2024年4月現在、アメリカのCPIが発表され、これまで低下基調だと思われていたインフレが、まだ下がり切っていないことが確認されました。為替市場では、イランを起点とした地政学リスクや、為替介入にも注目が集まっています。
本稿では、プロトレーダーの筆者が、アメリカのCPIや地政学リスク、相場への影響を解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年4月17日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 総合CPI・コアCPIともに予想を上回る結果に
- CPIを受け金利は上昇・ドル高に
- 今後のアメリカの金融政策と市場のポイント
3-1.利下げ織り込みの剥落
3-2.過去の為替介入では5円程度円高に
3-3.イランの出方次第では相場が急変する可能性も - まとめ
1.総合CPI・コアCPIともに予想を上回る結果に
まずCPIの結果を確認しましょう。
CPIの結果
指標 | 結果 | 予想 | 前月 |
---|---|---|---|
総合CPI(前月比) | +0.4% | +0.3% | +0.4% |
総合CPI(前年同月比) | +3.5% | +3.4% | +3.2% |
コアCPI(前月比) | +0.4% | +0.3% | +0.4% |
コアCPI(前年同月比) | +3.8% | +3.7% | +3.8% |
総合CPI、コアCPIともに予想を上回る結果となり、これまで低下トレンドだと思われていたアメリカのインフレの粘着性が確認されました。
原油価格の上昇が大きかったことが、総合CPIに寄与しています。ガソリン価格は前月比+1.1%と、2ヶ月連続で上昇しています。帰属家賃も+0.4%と上昇しました。
コアCPIは財価格とサービス価格に分類でき、財価格は前月比-0.2%と落ち着きを見せています。2ヶ月連続でのマイナスとなっており、その他にも中古車価格の価格低下を背景に、前年比で-0.7%下落する動きとなりました。
総合CPIが上昇したものの、財価格はFRBが懸念するほどの動きではなないと判断できます。一方で、コアCPIが前月比+0.5%と大きく伸びており、前年同月比でも+5.4%と高止まりしている点は、市場が利下げ時期を注視しているタイミングでは、懸念すべき材料と言えるでしょう。
2.CPIを受け金利は上昇・ドル高に
※図はTradingView[PR]より筆者作成
CPIが強い数字だったことにより、インフレ低下の期待感が打ち消され、インフレ懸念が再度出てきた点が警戒され、金利は上昇し、ドル高の動きとなりました。金利の大幅な上昇は、株式市場に対してマイナスの影響となるため、株安となりました。米国債金利は、2年金利が5.00%を突破する場面も見られ、金利上昇のトレンドが継続しています。
2024年3月の雇用統計がある程度強い数字だったことから、市場ではインフレ懸念を織り込みに行く動きが再度加速しており、金利上昇が進行していました。CPIによって、さらに金利上昇の動きに自信を持たせる結果になったと言えるでしょう。
3.今後のアメリカの金融政策と市場のポイント
3-1.利下げ織り込みの剥落
※出典:CME「FedWatch Tool」
上記は、市場の利下げ織り込みを示した表です。2024年の予想では、雇用統計後から再インフレを警戒する投資家が多くなり、元々は3回以上織り込まれていた年内の利下げ見通しが、2回程度まで減少しています。金利低下を織り込んでいたポジションの巻き戻しが発生していると分かります。
金利上昇に賭けるポジションが増加したままの状態で、CPIの発表となり、仮に弱い数字であれば、金利上昇を織り込んでいた短期筋が反対売買に迫られるため、急激な金利低下が進む可能性がありました。しかし実際には、強い数字となったため、金利上昇が進行しました。2024年4月現在も、金利ショート(金利上昇方向を予測したポジション)に傾いています。
また米ドルのポジションを考えても、主要通貨に対して大幅にドルロングのポジションが蓄積されています。そのため、プロトレーダーの筆者としては、ドルロングかつ金利上昇のポジションに傾いていると整理しており、逆回転した時の勢いが強い点を警戒しています。
3-2.過去の為替介入では5円程度円高に
ドル円は、CPI以降に153円を突破して、為替介入がいつ入ってもおかしくない水準に到達しており、為替市場での警戒感が強くなっています。日本円のショートポジションが、ここ数年で最大になっていることもあり、この短期筋のポジションはどこかで円を買い戻す必要があります。
過去のデータを見ると、為替介入時には5円程度の円高が発生しているため、ある程度の値幅を想定しておきましょう。
3-3.イランの出方次第では相場が急変する可能性も
また、地政学リスクにも注意が必要です。2024年4月現在、イランがイスラエルに報復攻撃しています。イスラエルとハマスの戦争については、相場に対する影響は限定的です。
しかしイランが加われば、アメリカとの代理戦争の意味合いが出てくるため、影響が甚大になる可能性があります。イランの報復は、ドローン100機での攻撃で終了との見方があるため、ここからさらにイスラエルが報復しないかがポイントになるでしょう。
地政学リスクはいつ勃発するかわからず、予測できない事象に対してはパニック的な動きとなり、相場に対するインパクトは大きくなります。
ドル円は、イランが攻撃する可能性が指摘されたことによって、一時152円台半ばまで急落しました。NY引けには153円台前半と、ニュースが出る前の水準を回復しており、日本円を売りたい投資家の多さが分かります。
金利上昇が加速する中、地政学リスクも勃発しており、株式市場にとっては環境ではありません。ただし、イランの報道により株式市場が大幅下落したタイミングでも、クラッシュするほどの動きにはなっておらず、動向次第で相場の動きに変化が出そうです。
4.まとめ
本稿では、アメリカCPIや市場の動き、今後のドル円や市場を予測する上でのポイントについて解説しました。
突発的な地政学リスクが発生するタイミングでは、相場が大きく動きやすくなるため、注意が必要です。対応できるように備えておくことが長くマーケットで生き残る秘訣になるため、リスク管理を徹底しましょう。
中島 翔
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