2021年5月10日~16日の為替動向、下旬に向けての見通しは?ファンドマネージャーが解説

5/10の週の相場は、米インフレ先行きの思惑により米金利が乱高下し、それに伴い米株も激しく上下する場面がありました。全体的に不安定な相場展開となり、為替市場もUSDが振らされる展開となりました。

この記事では、2021年5月10日~16日の為替動向振り返り、また5月下旬にかけての見通しを解説します。

目次

  1. 2021年5月10日~5月16日の振り返り
  2. 5月中旬にかけての注目材料は?2つ解説
    2-1.豪経済指標(19日第1Q賃金指数、20日雇用統計)
    2-2.インフレ
    2-2.米株

1.2021年5月10日~5月16日の振り返り

5/10の週は、米インフレ先行きの思惑により米金利が乱高下し、それに伴い米株も激しく上下するなど不安定な相場展開となり、為替市場ではUSDが振らされる展開となりました。

前週時点では、12日発表の米消費者物価指数が市場で注目されていました。事前予想の段階から上昇が想定されていましたが、結果は予想以上の高い伸びとなりました。市場ではインフレ警戒が高まって米債利回りが急上昇、株式市場は連日の下落に見舞われましたが、週末にかけて株式市場はやや落ち着きを取り戻していました。

しかし、14日の米小売売上高は弱めの数字、ミシガン大学消費者信頼感指数も冴えず、インフレ対応で出口戦略が早まるとの見方がある一方で、インフレは一時的なものとして緩和姿勢継続が維持されるとの見方も引き続き有力で、今後の米金融当局の姿勢については見方が二分されている状況です。

イギリス・スコットランド

前週の9日に、スコットランド選挙の結果が開示され、英国からの独立を掲げるスコットランド民族党(SNP)は、議席を1議席増やし最多の64議席(定数129議席)を獲得しましたが、単独過半数には1議席届きませんでした。ただ、同じく独立を掲げる緑の党が6議席から8議席に増やし、合わせると独立支持議席が過半数を超えた状態です。

しかしジョンソン首相は、住民投票実施の要求を認めないと英紙テレグラフとのインタビューにおいて発言したことから、住民投票の可能性の後退につながり、GBPは大きく買われました。

アメリカ求人労働異動調査

11日のJOLTS(求人労働異動調査)での米求人件数は812万件に増加し、予想を大幅に上回りました。求人件数は雇用された労働者を200万件余り上回り、この差も最大となりました。多くの雇用主が人材確保の難しさを指摘し、その理由に長引く感染不安や育児の責任、手厚い失業保険給付を挙げました。

求人は宿泊・食品サービスや製造業、建設業など幅広い分野で増加していますので、月初のショッキングな雇用統計の結果は、雇用のミスマッチが原因である可能性が高く、景気が上向いていることが改めて確認できます。

CPI(消費者物価指数)急上昇

12日のCPI(消費者物価指数)は急上昇しました。総合指数は前年比+4.2%で2008年9月以来の大幅な伸びを示し、コア指数は前年比+3.0%(予想+2.3%)・前月比+0.9%(予想+0.3%)となりました。前年比ではベース効果の影響が含まれることから、前月比を注目していましたが、前月比も大幅な伸びを示しました。インフレ上昇を牽引したのは、中古車価格(10%)・航空運賃(10.2%)・ホテル(7.7%)と、サプライチェーンの停滞や経済再開による移動を伴う活動に敏感な項目となり、ある程度事前予想通りではありましたが、その増加幅は予想以上となりました。この結果を受けて、インフレ懸念が高まり、金利が急騰、それに伴い米株が急落しました。

ただ、中古車に関してはサプライチェーンの問題であり、経済活動の再開やワクチンの普及とともに徐々に緩和される可能性が高く、また航空運賃やホテルも、価格ベースで見た場合は依然としてコロナショック前の水準を大きく下回っていることから、どちらかというとインフレは一時的とするFOMCの見方が優勢です。

ビットコインを中心に暗号資産も暴落しました。テスラ社CEOのイーロンマスク氏が、ビットコインでのテスラ社購入を停止したことが原因です。マイニング時の電力消費が常軌を逸した状態であり、環境保護の観点からと見られています。

カナダ中銀

13日にマクレムカナダ中銀総裁が、コロナショック後からほぼ1年続いてきたCAD高についてついに言及しました。前回のカナダ中銀会合で、資産購入額の減額を決定したことについては、減額と利上げなどの引き締めは違うものという意思表示か、「カナダ経済がパンデミック前の水準まで完全な回復が実現し、企業が再投資を再開することができるようになるまでは経済支援を継続するし、利上げは急がない」と示唆しました。また、「CAD高は輸出の回復に悪影響を与えており、景気見通し全体へも影響を与える可能性がある」とCAD高を牽制しました。これまでBOCのタカ派スタンス及び資源価格の高騰に支えられた良好な経済指標を受けて、強烈な米CPIを受けてもCADの方が買われてきましたが、この発言をきっかけにロングの巻き戻しが入った形となりました。

メキシコ中銀

また、同日メキシコ中銀政策決定会合が行われ、予想通り5名全員一致で4%に据え置きが決定しました。メキシコは直近のCPIが6.12%と中銀のターゲットレンジの上限の4%を大きく上回っています。今回はインフレについては一時的との判断を下しましたが、声明文では不確実性が極めて高いことが金融政策に対する大きな課題という認識を示し、「インフレについてはリスクがアップサイドにシフトした」と明記されたことから、次の一手は利上げとなる可能性が高まり、MXNは買われました。

米小売り売上高は予想を下回る

14日の米小売り売上高は、ヘッドラインが前月比0%(予想+1%)、コアが前月比▲0.8%(予想+0.6%)と予想を大きく下回りました。3月は給付金を受け取った後贅沢にお金を使い、4月は一旦落ち着いたのかと考えられます。しかし、前月比0%ということは先月と同じだけ消費したということを意味し、決して勢いが止まったわけではありません。今後6月辺りの夏休みシーズンに向けて経済活動も本格化してくると考えられるため、個人消費は底堅く推移することになりそうです。

ECB

その他、ECB理事会議事録では、今年のインフレはある程度ボラティリティが高くなるとし、BOE(イギリス中銀)ベイリー総裁も、インフレの持続的上昇は見込んでいないとの認識を示しました。FOMCメンバーですが、現在出てきているベース効果含みの強い物価指標が、このまま継続するのか、世界中の中銀関係者が見極めている状況です。今のところ、多くの中銀関係者は、物価の上昇は一時的と評価していますが、市場は若干前のめりに緩和解除を見込んでいます。

2.今週の注目材料

2-1.豪経済指標(19日第1Q賃金指数、20日雇用統計)

オーストラリアの殆どの経済指標は良好ですが、唯一インフレだけが弱いままというのがRBAが緩和を継続している要因です。RBAも賃金上昇の弱さを懸念しています。もし今回の指数が強かった場合、7月に予定されているRBA会合での債券購入額の見直しに影響がでる可能性があります。

また、翌日発表となる雇用統計は4月の数字となりますが、3月末に政府の給与補助制度が切れた後の初めての数字となるだけに、現在の本当の雇用市場の実力が確認できることから注目されています。

2-2.インフレ

クラリダFRB副議長から予想を大幅に上回ったCPI(消費者物価指数)を受けて気になる発言がありました。従来通り、「インフレ率の上昇は一過性の要因によるもの」としたものの、「驚く結果であった」や、「望ましくない水準になれば対応する」という発言から、物価上昇を一時的とする判断に対して動揺が見えます。13日には、マクドナルドが時給を平均13ドル超に引き上げることを決定しましたが、大手企業がこのような決断をすると、中小の個人店舗でも賃上げをしないと人が集まらないことから、徐々にインフレになる下地は整ってきている可能性があります。

2-3.米株

13日に強いPPIが発表されましたが、前日12日のCPIの様に株は売られず、むしろ上昇しました。当初は、前日12日の株の暴落の反動だと思っていましたが、14日には小売りが予想を大幅に下回り、ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)も弱かったにもかかわらず株は上昇しました。納税期限の5/17に向けて昨年コロナバブルで儲けた利益を、増税前に換金していたという可能性も出てきています。このようなフローが、CPI後にほぼ出尽くしたことから、徐々に新規の買戻しが入り込んできているのではないかと考えられます。

また、バイデン大統領は5月末に向けてインフラ投資計画の合意を目指していることから、月末に向けて政治家の発言が出てくるでしょう。その規模に注意しなければなりませんが、基本的に合意に向けて視界良好であれば、株が底堅く推移し、為替はリスクオンのUSD売りが優勢となる可能性を頭に入れておく必要があります。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」