今回は、Ethereumやビットコインのような分散型プロジェクトの開発において資金がどのように調達されているのか、Da-🐣氏(@otukarehitoiki1)に解説していただきました。
目次
- 1. 資金調達の手段
1-1. ICO(Initial Coin Offering)
1-2. イールドファーミング
1-3. グラント - 2. ビットコイン、ビットコインキャッシュ、ライトコインの資金調達
- 3. Ethereumの資金調達
- 4. ESP(エコシステムサポートプログラム)
- 5. まとめ
ビットコインやイーサリアムなどの特徴として、分散的で特定の組織に属さないというものがあります。プログラムのコードも公開されており、このように仕組みはオープンソースと言われています。
しかしビットコインやイーサリアムは、誰がどうやって開発しているのでしょうか?開発費はどこから出ているのでしょうか?今回は暗号通貨プロジェクト独特のこの課題について掘り下げてみたいと思います。
1.資金調達の手段
まずは暗号通貨プロジェクトの資金調達の手段で、最近特に普及しているものとピックアップして見てみましょう。
1-1.ICO(Initial Coin Offering)
ICOはプロジェクトがその独自トークンを販売する方法です。BTC、ETH、USDC等の一般的なトークンで独自トークンを少額から買う事ができます。ただ法的に投資家保護の仕組みがなく、どんなプロジェクトでもICOを行えたために詐欺が横行しました。
1-2.イールドファーミング
最近DeFiで注目を浴びたのがファーミングです。ファーミングは暗号通貨の貸し借りができる、レンディング等のDeFi系プロジェクトにトークンを提供する事で、そのプロジェクトのガバナンスに関与できるガバナンストークンを割り当てられるというものです。
ガバナンストークンを使う事でそのプロジェクトへのプロポーザル(改善提案)を出したり、プロポーザルに賛成反対の投票を行う事ができます。
ガバナンストークンは「株券」と同様の側面を持っており、経営への議決権と、物によっては配当が得られる物もあります。プロジェクトは投資家から行う初期の資金調達に加えて、ガバナンストークンを発行する事で、追加の資金調達を行う事ができます。また一度にトークンを販売するICOと異なり、長い期間をかけてトークンを配布するため、トークン所有者をより分散させることができます。
1-3.グラント
上記のものは一般の投資家から広く資金を調達するものですが、グラントは特定の企業やプロジェクトから資金を調達します。Ethereumの開発費もこれにあたります。
ここでは主要なものに限定しましたが、STO等についてはこちらの記事も参照ください。
2.ビットコイン、ビットコインキャッシュ、ライトコインの資金調達
この記事ではETHに焦点を当てますが、その前にビットコインや他のプロジェクトの様子を見てみましょう。
ビットコインは、主にビットコインをサポートする団体によって開発費がねん出されています。初期はナカモトサトシと少数のボランティアによって開発されていましたが、その後は開発費をねん出するために、2012年にカルプレスやロジャー・バーをメンバーに含むビットコイン財団が設立されました。しかしガバナンスや管理がずさんで2015年に資金を使い果たしています。
その後、ビットコインの開発を行うBlockStream社、Chaincode Lab社が設立され、他にもフリーランスのエンジニアが開発を行っています。brinkのように開発者に寄付を行うプラットフォームも出てきました。
brinkはビットコイン開発者を雇えないがビットコインに支援をしたい個人や企業に代わって、適切な開発者に資金を提供したり、駆け出しのビットコイン開発者に教育を行います。
ではこれらの開発者がどのくらいいるかというと、2019年9月時点で62人程度でした。一人当たりの人件費を1,000万円とすると、1年間の開発費は6億2千万円とそう大きくありません。
また開発したコードの数を見ると、個別の開発者が最も多いです。
ちなみに他のプロジェクトの例を見ると、ライトコインは創始者チャーリー・リー氏の資産、ビットコインキャッシュはマイナー(電気代と引き換えにブロックを生成して、ネットワークを維持する人です)の報酬の5%から開発費が出ています。
一見すると問題がないと思われる資金調達体制ですが、リー氏の資産が持つのは2年程度と言われており、ライトコインもマイナー報酬を開発費に充てる議論がされています。しかし、マイナーの資産を開発費に割り当てると、マイナーと開発者の利害関係ができてしまい、マイナーに都合の良い開発がされるというガバナンス上の懸念点があります。
3.Ethereumの資金調達
ではETHはどのように資金調達をしてるのでしょうか?Ethereumは、まずICOで15億円程度の資金調達を行い、その後は主にイーサリアム財団が開発費を支援しています。
まず2019年の例を見てみましょう。この表がどの分野にどの程度支援があったかを示しています。最近ローンチしたETH2、ETHを高速化するLayer 2と呼ばれる技術、現在のETH1.x、ETHの開発環境が主なものです。
興味深いのは、予定されていた31億円の予算に対して実際に使われたのは8億円程度と、かなり少ない点です。またEthereum財団は345億円程度のETHを保有しており、資産は潤沢に持っています。
ちなみにこちらが財団のアドレスです。このようにEthereum上では透明性を保っているため、不正がしにくくなっています。
これは上述した中ではグラントにあたります。しかし近年Ethereumではグラントを発展させてESP(Ecosystem Support Program)を2020年に開始しました。
4.ESP(エコシステムサポートプログラム)
ESPは、Ethereumのエコシステム(Ethereumを使った様々なプロジェクトを総称した領域の事です)に協力する人をサポートするためのプログラムです。
資金調達をメインに行うグラントに加えて、ESPでは技術面でのサポート、他チーム / メンター / アドバイザーとのコネクション、ツールやプラットフォームへの無料アクセス、仕事の紹介、その他特に内容は限らずサポートを行い、開発のあらゆる段階で個人やチームに幅広いサポートができるようになっています。
対象は開発者に限らず、NPOや企業(但し公益性の高いもの)、研究者や学者、コミュニティのリーダーも対象です。対象にならないものは、直近でICOで資金調達を予定しているもの、ゼロサムゲームを提供するもの、Ethereumのエコシステムに関係がないものです。
また資金調達を行う場合は詳細なステップが用意されています。まずは質問表に答える必要があります。質問の内容は、プロジェクト概要、チームのプロフィール、どのような重要な問題またはニーズに対処するか、プロジェクトはイーサリアムエコシステムにどのように影響するか、誰がプロジェクトによって利益を得るかなど様々です。
調達できる金額は、個人の場合は50万円程度から、複数年にまたがる大きいプロジェクトチームでは2千万円以上の場合もあります。直近の2020年第3四半期には2億5千万円程度が提供されました。
財団が推奨するカテゴリと、今までに採用されたプロジェクトは下記のようなものです。
- 基礎研究(暗号化、プライバシー、Eth2関連)
- プロトコルの改善(ネットワークを高速化するシャーディングと呼ばれる仕組みなど)
- Layer 2(これもEthereumを高速化する手段です)
- コミュニティの改善(ドキュメント/チュートリアルの作成、フォーラムへの貢献など)
- オープンソースツール(開発環境、テストツール、デバッガーなど)
- Ethreumによる公共財インフラ(メッセンジャー、クラウドストレージ、コンピューティングなど)
- インターオペラビリティ(ビットコインなど他のプロトコルやサービスとの相互運用性)
5.まとめ
この記事ではEthereumを中心に、ビットコインや他プロジェクトの開発費についてまとめました。最初は小規模なボランティアやICOで始まりましたが、その後にビットコインはBlockStream社など、イーサリアムは財団によって支援がされています。
ここで重要な点は、特定の組織に依存しないようにする事です。ビットコインやEthereumは特定の組織に依存せず分散されており、政府や企業などの誰にも止められない事に大きな価値があります。
分散性を担保するため、Vitalikや財団もかかわりを変えてきており、組織という面でもとても興味深い分野です。
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