2022年3月の各国中銀動向は?原油やインフレ見通しについても解説

※ このページには広告・PRが含まれています

3/21以降の相場は、円安が進行しました。直近のFOMCでは年内毎回の会合での利上げを示唆し、さらにパウエルFRB議長をはじめとした米金融当局者らが0.5%幅の利上げの可能性が示唆されるなど、予想以上のタカ派姿勢をみせました。

この記事では、2022年3月の振り返りと、4月に向けての動向を解説します。
※本記事は4月4日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年3月のマーケット振り返りと4月に向けて
    1-1.日本
    1-2.米国
    1-3.中国
    1-4.欧州
    1-5.英国
    1-6.その他
  2. 注目材料はRBA政策決定会合

1.直近の振り返りと4月に向けて

日銀では黒田BOJ総裁が緩和継続姿勢を示し、当面の利上げの可能性を否定しました。円安についても経済全般に対するメリットが大きいと容認姿勢を示すなど、日米の金融政策姿勢の差がより一層鮮明になったことがドル円相場を押し上げました。

BOJが3/28に長期国債の指値オペを実施しました。29~31日の3日連続指値オペを実施すると表明すると、ドル円は122円台から一気に125円台まで上昇しました。しかし、かなりのスピードで上昇してきたことから、その後は買いは続かず反落、121円台前半まで押し戻されています。クロス円も総じて円安方向に振れています。

1-1.日本

3/28に10年物国債利回りが一時0.245%とBOJの許容範囲上限の0.25%に迫ったところで、BOJは0.25%での指値オペを実施することを通知しました。午前と午後の一日2回の指値オペは初めてであり、更に3/29から3/31にかけて0.25%で国債を無制限に買い入れるを実施することを発表しました。0.25%を超える長期金利の上昇は容認しないというBOJの強いメッセージを受けて、外国勢が一斉にJPY売りで反応しUSD/JPYは123円近辺から瞬間的に125円を超えるまで上昇しました。

関連:ロイター「日銀が連続指し値オペを初めて通告、29─31日 10年債0.25%

1-2.米国

タカ派の3月FOMC以降も、パウエル議長はじめFRB高官から1回の利上げ幅を0.5%にする可能性を示唆する発言が相次いでいます。また、FOMCでは政策金利のピークが2023年の2.75%と予想していることから、基本的に政策金利に連動しやすい短期金利の上昇幅の方が長期金利より大きくなっており、金利のカーブ形状がフラット化しています。市場は年内1回以上0.5%を超える利上げを織り込みましたが、0.5%利上げを行うかではなく、0.5%利上げを何回行うかに焦点は移っています。

これまではタカ派のFOMC後は、パウエル議長が株式市場などに配慮して市場の過熱感を冷ますような発言がありました。結果として市場の織り込みに後からFOMCが付いていくような形になっていました。

しかし、今回は一段とタカ派スタンスを強調するなどインフレ抑制への本気度が伺えます。市場の織り込み以上の発言により、むしろ市場を先導していく本来の中銀としての役割に戻る可能性があります。

関連:ブルームバーグ「パウエル議長、急ペースの利上げの可能性に扉開く-インフレ抑制で

3月の消費者信頼感指数は前月比+1.5ポイントの107.2と概ね予想通りとなりました。中身を見ていくと、労働市場に関する「雇用が十分」項目が57.2と過去最高水準に上昇するなか、雇用DIは47.4と大幅に改善しており、労働市場の力強さが示されました。

3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)は+43.1万人と予想を下回ったものの、高水準の雇用の伸びが示され、失業率は3.6%まで低下するなど力強い労働市場が堅持されています。インフレが強まる中で、所得の伸びが気掛かりな点となっています。

平均時給の伸びは前年比で+5.6%と強い伸びを示し、インフレの伸びには及びません。しかしFRBからすれば、成長よりもインフレ抑制に注力するのに十分な数字である可能性があります。この結果を受けてFRBの積極利上げを追認する内容と判断されたのか、5月FOMCでの0.5%の大幅利上げの確率は70%を超えています。

1-3.中国

PBOCは1年物の中期貸出ファシリティ(MLF)金利を2.85%で据え置き、ローンプライムレートの1年及び5年もそれぞれ据え置きました。全人代で示された楽観的な5.5%成長を達成するためには、今後更なる刺激策が必要になるため、近い将来利下げが決まる可能性があります。

コロナ感染拡大によりロックダウンを実施する都市が徐々に増えてきています。3/28から上海でも厳格なロックダウンに入りました。一方で、深センはロックダウンを解除しています。

PMI関連指数が製造業も非製造業も軒並み下振れ、50を割り込んできています。今回の数字は納期の遅れがプラス要因として働いています。

通常の経済状態であれば納期の遅れは強い需要が原因となります。しかし今回はゼロコロナ政策の影響を受けたサプライチェーンの混乱が要因となっているため、実態は出てきている数字よりも更に悪いものになっている可能性があります。

1-4.欧州

ユーロ圏PMIが発表となりました。製造業の弱さが目立っています。コロナ規制が緩和されているというポジティブな面がありながらも、ロシアのウクライナ侵攻によるインフレとサプライチェーンの混乱のマイナスが上回りました。

ドイツIFO景況感指数も2020年5月コロナ禍初期以来の低水準となる85.1と急速に悪化しています。

ドイツは2024年半ばまでにロシア産化石燃料からの脱却を目指す計画を明らかにしました。また欧州全体としてもロシアからの代替えLNG(液化天然ガス)として米国と協働していくことを決定しました。

関連:ブルームバーグ「ドイツ、ロシア産ガス依存から24年半ばにほぼ完全脱却の計画

1-5.英国

インフレの基調は引き続き強く、2月CPIは予想を上回る前年比+6.2%となりました。直近の賃金上昇率は4%程度であり、BOEは物価高が個人消費を圧迫するシナリオを警戒しています。

ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格の高騰に拍車がかかっており、4月以降更にエネルギー価格の上昇と増税が予想されていることから、スナク財務相の予算案で家計への支援が織り込まれるのではないかという期待が高まっていました。結果として、スナク財務相は、家計が生活費高騰に対応するのを助けるため、春季予算案として90億ポンドの追加財政対策を発表しました。しかし、事前予想の最低ラインの規模にとどまっています。

関連:ロイター「英、4月からエネルギー価格54%値上げ 120億ドル投じ家計支援

英予算責任局の予想では、CPIが2022年後半には9%近くまで上昇し、2022-2023年の実質生活水準は2.2%下落し、2024年まで生活水準は回復しないとしています。インフレの影響は徐々に経済指標にも表れてきており、2月の小売りは前月比▲0.3%、3月のGFK信頼感指数は過去1年で最低水準に落ち込みました。

1-6.その他

プーチン大統領は、「非友好国」に対して天然ガスの支払いをRUB建てで求める方針を示しました。これを受けて一時欧州の天然ガスが30%急騰し、原油価格もつられて上昇しました。

関連:ブルームバーグ「プーチン大統領、ガス供給を継続へ-代金はルーブル建てを要求

またサウジアラビアの石油貯蔵施設がイエメンの反政府武装組織からドローン攻撃を受けていることも、原油上昇の要因となっています。OPECプラスは、予想通り小幅増産の維持を決定しました。

しかし、米国が戦略石油備蓄から日量100万バレルを6か月間追加放出すると決定したことから、原油は下がり始めています。

メキシコ中銀が政策金利を予想通り0.5%引き上げて6.5%にすることを全会一致で決定しました。これまで6回の利上げ時には、エスキベル副総裁は必ずハト派方向に反対票を投じてきたものの、今回は0.5%の利上げに賛成しました。インフレが中銀目標上限の4%まで下回る時期を2023年第2Qに後ろ倒しさせ、引き締めサイクルが長期化することが確認できました。

しかし、今回の利上げ発表の数時間前の記者会見で大統領が利上げを公表してしまうという異例の事態となりました。中銀の独立性が損なわれているという批判が出ました。その後大統領が中銀メンバーに謝罪して事態は収拾しましたものの、一歩間違えるとトルコのように急激な通貨安に見舞われる恐れがあるため注意が必要です。

2.今後の注目材料はRBA政策決定会合

債券市場の織り込み状況は、キャッシュレート目標が 2022年末に2%近くへ、2023年後半には3%超へ引き上げられることが織り込まれています。RBA がひとたび引き締めを開始すれば早いと考えてられています。

市場の予想としては、スケジュール的には5/21に連邦議会選挙までは様子見となるでしょう。利上げをするならその後の夏の会合でしょう。

為替市場では、債券市場の織り込みとは若干異なります。今後ウクライナ問題による一時的な加速ではないデマンドプル型の物価上昇のデータが出てくるまでは、RBAは動かないと思われています。現時点で利上げ時期に言及し、市場の織り込みと同程度に速く利上げを行うことを示唆するようなことがあれば、サプライズでしょう。

為替市場ではRBAの他国対比ハト的な姿勢により相対的にショートになっている状態です。しかし、為替市場でAUDショートとなっている参加者も最近のロウ総裁の発言や堅調な経済指標から早期利上げについて考える必要が出てきてしまっています。

一方で債券市場はかなり早期利上げを織り込んだ状態です。為替市場の参加者は予想よりもハト的な結果となりAUDが売られれば、ショートをクローズしたいと待ち構えている状態だと予想します。従って、下値は限定的ですし、万が一タカ派サプライズがあれば、AUDは0.7600をしっかり超えてくると考えます。

関連:ブルームバーグ「メキシコ大統領が中銀に謝罪、正式発表前の利上げ公表巡り

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」