2023年3月現在、物価上昇を感じている方も多いのではないでしょうか。実は日本の物価はこれまでも上昇していました。しかし急激な上昇ではなかったため、生活への影響を体感するほどではありませんでした。しかし、今回初めて物価の上昇を意識した人は多いのではないかと思います。
物価が上がれば、相対的にお金の価値が目減りするため、自分の資産の守り方を考える必要性も出てきます。
本記事では、物価高と為替の関係性、そして消費者物価と企業物価について、プロトレーダーの筆者が説明していきます。
※本記事は2023年3月1日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.物価高と為替の関係性
物価高と為替の関係性について解説します。円安は物価高に影響します。
まず円安、円高を確認しておきましょう。1ドル100円が110円になると円安で、1ドルが90円に下落すると円高です。
数字が増加するのに円安なのか?と疑問に思う方もいるでしょう。日本円の価値が高まるか、低くなるかを考えると分かりやすいでしょう。1ドルを購入するために、必要な日本円が増えるか、減るかと考えてもいいでしょう。
元々は1ドル100円で買えたのに、110円が必要になるということは、日本円の価値が低下しているからです。円安になるということです。
続いて、物価高への影響を説明します。
日本は島国であり、他国からの輸入に頼っています。アメリカから商品を購入して日本に輸入する場合、その商品が100ドルだったとします。支払いは現地通貨での支払いとなるため米ドルを準備する必要があります。
そのタイミングで1ドル100円だった場合と200円だった場合を考えてみましょう。日本人に対しては日本円で販売を行います。1ドル200円の時に100ドルで商品を購入したら、原価は2万円です。
1ドル100円の場合は、原価は1万円です。円安になると原価が2倍となるため、日本で販売する商品も2倍の価格がつく可能性があります。
日本では円安が進行すると輸入物価が上昇して販売価格が引き上がり、消費者を苦しめます。円安が収まれば、物価高も緩和されるでしょう。
2.消費者物価と企業物価を解説
2-1.消費者物価指数
消費者物価指数とは総務省が毎月発表している全国の物価動向を測る指標です。総務省の説明を引用します。「消費者物価指数は、全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定するもの」。
つまり、シンプルに物の価値がどの程度全国的に上昇したのか?を示した数字が、消費者物価指数です。
2023年2月に発表された消費者物価指数は、前年比で+4.2%でした。41年4か月ぶりの上昇率となっており、第二次石油危機以来の数字を記録しています。
またコアCPIと呼ばれる生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数も+3.2%となっており、40年9ヶ月ぶりの数字を記録しました。
日銀が定めている消費者物価指数の目標は+2.0%であり、大きく上回っています。2023年現在の日本の物価上昇は、コストプッシュ型と呼ばれる好景気による上昇ではありません。悪い物価高です。
2-2.企業物価指数
企業物価指数とは、消費者ではなく、企業間で取引される場合の物価値の変動を意味しています。
日本銀行の説明を引用します。「企業物価指数は、企業間で取引される財の価格変動を測定するもの」。
1月の企業物価指数は、前年比+9.5%と大幅に上昇しました。物価上昇に大きく影響している項目としてはエネルギー関連を中心に原材料コストが大幅増加していることが背景となっています。
特に電力や都市ガス、水道での伸びが大きく、電気代やガス代が大幅に上昇した実感のある方も多いでしょう。輸入物価のピークは過ぎており、高水準なものの低下する動きが見られています。
ポイントは、消費者物価と企業物価の数字が、大きく乖離している点です。両者の関係性が企業に与える影響を解説します。
3.消費者物価と企業物価の乖離が意味するものとは
消費者物価と企業物価には大きな差があります。企業物価が10%上昇した場合、企業側は価格も全体的に10%値上げしないと、マイナスが発生します。原価が100円から110円になったにもかかわらず、売値が200円で変わらなければ、利益率は低下するからです。
しかし企業物価の上昇率に、消費者物価は追い付いていません。背景として、企業が努力をして価格に転嫁しないようにしていることが挙げられます。生産コストが上昇し、価格に転嫁しても売れなくなる懸念があることや、消費者が離れる恐れがあるため、強気で価格を上げられないためです。
日本経済が良好で、国民全体の給与が上昇し、生活にも余裕が生まれ、娯楽にも使える資金ができるような環境であれば、企業側もいい意味で価格を上昇させることができます。企業が価格を上昇させても問題ない経済状況であれば、企業で働いている人たちの給料も上昇し、またそれが消費に繋がります。
しかし経済状況が悪い中でのコスト上昇であるため、企業が必死で消費者への販売価格を上昇させないようにしています。ステルス値上げと呼ばれる、中身の量を減少させて、値段が変化していないように見せる方法など、様々な対策が取られています。
4.消費者として今後考えるべきこと
物価上昇はピークを迎え始めています。2022年のような急ピッチな値上げというのは発生しないでしょう。
サプライチェーンの川上に近い品目は価格が下落しており、去年のような資源価格の上昇や円安が抑制されています。物価上昇が進みにくい地合いになってきているということです。
しかし今後も物価上昇が起きない訳ではありません。日本のように労働人口が減少する中で、給与が上がりにくい国の場合、資産を守るための対策を講じる必要があります。
NISAや外貨の保有など、方法は様々あります。投資に回す余裕がないと思われる方も、月に数千円の積み立て投資などの開始を検討してみてください。
中島 翔
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