2022年は年初から、FRBを中心に世界の中央銀行の積極引き締めがテーマとなりました。市場は既に利上げは織り込み済みです。FRBであれば、利上げサイクルのターミナル・レート(最終着地点)は来年の前半までに概ね3.5-4.0%の範囲で織り込んだ状態です。
市場のテーマが中央銀行の積極引き締めに伴うリセッション(景気後退)に移行している様子が伺えます。景気後退となった場合、欧州・英国よりは米国の方が浅い後退に留まるのが市場のメインシナリオです。
見極めるうえで注目は物価指標だけではありません。消費者信頼感や企業景況感など先行きを占うセンチメント系の指標が、今後消費や生産、受注といった実体を示す指標に表れてきます。最後は雇用にどの程度影響するかを予想していかなければなりません。
今回は、RBNZ、BOCの金融政策決定会合と米国CPIとミシガン大消費者信頼感指数について詳しく解説していきます。
※本記事は7月4日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBNZ政策決定会合
1-1.前回5月のRBNZ政策決定会合
1-2.直近の経済状況
1-3.今回7月のRBNZ政策決定会合予想
1-4.発表後の反応予想 - BOC政策決定会合
2-1.前回6月のBOC政策決定会合
2-2.直近の経済状況
2-3.今回7月のBOC政策決定会合予想
2-4.発表後の反応予想 - 米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数
3-1.前回米5月CPIと6月米ミシガン大消費者信頼感指数
3-2.今回米6月CPIと7月米ミシガン大消費者信頼感指数
3-3.発表後の反応予想
1.RBNZ政策決定会合
1-1.前回5月のRBNZ政策決定会合
予想通り4月同様0.5%引き上げて政策金利を2.0%としました。また、金利の最終到達点を3.4%から3.9%に引き上げ、達成時期も2025年3月から2023年6月に1年以上大幅に前倒し、タカ派サプライズとなりました。
2022年年末までに3.4%とハイペースでの利上げを実施したのち、3.9%に到達後しばらくして2024年後半からは利下げの見通しを示しました。
参考:ブルームバーグ「NZ中銀、初の2会合連続0.5ポイント利上げ-政策金利年内3.25%想定」
1-2.直近の経済状況
第1QGDPは予想を大幅に下回り前期比▲0.2%となりました。家計消費は増加したものの、オミクロン感染が経済活動を混乱させ生産と輸出が減少しました。
金融引き締めにより住宅価格は下落しています。実質所得の減少が今後消費を圧迫するのかどうか注意したいところです。
RBNZはインフレ抑制のために雇用を犠牲にする意向を示唆しました。このような認識はパウエル議長も示しており、今後主要中銀の総意となってくる可能性があります。
1-3.今回7月のRBNZ政策決定会合予想
0.5%利上げして政策金利を2.5%に引き上げると予想します。更に年末までには3.5%まで引き上げることが織り込まれています。5月に示したRBNZの見通しに沿ったレベルです。
1-4.発表後の反応予想
RBNZは他国より先んじて利上げを開始し、既に10カ月が経とうとしています。これまで合計で1.75%引き上げてきたものの、依然としてインフレは高水準に留まっています。
一方で、住宅市場の冷え込みや個人消費や企業センチメントの低迷といった景気減速の動向もいち早く表れてきています。ハト派方向に転換すればサプライズとなります。
ただ同日の夜に米CPIを控えていることから、発表後から一方的に動くことはないと予想します。
2.BOC政策決定会合
2-1.前回6月のBOC政策決定会合
政策金利を1.0%から1.5%に2会合連続で0.5%引き上げました。0.5%利上げは2回連続で予想通りだったものの、声明文のなかでmore forcefullyという文言が追加されました。
2%のインフレ目標達成のためにより強力に行動する決意を表明したこと、インフレの定着についての表現が強化されたこと、経済が需要過多の状態にあることを明言したこと、これらが市場ではタカ派と捉えられました。
2-2.直近の経済指標
4月小売売上高は前年比+1.3%、前月比+0.9%となっています。6月の雇用統計でも平均時給は加速し、失業率は4.9%と4カ月連続で過去最低を更新しました。堅調な雇用と家計貯蓄に支えられ、個人消費は底堅く推移しています。
5月CPIは前年比+7.7%と1983年1月以来の伸びとなりました。BOCが注目しているCPIトリム値・CPI中央値・CPI共通値のいずれも目標の1-3%レンジを大きく上回っている状態です。
BOCが発表した調査によると、多くの企業がインフレの長期化を予想しています。来年にかけては賃上げを予定する一方で、価格についても顧客に転嫁せざるを得ないという方針であることが明らかになっています。
2-3.今回7月のBOC政策決定会合予想
0.5%か0.75%で割れているものの、0.75%利上げをして政策金利を2.25%に引き上げるという予想が優勢です。雇用が堅調、賃金もインフレも高水準、住宅市場にも減速は見られていないため、早期に金利を引き上げるでしょう。
ターミナルレートをどこに据えているのかに注目してください。現在2022年末では3.5%が織り込まれています。
2-4.発表後の反応予想
FRBとほぼ同じペースでの利上げとなり為替市場への影響は限定的になるでしょう。サプライズがあるとすればハト派方向です。
仮に直前に発表される米6月CPIの結果が強く、USD買いの展開となっている中でハト派サプライズとなった場合は、USD/CADは直近高値を超えて1.3200を上方ブレイクする可能性があると考えます。
3.米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数
3-1.前回米5月CPIと6月米ミシガン大消費者信頼感指数
5月のCPIは予想に反して幅広い項目で上昇が加速しました。前年同月比の伸び率が+8.6%と40年ぶりの上昇幅となりました。
3月が+8.5%、4月が+8.3%とインフレがピークに達して落ち着き始めているとの希望的観測は打ち砕かれました。記録的な高値で推移するガソリン価格に加え、食品とサービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の1を占める住居費の上昇にも衰えが見えません。
物価高騰のもう一つの大きな要因である自動車価格については、新車、中古車・トラックは鈍化したものの、水準的にはかなり高く消費者の生活は強く圧迫されています。
6月のミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は50.2と前月の58.4から大幅に悪化し過去最低水準に落ち込みました。1年先インフレ期待:5.4%(前月:5.3%)、5-10年先のインフレ期待:3.3%(前月:3%)となりました。いずれも上昇しており、インフレ高進が引き続き家計への打撃となっていることは明らかです。
3-2.今回前回米6月CPIと7月米ミシガン大消費者信頼感指数の予想
CPIは前年比+8.8%と前回の+8.6%を上回る見込みです。原油価格上昇を受けて、ガソリン価格の上昇が止まらず、全体を押し上げると見られます。
ミシガンは過去最低を記録した6月の50.2から更に悪化し49.0の予想となっています。
3-3.発表後の反応予想
6月はFOMCの前のブラックアウト期間中にCPIとミシガンの強い数字が発表されました。市場は0.75%の利上げを織り込みました。
今回は7/16からブラックアウト期間に突入します。CPIから数日、ミシガン発表後も少し時間があります。パウエル議長が可能性として否定しなかった1%の利上げを行う場合は、何らかの手段でマーケットとコミュニケーションをとる可能性があります。
CPIが強かった場合は、まずは0.75%の利上げまでは即座に織り込みUSD買いとなるでしょう。その後はFOMCメンバーからの発言を待つ形になると予想します。
更に金曜日に発表されるミシガンの数字が崩れ、同時に発表される1年先の期待インフレが5.4%から下がっていた場合、利上げ期待によるUSD買いではなく、景気後退懸念から来るUSD買いになりそうです。
ただ、6月以降欧州のガス価格を除いてエネルギーや食料品価格の下落傾向が顕著に見られます。足元の賃金上昇も若干落ち着き始めています。この状況が継続するのであれば、効果が数字に表れそうな秋から年末にかけてインフレがピークを打ち、来年以降は緩やかな上昇に戻るというFRBの望む展開となる可能性もあるため、物価関連指標には注意が必要です。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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