2023年のドル円はいくらになる?日銀のイールドカーブコントロール修正の影響も解説

2022年12月の日銀政策会合では、黒田総裁がサプライズイベントを市場関係者にプレゼントしたことで、大きな変動が発生しました。

今回はプロトレーダーである筆者が、日銀のイールドカーブコントロールの修正を踏まえて、2023年の為替相場への影響について解説します。

※本記事は2023年1月時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 日銀は上限金利を0.50%まで引き上げる
  2. 海外投資家は日本国債の10年をショートしていた
  3. 日銀政策会合後の市場の動きは?
  4. ドル円は120円から130円のレンジで収まるか?
  5. まとめ

1.日銀は上限金利を0.50%まで引き上げる

2022年12月の日銀政策会合は、政策スタンスの大幅な変更を予期させる結果となりました。政策金利は引き続き据え置きではあるものの、イールドカーブコントロールが修正されました。

これまでは大規模金融緩和の一つとして、日本国債10年金利を0.25%に抑え込むという戦略を維持してきました。しかし今回は、上限金利を0.25%から0.50%まで引き上げました。この変更は市場を驚かせ、黒田ショックとも呼べる動きになっています。

黒田総裁はこの10年金利の上限を0.50%まで引き上げたことは利上げではなく、国債の市場機能不全に対応し金融環境に悪影響が出ることを避け、緩和効果の浸透を図ると説明しました。市場からはコミュニケーション不足であり、急な変化にしては、インパクトが大き過ぎるとの声もあります。

参考:ブルームバーグ「黒田ショック走る、日銀緩和修正は出口に向けた市場混乱の序章か

黒田総裁の説明では不十分な点が多いことから、市場では出口戦略を見越した最初の一歩ではないかとの予想もされています。市場も日銀の考えがまだ理解できていないという状況です。

2.海外投資家は日本国債の10年をショートしていた

海外投資家は、日銀が金融政策の変更を迫られる時期は近く、金利が上昇すると予想し、日本の国債(10年)のショートポジションを構築していました。

海外勢は日銀のイールドカーブコントロールによる弊害が大きいと考えていました。物価上昇や急激な円安を材料に、日銀がイールドカーブコントロールの調整を行い、為替市場に対応すると予想していました。

ただしイールドカーブコントロールの修正は、早くても来年年初あたりと考えられていたことから、12月の修正はサプライズとなりました。

3.日銀政策会合後の市場の動きは?

日銀政策会合後の商品別の値動きを確認してみましょう。

日銀政策会合後の商品別の値動き
※図はTradingViewより筆者作成

日銀政策会合は2022年12月の20日に行われました。ご覧の通り市場が急変していることが確認できます。

青色がドル円です。137円台から一時130円台半ばまで急落しています。日経平均株価も27,000円台から26,000円台を一時割れる動きとなり、日本国債の10年金利は一気に0.46%付近まで急騰と大きな反応を見せました。

一部では、為替介入よりもドル円が変動したという解説も見られます。しかしまず12月は流動性が薄くなっており、10月や11月の流動性とは大きく異なります。12月に値幅が大きくなるということは当然であり、比較するということは難しいでしょう。

そしてドル円の急落はドル円でショートポジションが積まれたわけではなく、これまで1年を通して継続していた日本円のショートポジションを保有していた投資家が一気に日本円を買い戻して決済したことが大きな変動に繋がっています。

また米ドルをロングポジションで保有していた投資家もアメリカの利上げペースが鈍化する兆しが見えてきている中で、ポジションを徐々に落としているフローが見られています。米ドルロングの解消も、ドル円の下落に影響していると言えるでしょう。

12月は年末ということもあり、新規のポジションは作らない投資家がほとんどです。多くの投資家がポジションを落としていく中、サプライズが起きたことで、一気にポジションの巻き戻しが発生したと考えられるでしょう。

4.ドル円は120円から130円のレンジで収まるか?

筆者の見解としては、2023年のドル円は120円から130円のレンジ内で推移しやすいと考えています。

2022年は大幅な円安が進行し、以前まで存在していた1ドル100円のイメージが崩れました。2022年に急激な円安が進行する前は、ドル円は110円から120円が心地のいい水準だったと言えます。

自民党政権ということもあり、ドル円が100円を割れるというのは想定しにくかったことから、110円から120円がこれまで投資家としても予想しやすい水準でした。現在は、レンジが10円切り上がったというイメージを多くの投資家が持っており、大幅な円高が期待しにくい状況でしょう。

12月は日銀政策会合のサプライズを受けて、円高が急激に進み、7円という大幅な値幅を記録しました。しかし流動性が薄い中、1年間で積み上がっていたポジションの巻き戻しと考えられます。

日銀は国債の金利形成のために、当面国債を買い増す方針を示しています。物価上昇が円安も原因の一要因となっていたことから、一旦円安修正のために流動性が薄いタイミングを狙って為替水準を修正しに行ったとも考えられます。プロトレーダーである筆者としては、コミュニケーション不足ではなく、日銀の狙い通りの結果となった印象です。

今回のイールドカーブの修正は、出口戦略のための第一歩というわけではないようです。日本が簡単に政策金利の引き上げるとは考えにくく、2023年から日米の金利差が縮小方向に転じていく可能性は低いでしょう。

ドル円は日米の金利差を考慮すると、スワップポイントがマイナスになるため、ショートポジションを長期で保有するのは難しいでしょう。米国の利上げペース次第になりそうです。

しかし、米国のFRBが2023年中に利上げを行うとは、2022年末時点では予想されていません。円ショートのポジションがある程度巻き戻された段階では底堅く推移し、一方で135円を超えて上昇し始めると上値が重くなり130円方向に戻していくような展開を予想しています。

日本の政策金利は引き続き横ばいと予想されるため、米国の利上げペースの鈍化が、どの程度のスピードで織り込まれるかがポイントでしょう。FRBがタカ派になるとは考えにくいものの、ドル円は戻り売りのスタンスを取り、120円を割れてくる段階ではロングポジションの構築を検討するのも選択肢の一つでしょう。

ただし日銀が新たな出口戦略を想起するアクションを行った場合は、ドル円はより下方向で反応するでしょう。

5.まとめ

日銀の政策変更の影響や市場の反応、そして来年どのようなスタンスで今回の発表を捉えておくべきかを解説しました。

日銀の本心は掴みにくく、柔軟に対応するしかありません。しかしプロトレーダーである筆者としては、ドル円は上値余地が限られていると考えています。動向に注目しながらトレードを行いましょう。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12