ESG指数の構成銘柄は?プロトレーダーが解説【2023年】

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ESGに配慮しているかを基準として企業に投資を行うESG投資が拡がっています。ESG指数は、内容によってさまざまな種類があります。

そこで今回は、各ESG指数の構成銘柄にフォーカスし、概要やESGに向けた取り組みなどを詳しく解説していきます。

※本記事は2023年3月1日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ESG投資は長期的な資産形成に適している
    1-1.ESG指数の概要
    1-2.ESG指数の種類
  2. FTSE Blossom Japan Index
    2-1.FTSE Blossom Japan Indexの概要
    2-2.FTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄
    2-3.業種ごとの構成比率
  3. MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄
    3-1.MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の概要
    3-2.MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄
    3-3.業種ごとの構成比率
  4. S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数
    4-1.S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の概要
    4-2.S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の構成銘柄
    4-3.業種ごとの構成比率
  5. MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄
    5-1.MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の概要
    5-2.MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄
    5-3.業種ごとの構成比率
  6. まとめ

1.ESG投資は長期的な資産形成に適している

1-1.ESG指数の概要

ESG指数とは、世界的なESG評価機関が企業をESGの観点から評価し、評価が優れた企業で構成された株価指数を指します。

そもそもESGとは「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス(Governance)」の、三つの英単語の頭文字を組み合わせて造られた言葉です。企業が長期的な成長を遂げるために重要な観点の一つでもあります。

近年、地球温暖化や水不足といった環境問題や、人権侵害、差別といった社会問題など、人類はさまざまな課題に直面しています。このような状況の中、2006年に「PRI(責任投資原則)」が発足したことをきっかけとして、ESGに対する注目が高まりました。

そして近年、ESGの概念は投資家が投資先の企業を選定する際にも用いられています。

これまでは投資家が企業の株式などに投資する際は、投資先の価値を推し測る材料としてキャッシュフローや利益率、「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」といった定量的な財務情報が使われることが一般的でした。

一方、ESGにフォーカスした「ESG投資」では、企業のESGへの取り組みを「ESG指数」として評価し、投資先を決定します。

ESG投資は特に長期的な資産形成に適していると言われています。「環境」、「社会」、「コーポレート・ガバナンス」の、三つの観点を投資判断に組み込むことによって、長期的なリスク調整後のリターン改善を実現できると期待されています。

このようにESG投資の動きは世界中で拡がっています。日本国内においても年金の運用を行っている「GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)」をはじめとした機関投資家がESG投資に注目しています。

1-2.ESG指数の種類

ESG指数にはさまざまな種類があり、評価のポイントも異なります。

ここでは、前述した「GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)」が採用しているESG指数について紹介していきます。

FTSE Blossom Japan Index

分類 ESG総合
投資対象 国内株式
指数構築 選別型(ベストインクラス)
指数組入候補(親指数) FTSE JAPAN ALL CAP INDEX

FTSE Blossom Japan Sector Relative Index

分類 ESG総合
投資対象 国内株式
指数構築 選別型(ベストインクラス)
指数組入候補(親指数) FTSE JAPAN ALL CAP INDEX

「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」では、「FTSE Blossom Japan Index」と同じ「FTSE Russell」のESG評価をベースとして、一部の「カーボンインテンシティ(売上高あたり温室効果ガス排出量)」が高い企業については、 企業の気候変動リスクおよび機会に対する経営姿勢も評価に反映しています。

MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数

分類 ESG総合
投資対象 国内株式
指数構築 選別型(ベストインクラス)
指数組入候補(親指数) MSCI JAPAN IMI TOP 700

MSCI ACWI ESGユニバーサル指数 (日本、中国A株を除く)

分類 ESG総合
投資対象 外国株式
指数構築 ティルト型
指数組入候補(親指数) MSCI ACWI (日本、中国A株を除く)

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数

分類 E(気候変動)
投資対象 国内株式
指数構築 ティルト型
指数組入候補(親指数) TOPIX

S&P グローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数(日本を除く)

分類 E(気候変動)
投資対象 外国株式
指数構築 ティルト型
指数組入候補(親指数) S&P Global Large Mid Index(ex JP)

MSCI日本株女性活躍指数(WIN)

分類 S(女性活躍)
投資対象 国内株式
指数構築 選別型(ベストインクラス)
指数組入候補(親指数) MSCI JAPAN IMI TOP 700

Morningstar先進国(日本を除く)ジェンダー・ダイバーシティ指数(GenDi)

分類 S(女性活躍)
投資対象 指数構築
指数構築 ティルト型
指数組入候補(親指数) Morningstar Developed Markets(ex JP) Large-Mid

ESG指数には多岐にわたる種類が存在します。指数によって重視する内容は異なります。

では主なESG指数について、概要やそれぞれの構成銘柄、また業種ごとの構成比率について紹介していきます。

2.FTSE Blossom Japan Index

2-1.FTSE Blossom Japan Indexの概要

「FTSE Blossom Japan Index」とは、世界的な指数算出会社として知られる「FTSE Russell社」が算出および公表を行っているESG指数です。同じくFTSE Russell社が算出している「FTSE 日本指数(FTSE Japan Index)」を構成する銘柄の中から、ESGの観点で銘柄を評価し、絞り込んでいます。

FTSE Blossom Japan Indexは代表的なESGインデックスである「FTSE4Good Japan Index」のスキームを用いた評価を行っています。ESG評価において絶対評価が高い銘柄をスクリーニングし、最後に業種ウェイトを中立化したESG総合型株価指数となっています。

FTSE Blossom Japan Indexが選定の際に特に注目している観点としては、気候変動、生物多様性、汚染と資源、人権と地域社会、労働基準、サプライチェーン、企業統治、リスクマネジメント、税の透明性などがあり、ESGに関する総合的な観点から、企業の取り組みを評価しています。

2-2.FTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄

FTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄は年に2回(6月および12月)見直しが行われます。

ここでは、22年12月に更新された組入上位10銘柄を紹介します。

順位 銘柄 業種 構成比率
1 トヨタ自動車 輸送用機器 6.49%
2 ソニーグループ 電気機器 3.66%
3 三菱UFJフィナンシャル・グループ 金融 2.56%
4 第一三共 ヘルスケア 2.13%
5 日立製作所 電気機器 1.94%
6 三井物産 資本財 1.88%
6 リクルートホールディングス サービス 1.86%
8 信越化学 化学 1.85%
9 伊藤忠商事 資本財 1.79%
10 ダイキン工業 機械 1.73%

2-3.業種ごとの構成比率

FTSE Blossom Japan Indexにおける業種ごとの構成比率は、下記の通りとなっています。

FTSE Blossom Japan Index

業種名 構成比率
テクノロジー 9.98%
コミュニケーション・サービス 4.06%
ヘルスケア 9.13%
金融 11.29%
不動産 4.30%
一般消費財 22.07%
生活必需品 5.96%
資本財 25.69%
素材 5.36%
エネルギー 0.74%
公益事業 1.41%

3.MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄

3-1.MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の概要

「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」とは、アメリカの「MSCI社」が提供する「MSCIジャパンIMI指数」の構成銘柄から、各業種においてESG評価が相対的に高い企業を選定しているESG総合型株価指数を指します。

MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数は世界において1,000社を超える企業が利用しているMSCIのESGリサーチに基づいて構築されており、さまざまなESGリスクを包括的に市場ポートフォリオに反映した指数となっています。

3-2.MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄

ここでは、22年12月に更新された組入上位10銘柄を紹介します。

順位 銘柄 業種 構成比率
1 トヨタ自動車 輸送用機器 7.26%
2 ソニーグループ 電気機器 4.89%
3 三菱UFJフィナンシャル・グループ 金融 3.06%
4 第一三共 ヘルスケア 2.75%
5 日立製作所 電気機器 2.42%
6 東京エレクトロン 情報技術 2.39%
7 KDDI コミュニケーション・サービス 2.25%
8 任天堂 コミュニケーション・サービス 2.19%
9 リクルートホールディングス サービス 2.17%
10 三井住友フィナンシャルグループ 金融 2.06%

3-3.業種ごとの構成比率

MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数における業種ごとの構成比率は、下記の通りとなっています。

業種名 構成比率
資本財・サービス 21.21%
一般消費財・サービス 20.24%
情報技術 12.45%
金融 11.99%
ヘルスケア 8.79%
コミュニケーション・サービス 6.70%
生活必需品 6.69%
素材 5.19%
不動産 4.58%
公益事業 1.07%
エネルギー 1.03%

4.S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数

4-1.S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の概要

「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」とは、アメリカの「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス」と「日本取引所グループ」が共同で開発し、算出および公表を行っているESG指数を指します。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数では、「TOPIX(東証株価指数)」の構成銘柄を対象としています。環境情報の開示状況と炭素効率性(売上高当たりの炭素排出量)を考慮し、指数への組み入れ比率を決定しています。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数は環境評価のパイオニア的存在として知られる「Trucost」の炭素排出量データをもとに構築されています。同業種内で炭素排出量の比較的少ない企業のウェイトを引き上げ、反対に炭素排出量の比較的多い企業のウェイトを引き下げることによって、指数全体として炭素排出量の削減を目指しています。

4-2.S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の構成銘柄

ここでは、22年12月に更新された組入上位10銘柄を紹介します。

順位 銘柄 業種 構成比率
1 トヨタ自動車 輸送用機器 5.35%
2 ソニーグループ 電気機器 4.07%
3 三菱UFJフィナンシャル・グループ 金融 2.23%
4 キーエンス 電気機器 2.20%
5 ソフトバンクグループ コミュニケーション・サービス 1.54%
6 三井住友フィナンシャルグループ 金融 1.17%
7 リクルートホールディングス サービス 1.88%
8 武田薬品工業 ヘルスケア 1.25%
9 日立製作所 電気機器 1.26%
10 KDDI コミュニケーション・サービス 1.38%

4-3.業種ごとの構成比率

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数における業種ごとの構成比率は、下記の通りとなっています。

業種名 構成比率
資本財 24.30%
一般消費財 17.30%
金融 12.40%
情報技術 12.10%
ヘルスケア 8.70%
コミュニケーション・サービス 7.70%
生活必需品 7.50%
素材 5.80%
不動産 2.20%
公益事業 1.30%
エネルギー 0.80%

5.MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄

5-1.MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の概要

「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」とは、アメリカの「MSCI社」によって提供されているESG指数で、「MSCIジャパンIMI指数」の構成銘柄の中から、性別多様性に関する開示情報をもとに構築されています。

具体的には、女性活躍推進法によって開示されている女性雇用に関するデータに基づいて、多面的に性別多様性スコアを算出し、各業種からスコアのより高い企業を選別しています。

MSCI日本株女性活躍指数(WIN)は当該分野において多面的な評価を行った初の指数として、大きな注目を集めています。

5-2.MSCI日本株女性活躍指数(WIN)の構成銘柄

ここでは、22年12月に更新された組入上位10銘柄を紹介します。

順位 銘柄 業種 構成比率
1 トヨタ自動車 輸送用機器 4.60%
2 東京海上ホールディングス 金融 4.10%
3 東京エレクトロン 情報技術 3.89%
4 リクルートホールディングス サービス 3.64%
5 任天堂 コミュニケーション・サービス 3.33%
6 HOYA ヘルスケア 3.16%
7 KDDI コミュニケーション・サービス 2.42%
8 伊藤忠商事 資本財 2.16%
9 三菱商事 資本財 1.86%
10 中外製薬 ヘルスケア 1.66%

5-3.業種ごとの構成比率

MSCI日本株女性活躍指数(WIN)における業種ごとの構成比率は、下記の通りとなっています。

業種名 構成比率
資本財・サービス 23.56%
金融 15.31%
情報技術 14.38%
ヘルスケア 11.61%
一般消費財・サービス 11.07%
コミュニケーション・サービス 9.30%
生活必需品 5.76%
素材 4.05%
不動産 2.29%
公益事業 1.48%
エネルギー 1.14%

6.まとめ

世界中においてさまざまな環境問題や社会問題が議論されている中、ESGは近年特に注目を集めています。ESGに十分に配慮している企業はより長期的な成長が見込めるとして、ESG指数をもとに投資銘柄を選定するESG投資の動きもますます活発化しています。

ESG指数はそれぞれの企業におけるESGへの取り組みについて相対的な評価を行った後、明確な数値として算出される株価指数を指します。今回紹介したものをはじめとして、多岐にわたる種類の指数が存在します。

各指数はそれぞれ異なる基準やポイントによって評価されています。株式投資による資産運用を考えている方は、これまでの財務情報だけでなく、ESG指数に注目して投資を行う株式を選定してみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12