米CPIが弱ければドルは買い?FXで利益を出すための注目ポイントを解説

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注目されていたFOMCが終わりました。6月以来に発表されたメンバーの政策金利予測(DOTS)が上方修正されました。再び米金利の上昇と共に為替市場でもUSD買いが加速しています。

物価が上昇し、利上げ織り込みが加速するたびにUSDは買われていきます。

FRBの方針を確認する上で重要となる、米経済指標が米消費者信頼感指数とPCEデフレータ―が発表となります。今回は、短期的にはUSDロングの調整のきっかけとなるかもしれない、米国の経済指標ついて詳しく解説していきます。

※本記事は9月26日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 米カンファレンスボード消費者信頼感指数
    1-1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数の概要
    1-2.前回8月の米カンファレンスボード消費者信頼感指数
    1-3.直近9月のミシガン大消費者信頼感指数
    1-4.今回9月の米カンファレンスボード消費者信頼感指数の予想
    1-5.発表後の反応予想
  2. PCEデフレーター
    2-1.PCEデフレーターの概要
    2-2.前回8月のPCEデフレーター
    2-3.直近8月のCPI
    2-4.今回9月PCEデフレーターの予想
    2-5.発表後の反応予想

1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数

1-1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数の概要

消費者の観点から米国経済の健全性を図る指標です。米国の民間調査会社コンファレンス・ボードが毎月、現在の景気・雇用情勢や6ヵ月後の景気・雇用情勢・家計所得の見通しについて5000世帯を対象にアンケート調査し、1985年を100として指数化したものです。 個人消費の先行指標とされ、消費者心理を反映した指数と言われます。

米国の消費者マインドを探ることのできる代表的指標として本指数以外にミシガン大消費者信頼感指数(以後ミシガン)が挙げられます。ミシガンのサンプル数は速報値300なのに対して、カンファレンスボードは5000です。ミシガンはサンプル数は少ない分発表の時期が早いため、先行指標として注目されています。

参考:野村證券「証券用語解説集

1-2.前回8月の米カンファレンスボード消費者信頼感指数

8月の米消費者信頼感指数は予想の97.7を上回り103.2と、前月の95.3から4カ月ぶりの上昇となりました。

消費者の現在のビジネスや労働市場の心理を示す現況指数は145.4と7月の139.7から上昇しました。所得、ビジネス、労働市場の短期的見通しを示す期待指数も前月の65.6から75.1に上昇しました。

大型家電製品、住宅、自動車を購入する意向だとの回答比率は全て上昇しています。ガソリン価格の下落により家計に若干の余裕が生じたことが消費者心理の向上につながったと思われます。

1-3.直近9月のミシガン大消費者信頼感指数

参考として、直近のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)を確認しておきます。

9月のミシガンは予想の60.0は下回ったものの、59.5と前月の58.2から上昇しました。現況指数も58.6から58.9に、期待指数も58.0から59.9に改善しています。

また、1年先のインフレ期待は4.8%から4.6%に低下、5-10年先のインフレ期待も2.9%から2.8%に低下しました。これを受けて市場の10年期待インフレも2.37%に低下しました。

将来のインフレ期待が低下したことで、景況感は多少回復傾向にあります。しかし、物価の高さが生活水準を損ねているとの回答は多く、引き続き消費者は景気の先行きに厳しい見方を示していると言えます。

1-4.今回9月の米カンファレンスボード消費者信頼感指数の予想

直近のミシガンの数字が回復していることから、9月カンファレンスボードの予想も前回の103.2からから若干回復し104.3となっています。ただ、予想分布は102から106と幅広くばらついています。

1-5.指標発表後の反応予想

9月のFOMCでもパウエル議長は痛みを伴ってでもインフレ抑制を優先するといった主旨の発言をしています。基本的に景況感系の指標が改善しても悪化しても余り相場には影響はないでしょう。

参考:ブルームバーグ「パウエル議長、さらなる「痛み」への覚悟促す-積極利上げ継続へ

ただ、現在の相場の流れとしては、世界中の中銀の引き締めによる景気減速が中心テーマとなっています。どちらかというと、悪化した場合の方がリスクオフのUSD買いに繋がりやすく、反応は大きくなると予想します。

2.PCEデフレーター

2-1.PCEデフレーターの概要

米商務省が毎月末に発表している個人消費の物価動向を示す指標です。個人消費支出(Personal Consumption Expenditure)のデフレーターで、名目PCEを実質PCEで割ったものです。

消費段階での物価上昇圧力を測る尺度として用いられます。PCEデフレーターから、価格変動が激しい食品とエネルギーを除いたものを「PCEコアデフレーター」と呼び、FRBが最も重視している物価指標として知られています。

同様の指標に消費者物価指数があるものの、PCEデフレーターの方が調査対象が広いため、実際の物価動向を反映しているとされています。

参考:大和証券「金融・証券用語解説集

2-2.前回8月のPCEデフレーター

7月のPCEデフレーターはガソリン価格が低下したことで前月比▲0.1%となりました。前年比では+6.3%と前回の+6.8%から大きく伸びが鈍化しました。

しかし、その分自動車・衣料品・娯楽用品・家具など他の支出が可能になったのかコア価格指数は前月比+0.1%と上昇しました。前年比では+4.6%上昇と、前月の+4.8%から伸びがやや鈍化しました。

当局が目標とする+2%にはまだほど遠い状況です。GDPの約7割を占める個人消費は、広範なインフレにより多少抑えられてきているのかもしれませんが、引き続き底堅い需要が示されています。

2-3.直近8月のCPI

8月CPIは前月比+0.1%、前年比+8.3%、コアCPIは前月比+0.6%、前年比+6.3%と総じて事前予想より上振れる結果となりました。米CPIはピークアウトが期待されていました。

しかし、ガソリン価格が低下した影響があるはずの総合CPIですら、前月比でまだ上昇を続けていると分かりました。市場の米金利見通しは最終到達点が4.25%近辺まで織り込まれました。

ガソリン価格は下落だけでは、インフレを抑え込むには不十分です。食料品やCPIの約30%を占める住居費など生活に関する項目が上昇しました。

一方、8月PPIについては、総合指数は前月比▲0.1%と7月の▲0.4%に続き2カ月連続でマイナスとなっています。CPIと同じくコアPPIは前月比+0.4%と7月の+0.3%から伸びが拡大しています。

ただ、CPIより先行して落ち着きが見られ始めています。エネルギーは低下、食料品は横ばいとなっています。問題は高止まりしている住居費です。

2-4.今回9月PCEデフレーターの予想

CPIの結果を受けて、PCEデフレーターは前年比+6.0%と伸びは鈍化しました。コアデフレーターは前年比+4.7%と前月の+4.6%から加速する予想となっています。前月比はどちらもプラスとなっています。

CPIを見る限り、外部要因によるエネルギー価格は低下傾向でしょう。今後も引き締めが継続する中、需要は減退する見通しです。上値は重くなると思います。

問題は、粘着性が強い住居費がいつから下がり出すかという点です。既に住宅価格は、引き締めの効果により住宅ローン金利が急騰していることから、買い手が引いています。今年の2月をピークに下がっています。

しかし、まだ賃貸市場には波及していません。一般的には、住宅価格の動きが15~18ヵ月遅れて家賃に波及すると言われています。しかし、この関係を前提とすると、2023年半ばから低下に転じる可能性があります。FOMCのDOTSで示されている2024年から利下げに転じるという予測と整合的です。

2-5.指標発表後の反応予想

FRBはフォワードガイダンスを事実上諦め、物価指標を見てから後追いするスタンスになっています。恐らくFOMCメンバーですら、引き締めの効果がどの程度表れているのか予測がついてない可能性があります。従って、FRBが重要視している物価指標であるPCEデフレーターに注目です。この結果を見て次のFOMC会合での利上げ幅が決まってくるという流れとなるでしょう。

市場は、強くて当たり前という織り込みです。弱かった時にUSD売りの反応が大きくなるでしょう。

但し、このUSD売りはあくまでもUSDロングポジションの調整の範囲内に留まるでしょう。今回限り物価指標が弱かったからと言ってFRBの方針が変わりません。絶好のUSDの買い場になる可能性があります。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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