ロシアがウクライナに侵攻しました。当初ウクライナ東側の反政府勢力占領地域のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国での軍事作戦だけかと思われていたものの、全方位からウクライナの首都キーウに向けて侵攻する侵攻となりました。完全なミンスク合意違反・国連憲章違反となります。
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一方で、西側諸国は制裁を決定し、ロシアの侵攻の程度に応じて日に日に制裁の範囲を拡大しています。ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意しました。ロシアからエネルギー供給を受けている欧州が自国への跳ね返りを嫌って足並みがそろわない状況だったものの、返り血を覚悟しての重い決断を決定しました。
当面エネルギー価格が引っ張り上げる形でインフレは高止まりするでしょう。一方で投資家のセンチメントは悪化し、個人の消費活動も減退する可能性があります。今後の中銀の金融政策の方針は気になる所です。
今週は、RBAとBOCの政策決定会合やパウエル議長が3/15・16のFOMCのロックダウン期間に入る前の最後の議会証言があり、盛り沢山の内容となっています。それぞれについて解説していきます。
目次
- RBA中銀会合
1-1.前回2月の会合
1-2.会合後の材料
1-3.今回の結果と市場の反応の予想 - BOC中銀会合
2-1. 前回1月の会合
2-2.会合後の材料
2-3.今回の結果と市場の反応の予想 - パウエルFRB議長議会証言
3-1.3/15-16のFOMC予想
3-2.議会証言後の市場反応予想
1.RBA中銀会合
1-1.前回2月の会合
事前予想通り金利は0.1%で据え置き、週40億AUDの債券購入プログラム(QE)の終了が決定されました。しかし、QEの終了は近い将来の利上げの可能性を示唆するものではないと牽制しました。今年中の利上げに関する明確な示唆はありませんでした。
今後もインフレを見ながら忍耐強く臨むという、ハト的な内容となりました。総賃金の伸びがインフレが持続的に目標を達成するのに一致する速度になるまでには、まだしばらく時間がかかると判断している様です。
インフレ見通しはこの先数四半期でRBAのターゲット上限の3%を超えて3.25%まで上昇したのち、来年は2.75%に下落すると予想していました。
参照:ブルームバーグ「豪中銀、量的緩和を今月で終了-利上げに慎重な姿勢を維持」
1-2.会合後の材料
ロウ総裁は、利上げの開始時期についてこれまでの2024年より前倒しされるような発言が見られています。第4QのCPIトリム平均(RBAが注目している項目)が前年比+2.6%と、RBAのインフレターゲットレンジ上限の3%以内に収まっているなか、慌てる様子は見られません。あと2回(4月と7月)はCPIの結果を見たいと発言しています。
参照:ロイター「豪中銀利上げ8月以降か、ロウ総裁「CPI統計2回見たい」」
第4Qの賃金指数はほぼ事前予想通り前年比+2.3%となりました。傾向としては上昇基調が続いているものの、RBAが利上げに向けての目標とする3~4%にはまだ遠い状況です。
2/21からワクチン接種完了を条件に海外からの観光客の受け入れを再開しています。未だ感染者数は多数いる状況ですが、WITHコロナ政策を推進しているため、今後の経済活動の回復に伴う需要の回復に伴いインフレ圧力が強まる可能性があります。
ウクライナ問題の地政学リスクは少なく、むしろ資源価格が上昇すれば豪経済にとってプラスの方が大きい可能性があります。
1-3.今回の結果と市場の反応の予想
ロウ総裁の直近の発言及び経済指標を見る限り、利上げの可能性はないでしょう。インフレ率は上昇しているものの、他国と比較すると緩やかです。RBAが利上げの一つの基準と見ている賃金指数3%にも届いていないません。急いで利上げをして景気回復を遅らせるようなことはせず、もう少し慎重に待つのではないかと予想しています。
ただ、RBAの相対的なハト派スタンスを受けたAUDショートは相応に積み上がっているため、ウクライナ発のリスクオフの展開となっても、大きく売られることはありませんでした。RBAが予想通りハト的な結果となっても売り圧力は限定的となり、ウクライナ発のリスクオフ時の安値の0.7100レベルも割れないと思います。
また、可能性は非常に低いですが、もしロウ総裁が早期利上げの可能性などタカ派的な発言をした場合、これまでのショートが解消され、0.7400レベルまでの上昇する可能性はあります。ただ、債券市場は今年の7月から利上げ開始を既に織り込んでいることから、上値も限定的となるでしょう。
2.BOC中銀会合
2-1. 前回1月の会合
70%程度の利上げが織り込まれていたものの、結果は据え置きでした。しかし、金利の引き上げは行わないという文言を声明文から削除するなど、今後の引き締めの可能性は示唆されました。
参照:ブルームバーグ「カナダ中銀、近い将来の利上げ示唆-感染再拡大の中で金利据え置く」
2-2.会合後の材料
1月カナダ雇用統計は、雇用者数が▲20.01万人と事前予想▲11万人より悪化しました。正規雇用、パートタイム雇用いずれも減少し、失業率は6.5%に上昇、労働参加率は65.0%と前回の65.4%から低下するなど、ほぼ全項目が悪化しています。ただ、これもオミクロン株蔓延による一時的な要因とも考えられ、単月の結果だけでBOCはスタンスを変更しないでしょう。
CPIは予想を大きく上回り前年比+5.1%となりました。また、3月の利上げ幅は0.5%の織り込みが50%程度に増加しています。
オーストラリアと同様、ウクライナ問題に関しては地理的にも経済的にも悪影響は少なく、むしろ資源価格上昇によるプラスの面の方が大きいでしょう。
マイナス面としては、トラック運転手達のワクチン接種の義務化に抗議するデモが拡大し長期化しています。交通の要所となっている米国との国境の橋が一部閉鎖の状態となりました。
オンタリオ州では非常事態を宣言が発出され、少なくとも6か所の自動車工場が一時的に操業を停止しました。経済にダメージが出た可能性があります。2022年第1Qのカナダ経済はマイナス成長に見舞われる危険性があるだけでなく、サプライチェーンの混乱が長引けば、10年来の高水準に達しているインフレをさらに押し上げる恐れがあります。
2-3.今回の結果と市場の反応の予想
今回の利上げはほぼ確実でしょう。問題は、利上げ幅になってきます。BOCがインフレを重視するのであれば今回0.5%の利上げ幅になるかもしれません。
債券市場では、FRB以上の利上げ幅が織り込まれている状況です。為替市場では、FRBとBOCはほぼ同じペースでの利上げが予想されているため、レンジでの推移となっています。
しかし、直近では、ウクライナ問題からの資源価格上昇の恩恵を受けてCADは買い方向にトレンドが出つつあります。0.5%の利上げかつ、ターミナルレートの引き上げが行われるようなら、USDCADは1.2500近辺のサポートラインを試す展開になると予想します。
3.パウエル議長議会証言
今回の議長の証言は、3/15-16開催のFOMCのブラックアウト期間に突入する前の最後の公の発言となります。
3-1.3/15-16のFOMC予想
2月に発表された力強い雇用統計と、前年比+7.5%に達した消費者物価を受け、市場では3月の0.5%の利上げを行う可能性を一時90%以上織り込むなど、米金利上昇に期待感を示しました。その後、ウクライナ情勢が悪化し、ついにはロシアがウクライナに侵攻するにあたって、先行き不透明感が広がり、大幅利上げ期待はかなり後退しました。
直近では織り込みは15%程度まで落ちてきています。ウクライナ問題がある程度収束しないと、大幅利上げは難しいという見方が広がっています。
3-2.議会証言後の市場反応予想
ロシア・ウクライナ情勢の悪化により、FRBが引き締めのパスを再評価するかどうかのヒントが議長の発言から得られるかに注目です。もし、0.5%の利上げを考えているなら、織り込みが足りな過ぎるため、相当タカ派の発言をして市場を誘導するでしょう。
本来アメリカは、ウクライナ問題から経済的に受けるダメージは殆どないことから、FRBがウクライナ問題に配慮して利上げペースを遅らせることはないと考えています。株価暴落時には影響を受ける可能性があります。現状株価は持ちこたえています。
しかし、いくら影響がないからと言って、ロシアがウクライナに侵攻している状況では、3/15-16のFOMCで0.5%の利上げの可能性は低いと思います。ただ、ターミナルレートの上方修正の可能性について言及する可能性についてはリスクシナリオとして考えておきたいです。
この場合、今後の指標次第でという枕詞を付けて株価に配慮するようであれば、リスクオンのUSD売りの展開が強まりますし、何もなくただターミナルレート引き上げだけに言及するなら、USD買いと株下落のリスクオフの展開を予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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