を楽しむことができる仕組みも整っているおすすめのウォレットです。
管理を取引所に任せるか自身で行うかは自由
昨今、セキュリティ強化に努めている仮想通貨取引所は多くありますが、仮想通貨保有量の多い仮想通貨取引所はハッキング対象となってしまうことも事実です。ハッキングに対して個人ができることはそれほど多くありませんが、取引所を分散して利用したり、上述のウォレットを複数台導入することでリスクを最小限まで抑えることができます。仮想通貨投資を始めたいと考えている方はハッキングリスクを常に考えておく必要がありますので、ぜひあらかじめ検討をしてみることをおすすめします。
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