2022年7月現在、各国中銀が利上げ方向で舵を切る中、日本は緩和政策を維持しています。現在でも黒田総裁が金融緩和は継続的に続けていく方針を示しています。
日銀の金融緩和を利用してFXで稼ぐにためのポイントを、プロトレーダーである筆者が紹介します。
※本記事は7月25日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 金融緩和とは市場に出回っているお金の供給量を増加させること
- 金利差が拡大するため円売りになりやすいことがポイント
- 現段階で円売りトレードで攻めていくのは得策ではない
- 日銀の金融緩和を意識したトレードの注意点を3つ紹介
4-1.円売りポジションは既に積み上がっている
4-2.歴史的な円安水準
4-3.日銀の金融政策の変更 - まとめ
1.金融緩和とは市場に出回っているお金の供給量を増加させること
金融緩和とは景気刺激策の一環です。中央銀行が景気を調整するために利用している政策金利を引き下げて、市場に出回っているお金の供給量を増加させ、資金の巡りを良くするために行う政策です。
政策金利を引き下げることで、銀行が融資の際に設定する貸出金利が低下します。融資が増加し、個人が借入する住宅ローン金利等が引き下がります。
日銀は現在マイナス金利付き量的・質的金融緩和を行っており、イールドカーブをコントロールしながら市場に介入を行っています。
2.金利差が拡大するため円売りになりやすいことがポイント
金融緩和政策がFX市場に及ぼす影響を解説します。
日銀は金融緩和で政策金利を引き下げています。また、市場から国債を買い入れることで資金が民間の銀行に出回る国債買い入れオペレーションを行っています。
日銀はETFの購入も行っており、市場に直接介入するようになりました。ETF購入では日経平均株価やTOPIXが実体経済とは関係なく上昇しやすい、もしくは底堅くなる効果がでます。
まず金利低下で影響が出るポイントは、「金利差が拡大するため円売りになりやすい」ということです。日本円を保有するよりも、低金利の日本円を借りて、高金利の外貨を購入した方が運用面ではメリットがあると判断する投資家が増えます。
そのため日本円を売り外貨を購入するフローが発生することから、円安トレンドになりやすい材料の一つとなります。
日本は低金利が続けている中、主要各国の中央銀行はインフレ抑制のために政策金利を引き上げています。日本と他国の金利差が、円安の要因です。
国債の買い入れオペレーションもイールドカーブコントロールの一環で行われており、マーケットは日銀が国債を購入すると分かっています。そのため日本国債の金利にも低下圧力がかかりやすくなります。
3.現段階で円売りトレードで攻めていくのは得策ではない
2022年7月現在、日本銀行は引き続き金融緩和を躊躇なく行っていくと政策会合で示しています。日本銀行が金融緩和を行っている間、円売りに対してどの通貨を買うかに頭を悩ませているFX投資家も多いでしょう。
米ドルはインフレ懸念からリセッション懸念へ移行しています。政策金利を大きく引き上げ続けるのは難しいと市場参加者は見ており、米ドル安が進行しています。
ユーロは11年ぶりの利上げを行い、マイナス金利から脱却しました。最終的な利上げの地点は変えないとのラガルド総裁のコメントもあり、政策金利は大きく上昇しないとの思惑が広がりました。ユーロの上昇余地も不透明です。
【参照記事】REUTERS「ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨」
豪ドルも世界がインフレからリセッション懸念に移行する中資源価格が下落してきており、資源価格の下落もマイナス要因となります。不穏な空気が漂う中国経済も豪ドルには上値が重くなる要因の一つとなるでしょう。
8月は夏枯れ相場の時期です。過去のアノマリーから円高に振れる確率が極めて高い月でもあるため、現段階で円売りトレードで攻めていくのは得策ではないと考えています。
円売り地合いは続きそうではあるものの、7月や8月で円ショートのポジションを作るのは得策ではありません。買いやすい通貨が出てきたタイミングでスワップポイントも狙った長期的なポジションを作ることも選択の一つでしょう。
4.日銀の金融緩和を意識したトレードの注意点を3つ紹介
次に日銀の金融緩和を意識したトレードの注意点について解説します。
4-1.円売りポジションは既に積み上がっている
2022年7月現在、日本円の売りポジションは大きく積み上がっています。クロス円は円売り方向で市場は見ている状況です。
既に日本円の売りポジションに傾いているため、今後日本円の売り圧力が低下する可能性があります。短期的なポジション調整には注意した方がいいでしょう。
相場の大きな方向性だけでなく、ポジション動向もチェックしてみてください。ポジションが傾いていなければ、エントリーチャンスと言えるでしょう。
4-2.歴史的な円安水準
為替は各国の企業決算等に影響を与えます。あまりにも行き過ぎた為替水準は各国の経済に影響を与えるため、国としても許容できない場合は為替介入で強制的に調整する動きが出ることもあります。
2022年7月現在の日本円の水準は歴史的な円安水準です。企業決算にも影響が出ることが懸念されています。円安は日本にとってはプラスの要素に働くことが多いものの、悪い影響への懸念が広がっています。
急速に進行した円安が円高に転換するのか分かりません。大きく反転する可能性もあるため注意してください。
4-3.日銀の金融政策の変更
世界的に利上げ方向で舵取りがされる中、日銀がいつ金融政策を変更するかわかりません。政策金利引き上げの気配を見せるだけでも、為替市場は大きく反応するでしょう。
そのため金融政策の変更の可能性は意識しておきましょう。
5.まとめ
日銀は金融緩和を継続しているものの、現在の円安水準では注意すべき点が様々にあり、エントリーは難しい局面と言えそうです。
いつ円安が修正されるかわからないため、円安方向に進行する幅を考えると、一旦調整局面を待ってからエントリーするという選択肢もあります。
為替市場は色々な材料が絡み合って成り立っている市場です。一つの材料に着目し過ぎず、色々な材料をチェックして判断するようにしましょう。
中島 翔
最新記事 by 中島 翔 (全て見る)
- Xpansiv(エクスパンシブ)とは?世界最大の環境価値取引所の特徴と最新動向 - 2024年9月27日
- VCMIが発表したScope 3 Flexibility Claimとは?柔軟なカーボンクレジット活用法を解説 - 2024年9月27日
- 銀行預金のリスクとは?インフレ時代に必要な資産形成の基礎知識を解説 - 2024年9月25日
- Verraが新たに発表したABACUSラベルー高品質カーボンクレジットの新基準と市場への影響 - 2024年9月20日
- カーボンクレジット取引の最前線:JCEXの概要と特徴 - 2024年9月18日