ユーロドル、年末までの見通しは?プロトレーダーが解説【2022年8月】

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2022年8月現在、アメリカとユーロ圏はどちらもインフレに悩まされ、利上げを行っています。ただしユーロ圏の利上げ幅はアメリカと比較して遅いと予想されており、ユーロは相対的に下落しています。

ユーロドルは、世界中で多くの参加者が取引している通貨ペアです。そこで今回は、ユーロドルの年末までの見通しやポイントを、プロトレーダーの作者が解説します。

※本記事は8月22日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ユーロ圏の景気悪化は避けられない
  2. ユーロドルを考える上での注意点2つ
    2-1.為替市場は米ドル中心に動く
    2-2.スプレッドが一番狭い
  3. 年末までのユーロドルは上値が重い展開が継続
  4. まとめ

1.ユーロ圏の景気悪化は避けられない

ユーロ圏はインフレ率が高止まりしています。インフレ抑制のため、ECBは7月に0.5%の利上げを行いました。

ECBはユーロ圏各国の集合体です。それぞれの国々の財務状況は異なります。財務体質が弱い国では、ECBが利上げを行うと経済に悪影響が出ることがあります。そのためECBが利上げすると、財務体質が弱い南欧諸では、国債の利回りが上昇しやすくなります。

ECBでは対策として、TPIと呼ばれる国債買い入れ措置を行うことを決定しています。ドイツやフランス等先進国と、南欧諸国の調達コスト差の拡大を防ぐための措置も実施する予定です。

ロシアの天然ガスの供給問題や、足元進行しているインフレによって、欧州の景気は回復までには時間が掛かると想定されます。しかし、ECBはアメリカのようにインフレ対策として急激な利上げは行えません。利上げ幅はアメリカと比較しても遅いペースとなると予想されています。

2022年7月のデータでは、ユーロ経済はインバウンド消費からサービス業を中心に回復基調が見られています。一方でコモディティ価格の市場が高止まりした場合は、インフレ率の低下は期待できません。

市場参加者は、ECBは年末まで利上げを淡々と行うものの、年末まで大幅な利上げ幅にならないと想定しています。緩やかな利上げに留まる可能性が高いと言えるでしょう。

2.ユーロドルを考える上での注意点2つ

2-1.為替市場は米ドル中心に動く

米ドルは基軸通貨と呼ばれています。為替レートは、多くの場合米ドル主導で変動します。ユーロドルの値動きを考える上では、アメリカの中央銀行であるFRBの動向がポイントになります。

ただしECBの利上げ見通しや経済動向で動くこともあるため、合わせてチェックしましょう。

FX取引では、どちらの国の方が注目されているか、という視点で考えると値動きを予想しやすくなります。

2-2.スプレッドが一番狭い

ユーロドルは取引量が多い通貨ペアです。取引量は通貨ペアの売買で発生するスプレッドに関係しています。取引量が多い場合は、スプレッドも狭くなります。

ユーロドルはスプレッドが狭いため、スキャルピングを行う際にメリットがあります。ユーロ円、ドル円だけでなく、ユーロドルの取引も検討してみてください。

3.年末までのユーロドルは上値が重い展開が継続

プロトレーダーの筆者は、2022年のユーロドルは年末まで上値が重いと予想します。ユーロ圏の経済状況が軟調であること、インフレ対策として利上げを行いたいものの、南欧諸国への配慮もあり、急ピッチで進められないことが理由です。

ユーロとアメリカの金利差は拡大していくと予想されます。米ドルが急落するとは考えにくく、ユーロドルの上値は重くなりやすいでしょう。

ユーロショートの短期筋のポジションが解消するタイミングで上昇する可能性はあるものの、短期的な動きで終わると考えています。

ユーロドルチャート
※図はTradingViewより筆者作成

上記はユーロドルの週足チャートです。2021年の高値1.23台から下落トレンドとなり、今年は一時パリティと呼ばれる1.00台を割れる場面も見られました。

足元はドル安の動きからユーロドルが回復するような動きになっているものの、ユーロドルが強気で買われていく様子はありません。下落トレンドの中の短期的な上昇と言えるでしょう。

2022年8月現在の水準は2017年の安値の付近です。レジスタンスラインでもあり、1.0300-1.0500付近で短期的な上昇が止まる可能性がある水準です。

ただし、米ドルの動向には注意が必要です。金利差が拡大しており、ユーロと比較して米ドルが上昇しやすい状況です。アメリカは年末までに1.00%の利上げが予想されており、既に市場に織り込まれています。

今後の米ドルの値動きは、来年まで利上げを継続するかがポイントです。マーケットではFRBは2023年の早い時期に利下げを行うことを織り込み始めています。

2023年以降も利上げ継続となれば、米ドルも高止まりすると想定されます。ユーロドルも下落トレンドが継続するでしょう。

早くインフレが沈静化した場合は、利下げ方向に傾く可能性があります。FRBの動向はチェックしておきましょう。

4.まとめ

今回は、ユーロドルの取引する際のポイントや注意点、2022年年末までの見通しについて解説しました。

ユーロドルは取引参加者が多く、スプレットが狭い通貨ペアです。興味を持った方は、利用の開始を検討してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12