2023年4月現在、日本では本決算が終了し、新年度に入りました。3月までの相場が終了し、これまでとは異なる動きが出やすくなる時期でもあります。
アメリカでは一旦混乱が落ち着きを取り戻しつつあります。一方で再度インフレ動向に注目が集まる中、ギャップがある状況です。4月以降のドル円の動向予想をプロトレーダーの筆者が解説します。
※本記事は2023年4月3日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.PCEデフレーターの結果
最初に2023年3月31日に発表された、PCEデフレーターの結果について解説します。
前月比 | 市場予想(前月比) | 前年同月比 | 市場予想(前年同月比) | |
---|---|---|---|---|
PCE総合価格指数 | 0.3% | 0.3% | 5.0% | 5.1% |
PCEコア価格指数 | 0.3% | 0.4% | 4.6% | 4.7% |
個人消費の動向を表すPCEデフレーターは、3月最後の注目された経済指標となっていました。
総合指数は前月比で予想通りとなりました。市場予想からは低下しています。また前月からも低下しており、引き続き物価上昇圧力は低下していると分かります。
次にコア指数を確認します。PCEコア価格指数は前年同月比、前月比ともに市場予想を下回っています。コア指数が低下していると言う点はインフレ鈍化をしっかりと確認できる内容となっているでしょう。
インフレ調整後の実質PCEに関しても前月比で0.1%減となっています。しっかりと実質ベースで低下している点も好材料と言えるでしょう。
しかし現在のインフレ率は、まだまだ平常時と比較すると高い水準です。インフレ対応を最優先課題とするというFRB高官のコメントはまだ多い状況です。市場とFRBのスタンスのギャップがあります。
今回のPCEデフレーターは現在の金利低下や、年内の市場が予想している利下げ予想を肯定する内容となったとも言えるでしょう。
2.4月のドル円の相場動向
次に4月のドル円の相場動向を考えていきたいと思います。3月末から4月にかけては、これまでのトレンドが変わりやすいというアノマリーがあります。
※図はTradingViewより筆者作成
しかし今年1月に127円台まで急落していたドル円は、3月までに137円まで10円程度の反発を見せた後、再度130円台まで低下して、現在132円台での推移となっています。3月までの円安トレンドの後にしっかりと円高に振れており、4月は方向性の判断が難しい状況です。
また4月はドル高方向で推移しやすくなります。ドル円は比較的に底堅い推移になる傾向があります。現在のドル円の動きを見ると、短期的には上方向での推移になりやすい可能性があります。
しかしアメリカの利上げがストップすることが視野に入ってきている環境下において、市場は利下げも織り込んでいます。ここから米ドルをどんどん買っていくというスタンスにも、抵抗感がある方もいるでしょう。
そのためドル円は、4月は短期的に上昇する方向で見つつも、上値で売っていくトレード戦略が、選択肢の一つになるでしょう。ドル円が136円付近までの戻る可能性は、視野に入れておきましょう。
一方で3月の高値である138円手前は、なかなか越えられないでしょう。一方向にトレンドが出ない可能性があります。
保守的に攻める場合は、ドル円が135円を超える水準を目安とし、ショートポジションを検討してみてください。積極的にポジションを取りたい場合は、現在の水準から短期での押し目買いのスタンスで、上を狙っていくトレード戦略も選択肢の一つでしょう。
ロングで攻める場合は、下方向でのストップをしっかりと入れつつ、リスク管理をしましょう。
3.日本株とドル円の関係性
次に昨年は崩れていたドル円の日本株の関係性について復習してみたいと思います。
※図はTradingViewより筆者作成
上記はオレンジが日経平均株価、青色がドル円の相場を示しています。これまでは、円安は日本株にはプラス材料に働き、ドル円が上昇すると日経平均株価が上昇しました。しかし2022年はドル円の日経平均株価の関係性が逆相関になりました。ドル円上昇=日経平均株価上昇の動きは見られませんでした。
しかし2023年は、以前のような関係性が戻ってきているようにも見えます。1月にドル円が安値をつけて反転上昇しているタイミングで、日経平均株価も上昇する動きを見せています。3月の高値からドル円が円高方向に反転したタイミングで、日経も下落する動きとなりました。
足元は株式市場の反発が強いものの、ドル円の戻りは限定的な動きになっています。再度円高が進行する場面があった場合には、ドル円の下落余地があるように見えます。株式市場の動きには注目してみてください。
日経平均株価は米国株と比較しても割安感があります。相対的に海外投資家が選好しやすい状況になっていることから、28,000円を回復する動きになってきています。
30,000円を目指すような動きになれば、ドル円もさらに反発すると予想されます。しかし米国の利上げスタンスの変化を考慮すれば、上値は限定的と言えます。
4.米国金利と米ドルの動き
次に米国債金利と米ドルの動きを見ていきたいと思います。
※図はTradingViewより筆者作成
水色が米国債2年金利、青色がドルインデックスです。2022年は利上げ一辺倒の動きから、短期ゾーンである2年金利の上昇を受けて米ドルも上昇する動きを見せていました。
しかし2022年の年末から、2年金利が高い水準で維持する中で米ドルの下落が顕著に出ています。その後2023年3月の金融不安から、2年金利が急低下する中で米ドルも下落する動きとなりました。
2年金利がさらに低下する動きとなった場合は、ドルインデックスの下落がさらに生じる可能性があります。ドル円の下落余地も大きくなりやすいでしょう。
2年金利の上昇余地が乏しい中では、ドル円の上昇は限定的でしょう。しかし多くのアナリストが円高方向で予想しているため、円高は進行せず、底堅い動きになる可能性がある点に注意しましょう。
5.まとめ
PCEデフレーターと4月以降のドル円の動向について、プロトレーダーの筆者が解説しました。
4月は変化が起きやすい傾向があります。5月から夏場までは株式市場は下落しやすいため、FXトレードの際には株式市場の癖も考慮してみてください。
引き続き焦点はアメリカのインフレ動向となります。トレード戦略を立てる際には、市場と中央銀行の考え方にギャップに注意しましょう。
中島 翔
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