外国為替取引市場において、アメリカのテーパリングがいつから始まるか注目されています。
世界はコロナウイルスの影響で大きな変化を遂げています。コロナの影響が本格的に出始めた当初、世界的に株価が下がり続けていました。アメリカをはじめとするほとんどの国で、コロナの影響抑えるために政策金利を下げ、大規模な経済対策を実行し、個人に対しても給付金支援などを行いました。
その結果アメリカでは、実質的な経済成長はマイナス成長にも関わらず株価は上昇し続け、インフレ率も上昇しています。このままインフレ率の上昇をFRBが放置すれば経済が不安定になるため、現在行っている量的緩和を減額する、いわゆるテーパリングが予定されています。
今回はテーパリングと、金融政策と為替の動きについて解説します。
目次
- 中央銀行と金融政策
1-1.中央銀行とは?
1-2. 金融政策とは?
1-3.支払準備操作とは
1-4.公開市場操作(オペレーション)とは - 政策金利が経済に及ぼす影響
2-1.政策金利とは?
2-2.政策金利で景気をコントロールする大原則 - 金融政策が為替に与える影響
3-1.為替を動かす大きな要因となる政策金利と量的緩和 - アメリカでテーパリングが始まると為替はどうなるか?
- まとめ
1.中央銀行と金融政策
まずは、テーパリングを行う主体である中央銀行と、中央銀行が行う金融政策について解説します。
1-1.中央銀行とは?
中央銀行とは、一国の金融の中心となる存在です。通貨発行権や政策金利などを通して物価の安定や経済成長を図る、国の経済を左右する重要な役割を担う機関です。アメリカではFRB(連邦準備銀行)、日本では日本銀行が中央銀行にあたります。
政府機関ではなく、中央銀行は政府から独立している機関であり、金融政策を独自で行う権限を有しています。ただし、「政府との連携は重要である」と日銀法にも明記されているように、完全に独立して政策を決定しているわけではありません。
1-2.金融政策とは?
金融政策とは中央銀行が行う経済政策のことです。例えば日本銀行では、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するため、通貨および金融の調節を行うこととされています。
市中銀行に対する貸出利率である政策金利を調整し、経済活動のペースを調整することでインフレ率と呼ばれる、一般物価の上昇率のコントロールを目指します。中央銀行が行う金融政策は主に以下の3つに分けられます。
- 政策金利の決定
- 支払準備操作
- 公開市場操作(オペレーション)
「政策金利の決定」については次項で詳細を解説するため省略しますが、それぞれの金融政策について以下で説明します。
1-3.支払準備操作とは
「支払準備操作」とは、市中銀行の資金の調整を通じて貸出態度などへ影響を及ぼし、市場に流通する資金をコントロールすることです。
支払準備率を引き上げると市中銀行の資金は減少するため市場に流通する資金は減少し、市場の金利は上昇する傾向になります。反対に準備率を引き下げるという銀行の資金が増加し、市場の金利は下降する傾向となります。
市中銀行は将来の預金の払い戻しに備えて、預金残高のうち一部を法定準備金として中央銀行に預けておく必要があります。この支払い準備の比率を、支払準備率といいます。
1-4.公開市場操作(オペレーション)とは
資金供給のために中央銀行が国債などを購入することを買いオペレーション、逆に中央銀行が国債などを売ることを売りオペレーションと言います。
買いオペレーションの場合は金融機関の資金が増え、市場の通貨量が増えます。その際には、金融緩和による金利の引き下げ効果があります。売りオペレーションの場合、金融市場の通貨量を減らします。資金需給を逼迫させることによる金利の引き上げ効果があります。
2021年11月現在のアメリカでは、毎月1200億ドルの国債などを買い入れるオペレーションが行われています。
2.政策金利が経済に及ぼす影響
次に、為替市場にも影響を与える政策金利について解説します。
2-1.政策金利とは?
政策金利とは「中央銀行が市中銀行に貸出をする際の金利」です。政策金利の役割は通貨の流通量のコントロールです。
金融機関は借りた金利よりも高い金利で顧客に貸し出さなければ、利益が生まれません。金利が低い時は資金調達コストが下がるため、金融機関は資金を借入れやすくなり、貸出先である顧客に低い金利で資金を提供することができます。金利の低さは顧客にとっても資金の借りやすさにつながり、通貨の流通量が増える結果となります。
逆に、金利が高いときは資金調達コストが上がり、金融機関は資金を借りづらくなると同時に、顧客に対して高い金利で資金を提供せざるを得なくなります。結果的に顧客も資金を借りにくい状況となり、一般に流通する通貨量が減ります。
2-2.政策金利で景気をコントロールする大原則
政策金利の役割を理解するためには、景気の良し悪しについてどのように判断されるのか知る必要があります。
景気が良い状態とは、企業の業績が良く投資が増えて、雇用状態も良い状態のことを指します。また、物価も健全なペースで上昇している状態です。ただし、景気が良い状態を放置すると経済はバブル状態になります。何かのきっかけでバブルがはじければ、大不況に陥る可能性があります。
景気が悪い状態とは、企業の業績も悪く投資が減り、雇用状態が悪化している状態です。経済は、景気が良すぎても悪すぎても良い状態とは言えません。そこで中央銀行は政策を使って景気をコントロールします。
端的に解説すると、景気が良い状態の時は政策金利を上げ、市場に出回る通貨量や資金調達のための貸し出しにくくすることで、景気の沈静化を図ります。逆に景気が悪い状態の時は金利を低くし、景気を吹かす効果を狙います。
3.金融政策が為替に与える影響
金融政策が為替にどのような影響を与えるかについて解説します。
3-1.為替を動かす大きな要因となる政策金利と量的緩和
政策金利や量的緩和は、為替を動かす大きな要因となります。
まず、政策金利が通貨に与える影響を説明します。政策金利が高い通貨を保有していると、金利収入を得られるため、その通貨に対する投資が進みます。つまり、通貨は買われやすい状態になります。逆に政策金利が低ければ、通貨は売られやすくなります。
次に、量的緩和が為替に与える影響について解説します。市場に出回る通貨量が増えている状態では、その通貨の価値は下がります。逆に通貨量が減っている状態では、その通貨の価値は上がります。
実際には為替は複雑に絡み合う要因によって変化しており、短期的な視点で見ると必ずしもこの通りにはならない点に注意が必要です。
4.アメリカでテーパリングが始まると為替はどうなるか?
テーパリングが始まることは、FRBが国債などの毎月の買い入れ額を減らすことを意味しています。市場に出回る通貨の量が減れば、通貨の価値があがります。
つまり、アメリカドルの希少性が増し、ドルが高くなりやすい地合いとなります。セオリー通りの動きになればアメリカ国債の金利は上昇し、株価は下落傾向となるでしょう。
まとめ
今回は金融政策と為替の動きについて解説しました。
トレードをする際に、雇用統計といった経済指標に注目している人は多いでしょう。金融政策の決定の根拠として使われており、結果次第で金利が変動する可能性があることから、為替取引でも注目されているのです。金融政策は分かりにくいと感じた人もいるかもしれません。しかし、理解できれば、値動きを予想する上で役に立つはずです。
金融政策を理解し、ぜひ、今後の資産形成に役立ててください。
中島 翔
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