【特集コラム】Ethereumは何を可能にするか

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今回は、Ethereumがもたらしたさまざまなプロダクトや直近に迫るETH2.0で起こる変化について、Da-🐣氏(@otukarehitoiki1)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 1. Ethereumは何を可能にしたか
  2. 2. ETHの用途
    2-1.様々な通貨
    2-2. 金融派生商品
    2‐3.IDや個人の評価
    2‐4.DAO(自律分散型組織)
    2‐5.保険
    2‐6.ギャンブル、予測市場
    2‐7.DEX(分散型取引所)
    2‐8.マーケットプレイス
  3. 3.投資対象として見たETH2.0
    3‐1.マイニングの参加
    3-2.インフレ率の低下
  4. 4. まとめ

Ethereumのコラムとして、前回はEthereumの基本からETH2.0の内容をまとめました。今回はEthereumの大きな特徴として、「価値のインターネット」と「データを中央集権ではなくユーザーの物にする」という点がありますが、これにより何を可能にしたか、その具体例、ETH2.0によって投資的な観点で何が変わるかを説明します。

1. Ethereumは何を可能にしたか

まずブロックチェーンの特徴を説明すると、再現するのが難しい方法でブロックと呼ばれるデータの塊をチェーンにしてつなげる事によってコピーを極めて困難にし、インターネット上で「価値」を表現しています。

そもそも、データはコピーすることが簡単なために「価値」を表現することが苦手です。コピー機でお金をコピーするようにデータもコピーできるため、価値の表現が難しいのです。例えば、お金はコピーされたことが今までに無いと、誰かが証明しないといけません。現金はコピーが極めて難しい技術を使って印刷され、その価値を政府が保証してくれます。

しかしインターネット上のデータでそれをやるのは極めて難しいです。そのため、厳重な確認が必要になり、銀行の振り込みには数日かかり、土日は作業することができません。この確認のコストが多大にかかるため、銀行振込には数百円かかります。ここにはもちろん銀行の利益も入っていますが、銀行以外の代替手段が少ないために競争も起きにくく、手数料は高いままです。

Ethereumは「金銭的な価値を信用できる形でデータ化」する事によって、これらの課題を解決します。データは信用できるため、送金は送るだけで確認は不要です。確認のコストも中間者も居ないためにコストは安くなります。またEthereum上に構築されたアプリのコード(プログラム)は誰でも見る事ができるため不正は働きにくく、またルールやアプリの変更はコミュニティの承認が必要なため、透明性が保たれています。

この特徴によって、Ethereumはこの他にも様々な用途に使うことができます。ここでは代表的な例をいくつか紹介します。

2. ETHの用途

出展:Coindesk Japan

この図は、Ethereumが使われているプロジェクトを用途別でまとめたものです。一つずつ見てみましょう。

2-1. 様々な通貨

Ethereumは様々な価値と紐付けられた通貨が存在します。

代表的なものはドルに紐付けられた通貨です。例えばDAIは、様々な担保を裏付けにしてドルの価値を保証しています。現在はEthereum等の暗号通貨が担保になっていますが、将来的には米国債や現実世界の資産を担保にする事を予定しています。

USDTやUSDCは、Tether社やCircle社といった会社が持っている資産によってドルの価値を保証しています。(但しTether社は十分な担保を持っていない可能性が指摘されており、ドルの価値が崩れるのではと懸念されています)

これらの通貨は、自国通貨の価値が下落するがドルの購入が制限されたアルゼンチン等の国で有効に使われています。

また、他にはPAXGという金価格に連動する通貨や、CryptoKittiesという世界で一つのユニークな猫を保有するゲームでは、NFTという資産のユニーク性を表す通貨が使われています。

2-2. 金融派生商品

Ethereumは様々な金融派生商品も作り出しました。それらの例を見てみましょう。

合成資産

SynthetixとUMAは様々な資産を組み合わせた合成資産を作ることができます。例えば暗号通貨と現実世界の資産(米ドル、現地通貨、金、原油、SP500など)等を組み合わせたトークンが作成可能です。

信用取引

dYdX等のプラットフォームは、レバレッジをかけた証拠金取引や、最近海外取引所でも人気の無期限先物を取り扱っています。

レンディング(貸付)

Compound、Aaveといった融資プラットフォームでは、預け入れた暗号資産から金利を得ることができます。

オプション取引

OpynHegicといったプロトコルを使う事でオプション取引を行う事ができます。またこれらのオプション取引で価格をヘッジしておくことで、保険のようにも使う事ができます。

2-3. IDや個人の評価

Ethereumを使った活動として、個人のIDを自分の物にするというものがあります。例えばIDとして代表的なものに運転免許証やパスポートがありますが、これらは国が管理していて権利は国にあります。この権利を個人が持っているIDを作るというものです。これもブロックチェーンで改ざんが難しいために実現できています。

2-4. DAO(自律分散型組織)

DAOは特定の管理者や主体を持たない分散型の組織で、組織内の階層構造もなく、構成員一人一人によって自律的に運営される組織です。DAOには管理者がいないため、組織のあらゆる意思決定や実行、ガバナンスはメンバーの合意により決められたルールに従って実行されます。

代表的な例としてはMakerDAOやyearnがあります。MakerDAOは現在は財団によって運営されていますが、解散を前提としてDAOによる運営を目指しています。

2-5. 保険

Ethereumで保険を扱う事もでき、Nexus Mutualがそれを行っています。保険は事故などが起こった際に、一定のルールにしたがって保証を行います。NexusはEthereumを使う事でそれを自動的に行います。

他にもETHERISCでは保険として、フライトの遅延、ハリケーン、作物、死亡などの保険を自動で執行できます。

2‐6. ギャンブル、予測市場

ギャンブルや予測市場も金銭価値を扱えるEthereumと相性が良いです。Ethereumアプリの取引額で見ると、現在はDeFiが最も高いですがその前はこのカテゴリが最も高い額を占めていました。

結果を取得してルールに従って自動実行できるので、ギャンブルにありがちな胴元による中間マージンが少なくできます。また全ての取引は透明で追跡ができるため、不正はありません。

予測市場はギャンブル的な用途の他にも、例えば農作物の出来栄えを予測し、逆張りすることで保険的な使い方をする事も出来ます。

2-7. DEX(分散型取引所)

現在最も多く使われているのがこのカテゴリです。Uniswap, Kyber Network, Balancer, Bancorなど、取引所のような板取引ではなく、ルールに従って自動的にペアを設定するAMM(Auto Market Maker)がよく使われています。これらのプロジェクトの違いはルールの違いや、トークンの用途の違いなどです。

2-8. マーケットプレイス

Ethereumのマーケットプレイスでは、主にユニークなアイテムである事を保証するNFT(Non Fungible Token)の売買が行われています。

前述したCryptoKittiesのユニークな猫のデータや、NikeのレアなシューズにNFTを割り当てて所有者を明確にする事も行っています

3. 投資対象として見たETH2.0

このように様々な用途で使われるEthereumですが、投資的な観点も気になるところです。そこでこれから起こるETH2.0を投資的観点で見た際に、2点の大きなポイントがあります。

3-1. マイニングの参加

現在のEthereumのマイニングは、膨大な計算を解くPoWという方法がとられています。しかしマイニング機器への投資が大きく、大手によって寡占されているという問題があります。

ETH2.0では32ETH(約128万円)を預ける事でマイニングに参加できます。これでも高額ですが、より少ないETHを集めて参加できるようにするLidoのようなプロジェクトも出てきています。

これはテストネットでの、預けられたETHの量と年利をグラフにしたものです。年利は2~20%程度と想定されています。

3-2. インフレ率の低下

現在Ethereumのインフレ率は約4.49%と、ビットコインの1.78%に比べると高くなっています。これがETH2.0になるとBTCと同等まで減ることが期待されています。

https://blog.bitmex.com/ethereum-2-0/

また、現在Ethereumへの提案として、データを処理した際の手数料を燃やして0にすることにより、総供給量が減るプランが提出されています。

4. まとめ

このようにEthereumはインターネットの世界を変える可能性を秘めていますが、データを処理する際に必要なガス代が課題となっています。前回も触れましたが、これを解決するLayer2と言われる技術や、ETH2.0の導入が待たれるところです。

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Da-🐣

2017年末に暗号業界に参入し、有料サービスのToken Labで2年弱リサーチャーとして従事。本職は海外営業で、コロナの前は2ヶ月に一度は北南米へ出張し、暗号資産の状況を現地レポートなど行っていた。難しい内容を暗号資産になじみのない人でもわかりやすくすることを心がけている。