ドル円の見通しは?雇用統計のポイントや日銀の動向も解説【2024年1月】

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2024年1月現在、アメリカで雇用統計が発表され、市場の注目が集まりました。ドル円の値幅も大きくなり、今後のトレード戦略を練り直している方は多いのではないでしょうか。

本稿ではプロトレーダーの筆者が、雇用統計やドル円の動きを解説し、今後の展開を予想します。参考にしてみてください。

※本記事は2024年1月16日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 雇用統計の結果
  2. 雇用統計を受けたドル円の動向
  3. ドル円の方向性
    3-1.日本円の動き
    3-2.米ドルの動き
  4. まとめ

1.雇用統計の結果

最初に雇用統計の数字をチェックしましょう。

雇用統計

指標 結果 予想・前月
非農業部門雇用者数 21.6万人 予想16.8万人、前月17.3万人
失業率 3.7% 予想3.8%、前月3.6%
平均時給(前月比) 0.4% 予想0.3%、前月0.4%
平均時給(前年同月比) 4.1% 予想3.9%、前月4.0%

雇用統計は、一見すると、非常に強い結果になりました。ただし数字の動き方を見ると、強い数字とは言い切れない点に注意が必要です。

過去2ヶ月の非農業部門雇用者数が下方修正されており、2ヶ月合計で7.1万人の下方修正が発生しています。また、フルタイムの雇用者が153万人減少しています。

フルタイムの雇用者の減少は、雇用の弱さを意味しています。一方でパートタイマーは7.6万人増加しており、複数の仕事を掛け持ちして働いている人が増えている可能性があります。複数の職を持っている人は22.2万人増加しており、給料を増やさないといけないと考えている労働者が増加していると判断できるため、多くの方が生活に苦しんでいる可能性があります。

また週平均労働時間も34.3時間となり、2020年4月以来の低い水準にまで落ち込んでいます。労働参加率と就業率も低下しており、ヘッドラインの数字に中身が伴っていない状況です。2024年1月に発表された雇用統計は、労働市場の質が伴っておらず、FRBのハト派スタンスを否定するものではないと言えるでしょう。

2.雇用統計を受けたドル円の動向

雇用統計後のドル円動向
※図はTradingView[PR]より筆者作成

ドル円は、雇用統計発表直後には、強い数字を示すヘッドラインを見た投資家による買い注文によって、146円台手前まで上昇しました。しかしその後中身が精査され、必ずしも良好な結果とは言えないことが分かると、ドル高地合いが弱まり、ドル売りに転換しました。

ドルストレートの通貨ペアを見ると、ドル高地合いは早い段階で終わっています。ドル円は、最初はドル高によって上昇しましたが、その後は日本円の売りが主導となり、146円台手前まで伸びました。

ドル売り材料が確認できると、ドル円は上昇分を吐き出す展開となり、145円付近まで下落しました。一度上昇した分を全て吐き出した場合、トレンドは再度持ち直しにくくなるため、145円台前半で横ばいの動きが継続しました。

雇用統計の後に発表された、ISM非製造業景況感指数が非常に弱い数字となり、米国債金利は低下し、ドルは再度売られ、ドル円も急落しました。ドル円は高値から2円以上の下落し、一時は143円台後半となりました。

雇用統計とISM非製造業景況感指数が発表する前に、ドル円は140円台から146円手前まで数日で急ピッチに上昇していたため、指標の発表により大きな値幅が発生したと考えられます。

3.ドル円の方向性

ドル円の方向性を考えるためには、日本円の動きと米ドルの動きとを分けて考える必要があります。

3-1.日本円の動き

まず日本円の動きとしては、日銀の緩和路線が長期化する可能性が高まっています。今後、もし日銀政策会合でマイナス金利解除のヒントが飛び出してくれば、ドル円は下落サイドに圧力が掛かりそうではあるものの、能登半島の大震災の災害対策が優先されるべきであり、日銀から何らかのアクションがあるとは考えにくいでしょう。そのため円高圧力が緩和され、2023年の年末と比較するとドル円の下落圧力は弱まっていると言えるでしょう。

3-2.米ドルの動き

次に米ドルの動きとして、2023年12月にパウエル議長のハト派発言をきっかけに、米国の利下げを織り込む動きが一気に強まりました。市場は2024年に年間に6~7回の利下げを織り込んでいたものの、2024年1月現在では過度な利下げを織り込む動きは弱まっています。

しかし雇用統計を受けて、労働市場が緩やかに弱まっていることが確認できているため、タカ派的なムードはそこまで強くならないでしょう。行き過ぎた利下げ期待が修正される中で、短期的にはドル高に振れるものの、ポジションの調整が終了する過程で再度売られるでしょう。

そのためドル円は、下落したタイミングでは拾われやすい環境となり、急落して130円台になる展開は考えにくいでしょう。一方でFRBの政策スタンスを見る限りでは、再度ドル円が150円方向に上昇する展開も考えにくいため、仮に上抜けしたとしても147円まででしょう。

プロトレーダーの筆者としては、レンジ内での取引を予想しています。ドル円が下落した局面をロングポジションを構築するチャンスと捉えるトレード戦略は、選択肢の一つでしょう。

ドル円チャート
※図はTradingView[PR]より筆者作成

4.まとめ

本稿では雇用統計と、雇用統計後に大きく変動したドル円の動きについて解説しました。日米双方の材料がともに変化しつつあるため、柔軟に対応しながらトレードをする必要性があります。

相場は生き物であり、昨日の予想が今日裏切られることも往々にしてあります。ニュースをチェックしながら、臨機応変なトレードを心掛けましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12