変化し続ける新しいNFTの形「ダイナミックNFT」とは?

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. ダイナミックNFTの概要
  2. オラクルプロトコル Chainlinkとは
  3. ダイナミックNFTのユースケース
    3-1. ブロックチェーンゲーム
    3-2. リワード型NFT
    3-3. 不動産
  4. まとめ

NFT(非代替性トークン)は、これまでデジタルアートやゲームアイテム、スポーツカード、音楽コンテンツなど、幅広い分野に多大なるインパクトをもたらしてきました。

一方、基本的にNFTには、不変的、つまり所与の画像や動画が用いられています。しかし、本記事のテーマであるダイナミックNFT(dNFT)は、その発行後に特定の条件に合わせて、NFTの表示仕様が変化する仕組みを採用しており、その柔軟性から存在感が増しています。

今回は、ダイナミックNFTについて解説し、その概要や具体的な仕組み等を実際のユースケースと併せて理解を深めていきたいと思います。また、ダイナミックNFTを実現するにあたって重要な役割を担うオラクルプロトコル、特にChainLinkについても解説を加えます。

ダイナミックNFTの概要


ダイナミックNFTとは、上記で言及した通り、ブロックチェーン外部の情報に応じて、変化するNFTのことです。

具体的にダイナミックNFTの変化は、スマートコントラクトによって引き起こされ、NFTのメタデータが変更されることで実現します。これは、NFTのスマートコントラクト内に自動変更をエンコードすることで実行され、そのメタデータがいつ、どう変更されるべきかに関する指示がNFTに提供されます。

これまでNFTは、ブロックチェーン上でミントされた場合、それに伴うメタデータは不変で、例えば不動産証書のような更新や変更が伴う実世界の資産を表現することは、困難でした。一方、ダイナミックNFTは、固有の識別子を保持しながら、メタデータを更新することができるという柔軟性を持ち合わせています。加えてその外部情報の取得にはChainlinkといったオラクルを用いて、オフチェーン情報を安定的にブロックチェーン上に提供できることが期待されています。

オラクルプロトコル Chainlinkとは

このダイナミックNFTの仕組みを提案しているのが、業界最大手のオラクルプロトコルであるChainLinkです。NFTとオラクルプロトコルには一見するとなんの関連性もないように思えますが、ダイナミックNFTは、上記の通りブロックチェーンの外部情報に応じて変化します。

しかしブロックチェーンは本質的にオフチェーン、つまり現実世界のデータや計算にアクセスすることができません。したがってあるアドレスがどのトークンをいくら送信したか、受信したかという情報は存在しても、例えばオリンピックは開催されたのか、今日の株価はいくらなのか、他のチェーンでどんなトランザクションが発生したのかという情報は存在せず、外部から取得する必要があります。よって外部情報を提供するオラクルプロトコルは、ダイナミックNFTの実現において非常に重要な役割を担うのです。

またブロックチェーンは、ある時点において当該データが改ざんされていないことは示せても、提供される情報の正しさまでは、保証できないという懸念点が存在します。必要な情報と機能をいかにして信頼性を持って伝達するかという点はダイナミックNFTの実装に留まらず重要な観点といえるでしょう。どのオラクルプロトコルがどのような仕組みで情報を取得していて、どうオンチェーンに情報を伝えているのかは、採用の際にNFT事業者であっても考慮していく必要があります。

ダイナミックNFTのユースケース

ダイナミックNFTは、興味深く、将来的にも幅広い利用が期待されるものでありますが、いまだ発展段階という点において代名詞というべき顕著なユースケースやプロジェクトは、まだ登場していないのが現状です。よってここからは、ダイナミックNFTが今後活用される領域について、具体的な内容を踏まえながらいくつか提案、議論していきたいと思います。

ブロックチェーンゲーム


ユースケースとして想定される一例目は、ブロックチェーンゲームです。ブロックチェーンゲームに限らず、これまでリリースされてきた著名なゲームタイトルを踏まえると、ゲーム内のアイテムやキャラクターが、進化、成長するという例は枚挙にいとまがありません。よって、ゲーム内でのイベント結果や戦歴を外部から取得して、NFTのスマートコントラクトに反映させることで、ゲームキャラクター、アイテムNFTのレベル上げ、進化等を再現できると考えます。

具体的には、それに伴ってNFTの画像が変化したり、データパラメーターが更新されていくというイメージです。もちろん従来ブロックチェーンゲームにおいてもNFTをバーン、再度ミントするなどして、同様のギミックを再現することはできますが、都度NFTが発行されるという点を踏まえると、ガス代の問題、そもそも愛着心が湧かない、NFTの魅力の一つである永続的な側面に反するとも考えられるでしょう。

リワード型NFT

リワード型NFTとは、少々抽象的な言葉ではありますが、オフチェーンで特定の目標を達成した場合に、NFTが配布され、その達成度によってNFTが更新されていくというものです。

例えば、フィットネスアプリケーションで、良い習慣や良い成績をとると、ダイナミックNFTのメタデータが更新され特別なNFTに変化したり、子供が運動や勉強をする動機付けとして上記のようなNFTを実装することは一つのユースケースとして有用でしょう。健康的なライフスタイルや子供たちの学業への取り組みをゲームの報酬と融合させることは、NFTを所持、利用する個人だけでなく、社会にポジティブなフィードバックループをもたらすと考えられます。

不動産


住宅や土地など、不動産に関してもダイナミックNFTは、その効果を発揮するでしょう。一般に不動産には築年数や住宅ローン情報、メンテナンス履歴など、NFTとして実装した場合にはメタデータの更新が不可欠です。よって今後ChainLinkなどのオラクルプロトコルが不動産に関する実世界の情報を提供していく場合、不動産分野におけるNFTの利活用がさらに進んでいくことでしょう。

まとめ

今回は、外部情報を取得し、メタデータの更新を実行するダイナミックNFTについて解説してきました。

上記で説明してきた通り、これまでのNFTはアートやコミュニティへの参加を証明する分野など、データの更新が必要となりにくい、静的な分野で幅広く用いられてきました。一方、ダイナミックNFTは、リアルタイムでNFTのメタデータを更新できるなど、これまでは、変更の多さから、NFTの利用が見送られてきた領域もしくは、ブロックチェーンゲームなどダイナミックNFTの活用により、よりよいユーザー体験を提供できる分野で今後積極的に用いられていくことが期待されます。

したがってダイナミックNFTは、まだ比較的新しいアイデアではありますが、今後、所有者のNFTとの付き合い方やNFTが象徴するものを一変させる可能性を秘めていると言っても良いでしょう。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。