2022年は、年初からFRBを中心に世界の中央銀行の積極引き締めがテーマとなってきました。市場は既に利上げについては織り込み済みとなり、市場は次のテーマとして、中央銀行の積極引き締めに伴いリセッション(景気後退)が発生するのかに注目が移っている状況です。
今回は、景況感は悪いデータが出てくるものの、雇用市場などが崩れる様子を見せない米国と、BOE自ら第4Qからリセッション入りするという予想を発表している英国の重経済指標について詳しく解説していきます。
※本記事は8月8日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数
1-1.前回6月米CPIと7月米ミシガン大消費者信頼感指数
1-2.今回7月米CPIと8月米ミシガン大消費者信頼感指数
1-3.発表後の反応予想 - イギリスCPI
2-1.前回第1QGDP
2-2.直近の経済状況
2-3.今回第2QGDP
2-4.発表後の反応予想
1.米CPIと米ミシガン大消費者信頼感指数
1-1.前回6月米CPIと7月米ミシガン大消費者信頼感指数
6月のCPIは前月比+1.3%と衰える兆しを見せず、前年比は+9.1%と過去最高を更新しました。落ち着くと思われていたコアCPIは前月の+6.0%から+5.9%に低下したものの、引き続き高水準を維持しています。
内訳を確認すると、相変わらずエネルギーと食品の上昇が続いています。中古車価格など幅広い項目でプラスとなっています。ウェイトの高い住宅費がかなり上がっていることから、6月中旬から下がり出したエネルギー価格の影響が来月の数字に反映されたとしても、なかなか落ち着きそうにありません。
7月ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は、51.1と予想の49.9や前月の50.0を上回りました。ガソリン価格の下落と堅調な労働市場を背景に現況指数も57.1に上昇しました。
1年先の期待インフレは5.2%と前月の5.3%と余り変わりませんでしたが、5-10年先のインフレ期待値が2.8%と、前月の3.1%から2021年7月以来の水準に低下しました。
1-2.前回7月米CPIと8月米ミシガン大消費者信頼感指数
7月のCPIは前年比+8.8%と6月からは若干落ち着く予想となっています。一方で食品・エネルギーを除いたコア部分の予想は前年比+6.1%と前回の+5.9%から伸びが加速する見込みです。これまでのエネルギー価格上昇がその他の項目に波及したことで、様々な分野において物価の上昇が見込まれています。
8月のミシガン大消費者信頼感指数は52.0と50を上回る予想です。前回50を切る予想のなか、51.1となりました。物価上昇による悪影響は概ね織り込んできており、むしろ期待インフレは低下基調となっています。雇用さえしっかりとしていれば、景況感としては一旦底を付けた可能性があります。
1-3.発表後の反応予想
6月の0.75%利上げ時に、CPIとミシガン大消費者信頼感指数が上昇したため、大幅利上げに踏み切ったとの発言がありました。7月FOMCでもパウエル議長は9月の利上げ幅についてはデータ次第と述べていることから、CPIとミシガン大消費者信頼感指数の数字は特に注目度されています。
【参照記事】NRI「FRBのパウエル議長の記者会見-policy guidance」
【参照記事】ロイター「〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨」
既に雇用統計が好結果となっており、次回9月のFOMCにて0.75%の利上げが70%程度織り込まれた状態です。水曜日に発表されるCPIが予想を上回るなら、0.75%利上げがほぼ織り込まれる展開となります。米金利とドルが上昇しそうです。
しかし、その後金曜日に出てくるミシガン大消費者信頼感指数の特に1年先の期待インフレが大幅に低下しているのであれば、利上げ織り込みのレベルが0.5%利上げまで低下することは十分にありえます。既に5-10年先の期待インフレは前回でも2.8%まで低下しており、短期見通しに波及するかどうかに注目です。
雇用統計が良かったことから0.5%と0.75%利上げの幅の範囲内で、指標やFOMCメンバーの発言によって振幅する展開となるなか、それに合わせて米ドルもレンジでの推移を予想します。
7月に入ってNY原油価格の上昇が一服したことでエネルギー価格の伸びが抑えられるとの見通しが今回のCPI予想には織り込まれています。ガソリンの小売価格は6月に週平均で付けた1ガロン当たり5ドル超え(全米・全種平均/米EIA調査)から、直近で4.1ドル台まで落ちています。
月平均でみると6月の4.929ドルから7月は4.559ドルと約7.5%の低下となっているため、サプライズがあるとするならCPIの下振れだと思われます。その場合、利上げ織り込みは0.25%の方向に移行する中、ドル円なら再び130円台に向けて下落するかもしれません。
2.イギリス第2QGDP速報値
2-1.第1QGDP
第1QのGDP速報値は前期比+0.8%と予想の+1%を若干下回ったものの、何とかプラスを維持しました。2月にコロナによる行動制限が解除されGDP全体の6割を占める個人消費が伸びたことから、3月以降の物価高によるマイナスを何とか打ち消すことが出来た形です。
BOEは5月の会合で、第2QのGDPは前期比横ばいになるとの見通しを示しています。一方で3月の月次GDPは▲0.1%と既にマイナス転しており、消費者信頼感指数も悪化しています。見通し通り達成できるかはかなり怪しくなってきました。
2-2.直近の経済状態
4月GDPは前月比▲0.3%でしたが、5月は前月比+0.5%と予想を大幅に上回りました。8月BOEでは第4Qからマイナスである、第3Qまでは何とか持ちこたえるという見通しになっています。
物価は4月前年比+9.0%、5月が+9.1%、6月が+9.4%と、エネルギー・食料品が引き続き牽引しており、ピークを付ける気配はありません。8月BOEでは第3Qは+9.9%、第4Qは+13.1%と更に物価は上昇するという見通しです。
労働市場は3月ILO失業率3.7%、4月3.8%、5月3.8%と低位安定しています。5月の雇用者数は+29.6万人と市場予想を上回り、失業保険申請件数も▲2万人と全体的に良好です。
週平均賃金は+6.2%と市場予想を下回りましたが、賞与を除くコア指数では市場予想を上回る+4.3%と加速しました。
景況感は、7月のGFK消費者信頼感指数は▲41と最低水準で燻っています。6月小売売上高も前年比▲5.8%と物価高に対して賃金上昇が追いついていないことから、徐々に景況感が悪化してきていることがわかります。
2-3.今回第2QGDP
8月のBOE金融政策決定会合では2022年第3Qまでは何とか前期比プラスでの着地になると予想されています。第2Qは+0.5%とされており、0.5%が予想の中央値として織り込まれています。
2-4.発表後の反応予想
8月BOE政策決定会合にて、ガス価格の上昇により第4Qからリセッション入りするという予想を発表しました。5四半期連続で前期比マイナスとなり、合計で英経済は約2.1%縮小するとの見通しです。
一方、政策金利見通しは、2022年末が2.4%、2023年中に2.9%に到達後、2024年から利下げをするという予定です。2022年第4QからGDPがマイナスになっているなか、利上げを継続するのは厳しいため、2023年の利上げも恐らく年前半でやりきって、その後は様子見というシナリオでしょう。
しかし、もし今回既に第2Qにマイナス転していた場合は、BOEの想定以上に経済が悪化していることになり、そもそもBOEの利上げが継続できなくなるのではないかという思惑が働く可能性があります。BOEの想定より半年早くリセッション入りしているということになれば、2023年の利上げ織り込みの剥落と共に、GBPは再び1.2000アンダーまで売られると予想します。
ただ、BOEの見通しには新首相候補二人の公約である減税が勘案されていません。仮に減税が大規模になるようだと、全く違った見通しになる可能性もあるでしょう。期待感が続くうちは、GBPの大幅下落という展開にはならないと予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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