2024年6月現在、アメリカではCPIとFOMCが発表されました。重要指標と中央銀行の政策金利の発表が重なることは珍しく、市場では乱高下が予想されていました。
本稿では、プロトレーダーの筆者が、CPIとFOMCを受けた市場の動向を分析し、今後のトレード戦略について解説します。金利やドルインデックス、株価指数の動きも説明するので、是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年6月14日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- CPIを受け利下げ織り込みが強まる
- FOMCでは政策金利が据え置きに
- CPIとFOMCを受けた市場の動向
3-1.CPIを受けドルインデックスは下落
3-2.年内の利下げ織り込みは2回に増加 - 6月から7月にかけてのトレード戦略
4-1.基本戦略はドル売り
4-2.ドル円をショートとオセアニア通貨ロングのドルショートに注目 - まとめ
1.CPIを受け利下げ織り込みが強まる
まず、アメリカのCPIの結果を確認しましょう。
アメリカのCPI
指標 | 結果 | 予想 | 前月 |
---|---|---|---|
総合CPI(前月比) | +0.0% | +0.1% | +0.3% |
総合CPI(前年同月比) | +3.3% | +3.4% | +3.4% |
コアCPI(前月比) | +0.2% | +0.3% | +0.3% |
コアCPI(前年同月比) | +3.4% | +3.5% | +3.6% |
2024年5月と比較すると、総じて低下しています。予想対比でも悪い数字となっており、インフレの鈍化が確認されました。特に総合CPIが前月比で上昇していない点や、コアCPIの低下が顕著に見られ始めた点は、FRBにとって安心できる内容だったでしょう。
詳細を見ると、5月のガソリン価格の低下がCPIの低下に寄与しています。また、サービス価格の寄与度が大きい帰属家賃は、2024年5月から引き続き上昇しており、インフレ鈍化には寄与しませんでした。この結果、ガソリン価格の下落が帰属家賃の上昇を相殺しています。
CPIを受け、利下げ織り込みが強まっています。
2.FOMCでは政策金利が据え置きに
FOMCでは、政策金利が据え置きとなりました。予想通りであり、サプライズとはなりませんでした。
CPIを受けた後のFOMCでもあり、FRBメンバーが年内の利下げ予測を1回に据え置いたことに注目が集まりました。2025年には、4回の利下げが織り込まれています。
年内の利下げなしを予想するFRBのメンバーは4人で、7人が1回、8人が2回となりました。中央値は1回です。
パウエル議長の会見では、CPIがインフレ抑制や2%のインフレ目標に向けて進展していると理解を示しつつも、まだ経済データで良好な結果を確認する必要があると述べていました。単月のCPIではなく、継続的な確認が必要だと強調していました。
声明文にも変化が見られます。2024年5月のFOMCでは、インフレに関しては、一段の進展は見られていないとしていましたが、2024年6月は「委員会が目指す2%のインフレ目標に向けて緩慢な進展が見られた」と変更されています。
この変化は、FRBとしてもインフレ鈍化の兆しが見えていることを示しており、パウエル議長も記者からの質問に対して「インフレ鈍化、利下げに関して言及するか迷うところでもあった」と発言しています。これにより、市場が予想するほどタカ派ではないと考えられます。
参照:ブルームバーグ「FOMC声明:2%インフレ目標に向けては緩慢なる一段の進展」
しかし、FRBは依然として慎重な姿勢を崩しておらず、PCEデフレーターなどが注目ポイントとなるでしょう。トレンドから考えると、米国債金利の低下とドル安がメインシナリオだと、プロトレーダーの筆者としては考えています。
3.CPIとFOMCを受けた市場の動向
3-1.CPIを受けドルインデックスは下落
※図はTradingView[PR]より筆者作成
上記はアメリカCPIとFOMCに関連する米国債2年金利(緑)、ドルインデックス(オレンジ)、S&P500指数(水色)を表しています。
まず、CPIで弱い数字が出たことにより、金利が一時的に大幅に低下し、ドルインデックスも下落しました。その結果、金利低下が株価指数に上昇圧力をかけ、S&P500指数は上昇しました。
一方、FOMCではFRBメンバーがタカ派的な年内の利下げ予測を発表したことが大きく影響し、金利が上昇、ドルが反発する中で株価は下落しました。しかし値幅を見ると、CPIによる金利低下とドル下落の部分を完全には取り戻せていないことがわかります。
S&P500指数も上昇して引けており、FOMCは若干タカ派的な部分もあったものの、CPIによる利下げを強く織り込んだ短期筋の調整にとどまったと見られます。
3-2.年内の利下げ織り込みは2回に増加
出典:CME「FedwatchTool」
上記は短期金利先物で市場参加者が織り込んでいるFRBの利下げ確率です。
ご覧の通り、CPIとFOMC後には年内の利下げ織り込みが1回から2回に増加しており、9月と12月に利下げが予想されています。これはFRBよりも市場参加者の方が利下げを織り込んでいることを示しており、ここにギャップが生じ始めています。
4.6月から7月にかけてのトレード戦略
4-1.基本戦略はドル売り
プロトレーダーの筆者としては、基本戦略はドル売りだと考えています。
コアCPIが前年同月比で3%台前半まで低下し、サービス価格も低下している点を踏まえると、ドル安シナリオを変更する理由はないと考えています。FOMCは若干タカ派と捉えれましたが、筆者としては前月からのスタンスが維持されただけだと考えています。市場参加者も利下げ予想を増加させていることから、タカ派をそこまで意識していないでしょう。
4-2.ドル円をショートとオセアニア通貨ロングのドルショートに注目
通貨ペアとしてはドル円のショートとオセアニア通貨ロングのドルショートに注目しています。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
ドルインデックスの動きを見ても104.00がサポートラインとなっており、金利は徐々に低下しています。そのため、金利低下が促されると予想すれば、ドルインデックスは104.00を割り、ドル安が進行する可能性があります。
金利が低下することで、米国株は底堅く推移すると考えられます。2024年はアメリカ大統領選挙も行われるため、大幅な下落材料が少なく、むしろ好材料が多い年と言えます。そのため、アノマリー通りにお盆あたりで株価指数をロングにして、11月に上昇したタイミングで利益確定するトレード戦略は選択肢の一つになるでしょう。
5.まとめ
本稿では、アメリカのCPIとFOMCを解説し、市場の反応とトレード戦略についてまとめました。
総じてインフレ鈍化とFRBのスタンスに大きな変化がないことが確認できました。PCEデフレーターや日銀の動きも注目されます。クロス円とドルの動きに注意しましょう。
中島 翔
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