為替と金利には密接な関係があります。政策金利の動向を予想する上で押さえておきたいのが、消費者物価指数(CPI)です。
消費者物価指数(CPI)は、その名の通り消費に関連する経済指標です。普段生活している中でも体感することができ、馴染み深くわかりやすい経済指標だと言えるでしょう。
今回は、なぜ、FXで消費者物価指数をチェックしなければならないのか、また、消費者物価指数の結果によって外国為替相場はどのように動くのかについて解説していきます。
目次
1.消費者物価指数とは
消費者物価指数は、私たち消費者が購入するモノの物価を示す指数です。教科書的に言うと一般消費者世帯が購入する物やサービスの総合的な価格の水準を表す数値のことを指します。
ここでいう物価とは、スーパーや量販店などへ買い物に行ったときに目にする商品ごとに設定されたモノの値段ではありません。一定の基準で合算された、さまざまなモノやサービスの値段の平均値を指します。その物価の動向を測るモノサシが、物価指数です。
消費者物価指数は、ドイツの経済学者であるラスパイレスが1864年に提案したラスパイレス計算式によって算出されており、日本以外でも多くの国がこの計算式を採用しています。一言で説明すると、ある時点の世帯の消費構造を基準にして、同じものを買った場合の費用がどのように変動したかを指数値で表したものです。
また消費者物価指数は買い手側から測る物価指数であり、これとは別に生産者側から測る「生産者物価指数(PPI)」という指標もあります。消費者物価指数は基準時を100として比較時の指数が上昇していれば、物価が上がったと捉えることができます。100は基準時における全国の平均的な家計消費を示し、例えば前年比を計算する場合に基準時100に対し、一年後の指数が102であれば、物価が2%上昇したということになります。
このように、消費者物価指数は物価変動を示す指標で、インフレ状況や景気を判断する際の重要指標です。消費者物価指数の項目、構成比、算出方法には国ごとに違いがあり、世界の主要各国でほぼ毎月発表され、その国の物価の推移を表すモノサシとして、どの国でも非常に注目されます。
最近では、低成長経済の中、需要や季節で価格変動がある食料品・エネルギー関連を除くコア指数に重点が置かれています。
2.一般的な経済指標の見方
経済指標は、パーセンテージ、指数、数値など、様々な形式で発表されます。ただ、どういった形で発表されるにしろ、「事前予想」との比較で見ておく必要があります。たとえ良い数値が出たとしても、事前予想と同程度であれば「好材料が出尽くした」という印象から、逆に通貨の下落要因にもなります。
また、どんなに悪い材料が出たとしても、事前予測と同程度であれば「悪材料が出尽くして下げ止まったのだから、今度は通貨の価値が上昇する」という考えから、通貨が買われることもあります。
更に、「前月比」「前年同期比」という比較対象も大事なポイントです。ちなみに、「季節性」などがある経済指標では前年同期比が用いられることが多いです。
消費者物価指数の場合は、例えば、衣料品の価格が季節の初めには高値で、季節の終わり近くになるとセールなどで値下がりするといった、季節的な要因が含まれるので、「前年同月比」が重要視されます。
3.消費者物価指数の見方
消費者物価指数は投資家にとって重要な経済指標で、特に物価変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数が注目されています。経済が安定的に成長を続けていくためには、インフレ率の緩やかな上昇が欠かせないと考えられています。
そのため、主要国の中央銀行の多くが、経済の安定した成長に望ましいとされるインフレ率の目標水準を定めています。インフレ率が目標付近で安定して推移するように政策金利を動かしたり、市場に流通する資金の量を調節したりといった金融政策を行っています。
中央銀行の金融政策の判断材料として消費者物価指数が用いられているため、為替市場において、特にアメリカやユーロ圏の消費者物価指数発表が米ドルやユーロの大きな値動きにつながることもあります。
一般的に、物価が上昇しているということは景気が良く消費者の購買意欲が高くなっており、将来的に金融政策も引き締め気味(利上げ)になることが予想されます。そのため、その国の通貨は買われやすくなります。
逆に物価が下がっているということは景気が悪く、消費者の購買意欲が下がっていると言え、景気下支えを目的とした中央銀行による利下げ期待が高まることで通貨安が進行しやすくなります。
ただ、物価は必ずしも景気動向と一致するわけではなく、「スタグフレーション」といわれる景気後退時に、供給サイド要因で物価が上昇する局面もあります。そのため、他の経済指標も併せて確認しなければなりません。
たとえば、米国においてインフレ懸念それ自体が経済の圧迫材料になっていると考えられている時はコア指数が上昇し、インフレ懸念が台頭するとそれだけでドルが売られることがあります。反対に、コア指数が下落してインフレ懸念が後退すると、ドルが買われたりもします。市場の視点や、市場の問題点がどこにあるのかを確認しながら見ていかないと、騙されてしまうため注意が必要です。
本来教科書的には、物価が上昇するとその国の通貨価値は相対的に低下(通貨安)し、物価が下落すると通貨価値は相対的に上昇(通貨高)します。物価が上がると、同じ金額で買えるモノの量や数が減るので、通貨の価値が低下したと考えるからです。
しかし、物価が上昇した場合、政府は利上げして市中に出回るお金の量を減らし、通貨価値を維持しようとします。市場参加者は政策金利の上昇(利上げ)を連想することで、実際には為替市場で通貨高に反応する局面が殆どです。
4.コロナ関連の財政出動のインパクトは?
コロナショックからの回復局面で、各国政府が巨額の財政出動をしました。それに伴い、各国で消費者物価指数が上昇しましたが、これが一時的なものなのかそうでないのか、世界中で議論されています。
ここで、全く物価が上がらない日本のケースを考えると、その答えが見えてくるかもしれません。日本では、2013年から日銀が巨額の異次元金融緩和を実施しました。そして、今回のコロナショックでは、日本は一人当たり10万円という世界と比較すると少額の財政出動を実施しました。この二つの例から以下の事が言えるでしょう。
- マネタリーベースを増やし、低金利を維持したところで、企業や国民に資金需要がない場合、それはただ単純に銀行の預金として記録されるだけで物価上昇には繋がらない。
- 少額の現金給付を行っても、将来に不安がある場合や購入を遅らせると、いずれ価格は下がってくるというデフレマインドにどっぷり浸かってしまった国民の中では、殆どが貯蓄に回ってしまい、市中にお金が回らず、物価上昇には繋がらない。
日本は、まさに世間で騒がれているMMT理論(※)を実践してしまっている状況です。要するに、多額のお金を刷っても、それが貯蓄に回っているうちは物価は上がらないということです。
※MMT理論…現代貨幣理論。独自通貨を持つ国は、債務返済のための自国通貨発行額に制約を受けないため、借金をいくらしても財政破綻は起きないと説く理論。
安定した雇用(給料)と雇用する側(企業)が投資をしたいと思うような環境(需要)を、政府サイドが財政出動によって創出することができれば、人々がお金を使い、物価が上昇していく可能性も高まります。
アメリカに目を転じてみると、個人宛の給付金も桁違い、企業の雇用サポート額も桁違い、インフラ投資による需要創造がありました。こういうことがあって初めて物価は上昇するものなのかもしれません。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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