2021年6月14日~6月20日の為替動向、6月末に向けての見通しは?ファンドマネージャーが解説

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2021年6月14日~6月20日の為替動向は、FOMCの影響を大きく受けました。18人中11名のメンバーが2023年末までに2回の利上げを見込んでおり、13名が少なくとも1回の利上げを見込んでいることが示唆されたこと、また2022年の利上げ予想においても、前回の4人から7人に増えるなど、予想されているよりもかなりタカ派な内容となり、この結果を受け米金利上昇、米ドル上昇、米株下落と、素直な反応を見せました。

この記事では、2021年6月14日~6月20日の為替動向の振り返りと、6月末にかけての見通しを解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2021年6月14日~6月20日の振り返り
    1-1.EUの経済政策は?
    1-2.オーストラリアの経済政策、雇用統計は?
    1-3.米小売り売上高の数値は?
    1-4.FOMC、利上げ予想やドットチャートは?
  2. 22日のパウエル議長の議会証言
    2-1.22日のパウエル議長の議会証言
    2-2.米金利
    2-3.BOE(イギリス中銀)政策決定会合
    2-4.BOM(メキシコ中銀)政策決定会合

1.2021年6月14日~6月20日の振り返り

6/14の週は、ドル買いが強まりました。注目された米FOMCを控えて16日アジア時間までは小動きで動意なく、FOMCで3か月に一度発表されるドットチャートの中で、利上げ開始時期が前倒しとなったことがサプライズとなり、一気にドル買いが進みました。ユーロドルは1.21台から1.18台へ、ポンドドルは1.41台から1.38台へと下落、ドル円も109円台後半から110円台後半まで急伸しました。ただ、債券市場の織り込みとしては既に十分織り込まれていることから、政策金利に連動する短期金利に大きな動きはありませんでした。

しかし、18日になり、FRBの引き締めを意識した株安の影響で長期金利が下がりだし、全体的にリスクオフの展開となる中、クロス円が全般的に暴落し、ドル円も110円近辺まで戻されました。

1-1.EUの経済政策は?

EUが決定した新型コロナの世界的大流行から経済復興を支えるための債券発行計画「復興債」の総枠は5年で8000億ユーロですが、今回はNEGU債(ネクストジェネレーションEU)ということで、今年2021年だけでも長期債中心に1000億ユーロを調達する計画です。まずは10年債を200億ユーロ発行しましたが、これは事前予想の約2倍の規模で、需給悪化懸念から欧州金利は上昇しました。

EUは昨年2020年から、規模の小さい緊急時失業リスク緩和支援(SURE)債を発行していましたが、経済再開とインフレ加速見通しでユーロ圏の債券利回りがここ数か月上昇してしまったことでSURE債の魅力は下がっており、NGEU債に期待が集まっています。NGEU債の3分の1はグリーンボンド(環境債)となる予定で、発行規模も巨大で米国債に並ぶ市場になると予想され、将来的な資金流入を見越してEURは底堅く推移していました。しかし、FOMC以降ドル買いの流れの中で下落しています。

1-2.オーストラリアの経済政策、雇用統計は?

15日には、6/1のRBA(オーストラリア中銀)政策決定会合の議事録が公表されました。債券購入プログラムの終了に関しては時期尚早とし、インフレ目標の達成に寄与する完全雇用への復帰が金融政策の優先事項であり、金融政策は暫くの間緩和的であり続ける必要がありそうだと、緩和継続を示唆しました。

7月の会合においてテーパリングを含む量的緩和政策の見直しを協議する予定だが、緩和解除に向けた条件をクリアするためのハードルは高そうです。これを受けて、AUDの上値は重くなっています。

また、豪雇用統計は予想を上回り+115千人(予想:+30千人)となりました。労働参加率は66.2%に改善し、失業率は5.1%(予想:5.5%)に低下するなど、3月末で終了したJob Keeping制度(雇用主に対する賃金補助制度)の終了をスムーズに吸収しており、豪州内の景気回復が確認できました。今後は、唯一の懸念点である、低迷する物価が上がってくるかどうかが注目です。

1-3.米小売り売上高の数値は?

米小売り売上高は前月比▲1.3%(予想:▲0.8%)の落ち込みとなりましたが、4月分がかなり上方修正されています(0%⇒+0.9%)。3月からの3か月を勘案しても、金額ベースでは高水準を維持しており、必ずしも消費疲れを反映した数字というわけではなさそうです。また、翌日にFOMCを控えていることもあり、為替市場での反応は殆どありませんでした。

1-4.FOMC、利上げ予想やドットチャートは?

注目されたFOMCですが、政策金利及び資産買入ペースは維持され、声明文においても特段変更点はありませんでしたが、メンバーの金利見通しを表したドットチャートにおいて、18人中11名のメンバーが2023年末までに2回の利上げを見込んでおり、13名が少なくとも1回の利上げを見込んでいることが示唆され、2022年においても前回4人だった利上げ予想者が7人に増えるなど、予想されているよりもかなりタカ派な内容となりました。この結果を受けて米金利上昇、米ドル上昇、米株下落と、素直な反応を見せました。

しかし、GDP・インフレ見通しは、2021年だけ大幅に共に引き上げ、その先は小幅上方修正となり、引き続きインフレは一時的との見方が維持された格好です。また、パウエル議長の会見では、インフレがFRBの予想以上に上昇し持続する可能性があると示唆されたものの、テーパリングについては議論することについて議論したと述べるにとどめ、インフレ目標の達成に向けた更なる著しい進展には、一段の進歩が必要と強調するなど、具体的なガイダンスは示しませんでした。

また、サプライズがあったドットチャートについても割り引いてみるべきと、冷静になることを促すような形で、引き続き今後もデータを確認していく展開になりそうです。2023年2回の利上げは既にマーケットに織り込まれている水準であり、債券市場では現時点では大きな値動きには繋がっておらず、株の下落も小幅にとどまっています。

少し気になる点は、2022年の利上げを主張したメンバーが7人もいたということです。このメンバーは、今年中にテーパリングをスタートしないと間に合わないというスケジュール感を持っている人達であり、今回はパウエル議長がこれらのタカ派発言を抑え込んで全体としてハトを維持したものの、今後のデータ次第では議長だけではハトを維持できなくなる可能性があり、今後のデータ及びパウエル議長の発言には要注意です。

2.今週の注目材料は?

今週の注目材料を4点解説します。

2-1.22日のパウエル議長の議会証言

パウエル議長はFOMC後の会見において、「ドットプロットは割り引いてみるべき」と、ドットチャートを受けての市場の過度な期待を牽制し、物価上昇についても従来の一時的なものであるという認識を継続し、公式に上方修正されたGDP・物価見通しがあるなかでも、先行きに対する慎重な姿勢と緩和維持を示しました。

今回の議会では、物価動向に対する質問などが出てくることがほぼ確実となる中、一時的という認識にどこまで説得力を持たせることが出来るのかが注目されるところです。基本的には、FOMC後何も経済指標が出てきていない中では、議長の考えや姿勢が変わるとは思えず、一旦買われ過ぎたUSDの調整の材料に使われると予想します。

FOMC後の材料としては、ハト派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁が最初の利上げは2022年後半と発言し、サプライズの債券利回り上昇・株安を誘ったことくらいです。現状、タカ派メンバーを抑え込んでいる議長から、少しでもタカ派メンバーに配慮したような発言が出てくるようだと、更に米ドル買いが進行する可能性もあります。

2-2.米金利

短期金利だけ上昇、長期金利は低下し、金利カーブはフラット化が進行しています。短期は政策金利を見ていて、長期は引き締め後のインフレが落ち着いた世界を見に行っているのだとすると、18日に株は下がりましたが、時間が経てば戻ると考えられます。このケースだと、資源国や新興国の利上げを控えている国は、対ドルで買い戻されると予想します。

逆に、引き締めによるリスクオフが主因で、つられて長期金利が低下しているのであれば、もう少し金利は低下し、USD独歩高が継続してしまいます。ただ、次の雇用統計までは米ドルが崩れる材料は出にくいことから、米ドルが売られるにしても、ロングの利食い程度の小幅なものにとどまりそうです。

2-3.BOE(イギリス中銀)政策決定会合

ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大が広がる英国ですが、6/21に予定していたロックダウンの完全解除も延長されました。ベイリー総裁など大半のBOEメンバーは、物価上昇は一時的で金融緩和を縮小する必要はないと主張していることから、今回も据え置きが予想されています。

一方で、直近のCPIは中銀のターゲット上限を超える2.1%と2年ぶりの高水準に達し、コアCPIも2%を記録していますので、物価見通しが2022年後半に鈍化するという前回の見通しがどのように変化しているのかに注目です。その他の経済指標も良好であり、先週のFOMCを見ていると政策は維持しながらも声明文のトーンがタカ派転してくる可能性は十分にあります。

2-4.BOM(メキシコ中銀)政策決定会合

インフレが中銀のレンジを超えていることからタカ派転の可能性が高まっていますが、先週のFOMC後からUSD買いMXN売りが激しく、このままでは輸入物価の上昇が更なる物価上昇に繋がる恐れがあります。

実際に利上げをしないにしても、タカ派な声明を出して通貨安を止めたいという思惑はあると思いますので、会合前にMXNが売られ過ぎている場合、逆張り的にMXNロングを仕込んでも面白いかもしれません。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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