今回は、ETHの優位性とDeFiの今後について、Da-🐣 氏(@otukarehitoiki1)に解説していただきました。
目次
- 色々な視点からイーサリアムと他のプロジェクトとの比較
1-1. 開発者数
1-2. ウォレット数
1-3. 通信量(トランザクション量) - ではイーサリアムは今後どのように使われるのか?
2-1. イーサリアムの用途
2-2. 現状の課題 - DeFiの今後
3-1. 大きな利回りへの注目
3-2. DeFiが暗号通貨の中だけで回っている課題 - まとめ
今回はイーサリアムを色々な視点から他のプロジェクトと比較して、なぜイーサリアムに将来性があるのかという点から始め、特に最近話題になっているDeFiについての比較、最後にDeFiが今後発展するには何が必要かという点についてレポートします。
1.色々な視点からイーサリアムと他のプロジェクトとの比較
世の中にはイーサリアム以外にも、EOS, Tron, Polkadotなどの多くのプロジェクトが存在します。これらのプロジェクトは数年前には「イーサリアムキラー」として、イーサリアムをおびやかすと話題になりました。
しかし現在でも、依然としてイーサリアムが一強のままです。これはなぜなのでしょうか?
この疑問を確かめるために、イーサリアムと他のプロジェクトを重要な数字として、開発者数、ウォレット数、通信数で比較します。
ここでは今後も成長が見込まれるプロジェクトとして、ビットコイン、イーサリアム、時価総額が急成長し5位になったポルカドット、また2021年にDeFiで急成長していて、取引所のBinanceが行っているBSC(Binance Smart Chain)を比較します。
1-1.開発者数
開発者数は、そのプロジェクトが成長するかを見るうえで重要な数字です。なぜかというと、今後発展しなさそうなプロジェクトからは開発者が出ていき、逆に出て行った開発者が発展しそうなプロジェクトに参加するからです。
その開発者数を見ると、ビットコインが400人なのにもかかわらず、イーサリアムは約2,300人で約6倍と非常に大きな数になっています。この理由として、ビットコインは主に通貨としての送金やプライバシーについての開発が多いですが、イーサリアムはプログラミング可能な通貨として、DeFiを筆頭により多くの用途への開発がされているためです。
また他のプロジェクトを見ると、Polkadotがビットコインと同じくらいの人数で、他のプロジェクトはそれらより少ない開発者数となっています。
1-2. ウォレット数
次に最近主流になっている、DeFiで使われているウォレットの数を見てみましょう。ウォレットの数は使っているユーザー数と関係しているため、そのプロジェクトがどのくらい使われているかの指標になります。
このウォレット数を見ると、DeFiが流行りだした8月にどのプロジェクトも上昇しましたが、現在ではイーサリアムが他のプロジェクトに比べて4倍以上のウォレット数を保っています。
このことから、イーサリアムが他のプロジェクトより多くのユーザー数がいることがわかります。
1-3. 通信量(トランザクション量)
また通信量もプロジェクトが使われている指標になります。通信が多いほどより多く使われているということになります。これを見ると、イーサリアムは二番手のBSC(Binance Smart Chain)に比べて3倍程度の通信料があります。
イーサリアムは通信に使う費用(ガス代)が高いという批判がありますが、それだけよく使われているということです。
また最近はイーサリアムは手数料が高いために、手数料の低いBSCの人気が出ています。
ただイーサリアムの手数料が高いのは分散性を保つためというのを忘れてはいけません。イーサリアムを支えている関係者が分散されているので、イーサリアムを止めようとしても政府でも止めることができません。
ただBSCは取引所のBinanceによって管理されているため、Binanceが止まればBSCも止まってしまいます。Binanceは世界最大の取引所の1つなのでリスクは少ないですが、各国の規制からはなれた活動をしているため、規制当局に止められるリスクがあります。
例えば、会社でも大事な決定をするときは何人かのOKをもらいますよね。それには時間がかかりますが、不正が起こらないために大事なプロセスです。ざっくりいうとイーサリアムではそのようなプロセスを行っています。
またイーサリアムは多くの関係者でネットワークを支えているため、関係者の一部が管理・維持できない状況になってもネットワークは生き続けます。しかしBSCはBinanceという企業がネットワークを支えているため、Binanceが止まるとBSCも止まってしまいます。こうした事実から、DeFi(Decentralized Finance)本来の意味であるDecentralized(分散的)とは言えないため、BSCはDeFiではないという意見もあります。
しかし、イーサリアムでのDeFiは少額のユーザーには手数料が大きいことから、個人的にはBSCを使う事も選択肢の一つだと思っています。ただ下記ポイントの理解と、大きな年利を宣伝している詐欺プロジェクトには気を付ける必要があります。
2.ではイーサリアムは今後どのように使われるのか?
このように暗号通貨のプロジェクトの中では、イーサリアムが今後も最も開発が進み、ユーザーにも使われそうな事がわかります。ここでよく聞かれる質問として、「暗号通貨は現実の用途がなく、マネーゲームにしか使われていないのでは?」という疑問があります。
またDeFiに関しても、「イーサリアムの中だけで新しい暗号通貨を買って値上がりするだけで、本質的な価値がないマネーゲームなんじゃないか?DeFiバブルが崩壊したらみんな無価値になるのでは?」という意見を聞きます。
以前の記事でもこの点について解説しましたが、今回はもう少しわかりやすく解説します。
2-1. イーサリアムの用途
イーサリアムの特徴は、ブロックチェーンというコピーが非常に難しい技術の上に、様々なプログラムを自動で実行できる事です。
コピーが非常に難しいため、金銭的な価値を保存したままで自動でプログラムを実行できるため、DeFiなどの新しい手段が誕生しました。
銀行等の金融機関では金銭的な価値の確認を行うために大きなコストを支払っていました。DeFiはそのコストが必要ないため、10年後には銀行はいらなくなるのではとも言われています。
今はこのDeFiがイーサリアムでの最も大きい用途だと言われています。イーサリアムが1番下の土台になって、その上にDeFiなどの色々なアプリが来るイメージです。
出典: Ethereum: The Digital Finance Stack
ちなみにBSCはイーサリアムの部分がBinance Smart Chainに変わります。BSCが全てのアプリを支えています。
ただこのDeFiが本来の用途と大きく離れてしまっているという批判もあります。
DeFiの本来の目的には、銀行口座が持てない新興国のような人たちにも金融アクセスを提供するというものがあります。銀行口座を持てない人は世界に17億人程居ると言われています。インターネットインフラは貧困層にも届いているため、DeFiは貧困層が銀行口座が持てない問題を改善できるのではと言われています。
2-2. 現状の課題
しかし現在のDeFiは大きな利回りばかりが注目されており、本来の目的を果たせていません。また金融機関のような手続きもイーサリアム等の暗号通貨を元にしたもので、暗号通貨を持っていないと利用することができません。
今後これらの課題がどのように解決されるかを説明します。
3.DeFiの今後
3-1.大きな利回りへの注目
まず大きな利回りは、プログラムをコピーして作ったプロジェクトが独自の暗号通貨を作成して、それに高値が付くことでできています。これらの暗号通貨は一時期は値上がりしますが、プロジェクトが発展しない事がわかるとすぐに値下がりすることが多いです。
また高い利回りのプロジェクトは詐欺が多い点にも注意が必要です。先日もBSC上のコピープロジェクトがわずか3時間で資金を持ち逃げした事件がありました。リスクが大きいことから、利回りが高すぎるプロジェクトには手を出さないことをおすすめします。結果的に損することのほうが多いからです。
また、このような高い利回りはリスクが高いことが浸透しているために、2020年8月をピークに減りつつあります。過去にもICO(Initial Coin Offering: 上場していないトークンの販売)ブームが起きて徐々に減ってきたことから、この問題は参加者の知識が高まれば自然に解決すると思っています。
3-2.DeFiが暗号通貨の中だけで回っている課題
もう一つの課題は、DeFiがイーサリアム周りだけで経済を回していることです。DeFiが詐欺といわれる理由が2つあります。
1つ目はイーサリアム等を預けると暗号通貨をもらえるプロジェクトが多く、もらえる暗号通貨が値上がりして話題になっています。この値上がりに注目が集まりすぎて、もうけ話ばかりが話題になり、DeFiをどう実際の経済に広げるかというような議論が起こりにくいです。
2つ目はDeFiは結局イーサリアム周りだけで経済を回しているので、実際の経済に広がっていない点です。これでは本来の目的である、「銀行口座を持っていない人にも金融サービスを提供する」という話につながりません。
これらを解決するために、DeFiが現実の世界とつながることが重要だと考えています。このようなことができると、例えば現実世界の価値があるもの(土地、物など)を担保にすることで、例えば資金繰りに困った人が暗号通貨を借りるような事ができます。それが世界中の誰でも使えるようになり、DeFiは現実の人を助けるために使われることになります。
この活動はこれらのプロジェクトが行っています。
①STO(セキュリティトークン)
セキュリティトークンとは、株券や土地や他の色々な権利を裏づけに発行されるトークン(暗号通貨のようなもの)です。
このトークンがDeFiで使われる暗号通貨の代わりになり、DeFiでお金を借りたりできるようになります。また株や証券を担保にすることで、これらを多く持つ機関投資家のDeFiへの参入もしやすくなるといわれています。
出展:デロイトトーマツ
②不動産をトークン化するRealTの例
RealTは不動産をトークン化して分割することで、小額での不動産投資を実現しています。REIT(不動産投資信託)のような感じです。この共同購入で11%程度と高い年利を実現しています。
出展:RealT
不動産投資は金額の大きさや取引する際のコストが高く、アメリカでは手数料が不動産の6%かかり、更に決済までに30日間かかっていました。トークン化することで最低で5,000円からの投資と、登録から購入まで15分という短時間で行うことが可能です。
このトークンを使うことで、不動産を担保にして資金を借りることなどが可能になると思われます。
③価値のあるデータを担保にするTinlakeの例
Tinlakeは現実世界の担保をコピー不可能な形でトークン化し、それを担保にして暗号通貨を提供するサービスです。
例えばTinlakeの例として、中小企業の資金繰りの手助けがあります。運送会社を例にとると、彼らは荷物を配送した後に現金を受け取るのは60~90日後です。ただ中小の運送会社は資金繰りが厳しく、現金を早くほしいというニーズがありました。
Tinkaleは現金が支払われる予定の請求書をトークンにし、それをTinlakeに提出することで暗号通貨を得ることができます。Tinlakeは手数料として数%の利益を得ますが、銀行がお金を貸す融資に比べると低い利率です。
また私たちのような一般人も、Tinlakeを通じて暗号通貨を貸すことで、利子を得ることができます。これもDeFiの一つです。
出展:Tinlake
④DeFiを現実世界につなげる際の課題
ただこれらに共通した課題として、どうやって現実世界の物をデータとして取るかというものがあります。このデータを取る手段をオラクル(英語で神託という意味で、データを取るという意味から転じてます)といい、DeFiでも暗号通貨の価格などを取る手段として使われています。
しかし現実世界の物はデータを取るのが難しいです。これはChainlinkなどのオラクルを提供するプロジェクトが行うほか、株券などの数値化しやすい資産がまず使われていくと思われます。
4.まとめ
今回は色々なデータから他のプロジェクトと比較し、イーサリアムの優位性を確認しました。そのイーサリアムは金銭的な価値を保存したままで自動でプログラムを実行できるため、DeFiなどの新しい手段が誕生しています。
しかしDeFiは異常に高い利回りや、イーサリアム周りだけで経済を回していることで、詐欺ではないかという意見もあります。今後のDeFiは現実世界とつながることでより発展するのではと考えています。
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