【特集コラム】10分で分かるETH2.0の概要

※ このページには広告・PRが含まれています

今回は、直前に迫るETH2.0について、Da-🐣氏(@otukarehitoiki1)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. Ethereumとは
  2. Ethereumの課題とその解決案
  3. ETH2.0の概要
    3-1. シャードチェーン
    3-2. ビーコンチェーン
  4. 今後の計画

仮想通貨の中でも最近はDeFi(Decentralized Finance)との関係もあり、Ethereumが特に注目を浴びています。この記事では、そのEthereumの基本から、Layer2と言われる技術、また今後迎えるETH2.0の内容までを10分で分かるようにまとめました。

1.Ethereumとは

簡単に言うとEthereumとは、ブロックチェーンというコピーが非常に難しい技術の上に、様々なプログラムを自動で実行できるようにするツールです。この自動で実行できるプログラムの事をスマートコントラクトと言います。

ブロックチェーンの革命的な点はコピーが非常に難しいため、金銭的な価値を保存できる点があります。金銭的な価値を保存したままで自動でプログラムを実行できるため、DeFiなどの新しい手段が誕生しました。

2.Ethereumの課題とその解決案

このブロックチェーンの課題として、トリレンマと呼ばれるものがあります。これは、スケーラビリティ(通信速度)、分散化、セキュリティの3つの要素を同時に成り立たせるのが難しいという課題です。

ブロックチェーンにはノードと呼ばれる人が、ブロックを承認して積み上げていく作業があります。このノードが多くあって分散している程セキュリティが上がります。しかし分散しているとノード間の通信が多くなり、速度が遅くなってしまうのです。Ethereumは分散性とセキュリティを担保できていたたのですが、スケーラビリティ(速度)に課題があります。

これに対し例えば分散性を犠牲にして速度を上げているEOSのようなプロトコルもあります。EOSはノードを21人に限定するDPoS(Delegated Proo of Stake)という形式をとっているため速度も速いですが、ノード間で不正が起こるリスクがあります。ノードを決めるときに投票で決めるのですが、談合して投票先を決めることなどが考えられます。

Ethereumはこのトリレンマの解決を真剣に考えており、ETH2.0でスケーラビリティの解決を目指しています。ただこの解決には時間がかかるため、Layer2と言われるETH1.0をサポートする別のプロジェクトも出てきています。

これらを時系列で表にしたものがこれです。ETH1.0の下にバイパスを作って、ETH1.0を早く使えるようにするのがLayer2(第2層という意味)と呼ばれる技術です。Layer2のほうがETH2.0よりも少し早く実現できる予定です。この記事では、ETH2.0に焦点を当てて説明します。

3.ETH2.0の概要

ブロックチェーンではブロックを承認して積み上げることで改善が難しい技術となっており、ノードと呼ばれる人が承認作業を行っています。

現在のEthereumはノードがトランザクション(通信)を承認するときにPoW(Proof of Work)という形式を使っています。これは複雑な計算を最初に解いた人がトランザクションを承認し、報酬としてETHがもらえるという形式です。ただこれだと計算にコンピューターを大量に使うため電気代がかかり、環境に良くないという問題があります。またノードを立てるのにも費用が掛かるため、投資対効果を回収できる団体しかノードになることができず、分散性に課題があります。

そこでETH2.0ではPoS(Proof of Stake)という形式に変更する予定です。これは一定のETH(予定では32ETH=現在の価格で120万円程度)を預けるとノードになることができ、トランザクションを承認することで報酬がもらえます。また他の人と共同でETHを集めるプールを作ることで、より低い金額でも参加できる予定です。これにより分散性が高まります。

ただこれだけだと、1本の高速道路にトランザクションが集まってしまい、まるで交通渋滞のようになってしまいます。

出展:MyCrypto

これを解決するのが、ETH2,0で予定されているシャーディングという技術です。簡単に言うと現在1本道だったトランザクションにバイパスを多く作るというものです。

3-1.シャードチェーン

シャードチェーンによって、トランザクションに多くのバイパスを作る予定です。ただシャードチェーンが増えると処理の順番を並べる難易度が飛躍的に増します。この交通整理を行うのがビーコンチェーンです。

3-2.ビーコンチェーン

シャードチェーンから送られてきた命令を交通整理します。ビーコンチェーンは最低でも16,000のシャードを処理できる予定で、これらのシャードから遅れてきた命令を正しく並べてメインチェーンに送ります。

この2つのチェーンを基にしてETH2.0は長期的な予定を立てています。

4.今後の計画

ETH2.0は長期的な計画で、Phase0から2年以上かけて完成していく予定です。以下がその計画です。

  • Phase 0(2020年)
    ここでは大量のデータをBeacon Chainで交通整理して処理できることが目標です。次のPhase1ではシャーディングにより大量のトランザクションを処理が予定されているため、その準備を行います。
    このPhase0はETH2.0用ですが、ETH1.0も並行して稼働します。ETH2.0に参加するためにETH1.0から転送することができますが、今のところ戻す事が出来ないので注意が必要です。
  • Phase 1(2021年)
    ここではまず64個のシャードを実装します。64個のシャードを使っても大量のトランザクションを問題なく処理できるかをテストします。
  • Phase 1.5(2021年)
    ここでETH1.0とETH2.0を統合します。ETH1.0をETH2.0の中で一つのシャードとして導入するのです。
  • Phase 2(2021年)
    ここからはより多くのシャードを追加します。

この仕組みを図解したのが下記のものです。

出展:Ethereum Researchのスライドを基に作成

ただスケーラビリティが解決できるのはPhase2までが完了してからで、これは2021年以降になる可能性があります。このためVitalik氏から、Optimistic Rollupを中心としたLayer2技術に注力すると発表がありました。ETH2.0だけでなくLayer2技術により注目が移りそうです。

【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

The following two tabs change content below.

Da-🐣

2017年末に暗号業界に参入し、有料サービスのToken Labで2年弱リサーチャーとして従事。本職は海外営業で、コロナの前は2ヶ月に一度は北南米へ出張し、暗号資産の状況を現地レポートなど行っていた。難しい内容を暗号資産になじみのない人でもわかりやすくすることを心がけている。