アメリカの雇用統計でドル円はどうなる?労働市場の動向や利下げ予想も解説【2024年6月】

※ このページには広告・PRが含まれています

2024年6月現在、アメリカの雇用統計が強い結果を示し、金利上昇とともにドルインデックスも上昇しました。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、雇用統計から分かる労働市場の動向や市場の反応と、今後のドル円戦略について解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年6月11日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. アメリカの雇用統計の結果
  2. アメリカの雇用統計を受けた市場の反応
    2-1.金利上昇と共にドルインデックスも大幅に上昇
    2-2.利下げ予想は9月から11月に後ずれ
  3. 今後のドル円戦略
  4. まとめ

1.アメリカの雇用統計の結果

まずは雇用統計の結果を確認しましょう。

アメリカの雇用統計

指標 結果 予想 前月
非農業部門雇用者数 27.2万人 18.5万人(改定値) 16.5万人
失業率 4.0% 3.9% 3.9%
平均時給(前月比) +0.4% +0.3% +0.2%
平均時給(前年同月比) +4.1% +3.9% +4.0%

失業率が4.0%となり、4%台に乗ってきた点がマイナス面ではあるものの、総じて強い数字が出ました。平均時給は予想以上に強く、非農業部門雇用者数は大幅に増加しました。

ただし詳細を見ると、違った景色が見えてきます。

フルタイムの雇用者数とパートタイマーの雇用者数を見ると、5月のフルタイムの雇用者は62.5万人減少している一方で、パートタイマーは28.6万人増加と大幅な増加を見せています。非農業部門雇用者数の大幅な増加はパートタイマーの増加によるものだと分かります。

非農業部門雇用者数は事業所調査です。正社員で働いている人が、終業後にアルバイトとして働いた場合の給与明細は2つになるため、非農業部門雇用者数の人数がダブルカウントされ、実態よりも数字が上振れてしまう点にも注意が必要です。

また労働参加率や就業率も低下しています。U6と呼ばれる広義の失業率は7.2%と、前月である2024年5月から高い水準で維持されていることから、アメリカ国民はコストプッシュ型のインフレによりアルバイトを余儀なくされており、フルタイムでの雇用がなかなか見つかりにくくなっていることから、表面上の雇用者数だけ増加しているものの、労働市場の実態は良好とは言えないとプロトレーダーの筆者は考えています。

2.アメリカの雇用統計を受けた市場の反応

2-1.金利上昇と共にドルインデックスも大幅に上昇

雇用統計後のドル円
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記は、アメリカの雇用統計前後の5分足チャートです。ローソク足がドルインデックス、オレンジが米国債2年金利、水色がS&P500指数です。

雇用統計が強い数字だと市場で受け止められ、金利が大幅に上昇しました。2年金利は0.15%も急騰する動きとなっています。

金利上昇と共にドルインデックスも大幅に上昇しています。雇用統計前まで利下げ予想が強まっていたことから、ドルショートが短期的にポジションとして残存していたため、ポジション整理のためのショートカバーである可能性があることは知っておきましょう。

これまでは金利が上昇すると株式市場は下落していましたが、雇用統計の日は下落せず金利が高止まりしたままS&P500指数も上昇しました。発表直後は先物市場で米国株が売られていたものの、NYオープン後にすぐに反発に転じています。

2-2.利下げ予想は9月から11月に後ずれ

次にアメリカの政策金利の見通しについて解説します。
利下げ見通し
出典:CME「FedwatchTool

上記はCMEの短期金利先物から算出された市場の政策金利の見通しです。雇用統計前までは9月に利下げが織り込まれていましたが、11月に後ずれしました。

年内の利下げはなくなりつつあると予想するアナリストも出てきていますが、労働市場を強いとみなすのか、もしくは弱いとみなすべきなのかには議論の余地があるため、単月の雇用統計だけでは判断できないでしょう。今後発表される、CPIとFOMCでの数字や結果を合わせて検討する必要があります。

3.今後のドル円戦略

日米金利差とサポートライン
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記は日米金利差とドル円の動きを示すチャートです。緑色が日米の10年金利の金利差、オレンジがドル円です。

緑のチャートの下落は日米金利差の縮小を示しており、金利差によって為替の強弱が決まると考えれば、ドル円も下落するはずです。しかし2024年4月あたりから、金利差でトレードする長期的なプレイヤーではなく、短期筋がマーケットを動かしていたために、ドル円が上昇する中で日本国債10年金利が上昇し、日米金利差が縮小する動きが出ました。

2024年5月は米国債金利も低下方向だったため、足元ではドル円と日米金利差は同じ方向で動いています。強い雇用統計を受けて金利と共にドル円も上昇しています。

サポートライン
※図はTradingView[PR]より筆者作成
簡単なサポートラインと次の節目にラインを引いてみたところ、一旦サポートされているものの、FRBの次のアクションは利上げではない以上、金利上昇は望めずドル高の要因が一つ失われています。一方で、日銀の国債買い入れ減額が予想されており、日本国債の金利が上昇しやすい地合いとなっているため、ポジションとしては円高ドル安に向かいやすい展開が予想されます。

IMF通貨ポジション
出典:外為どっとコム「IMMポジション

IMM通貨先物ポジションをみると、円ショートのポジションが積み上がっており、CPIやFOMCをきっかけに短期的な巻き戻しが発生し、円高圧力となる可能性もあります。短期的には、ドル円はロングで攻めるよりは、ショートでのエントリーを検討したほうが有利な展開が続くでしょう。

ただし、日本の政策金利がアメリカの政策金利に追いつくほどの利上げは不可能であるため、短期的なドル円の調整安は発生するものの、ドル円は上方向で推移すると考えられます。

4.まとめ

本稿では、アメリカの雇用統計から分かる労働市場の動向や市場の反応、今後のドル円のトレード戦略について解説しました。

ドル円は値動きが激しくなっているため、リスク管理には十分注意しつつトレードを行いましょう。またショートポジションを構築する場合は、スワップポイントでのマイナスが大きいため、トレードする期間をあらかじめ決めておくと良いでしょう。

The following two tabs change content below.

中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12