2022年は、年初からFRBを中心に世界の中央銀行の積極引き締めがテーマとなってきました。しかし、2022年8月現在、市場は既に利上げを織り込んでいます。
FRBであれば、今回の利上げサイクルのターミナル・レート(最終着地点)は来年の前半までに概ね3.5-4.0%の範囲で織り込んだ状態です。中央銀行の積極引き締めに伴うリセッション(景気後退)に、テーマが本格的に移行してきています。
今回は、主要先進国の中で真っ先に利上げサイクルをスタートさせ、他の中銀のモデルケースになる可能性のあるニュージーランド中銀(RBNZ)の金融政策決定会合と、真っ先にリセッション入りしそうな英国の重要経済指標について、詳しく解説していきます。
※本記事は8月15日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBNZ政策決定会合
1-1.前回7月RBNZ政策決定会合
1-2.直近の経済状況
1-3.今回8月RBNZ政策決定会合の予想
1-4.発表後の反応予想 - 英経済指標
2-1.8月BOE政策決定会合の内容
2-2.7月CPIの予想
2-3.8月GFK消費者信頼感調査の予想
2-4.発表後の反応予想
1.RBNZ政策決定会合
1-1.前回7月RBNZ政策決定会合
予想通り2%から0.5%引き上げ、2.5%とすることを決定しました。0.5%の大幅利上げは3会合連続で、インフレ抑制を確信するまで金融政策の引き締めを継続するとしました。
声明では、「CPIが中銀目標(1~3%)内に確実に戻るように断固として取り組む」、「引き続き利上げを継続することは適切」などインフレ抑制に強い姿勢を示していました。RBNZは、中立金利を2%に設定しているものの、今回の利上げで中立金利を上回る水準に政策金利を引き上げたことになります。インフレ抑制のための利上げで他の多くの中銀に先行した形となっています。
また、引き続き5月会合時に示した、2022年年末までに3.4%とハイペースでの利上げを実施したのち、2023年中に3.9%に到達後しばらくして2024年後半からは利下げに転じるという政策金利見通しに違和感はないとしています。
1-2.直近の経済状況
第1QのGDPは予想を大幅に下回り前期比▲0.2%となりました。家計消費は増加しましたが、オミクロン株の感染が経済活動を混乱させ生産と輸出が減少しました。
金融引き締めにより住宅価格は下落しているものの、実質所得の減少が今後消費を圧迫するのかどうか注意したいところです。
RBNZは、インフレ抑制のために雇用を犠牲にする意向を示唆しました。このような認識はパウエル議長も示しており、今後主要中銀の総意となってくる可能性があります。
【参照記事】ブルームバーグ「パウエルFRB議長、物価抑制への「無条件」コミットメント強調」
第2QのCPIは前年比+7.3%と第1Qの+6.9%から加速し、+7.6%の上昇率を記録した1990年第2Q以来、32年ぶりの高水準となりました。主に建設費や家賃の上昇がけん引した形となっています。前期比で比較すると+1.7%と、第1Qの+1.8%上昇からやや鈍化していますが、まだピークをつけるのはまだ先になりそうです。
第2Qの雇用統計は、雇用者数が横ばい、失業率が3.3%に前回の3.1%から上昇しました。賃金の伸びは最低賃金が6.0%引き上げられたこともあり、前年比+3.5%と大幅に加速しました。ただ、物価上昇率と比較すると全く追いついておらず、RBNZの利上げは継続しそうです。
1-3.今回8月RBNZ政策決定会合の予想
市場では9割方が今回も0.50%引き上げ政策金利が3.0%に到達することを予想しています。更に5月に示したRBNZの見通しに通り、年末までには3.5%まで引き上げることが織り込まれています。
1-4.発表後の反応予想
RBNZはFRBやBOC(カナダ中銀)の6か月前、RBAの8カ月前、ECBの10カ月前から引き締めサイクルを開始しています。昨年10月に利上げを開始し、最初の3会合連続で0.25%の利上げ、その後は3会合連続で0.50%利上げを実施しました。現在の政策金利は2.50%となっています。
ハイペースな利上げにもかかわらず、NZのインフレ率(前年比)は第1Qの+5.9%から第2Qは+7.3%まで上昇しています。7月に開催された前回のRBNZのその後の数少ない経済指標を見る限りでは、NZのインフレがピークアウトした兆候を読み取ることは出来ません。
予想通りであれば、反応は限定的となるでしょう。その後は、声明から今後の利上げペースに関するヒントを探すこととなりそうです。
また、サプライズがあるとするなら、ハト派方向でしょう。依然としてインフレが高水準に留まっていることで、住宅市場の冷え込みや個人消費や企業センチメントの低迷といった景気減速の動向もいち早く表れてきています。
直近の第2Qの雇用統計を見てみると、失業率は第1Qに底打ちし、引き締めが徐々に効果を発揮していることが分かります。しかし、賃金上昇はまだ加速を続けているため、RBNZとしては引き締めを継続するでしょう。
過去を検証すると、先に失業率が上昇を始めその後2-3四半期後から賃金上昇率が落ち着いてくるという傾向があります。失業率が第1Qで底打ちしたのが正しいとすると、RBNZの予想より若干早く年明け早々に利上げサイクルが一旦終了する可能性があります。
2.英経済指標
2-1.8月BOE政策決定会合の内容
8月BOE金融政策会合は8対1の賛成多数で政策金利を0.5%引き上げ1.75%にすることを決定しました。反対した参加者は0.25%の利上げを主張したものの、将来的に必要とあれば0.5%という見方です。そこまで意見が乖離しているわけではなさそうです。
エネルギー価格の高騰によるインフレが、個人消費にダメージを与えGDP成長率も2022年第4Qから2023年末まで5四半期連続でマイナスになるという予想です。将来の景気後退を予測しているにもかかわらず0.5%の利上げを実施するということは、米国同様上げられるうちに上げて将来利下げの余地を作りたいのでしょう。従って、余程景気が崩れない限りは、CPIが落ち着くまでは、次回も0.5%の利上げの可能性があります。
市場では9月に0.25%もしくは0.5%の利上げ、11月に0.25%の利上げをして、最終的に政策金利が2.25-2.5%に達したところで今回の利上げサイクルが終了するとの観測が高まっています。しかし、それでもBOEが見ているターミナルレートは2023年中に2.9%であり、織り込みが不足しています。
2-2.7月CPIの予想
市場予想は、前年比で6月の9.4%から9.9%へ上昇する見込みとあって、引き続き物価には上昇圧力がかかりやすい状況です。また、10月に電気料金が引き上げられる予定で、当面、物価低下は望みづらい状況です。
予想以上にインフレ高進を示す指標結果となれば、イングランド銀行への大幅利上げ観測は一部で広がるかもしれません。しかしそれ以上に悪い金利上昇による経済の下押し懸念から、ポンド売りが強まる危険性の方が高いでしょう。
2-3.8月GFK消費者信頼感調査の予想
7月の▲41から更に悪化し1974年の統計開始以降の最低水準を更新し▲42となる見込みです。過去に景気後退(リセッション)の先触れとなった水準を下回った状態が続きそうです。
前回は、今後12カ月の家計への期待度を示す指数が2ポイント上昇したことはジョンソン首相の辞任表明を受けた楽観ムードを反映している可能性があるという指摘もありました。次期首相選で優位に立つトラス氏の公約の減税に期待が高まるのであれば、ポジティブサプライズの可能性があります。
2-4.発表後の反応予想
スタグフレーション下での利上げのGBPへの影響について、直近のBOE政策決定会合後のGBPの値動きでは、経済成長予想がメインドライバーとして機能しそうです。つまり、CPIが上昇してBOEの利上げ観測が高まったとしても、景況感が悪化するようであれば、GBPにとってはマイナスの効果ということです。
しかし悪材料は織り込んだ状態でもあることから、下値は1.2000近辺で限定的だと予想します。むしろ、GFK景況感指数がポジティブサプライズになることの方が、値動きは大きくなる可能性があります。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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